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第2章
第四三話 ヴィレ
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グリム旅団の旅団長セストは、食料と燃料の深刻な不足が、彼の部隊を解体に導くことを悟っていた。武器弾薬の欠乏も甚だしい。
まだ集団脱走は起きていないが、時間の問題であることをよく理解している。
総兵力二〇〇の大軍。規律を有するよく訓練された部下たち。豊富な実戦経験。強力な戦闘車輌。
本来ならば、無敵だ。
しかし、現実はそうではない。
車輌は二〇輌。燃料、食料、武器弾薬を運ぶ輸送車は一〇輌。
九〇ミリ砲搭載の装輪装甲車六輌、装甲兵員輸送車四輌。
これらを動かすには膨大な燃料が必要だが、その確保は現状では不可能に近い。
大きなテントには、旅団長セスト、副長イーヴォ、参謀のミルコがいた。
三人は不正確な地図を広げた簡易な折りたたみテーブルを囲んでいる。
セストが二人に言う。
「兵員輸送車を捨てる」
イーヴォとミルコは黙っている。そうしたくはないが、そうしなければ数日で立ち往生となるからだ。
彼らは数か月前、ライン川西岸の村を襲った。村人は抵抗せず、一切の要求を受け入れて、食料と燃料を差し出した。食料も燃料も、どちらもわずかな量しかなかった。
セストは村内の家捜しを命じる。
そして、一〇輌の装甲車を見つける。
村人は、装甲車を動かすだけの燃料を持っていなかったが、旅団にはあった。
村に一週間居座り、暴虐の限りをつくし、その間に装甲車を動くように整備する。
結果、それが命取りになる。
三〇〇キロ南西に移動して、そこで燃料切れ寸前になったのだ。
副長イーヴォが言う。
「大飯食らいの砲塔付きを捨てましょう」
参謀のミルコが反対する。
「砲塔付きで村に乗り込めば、確実に制圧できます。
捨てるのは砲塔なしの四輌にしましょう」
旅団長セストにも名案があるわけではなかった。
「川は、北から南に流れている。
普通、南から北に流れる。
これが、例の川だと思う。
川に沿って、南か北に行けば、村か街があるだろう。
例の〝種から燃料を作る種族〟の村が見つかるかもしれない。
そこを襲う。
見つけられなくても、村を襲えば、その種族の住処がわかるだろう。
燃料と食糧を確保したら、この川の一帯を制圧する。
川に沿って北と南に斥候を送る。
北はイーヴォ、南はミルコが指揮しろ」
二人はセストの命令に頷いた。
イーヴォが問う。
「閣下、捕虜はどうします」
「ここまで来れば用済みだ。
全員殺せ。一人も生かしておくな」
「女もですか?」
「そうだ。
女も殺せ。
村を見つければ、新しい女が手に入る。
食料が惜しい。
弾が惜しい。剣で殺せ。
すぐにやれ」
捕虜の男たちは、キャンプからだいぶ離れた草原に大きな穴を掘らされた。
そこに女たちも連れてこられる。
男と女は死期を悟っていた。彼らは抱き合って震えた。すでに抵抗する気力は失っている。死が安息であると信じている。
そして淡々と殺戮が始まった。
その穴に二〇人以上が投げ込まれた。男も女も、若者ばかりだった。
その日の夕方、三人は同じテントにいた。
イーヴォが報告する。
「北にはヒトは住んでいないようです。
黒魔族の集団を見ました。かなりの大群です」
セストは聞きたくない報告に接し、不愉快な顔をする。
そして、ミルコに顔を向けて促す。
「南二〇キロの西岸に街があります。城壁に囲まれていますが、濠はありません。
九〇ミリで城門を破壊すれば、簡単に突破できます。
さらに五〇キロ南の東岸に大きな街がありました。川の水を引いた二重の環濠に守られています。
攻めるのは厄介かもしれません。
街の北側入口の橋に戦車が二輌」
「戦車?」
「えぇ、長砲身の砲を搭載した本物の戦車です」
「城壁に守られた街に戦車は?」
「見ませんでした。
それに、ウマやロバが引く荷車しか見てません。
動力付きの車輌はまったく……。
あの様子では、戦車なんてないでしょう」
セストは不安だった。燃料の枯渇は間近、食料の備蓄はほとんどなく、弾薬は一交戦分がやっと。
「その街の人数は?」
「千か二千か、もう少し多いかもしれません」
「他に村は?」
「見ませんでした。
この地方は、小さな村がないのか、少ないのか……。
東とは、ずいぶん違います」
セストは瞬間考えたが、決断しなければ立ち往生する。
「その城郭の街を襲う。
砲塔なしはここに捨てていく。
車輌の渡河準備に入れ」
イーヴォとミルコは、敬礼をしてテントを出た。
グリム旅団の将兵にとって、渡河は最も危険で困難な任務だ。
だが、何度も経験している。
森で木を切り倒し、川岸まで運んで長さを整え、筏を作る。
