200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚

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第5章

第132話 油田

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 200万年前の記録では、ニジェール川河口デルタには大規模な油田があった。
 それは、200万年後でも変わりはないだろう。生物にとっての200万年は進化を促すのに十分な時間だが、地質を変化させるには短すぎる。
 問題は、200万年後のニジェール川河口デルタの気象条件だ。
 3800キロリットルの燃料を積んだノイリン西地区のタンカーは、ニジェール川河口にたどり着けなかった。
 タンカーは、アフリカ西岸を南下し、200万年前のリベリアとコートジボワールとの国境付近で、海岸線に沿って、進路を東に転じてギニア湾に入る。この時点で、すでに特大の暴風雨に襲われており、航海は危険な状態だった。
 それでも陸を左手に見ながら東進し、ペナンとナイジェリアの国境付近までは進めたが、その地点からはわずかでも南下することはできなかった。
 ニジェール川を遡上する物資輸送ルートの啓開は、不可能と判断しなければならなかった。

 俺は、地元でも評判の悪かったココワの油商人サール家勢力の削減には成功したが、その後の展開には失敗した。湖水地域に燃料を送れなければ、この一帯を混乱させただけになる。
 一方、マニニアンたちはマルカラのバイオ燃料精製施設の再稼働と、設備増強を精力的に進め、ごく短期間で生産量を倍増させている。
 片倉幸子が整備したバンジェル島対岸からバルカネルビに至る1500キロに達する陸上ルートは、装輪と装軌の牽引車によって20キロリットル積みトレーラータンクで燃料を運び、5日ほどで到着した。
 雨期を除けば、このルートでの輸送はコストはかかるが確実だ。

 クマンは、南にセロ、北はバルマドゥ多民族国と国境を接し、農地の開墾、居住域の拡大は、内陸に進むしかなかった。
 旧クマン王国領土の一部はセロに占領されており、旧王都付近は戦場になる可能性があることから、一切の復興と再開発をやめていた。
 旧クマン王国の北半分はバルマドゥ多民族国として独立したので、クマンの領土は実質的に3分の1を若干切る程度まで減じていた。
 この地に根ざしているクマンにとっては、無人の内陸への領域拡大は容易だった。当然だが、容易な方向に領土を拡大していく。

 クマンが湖水地域から輸入すべき物資は、多くはなかった。食料なら自給できたし、森の恵みもある。ただ、パーム核油由来の食用油は欲していた。
 それと、高価で高品質な西ユーラシア製ガソリンエンジンよりも、湖水地域製焼玉エンジンのほうが西アフリカ大西洋沿岸の現状には適している。
 ノイリンでも北カラバッシュからの移住者が焼玉エンジンを製造しているが、西アフリカには持ち込んでいなかった。
 なお、フルギアやヴルマンも北カラバッシュからの移住者を好待遇で受け入れていて、焼玉エンジンを北方人型木造船に搭載している。
 エンジンの性能が安定してくれば、輸出を始めるだろう。

 それと、油商人のすべてが悪評だったわけではない。バレル家支家の油商人の半分以上は、真摯な商売をしていた。
 燃料代の支払いに窮している漁師に掛け売りしている支家が複数あり、強引な取り立てなどもしていなかった。燃料費の高騰に苦しむ湖水地域の人々からは、感謝されていた。
 また、サール家派と反サール家派に別れての支家間の対立もあったようだ。中間派やバレル家からの離脱派もいた。
 バレル家発祥の地がココワであり、サール家はこの街を拠点とし続けた。しばらくしてわかったことだが、必ずしも油商人の拠点がココワであったわけではない。
 マルカラに油田が発見されたとの誤解から始まる今回のもめ事は、サール家とノイリンを主とした西ユーラシア勢力間の事案と考えるべきだ。