その筏に載せて、一輌ずつ川を渡す。一六輌の渡河に丸一日を費やした。セストは、渡河の前に捕虜を殺したことを後悔していた。渡河作業は危険を伴う。危険な作業には、死んでもいい人間を使うことが、彼のやり方だった。
セストは双眼鏡越しに城壁に囲まれた街を見ている。
街は小高い丘の上にあり、外周一二キロでほぼ真円の石の壁に囲まれていて、北に鋼鉄製の城門がある。報告では、南にも城門がある。
出入りしているのは、ウマやロバが牽く荷車だけで、動力付きの車輌はない。
街の周囲は広大な麦畑で、その麦畑の外周は湿地になっている。
湿地を抜け、広大な麦畑を通り、城門に近付くまでに必ず発見される。
遮蔽物は一切ない。
この街が対戦車砲を持っていたら、確実に狙い撃ちされてしまう。
だが、城壁外には砲座や陣地らしき構造物はなく、トーチカや塹壕も視認できない。
無防備な街のようにも思えたし、逆に巧妙な防衛策を採っている可能性もある。
それを調べる方法は二つ。
城内偵察のための斥候を送ることと、街人を捕まえて情報を採ること。
セストはそのどちらも実行することにした。
残り少ないフルギア銀貨を集めて、四輪の小型トラックで食料の買い付けに向かわせる。
それをイーヴォが指揮する。
ミルコには、誰にも発見されないように、麦畑で住人を捕らえるよう命じた。
イーヴォは荷の一部を降ろし、行商人を装って、城壁の北側に近付いた。
北城門には見張りがいた。薄茶と濃い緑の迷彩服を着ているが、軍人ではなく無頼の輩に感じる。
「東から来た商人なんだが、食料を分けてもらえないかね?
それと、ちょっとだけ商売させてもらいたいのだが……」
三〇をだいぶ過ぎたイーヴォは、気のよさそうな商人を演じた。同行している彼の部下一人は、そんな演技をできるような男じゃない。黙して、顔を伏せている。
「売り物は何だ?」
「銃と弾なんだが……」
「銃も弾も必要ない。
帰れ……。
売るための食い物もない」
「こんな大きな街なのに、食料を売ってもらえないのか?
あんたは必要ないだろうが、街の人たちは弾はいるだろう?」
「この街は、メルキオ・オスモが仕切っている。
必要か、不要か、それはオスモが決める。
売るか、売らないか、もだ」
イーヴォは、自分たちに勝るまがまがしい雰囲気を感じた。
だが、それを不利とは感じなかった、この街を支配している連中が自分たちと等質の人間ならば、交渉はしやすい。
力を見せつければ、簡単に落ちる。
「すまなかったね。
また来るよ」
イーヴォは、城門から離れた。城門内を垣間見たし、娼婦宿と飯屋はあった。それだけ確認すれば十分だ。
ミルコは街人一人を捕らえるのに、かなり手間取り、日没の少し手前で、ようやく二〇歳くらいの男を捕虜にした。
セストがテントの中で捕虜を尋問する。イーヴォとミルコもいる。
捕虜は怯えていて、どんな質問にも何も考えずに答えそうだ。
「街の住人か?」
「そ……うです」
「名前は?」
「グイド……」
「仕事は?」
「オスモ家の庭師」
「オスモとは?」
「街長……」
「どんな街長だ?」
「どんな……」
グイドは考えたが、街長としてすばらしい人物だとは到底思えない男だ。
小作人が病に倒れ、作物の収穫量が減れば、容赦なく妻子を捕らえて、盗賊や故買屋相手の娼婦宿に送るような男だ。
街の娼婦宿には、街の商人や農民は近付かない。客はオスモの手下か商売相手と決まっている。
グイドは嘘を言った。自分でも信じられないほど、滑らかに嘘が口から出る。
「街を守ってくれる、すばらしい街長です」
「街には何人いる?」
グイドは考えた。本当のことを言うよりも、嘘のほうがいい。それに、グイドは街の正確な人口なんて知らなかった。
「五〇〇〇人くらい」
イーヴォとミルコが顔を見合わせる。
「五〇〇〇か?」
セストの再度の問いに、グイドはどう答えるべきか考えた。
「もう少し多いかもしれません」
「街の名は?」
「ヴィレ……」
「ヴィレは、五〇〇〇人の街か?」
「そうです」
「軍隊は?」
「オスモ家が守ってくれます」
「オスモの兵力は?」
「わかりませんが、二〇〇人くらいだと思います」
実際は一〇〇人ほどだと、グイドは知っていた。料理係が、よく一〇〇人分を作っていると言っていたから。
「〝種から燃料を作る種族〟のことを知っているか?」
「会ったことはありませんが、ノイリンにいると聞いたことがあります」
「その街はどこにある」
「詳しくは知りませんが、南から北に流れる川の東岸にあります。
もっと西です」
「その街は大きいのか?」
「ヴィレよりは小さいと思います」
セストには十分な情報だった。この地にやって来た理由は、〝種から燃料を作る種族〟を捕らえるためだ。
そして、その魔法を使う連中が実在し、しかも近くにいることがわかった。
「ヴィレに砲はあるか?」
「ホウ?」
「大砲だ」
「ありません。銃はたくさんあります」
銃の数は少ない。街人は自作農を除いて、ほとんど持っていない。ごく少数の小作人が隠しているだろうが、多くはない。
自作農は六家族しかいない。
銃のほぼすべては、オスモ一族が押さえている。
オスモは定期的に小作農の銃狩りを行っていて、よほど巧妙でないと隠し通せない。
グイド自身、銃を触ったことがなかった。オスモから畑を借りている小作農だったが、自分が病に倒れ耕作ができなくなり、小作料の方に妻と娘を奪われた。
妻はオスモの部下の妾にされ、娘はまだ一五なのに娼婦宿で働かされている。
この盗賊らしい連中がオスモを殺すならば、味方をしてもいいとさえ感じ始めていた。
だが、この盗賊が街を仕切るようになれば、さらなる厄災となることも察している。
この盗賊とオスモが戦い、共倒れになればいいと思っていた。
だが、同時にそんな策略を自分が手はずできるとも考えていない。
流れに任す外ない。
セストが言った。
「この男は、まだ役に立つかもしれない。
縛っておけ。
そのノイリンとか言う街の〝種から燃料を作る種族〟のことをもっと知りたい」
セストは〝種から燃料を作る種族〟を捕らえれば、現在の状況を劇的に転換できると考えていた。
どうやって種から燃料を作るのかはわからないが、そんな魔法を知っているのならば、その連中を独占したいと考えていた。
そして、この一帯を支配するつもりだ。
セストは主な部下を集めた。
「南と北から同時に攻める。
北は陽動で、南が主攻。
北はイーヴォ、南はミルコ。
イーヴォが北から攻めて街の主力を十分に引きつけてから、ミルコが城門を破って一気に城内に攻め込む」
作戦はミルコが立案した。城内の戦力は不明だが、多くはない。訓練されていない農民や商店主が城壁の中にいるだけだ。簡単に落とせる。
オスモという街長次第だが、いままでの経験では戦慣れした街や村の指導者なんていなかった。
ヒトの集落は小さく、最大でも一〇〇人程度だ。それを超えると、食糧の確保が難しくなるから……。
ドラキュロの襲撃から逃れるためにも、少人数のほうが都合がいい。ドラキュロは、何も破壊しない。見つからずに、通り過ぎてくれれば、明日からはいつも通りに暮らせる。
ライン川以東の人々の暮らしとは、そういうものだ。
セストは、ソーヌ川、ローヌ川、ロワール川周辺に住む人々も大差ないと考えていた。
この一帯の街は規模が大きく、戦車を保有する街まであることは意外だったが、所詮は素人軍隊だ。本物の戦闘を知っている自分たちとは違う。
ヴィレの制圧は、この一帯の支配への第一歩だ。これが上手くいけば、グリム旅団を恐れて抵抗などしない。
するはずがない。
セストはそう信じていた。
北城門には、EE‐9カスカベル六輪装甲車二輌と歩兵五〇で攻撃を開始する。
カスカベルのコッカリル九〇ミリ低圧砲は、ヴィレの城壁を簡単に撃ち抜いた。
あえて城門は狙わなかった。修理が大変だからだ。城壁なら、崩した石を積み直せばいい。
オスモは、いきなり砲撃を仕掛けてくる盗賊がいることは想定していなかった。
そもそも、この一帯のヒトの盗賊とは、昵懇の間柄だ。
連中が奪ってきたものを喜んで買っていたし、盗賊に〝注文〟することだってある。それに、盗賊たちが喜ぶような街にしていた。酒と女は十分に用意してある。
ヴィレの内側城壁は、石を積み上げた中世的な外側城壁とは異なり、厚さ一・五メートルの鉄筋コンクリート製だ。内側城壁の高さは二〇メートルもある。手がかりは一切なく、ドラキュロは絶対に登れない。
外側城壁と内側城壁の間は麦畑だ。一〇〇年ほど前から収量増加を目論んで、城外にも麦畑を広げているが、街人の食料だけならば、外側と内側の城壁の間にある耕作地だけでも十分な収穫がある。
セストが予想していた通り、城内からの反撃は小銃に限られていた。
それも、密度の粗い銃撃で、ウマに乗った盗賊なら追い払えるだろうが、装甲車で攻められては防御のしようがない。
ドラキュロに囲まれたときに籠城するための城壁であって、対人戦闘用ではない。
三〇分ほど北から攻撃していると、南側からも砲声が聞こえた。
ミルコは作戦通りに、北からの攻撃三〇分後に南の城門を砲撃で破壊し、城内に一気に雪崩れ込む。
だが、そこは一面の麦畑で、建物等は一切なく、彼方に別の城壁が見える。
内側城壁北門は開け放たれていたが、自作農数人が指揮して閉めさせた。
オスモの兵力のほとんどは外側城壁北門に張り付いていて、内側城壁の内部には少数しかいないはずだ。
襲撃と同時に内側城壁の東と西、そして南門はすぐに閉じたが、北門はオスモの手下が出入りするので開けられていた。
メルキオ・オスモは城内中心部にいるが、彼の部下は一〇人ほどしか残っていないはずだ。
襲撃が始まってから、外側城壁北門に向かうオスモの手下の人数を何人かが数えていた。
それと、外側城壁北門にいた店主や娼婦宿の女の子のかなりが、内側城壁内に逃げ込んだ。