 バルカネルビには、油商人がいなかった。油商人はココワを中心とした湖水地域中部に集中していて、西部、東部にはいない。
 バルカネルビでは、この街と周辺の街が共同で、サール家系とは異なる油商人から一括大量購入していた。
 価格は、中部、東部、南部よりは安価に供給されていた。そのため、東部と中部からの移住が多く、西部は勢力を拡大する傾向にあった。
 東部の中心的な街であるトンブクトゥは、バルカネルビの制度を模倣しようとしたが、サール家先々代当主の粗暴な行為によって阻止された。
 以来、東部はサール家を嫌っている。
 最も燃料消費が多い地域が、工業地帯である南部だ。
 バレル家が燃料を統制していた時代は、南部と油商人は友好的な関係だった。しかし、バレル家が凋落し、支家の1つでしかなかったサール家が台頭してくると、事情が変わる。
 南部は支家の4つと組み、燃料の独自供給に進む。
 この動きに対してもサール家先々代当主が妨害したが、南部が連合軍を編制したことから、損害増大を恐れたサール家が引いた。
 連合軍は決して精強ではなく、街の男たちが武器になりそうな道具を持ち寄っただけだった。それでも、5万の大軍は数千規模の動員しかできないサール家には対抗手段がなかった。
 以後も南部は団結し続け、この争いを教訓として武器を整え、救世主の侵攻においても果敢に戦った。
 しかし、武器の統制管理が厳しすぎて、緒戦において農具や工具などの武器とは呼べない貧弱な装備で戦ったため、一部の街が蹂躙されていた。

 昨夜は、マーニとホティアの送別会だった。2人のコーカレイ異動が決まったのだ。コーカレイはマーニにとっては初めて住む街、ホティアは12歳まで過ごした。
 ドラキュロが少なく、ロワール川北岸には温泉がある。街は拡大していて、旧城壁は観光名所になっている。
 デュランダルが“総督”として行政を担当し、ベルタが総司令官として街の防衛を統括している。
 フルギア、ヴルマン、鬼神族との接点でもあり、西ユーラシアにおける対セロ戦争の最前線だ。
 ノイリンと比べるとかなり暖かい。穀物の収穫も、こんな気候でも自給量ギリギリはある。
 日照に恵まれ、住民は総じて陽気で、刺激の多い街だ。
 俺はノイリンに、城島由加はバンジェル島に戻り、半田千早はバルカネルビに残ることが決まった。
 また、家族がバラバラになる。
 それが悲しく、俺は飲み過ぎてしまう。

 二日酔いではないのに、頭が重く、爽快とはほど遠い朝を迎える。

 商館の1階窓から正門側を見ると、マーニが両足を肩幅に開き、立っている。両手はダラリと下げているのではなく、右手の肘をやや曲げている。
 俺は慌ててズボンを穿き、部屋を飛び出す。
 城島由加が「何?」と眠そうにベッドから問いかけたが、無視する。

 門の外側に、腕から血を流している初老の男、10代半ばの女の子、30代後半の女性が蹲っている。
 俺が飛び出してくると、デュランダルが俺の右手を押さえて、制止する。
 イロナはノイリン製AK-47を構えているが、困惑している様子だ。
 マーニの声。
「この3人の持ち物は、門の内側にある」
 若い女性の髪飾り、簪〈かんざし〉のようなものがマーニの足下に落ちている。マーニの眠そうな声が、奇妙によく通る。
「ここはノイリンの商館。私はマーニ。ノイリンの住人だ。
 この商館の敷地内はノイリンと同じ。この敷地に立ち入ったものは、誰であろうとノイリンによって保護される。
 あなたたちは、我々と戦うのか」
 若いがすご味のある男が答える。
「お姉ちゃん。
 ずいぶんと勇ましいが、この俺と早撃ちで勝負したいのか?
 アホだぞ。
 その3人を黙って渡せ。そうすれば見逃してやる」
 城島由加は気付いているはずだが、飛び出してこない。
 たぶん、2階の絶好の位置から狙撃の体制にある。
 我が家では子供に何かあると、父親は取り乱して、母親は冷静に対処する。

 デュランダルが俺を見る。
「マーニは早い」
 その話は聞いたことがある。ノイリン随一の早撃ちは、イサイアス。彼の妻、ネミッサも早い。アンティも早いが、彼は早撃ちよりも遠距離射撃に強い。
 イサイアスを超える早撃ちがチュール。マーニの実兄。4インチ銃身のコルト・パイソンの使い手だ。強力な.357マグナムは使わず、反動が少ない.38スペシャル弾を常用する。
 マーニは、実兄チュールより早いと噂されている。それも圧倒的に。
 イサイアスが愛銃S&W M27.357マグナムを抜ききる前に、マーニは特製4インチ銃身のS&W M36チーフスペシャルを構えるという。