盗賊の襲撃は希にあったし、ドラキュロに侵入されたこともあるから、街人はこういったことに慣れていた。
麦畑には〝シェルター〟があり、そこに立て籠もれば空腹と渇きに耐えられる間は生きていられる。
南城門を破壊したミルコの隊は、外側城壁に沿って北上。北城門に張り付いていたオスモの手下は孤立し、降伏する。
彼の二人の息子も捕虜となった。
セストは想定外の事態に、内心ではかなり動揺していた。
北城門を突破したら旅人相手の売店と娼婦宿が数軒あるだけで、それ以外は麦畑しかなく、さらに内側に外側よりも堅固な城壁が遠望できた。
グリム旅団本体は、北城門の内側直近に集結し、そこから動いていない。
破壊した南城門には、カスカベル四輌と歩兵一個分隊が陣取っている。
イーヴォが報告する。
「捕虜の中に街長の息子が二人いました。
使えると思います」
「二人とも連れてこい」
街長の息子二人は、堂々としていた。ヴィレの街において、メルキオ・オスモは神に等しい権力を持つ。
オスモ家代々当主がそれだけの権力を持っていたのではない。メルキオ・オスモが一代で、多くの自作農を破産させ、ヴィレの完全な実権を握ったのだ。
二人の息子は神の子である。
怯えたことなど、生涯一度もないし、これからもあり得ない。
薄汚れた粗末な服を着る〝旅団長〟と呼ばれる男には、一切の恐怖を感じていない。
セストは何かの台座であった石組みに腰掛け、二人の若者を見た。
「どっちが兄だ」
「俺だ!」
「ノイリンという街に行ったことはあるか?」
兄は激しく動揺した。
ヴィレではなく、ノイリンについての質問だったからだ。
「そこに〝種から燃料を作る種族〟はいるのか?」
「ハンダという小男がリーダーだ」
兄は、あえて〝小男〟という言葉を使った。セストも小柄だからだ。間接的に侮辱したつもりだった。
「ハンダ、か。
ノイリンはどんな街だ?」
「何もない。
粗末な家が何軒かあるだけだ」
「何人くらい住んでいる?」
「わからないが、ヴィレよりはずっと少ないと思う」
セストは立ち上がり、ミルコに歩み寄る。
ミルコが身構える。セストは腰の軽い男だが、彼ほど厳格で冷酷な男はいない。
「ノイリンの正確な場所を調べて、おまえが行け。
上手く騙して、ノイリンの主力をおびき出すんだ。
主力を叩いてしまえば、どうにでもなる」
ミルコはその場を立ち去り、ノイリン行きの画策を始める。
セストがイーヴォを呼ぶ。
「弟に要求を伝えさせろ」
「捕虜はどうします?」
「娼婦や商人は生かしておけ。
戦闘員は処刑しろ」
「寝返りを言い出している捕虜がいますが……」
「そいつから処刑だ」
「弾薬ですが、鹵獲量は多くありません」
「そうか……。
食料は?」
「十分すぎるほど手に入れました」
「隊員には、たっぷり食わせてやれ」
捕虜を城壁の前に立たせ、銃殺が始まる。捕虜となったオスモの手下が騒ぎ出すが、暴れればその場で撃ち殺された。
この様子を見ているオスモの息子兄弟は、ようやく恐怖を感じ始める。
イーヴォは、オスモの息子を内側城壁まで連行する。
城門は東西南北にあり、北側城門は車輌の相互通行が容易にできる大門だが、東西と南は荷車一台分の幅しかない小門だ。
イーヴォは何度も呼びかけたが、城門は開かなかった。
やむなく、息子に要求を口頭で伝えさせた。大門ののぞき窓にヒトがいることは、わかっている。
ヴィレの自作農ライノは、左手の手首から先を失っていた。森で倒れているところを、ヴィレの自作農であった老夫婦に助けられた。
老夫婦には息子が一人いた。
だが、畑仕事に行ったある日、戻ってこなかった。老夫婦は、息子がオスモに殺されたと確信していた。
証拠はない。
だが、自作農潰しに躍起となっていたオスモが息子を殺したのだと、考えていた。
息子の身体の在処を探すより、息子の妻と孫の生命を守ることが優先する。
老夫婦は蓄えのすべてをかき集め、息子の妻と孫をカンガブルに送る。カンガブルならば、オスモ一族の影響が及ばないからだ。
それから十数年後、オスモと争わない決断をした老夫婦は、森の中で左手首を食いちぎられた若い男を見つける。
それからさらに一〇年。
老夫婦は他界し、その資産のすべてを血縁のない男が引き継いだ。
彼は資産の譲渡を受ける条件として、老夫婦から「息子の仇を討って欲しい」と伝えられていた。
老夫婦は、助けた男が〝戦士〟であることに気付いていた。
そして、そのチャンスが訪れた。
ライノは、内側城壁北門にいた。
ここを守るオスモの兵は三人しかいない。
オスモは外壁防衛に兵のほとんどを差し向けてしまい、内壁内側は完全に手薄となっていた。
オスモの息子が開門を求めているが、「開けるな」と主張する街人の中で、うかつな行動をすると、オスモの手下であっても殺されかねない。
オスモの兵は三人。集まった街人は数百。外の敵よりも内の敵のほうが恐ろしい。
息子がグリム旅団の要求を伝える。
「親父!
小麦と干肉、その他食料!
若い女一〇人、子供二〇人。
それを渡せば、立ち去るそうだ!
すぐに用意してくれ!」
その伝言をオスモの兵一人が伝えに行く。
オスモの兵は、二人になった。
街人には、隠し持っているわずかな武器以外、戦うための道具はなかった。
だが、自作農は違った。六人しか残っていない自作農は、オスモの奸計によって農地を失っていった自作農たちが保有していた銃器を預かっていた。
ライノの館の地下武器庫にも小銃一〇〇挺が保管されている。
他の自作農も同数程度、保管しているはずだ。
このことを話し合ったことはない。だが、ライノを助けた老夫婦は「そういうものだ」と断言していた。
二人のオスモの手下が、街人を威嚇している。
「てめぇら、近付くんじゃねぇ」
「撃ち殺すぞ!」
ライノが歩み出た。
「街の衆。
もう少し下がりましょう」
群衆からライノを蔑むヤジが飛ぶ。
「よそ者が、生意気だぞ!」
次の瞬間、ライノは左の懐からS&WのM1917リボルバーを取り出して、オスモの手下二人を撃った。
「君と君、この銃を使いなさい」
ライノは若者二人を指名し、オスモの手下のレバーアクション・ライフルを渡す。
拳銃も奪い、それを雑貨屋の少年期を過ぎたばかりの店主に渡す。
「ここを守るんだ」
「わかっているよ。
怖いけどね」
別の自作農が馬車に銃を積んで、やって来た。
「ライノさん、うちの銃とあんたのところの銃を全部持ってきた。
これから、どうすればいいんだ。
連中には、大砲があるんだぞ!」
ライノが答える前に、激しい銃声が聞こえてくる。
街の中心部で、銃撃戦が始まった。
そして、ライノが駆けつけたときには、すべてが終わっていた。
後ろ手に縛られたメルキオ・オスモの三人目の妻の頭には、山刀が眉間まで食い込んでいる。
オスモは油をかけられて、火を付けられたようだ。
オスモの子供たちも死んでいる。
処刑は、オスモの手下に移っていた。
街人は銃を持っていないので、刃物で斬り付けるのだが、ヒトを殺したことがないので、要領を得ず、なかなか死なない。
残虐な処刑だ。
オスモの子供たちも、そうやって殺された。
オスモを巡る暴動の起こりは、オスモが若い女性一〇人と子供二〇人を集めようとしたことに始まる。
兵の大半を外側城壁北門の防衛に振り向けてしまったので、館の兵は四人しかいなかった。その四人の兵で、街人の住居から女性一〇人と子供二〇人をさらおうとしたのだが、子供の若い父親が抵抗して、一人を殺した。
その父親は、別の兵に撃たれたが、撃った兵は多数の街人に滅多打ちにされる。
残った兵二人はオスモの館に戻ろうとするが、一人が弓で射られ、戻れたのは一人だけだった。
オスモと年長の子供、そして彼の妻は銃を握るが、数百人の街人が館内になだれ込み、ほとんど抵抗できずに捕まった。
オスモの三人目の妻が「お前たち、全員殺してやる」と脅す。
その一言が引き金となった。
恐怖に駆られた街人が、オスモ一族を惨殺した。
この時点で、ライノはヴィレの街をまったく掌握していなかった。
彼は、小作人が一人もいない最も小規模な自作農であった。
だが、六人の自作農のうち、若い四人がライノを支持している。
ライノが元世界からやって来たヒトで、元世界ではどこかの国の兵士であったことが、彼を支持する第一の理由になっていた。
戦い方を知っている、オスモと戦う術を知っている、と信じられていた。
だが、ライノは、ヴィレの隅から隅まで掌握しているオスモ一族を街から排除することはほぼ不可能だと考えていた。
生命の恩人である老夫婦の願いもあり、この街に留まっていただけだ。
彼は内心で、もっと将来性のある街に移りたかった。
それに、よそ者を嫌う閉鎖的な街の雰囲気を好いてはいない。
ライノは、親が死んだり、親に置き去りにされた子供たちを引き取っていた。放っておけば、オスモ一族の食い物にされてしまう。
彼らのために、食事や身の回りの世話をする家政婦を何人か雇っている。
ライノの元から去ってもいい年頃の子供もいる。
ライノは子供たちに戦い方を教えたくなかったが、ヴィレの街の外にはドラキュロがいる。
この世界において、武器が使えないことは死を意味する。
屋敷の地下室を改造して、射撃の訓練ができるようにしている。