 すご味のある若い男は、大型単発拳銃をベルトのホルスターにかんぬき差ししている。拳銃はこの一帯では標準的なローリングブロックだ。堅牢で動作確実な銃だ。

 マーニの背後にいた俺たちが射線から移動すると、すご味のある若い男が少し焦る。
 当然だ。かわいらしい、少しとぼけた女の子が勝つと、俺たちが思っているから……。
 マーニが勝つはずだから、彼女に任せるのだ。

 俺はマーニの右横にいたが、マーニの手の動きを見切れなかった。
 銃声は1発。すご味のある若い男が仰向けに倒れている。倒れてはいるが動いてもいる。死んではいない。
 すご味のある若い男の仲間4人が、怪物を見るような目でマーニを見詰める。
「連れて帰る。撃つな」
 仲間の発言に、マーニが頷く。

 俺はマーニの拳銃さばきに驚いたが、半田千早やミルシェは「当然だ」とでも言いたげな顔だ。
 オルカやクフラックの銃商カルロッタは、興奮気味。

 商館の食堂。
 ミルシェが右腕に刀傷を負った初老の男を手当てしている。
 何人もが親子らしい女性2人と初老の男を囲んでいる。
 イロナが事情聴取する。
「あなたたちは、どこから来たの?」
 母親ではなく、娘が答える。凛とした声音だ。
「私はサール家の長女キアーラ。母のエルマと母方祖父のファッジ」
 サール家と聞いて、食堂内がざわつく。
 キアーラは食堂に集う面々を見渡す。
「私と母は、嫡男クルエから逃げてきた。
 嫡男は母と血縁ではない。先妻の子。
 サール家は男子が生まれると、誕生直後から父親の元で育てられる。
 父親の薫陶を受け、残忍な男になる。
 女は放置される。そのおかげで、私は母に育てられた。
 祖父は母の実父だが、祖母が母を産んですぐに亡くなっため、母は養女に出された。
 養父母は優しいヒトで、母を実子と変わらずに育ててくれたそうだ。
 実父とも“親戚のおじさん”として、幼少の頃からよく会っていたとか」
 そこで、傷の処置を終えた祖父が話し出す。「まず、娘と孫を預けたい。
 この2人の生命を守れるのは、バルカネルビの女丈夫だけと信じている。
 娘には恋人がいた。いずれは結婚すると、私もこの子の養い親も願っていた。
 娘にサール家のヴィクラムが恋慕した。娘がヴィクラムの申し出を断ると、娘の恋人が姿を消したんだ。
 娘の養父と養母は震え上がったよ。ごく普通の陶器商だったからね。
 娘は養父母と兄と妹を守るため、ヴィクラムに従った。条件は家族に手を出さないことと、使用人を1人連れていくこと。
 その使用人が私だ。私は要人の警護、用心棒のようなことをしていた。過去を隠して、下男として娘とともにサール家に行った。
 ヴィクラムには妻がいたが、数日前に急な病で死んでいた。毒殺だろう。ココワでは、婚姻の解消は死別以外は認められない。
 ヴィクラムは娘をいたぶり、子を2人産ませた。1人がキアーラ、もう1人が三男のナタルだ。
 ナタルは、両目を潰され、両手が使えなくなったヴィクラムを担いで、サール家の正統を主張している。
 嫡男クルエはヴィクラムが家長の役を果たせなくなったとして、代替わりを宣言した。
 サール家は、嫡男クルエと三男ナタルが主導権争いを始めた。
 この間隙を突いて、娘と孫を脱出させた。だが、逃げるとしても逃げ場がない。娘はサール家の直系を産んだ身。誰も庇ってはくれない。
 養父母は頼れない。迷惑がかかるし、代も変わっている。それに、娘と孫を守れるほどの力はない。
 ならば、ヴィクラムを痛めつけた人々に助けを求めてはどうか……、と」