ここで、子供たちは銃器の扱いを覚える。
すでに、何人かが巣立ち、他の街に移り住んでいる。彼らからの貴重な情報も得ている。
また、ライノは、成長した子供たちをヴィレに留めたくなかった。
自作農の一人が、新たな街長として、ライノを推挙。
それに、自作農三人が賛意を示す。
自作農一人は「よそ者に街は仕切らせない」と反対。
だが、ライノと関わりのある街人が次々とライノ支持を表明する。鍛冶屋の親父さんやパン屋の女将さんなど。
住民の大半は、様子見だ。
だが、現実は、様子をうかがっている余裕はない。
ライノは戸惑っていたが、保護している子供たちを守りたかった。
街のことはどうでもよかった。
しかし、この状況では、街を守らなければ、子供たちを守れない。
街の商人は、オスモ一族と何らかの関係があった。
メルキオ・オスモが死んだいま、ことさら強い反対をすると、目立ってしまう。オスモがらみで、住民の誰かから恨まれている可能性もある。身を守るためにも、静かにしていることが最善だ。
オスモ一族の小作人は、多くがオスモに恨みを持っていた。だが、それには強弱があり、一部はオスモに恩義を感じている。
だが、オスモ一族が滅んだいま、新たな守護者が必要だった。
できれば、この騒ぎが収まったら、簡単に追い出せる程度の人物がいい。
小作人たちは衆議し、よそ者に任せることにした。事が終わったら、街から追い出せばいい。
人口の過半を占めるオスモ家小作人がライノ支持に傾いたことから、彼が推挙されることになる。
また、自作農の発言力は強かった。
この意外な展開を、ライノは冷静に分析し、自分が追い込まれていることを承知している。ライノは事が終わったら、保護している子供たちと一緒に、他の街に移ろうと考えている。その第一候補がノイリンだ。
一度訪れたが、あの街の活気は魅力だ。
ライノは、街長として最初の指示を出した。
「ありったけの武器を集めるんだ。
それと、ワイン瓶と油。油なら何でもいい。ガソリンもあるだけ集めてくれ」
隻腕の〝よそ者〟の戦いが始まった。
まだ集団脱走は起きていないが、時間の問題であることをよく理解している。
総兵力二〇〇の大軍。規律を有するよく訓練された部下たち。豊富な実戦経験。強力な戦闘車輌。
本来ならば、無敵だ。
しかし、現実はそうではない。
車輌は二〇輌。燃料、食料、武器弾薬を運ぶ輸送車は一〇輌。
九〇ミリ砲搭載の装輪装甲車六輌、装甲兵員輸送車四輌。
これらを動かすには膨大な燃料が必要だが、その確保は現状では不可能に近い。
大きなテントには、旅団長セスト、副長イーヴォ、参謀のミルコがいた。
三人は不正確な地図を広げた簡易な折りたたみテーブルを囲んでいる。
セストが二人に言う。
「兵員輸送車を捨てる」
イーヴォとミルコは黙っている。そうしたくはないが、そうしなければ数日で立ち往生となるからだ。
彼らは数か月前、ライン川西岸の村を襲った。村人は抵抗せず、一切の要求を受け入れて、食料と燃料を差し出した。食料も燃料も、どちらもわずかな量しかなかった。
セストは村内の家捜しを命じる。
そして、一〇輌の装甲車を見つける。
村人は、装甲車を動かすだけの燃料を持っていなかったが、旅団にはあった。
村に一週間居座り、暴虐の限りをつくし、その間に装甲車を動くように整備する。
結果、それが命取りになる。
三〇〇キロ南西に移動して、そこで燃料切れ寸前になったのだ。
副長イーヴォが言う。
「大飯食らいの砲塔付きを捨てましょう」
参謀のミルコが反対する。
「砲塔付きで村に乗り込めば、確実に制圧できます。
捨てるのは砲塔なしの四輌にしましょう」
旅団長セストにも名案があるわけではなかった。
「川は、北から南に流れている。
普通、南から北に流れる。
これが、例の川だと思う。
川に沿って、南か北に行けば、村か街があるだろう。
例の〝種から燃料を作る種族〟の村が見つかるかもしれない。
そこを襲う。
見つけられなくても、村を襲えば、その種族の住処がわかるだろう。
燃料と食糧を確保したら、この川の一帯を制圧する。
川に沿って北と南に斥候を送る。
北はイーヴォ、南はミルコが指揮しろ」
二人はセストの命令に頷いた。
イーヴォが問う。