 母親は怯えていた。視点が定まらず、落ち着きがなかった。
 大きく息を吐くと、その姿が一変する。
「お金も、穀物もない。
 でも、それにも勝る情報がある……。
 私は、おおよそだが油田の場所を知っている」
 それは、俺たちにとっては重要な情報ではない。油田を奪うつもりはないし、サール家にかかわるつもりもない。
 こういう対処は、俺の仕事だ。
「我々は、湖水地域の燃料供給源に興味はない」
 エルマは娘以上に凛としている。食堂に入ってきたときの怯えた様子は、芝居か……。
「油田は、川の下流にある……。
 油槽船なら15日から17日ほどの距離。東から流れる大河との合流部のやや南……。
 救世主には知られていないけど、救世主の街は油田から北東に徒歩で20日から30日の距離にある。
 救世主は油田を探している……。
 油田を探して、この地域まで来た……。
 そう遠くない未来、救世主は油田を手に入れ、この地域は燃料を失う……。
 クルエは、救世主と手を組むつもり。それは、ナタルも同じ。クルエはナタルを殺して、救世主と手を組むつもり。
 ナタルはクルエを殺して、救世主と手を組むつもり。
 救世主は、川の下流に関を設けたらしい。油田まで行けなくなってから、10日ほど経つ。あと数週間で、中流にある中間貯蔵施設のタンクは空になる。
 サール家の男は、お金のためなら何でもする。故郷だって平気で裏切る」
 デュランダルが俺の肩に手を置き、この場を離れさせる。
「どう思う?」
 俺はデュランダルの目を見た。
「母親の話か?」
 デュランダルが首を振る。
「いいや、母親自体だ」
 確かに奇妙なほど鋭い人物だ。か細さやひ弱さがない。
「捕らえられ、虐待されてきた女性には見えないな」
 デュランダルが首肯する。
「娘もそうだが、相当に腹が据わっている」
 俺は、祖父と母娘がいるテーブルに戻る。「なぜ、救世主の話をする」
 母親エルマの答えは端的だった。
「救世主はヒトではない」
 それは、俺の認識とは異なる。
「ヒトじゃない?」
 俺の真意を問う言葉に、エルマは明快に答える。
「姿形はヒトだが、心はヒトとは異なる。そして、救世主は私たちを別種だと認識している。
 下等な別の生き物だと……。
 サール家当主ヴィクラムは、ココワを攻めた救世主に取り入ろうとしていた。
 ああいう男は、自分よりも強い相手には、とことん下手に出る。自分の身の安全を図りつつ、金儲けを画策していた。
 救世主は食料も欲していたが、絶対的に必要としていたのは燃料だった。
 彼らに燃料を供給して、一儲け企んだ。
 だが、救世主には代金など払う意思はない。しかし、欲に目がくらんだヴィクラムには、それが見抜けない。
 救世主は巧みに油田の在処を聞き出そうとし、ヴィクラムはそれに答えなければどうにかなると考えた。
 救世主はごく短期間で、原油が川の下流から運ばれてくることに気付く。
 そして、船の行方を追跡し、はるか下流にあることを突き止めたらしい。
 東から流れる大河との合流部のやや北に関を設け、原油の輸送を阻んでいる。
 ヴィクラムは苦しい状況になっていた。
 そこに西のヒトが、燃料を売りにきた。
 私は、商談の様子をうかがっていた。
 年若い女に翻弄されるヴィクラムを見ていて、本当に面白かった。
 ヴィクラムが立腹したことは事実だが、それ以上にマルカラの油田を奪えば窮地を乗り越えられると考えた。これが襲撃の真相」
 俺は、ヴィクラムという男を知らない。
「サール家当主は、湖水地域のヒトと力を合わせて、救世主と戦おうとは思わなかったのか?」
 エルマは当惑を隠さなかった。
「ヴィクラムを含むサール家の男には、このヒトが住む地域のために何かをしようという意識は皆無だ。
 そんなことは、母親の腹を出る前から死んだ後まで考えることはない。
 自分のことしか考えない」
 俺は愚かとは思うが問うてみた。
「ヴィクラムは、善人か、悪人か?」
 エルマの答えは明快だった。
「悪人でも、善人でもない。
 自己中心的なだけ。
 自分の欲望に忠実なだけ。
 精神は獣と大差ない。
 それは、嫡男クルエも、次男アッルも、三男ナタルも、同じ……。
 ヒトの言葉を話す獣だ」
 三男ナタルはエルマの実子。実子に対する評価としては、獣呼ばわりはかなり強烈だ。
 エルマの実父ファッジが娘の発言を制止する。
「これ以上は、私から……。
 クルエとナタルは……、と言うよりもサール家の男は権力に興味がない。興味があるのは金だけ。金さえあれば、何でもできると考えている。
 そして、誰もが同じだと……。
 私はもともとココワとは無関係だ。私の父は、北からやって来た旅人だった。
 燃料が切れる直前で、この一帯にたどり着いた。川に沿ってさらに南に向かったが、ひどい暴風に阻まれて、それ以上の南進はできなかった。
 北に戻り、ここに住み着いた。
 この一帯のヒトの多くは、ヒトではない動物に東から連れてこられた。
 数百年前のことらしい。
 私の父と時期は異なるが、北からやって来た多くのヒトがいた。
 父もそうだが北からの移住者は、高い山脈を越えた、と伝えられている。
 バレル家と支家は、東からのヒトだ。
 北からの移住者は南に住み着いた。現在、南部と呼ばれている一帯だ。
 父も南部に住んだ。
 私は妻が中部にいたので、結婚後中部に移った。
 南部は、東部、中部、西部とはいろいろな点で異なる。
 救世主のことは、父から聞いていた。
 生き物としてはヒトなのだろうが、ヒトではない。
 救世主は、ヒトよりもずっとオークに近い。オークの強い影響によって、ヒトから離れたのだろう」
 デュランダルが俺を見る。
「オーク……、白魔族だ!」
 食堂内が一気にざわつく。
 早朝から現場に出張っていた片倉幸子もいる。
 仕事のあるヒトも、忙しいヒトも、緊急の用事のあるヒトも、白魔族と聞いて、口を真一文字にして、ファッジの次の言葉を待った。
「あなたたちも、オークを知っているのか?」
 俺はどう答えるか、迷った。フルギアは過去、白魔族を神の使徒として崇めていたし、中央平原では道具をもたらす神的な存在とされていた。
 ヴルマンや北方人、異教徒、精霊族、鬼神族は、この異種と激しく戦った。
 俺は事実を告げる。
「ヒトを食う、我々の敵だ」
 ファッジが少しの間、瞑目する。
「この一帯は、オークに知られている。北からの移住者はオークと呼ぶが、東からの移住者の子孫は創造主と呼ぶ。
 あなたたちは、白魔族と呼ぶのか?」
 その場の多くが頷く。
 ファッジは、その様子をよく見る。
「そうか、白魔族と呼ぶのか。
 ヒトはウシやブタを食う。シカやウサギも……。だから、ヒトを食うオークをおぞましい生き物とは思わない。
 だからといって、あの生き物を受け入れるつもりはない。
 オークはヒトとは完全に異なる。
 しかし、ヒトに似ている点もある。
 例えば、道具を使う……。
 道具の使い方は、ヒトが教えたらしい。
 オークの道具は、すべてヒト由来なんだ。
 オークが何かを欲すれば、この一帯を攻めるだろう。
 オークから強い影響を受け、ヒトでありながらヒトならざるものとなった救世主は、まもなく大挙して攻めてくる。
 南部の人々は、オークを恐れている。また、オークの動向を注意している。
 だが、救世主には無防備だった。
 西のヒトの助力がないと、この一帯は救世主に蹂躙される。
 ……が、その前に油を断たれて日干しだ」

 俺は名乗ることにした。
「私はノイリンの半田。彼はコーカレイのデュランダル。
 ともに西ユーラシアのノイリンという街では、一定の発言ができる。
 この一帯、我々は湖水地域と呼んでいるが、我々にとっては食料の供給地として重要なんだ。
 救世主に蹂躙されてもらっては困る」
 デュランダルが締める。
「少し、休んで欲しい。
 明日、また話し合おう」

 俺にも、デュランダルにも、バルカネルビでの時間はなかった。デュランダルは2日後、俺は3日後には空路で戻らなくてはならない。
 城島由加はバマコにいる。彼女はスカイバンⅡシェルパ改造のガンシップという“自家用機”で、数日後にはバンジェル島に戻る。
 シェルパは評価の高い輸送機で、販売好調のため増産を計画している。
 皮肉なことに車輌販売に苦戦する“車輌班”の稼ぎ頭だ。
 西ユーラシアの街間の輸送、西アフリカの沿岸部と内陸部を結ぶ輸送に大量に投入されている。

 俺は、救世主とは戦えない、と考えていた。
 理由は、ノイリンには戦闘機がない。
 救世主が持っている戦闘機を、ノイリンは持っていない。
 クフラックやカラバッシュにも余裕はない。しかも、ライン川の東では、黒魔族の動きが活発化している。黒魔族との戦いでは、ソーヌ・ローヌ川沿岸諸街が最前線になる。
 これらの街は大急ぎで、銃を作り、弾を備蓄し、剣を研いでいる。
 北アフリカの白魔族を攻めている現在、黒魔族がさらなる動きを見せれば、カンガブルやシェプニノにも余裕はなくなる。
 救世主との戦いは、ノイリンと赤道以北アフリカの人々でどうにかしなければならない。
 戦闘機なしで、どうやって戦えばいいのだ……?