「閣下、捕虜はどうします」
「ここまで来れば用済みだ。
全員殺せ。一人も生かしておくな」
「女もですか?」
「そうだ。
女も殺せ。
村を見つければ、新しい女が手に入る。
食料が惜しい。
弾が惜しい。剣で殺せ。
すぐにやれ」
捕虜の男たちは、キャンプからだいぶ離れた草原に大きな穴を掘らされた。
そこに女たちも連れてこられる。
男と女は死期を悟っていた。彼らは抱き合って震えた。すでに抵抗する気力は失っている。死が安息であると信じている。
そして淡々と殺戮が始まった。
その穴に二〇人以上が投げ込まれた。男も女も、若者ばかりだった。
その日の夕方、三人は同じテントにいた。
イーヴォが報告する。
「北にはヒトは住んでいないようです。
黒魔族の集団を見ました。かなりの大群です」
セストは聞きたくない報告に接し、不愉快な顔をする。
そして、ミルコに顔を向けて促す。
「南二〇キロの西岸に街があります。城壁に囲まれていますが、濠はありません。
九〇ミリで城門を破壊すれば、簡単に突破できます。
さらに五〇キロ南の東岸に大きな街がありました。川の水を引いた二重の環濠に守られています。
攻めるのは厄介かもしれません。
街の北側入口の橋に戦車が二輌」
「戦車?」
「えぇ、長砲身の砲を搭載した本物の戦車です」
「城壁に守られた街に戦車は?」
「見ませんでした。
それに、ウマやロバが引く荷車しか見てません。
動力付きの車輌はまったく……。
あの様子では、戦車なんてないでしょう」
セストは不安だった。燃料の枯渇は間近、食料の備蓄はほとんどなく、弾薬は一交戦分がやっと。
「その街の人数は?」
「千か二千か、もう少し多いかもしれません」
「他に村は?」
「見ませんでした。
この地方は、小さな村がないのか、少ないのか……。
東とは、ずいぶん違います」
セストは瞬間考えたが、決断しなければ立ち往生する。
「その城郭の街を襲う。
砲塔なしはここに捨てていく。
車輌の渡河準備に入れ」
イーヴォとミルコは、敬礼をしてテントを出た。
グリム旅団の将兵にとって、渡河は最も危険で困難な任務だ。
だが、何度も経験している。
森で木を切り倒し、川岸まで運んで長さを整え、筏を作る。
その筏に載せて、一輌ずつ川を渡す。一六輌の渡河に丸一日を費やした。セストは、渡河の前に捕虜を殺したことを後悔していた。渡河作業は危険を伴う。危険な作業には、死んでもいい人間を使うことが、彼のやり方だった。
セストは双眼鏡越しに城壁に囲まれた街を見ている。
街は小高い丘の上にあり、外周一二キロでほぼ真円の石の壁に囲まれていて、北に鋼鉄製の城門がある。報告では、南にも城門がある。
出入りしているのは、ウマやロバが牽く荷車だけで、動力付きの車輌はない。
街の周囲は広大な麦畑で、その麦畑の外周は湿地になっている。
湿地を抜け、広大な麦畑を通り、城門に近付くまでに必ず発見される。
遮蔽物は一切ない。
この街が対戦車砲を持っていたら、確実に狙い撃ちされてしまう。
だが、城壁外には砲座や陣地らしき構造物はなく、トーチカや塹壕も視認できない。
無防備な街のようにも思えたし、逆に巧妙な防衛策を採っている可能性もある。
それを調べる方法は二つ。
城内偵察のための斥候を送ることと、街人を捕まえて情報を採ること。
セストはそのどちらも実行することにした。
残り少ないフルギア銀貨を集めて、四輪の小型トラックで食料の買い付けに向かわせる。
それをイーヴォが指揮する。
ミルコには、誰にも発見されないように、麦畑で住人を捕らえるよう命じた。
イーヴォは荷の一部を降ろし、行商人を装って、城壁の北側に近付いた。
北城門には見張りがいた。薄茶と濃い緑の迷彩服を着ているが、軍人ではなく無頼の輩に感じる。
「東から来た商人なんだが、食料を分けてもらえないかね?
それと、ちょっとだけ商売させてもらいたいのだが……」
三〇をだいぶ過ぎたイーヴォは、気のよさそうな商人を演じた。同行している彼の部下一人は、そんな演技をできるような男じゃない。黙して、顔を伏せている。
「売り物は何だ?」
「銃と弾なんだが……」
「銃も弾も必要ない。
帰れ……。
売るための食い物もない」
「こんな大きな街なのに、食料を売ってもらえないのか?