 ファッジたちを保護したその夜、リュードたち移動医療班が急遽、南部から戻ってきた。
 彼らが商館の食堂に飛び込んでくる。
 リュードは、慌てていた。
「南部のヒトたちの話では、救世主が川に沿って向かっている!
 トンブクトゥまで300キロに迫っている……。
 南部のヒトたちは戦うつもりだ。
 彼らにはろくな武器がない!」

 翌日、リュードは、バルカネルビの商人組合の事務所に向かった。
 湖水地域は南部を除いて、明確な統治の仕組みがないのだが、南部には街ごとに行政の長がおり、街や村をまとめる広域の行政機構がある。警察に相当する法執行機関、裁判所に近似の司法機関も存在する。曖昧だが、法執行機関と司法機関の区別もある。
 概略では、西ユーラシアに似ている。
 南部との接触は医療班だけで、我々との深いつながりはなかった。
 しかし、西部、中部、東部には、広域の統治機構がない。東部は一部の街に行政機構があるが、街単位らしい。西部や中部の行政は“街の実力者”があたっている状態だ。
 だから、重要な事柄を話し合う明確な相手がいない。

 リュードが戻ってきた。
「ダメだ。無反応だ」
 食堂の面々の動きが止まる。リュードが発した言葉の意味を解せないのだ。
 誰かが「どういうこと? 救世主が攻めてくるんだぞ!」と言った。
 ララの「300キロなら、戦闘機の行動圏内だ」との発言に、クフラックのブロンコ双発攻撃機のパイロットが「先制攻撃だ!」と先走る。
 俺はミルシェを目で探す。
「ミルシェ、救世主は300キロ手前で何をしているんだ?」
 ミルシェが首を横に振る。
「わからない。
 南部は何かをつかんでいるかもしれないけど……。
 南部は、300キロ下流右岸にヴァルト城、左岸にヒルシュ城という灯台兼砦を持っている。
 救世主は、ニジェール川左岸を進撃している。
 もしかすると、ヒルシュ城で侵攻を阻止しているのかも……」
 城と言ってもいろいろだ。山城、平城、石造、木造、城壁の有無、濠の有無。南部の城がどのようなものか皆目見当が付かない。
それは、ミルシェも同じだった。
「チハヤたちがマルカラから戻ってきたら、偵察隊を編制して……」
 城島由加はバンジェル島に、フィー・ニュンはノイリンに戻っている。
 誰もがイロナを見た。
「強力な偵察隊を編制しましょう」

 バルカネルビには、クマンのグスタフであるディラリが残っており、指揮下には部隊もあった。
 だが、バマコ以東の西ユーラシアと西アフリカの全部隊をかき集めても、1個大隊には達しない。

 翌早朝、ノイリン北地区の武装輸送船が単独航行で、バンジェル島に入港した。
 この船には、車輌班と機械班から選抜された戦車隊員と、戦車5輌が搭載されていた。
 金沢壮一はコーカレイまで同行したが、ここで軽対空自走砲4輌と105ミリ主砲戦車1輌が、ベルタによって“接収”されていた。
 金沢壮一は、車輌の操作説明のため、ベルタが強引に足止めした。
 結果、半数が西アフリカに送られた。4輌は装甲牽引車の車台を利用した対空自走砲で、M61バルカン砲をベースに弾道コンピューターと追尾レーダーを装備し、初歩的なFCS(射撃統制システム)を構成している。
 捜索レーダーがないので、これはヒトによる“見張り”に頼ったが、追尾レーダーを指向すれば自動的に未来位置に20ミリ機関砲弾を毎分1000から3000発ばらまくことができた。弾種には航空機に対して効果が大きい曳光自爆榴弾(HEIT-SD)を使用した。
 近接防空に非常に有効な自走車輌だ。砲塔は、正方形に近い背の高い密閉式だ。

 1輌は、105ミリ主砲装備揺動砲塔搭載の新型戦車だ。

 この時期、大西洋ではセロの飛行船の行動が活発で、密度の濃い洋上哨戒を行っていた。爆弾以外にロケット弾の投射も行うようになり、水上船の単独行動は危険だった。
 この状況で、ロワール川河口を発したノイリン北地区輸送船は、緊急輸送のため、単独による強行突破を行った。
 バルカネルビの防空強化が必要だったからだ。
 この船にはセロの飛行船に対抗するための野戦高射砲が4門も積まれていた。
 これらの対空装備は、セロの飛行船の隻数が増加していることに対する処置だ。

 バンジェル島では、初見参の須崎金吾が何者なのか話題になっていた。
 彼が城島由加を「ママ」と呼んだからだ。この呼称は略されており、正確には「ケンちゃんのママ」だ。
 健太はすでに12歳。もう「ケンちゃんのママ」と呼ぶには成長しているが、須崎金吾にとっては「ショウくんのママ」ではない。
 イサイアスは城島由加を「お袋さん」と呼ぶが、どう呼ぼうが我が家の最高指揮官は城島由加だ。
 俺じゃぁない。
 コーカレイでは、ベルタが部隊指揮官であった金沢壮一を引き留めたが、彼だけではなかった。
 水口珠月も拉致同然に船から降ろされている。
 新型の対空自走砲は、車体は車輌班、機関砲は機械班、初歩的なFCS(射撃統制装置)は銃器班が開発した。
 この兵器は現状に合致した画期的なもので、セロとの戦いの最前線にあるコーカレイは絶対的に必要なもの、と判断した。
 ベルタの判断は、西アフリカには須崎金吾が行けばいい、だった。
 実際、そう言った。須崎金吾と水口珠月は西アフリカまでの船旅を楽しむつもりだった。
 ベルタは、それを“妨害”した。2人の翔太と同い年の子は、ルサリィが預かってくれていた。

 須崎金吾はバンジェル島到着まで、安易に考えていた。
 セロは南に封じ込め、白魔族は湖水地域に現れていない。
 情勢は安定していると……。
 しかし、違った。バンジェル島の司令部は慌ただしく、救世主の動向に細心の注意を向けている。
 石造り平屋の司令部内会議室で、須崎金吾は当惑している。ヒトの勢力はもちろん、精霊族や鬼神族の代表も集まっている。
 バルカネルビから戻ったばかりのクマンの情報将校が報告する。
「救世主と自称するヒトの集団は、バルカネルビの商館の分析によれば、石油を求めて2000キロを進んできたとのこと。
 長旅の目的は、石油を、油田を奪うことだと。
 それと、救世主には“選民思想”なるものがあるらしい。
 手長族にも似た考えで、手長族同様、厄介な相手かもしれない。自分たち以外のヒトを見下す。手長族はヒトをただ殺すが、救世主は奴隷として働かせる。
 クマンには、忌まわしい伝説がある。この地にたどり着く前、ヒトを食うヒトに似た生き物に出会った……と。
 救世主は、その生き物の奴隷だったらしい。彼らはヒトを食うヒトに似た生き物を創造主と呼んでいる」
 資料に目を落としていた城島由加が顔を上げる。
「クマンの伝説にある“ヒトを食うヒトに似た生き物”とは、西ユーラシアで“ヒト食い”とか“噛み付き”と呼ばれている動物のこと。
 赤道以北アフリカ内陸で創造主と呼ばれている生き物とは異なる。
 白魔族は、もっとおぞましい動物だ。ヒトのように道具を使い、ヒトのように服を着るが、ヒトの子供を料理して食べる。
 ヒト食いは、猛獣のようにヒトを襲うだけ……。2つの動物は決定的に違う。
 ヒト食いとの戦いは避けられるが、白魔族とは絶対に避けられない。避けてはいけない。
 創造主の影響が強い救世主に食人の風習はあるの?」
 情報将校は、嫌な汗をかいていた。ヒトがヒトを食うなど、考えたことさえない。
「それは……、まったくわからない……」
 精霊族の“リロの勇者”が会議に集う面々を見渡す。彼はララとホティアの救出後、バンジェル島に移動し、留まっていた。
「共食いの現象は、いろいろな動物で起こる。過酷な環境では、我らのような種でもあり得ない、と断言はできない。
 だが、伝聞を信じるならば、そのような状況ではなかろう。
 ヒト族は霊力なるものを信じる。霊力を受け継ぐために、英雄の心臓を食らう、という噂を聞いたことがある。
 だが、私は実際に、そのような事例に接したことも、伝聞以上の具体的な話を聞いたこともない。
 そういうことはあったかもしれないが、例外的で異常な行為だったのだろう」
 元首パウラが“リロの勇者”を見る。
「精霊族のお方。
 私が知る限り、ヒトがヒトを食べるなど、聞いたことがありません」
 城島由加は、ヒトの食人風習、食人事件について触れるつもりはなかった。200万年前の出来事を持ち出しても、意味はないからだ。
「半田隼人によれば……。
 白魔族は、ヒトを動物性タンパク源、つまり食料と考えている。
 ただの食料ではなく、高位の階級にのみ与えられる特別な食べ物だ。下位の個体でも、報償として与えられることがある。
 食料とされるヒトは、12歳まで。乳児や幼児が犠牲になることがある。例外ではなく、多いらしい。
 西ユーラシアでは、ヒト、精霊族、鬼神族の幼い生命が白魔族の犠牲になっていた。
 白魔族は本来、ヒトを強制的に働かせることはなかった。
 ヒトの奴隷化は、黒魔族を真似たものと推測されている。ヒトを奴隷とし、ヒトの乳幼児を食べる白魔族は、明確にヒトの敵だ」
 城島由加を“リロの勇者”が見る。
「我らにとっても敵!」
 鬼神族の代表も発言。
「我らも敵と認識している!」
 城島由加は、救世主をどう判断するか迷っていた。
「救世主は白魔族と対立しているとの情報があるが、我々の“対立”とは違うようだ。
 救世主は彼らが創造主と呼ぶ白魔族を倒して、その地位に就こうとしている。
 救世主は、湖水地域から多くのヒトを連れ去っている。
 その目的ははっきりしないが、捕虜にした救世主の貴族によれば奴隷にするためだ。創造主によって拉致された、金羊や銀羊と同じような位置付けと推測している。
 救世主が湖水地域に侵攻した理由は、燃料、食料、労働力の確保……。
 放置しておけば、救世主はやがて大西洋沿岸に到達する」
 元首パウラの参与が呟く。
「悪夢だ……」
 城島由加が須崎金吾を見る。
「いま、できることをやりましょう。
 金吾くん、行って。
 バルカネルビに。
 ちーちゃんが待っている。
 あそこには、ララの戦闘機とプカラの偵察型と攻撃型が各1機、クフラックのブロンコが2機……。
 もし、救世主の戦闘機に襲われたらララだけじゃどうにもならない」
 元首パウラは須崎金吾を見ている。屈強な戦士には見えない。凡庸な風貌をしている。特別な能力があるようには思えない。
 西ユーラシアにおいて戦女神と呼ばれる城島由加が、半田千早やララ、あるいはイロナよりも彼を頼りにする理由がわからない。
 須崎金吾が周囲を見る。
「西アフリカへの船旅は、楽しみにしていたけど……。しかし、内陸に向かうとは……。
 何もかも想定外……。
 まぁ、ちーちゃんのためなら、いいかぁ……」
 元首パウラは須崎金吾の覇気のない発言に落胆した。彼が親友である半田千早の助けになるとは、思えなかった。
 彼女は参与に耳打ちする。
「気の利くものを同行させて」

 須崎金吾の部隊は、小規模だ。105ミリ主砲戦車1輌、20ミリ6銃身ガトリング砲対空戦車4輌、20ミリ機関砲戦闘車2輌、76.2ミリ主砲軽戦車2輌、補給物資輸送用牽引車6輌の計15輌。
 歩兵の随伴はない予定だったが、クマンが騎兵12の同行を強硬に主張した。

 須崎金吾の隊がバマコに到着した日、サール家嫡男クルエが、三男ナタルと父親ヴィクラムを殺害したとの情報がバルカネルビに届く。
 情報源はココワの商人エリシュカ。
 サール家の当主となったクルエは、救世主と交渉するが、捕らえられ、過酷な拷問を受けていると……。
 油田の在処は早晩、救世主に知られる……。
 バレル家からサール家に渡った油田は、ニジェール川河口から400キロ付近にある、と推定している。ベヌエ川との合流部よりも南の右岸にある。サール家からの“亡命者”の証言とも合致する。
 中間貯蔵施設と製油所は、カインジ湖の右岸(西側)。
 どちらも、救世主の手中に入ったと解釈すべきだ。

 赤道以北アフリカは、風雲急を告げていた。
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