あんたは必要ないだろうが、街の人たちは弾はいるだろう?」
「この街は、メルキオ・オスモが仕切っている。
必要か、不要か、それはオスモが決める。
売るか、売らないか、もだ」
イーヴォは、自分たちに勝るまがまがしい雰囲気を感じた。
だが、それを不利とは感じなかった、この街を支配している連中が自分たちと等質の人間ならば、交渉はしやすい。
力を見せつければ、簡単に落ちる。
「すまなかったね。
また来るよ」
イーヴォは、城門から離れた。城門内を垣間見たし、娼婦宿と飯屋はあった。それだけ確認すれば十分だ。
ミルコは街人一人を捕らえるのに、かなり手間取り、日没の少し手前で、ようやく二〇歳くらいの男を捕虜にした。
セストがテントの中で捕虜を尋問する。イーヴォとミルコもいる。
捕虜は怯えていて、どんな質問にも何も考えずに答えそうだ。
「街の住人か?」
「そ……うです」
「名前は?」
「グイド……」
「仕事は?」
「オスモ家の庭師」
「オスモとは?」
「街長……」
「どんな街長だ?」
「どんな……」
グイドは考えたが、街長としてすばらしい人物だとは到底思えない男だ。
小作人が病に倒れ、作物の収穫量が減れば、容赦なく妻子を捕らえて、盗賊や故買屋相手の娼婦宿に送るような男だ。
街の娼婦宿には、街の商人や農民は近付かない。客はオスモの手下か商売相手と決まっている。
グイドは嘘を言った。自分でも信じられないほど、滑らかに嘘が口から出る。
「街を守ってくれる、すばらしい街長です」
「街には何人いる?」
グイドは考えた。本当のことを言うよりも、嘘のほうがいい。それに、グイドは街の正確な人口なんて知らなかった。
「五〇〇〇人くらい」
イーヴォとミルコが顔を見合わせる。
「五〇〇〇か?」
セストの再度の問いに、グイドはどう答えるべきか考えた。
「もう少し多いかもしれません」
「街の名は?」
「ヴィレ……」
「ヴィレは、五〇〇〇人の街か?」
「そうです」
「軍隊は?」
「オスモ家が守ってくれます」
「オスモの兵力は?」
「わかりませんが、二〇〇人くらいだと思います」
実際は一〇〇人ほどだと、グイドは知っていた。料理係が、よく一〇〇人分を作っていると言っていたから。
「〝種から燃料を作る種族〟のことを知っているか?」
「会ったことはありませんが、ノイリンにいると聞いたことがあります」
「その街はどこにある」
「詳しくは知りませんが、南から北に流れる川の東岸にあります。
もっと西です」
「その街は大きいのか?」
「ヴィレよりは小さいと思います」
セストには十分な情報だった。この地にやって来た理由は、〝種から燃料を作る種族〟を捕らえるためだ。
そして、その魔法を使う連中が実在し、しかも近くにいることがわかった。
「ヴィレに砲はあるか?」
「ホウ?」
「大砲だ」
「ありません。銃はたくさんあります」
銃の数は少ない。街人は自作農を除いて、ほとんど持っていない。ごく少数の小作人が隠しているだろうが、多くはない。
自作農は六家族しかいない。
銃のほぼすべては、オスモ一族が押さえている。
オスモは定期的に小作農の銃狩りを行っていて、よほど巧妙でないと隠し通せない。
グイド自身、銃を触ったことがなかった。オスモから畑を借りている小作農だったが、自分が病に倒れ耕作ができなくなり、小作料の方に妻と娘を奪われた。
妻はオスモの部下の妾にされ、娘はまだ一五なのに娼婦宿で働かされている。
この盗賊らしい連中がオスモを殺すならば、味方をしてもいいとさえ感じ始めていた。
だが、この盗賊が街を仕切るようになれば、さらなる厄災となることも察している。
この盗賊とオスモが戦い、共倒れになればいいと思っていた。
だが、同時にそんな策略を自分が手はずできるとも考えていない。
流れに任す外ない。
セストが言った。
「この男は、まだ役に立つかもしれない。
縛っておけ。
そのノイリンとか言う街の〝種から燃料を作る種族〟のことをもっと知りたい」
セストは〝種から燃料を作る種族〟を捕らえれば、現在の状況を劇的に転換できると考えていた。
どうやって種から燃料を作るのかはわからないが、そんな魔法を知っているのならば、その連中を独占したいと考えていた。
そして、この一帯を支配するつもりだ。
セストは主な部下を集めた。
「南と北から同時に攻める。
北は陽動で、南が主攻。
北はイーヴォ、南はミルコ。
イーヴォが北から攻めて街の主力を十分に引きつけてから、ミルコが城門を破って一気に城内に攻め込む」
作戦はミルコが立案した。城内の戦力は不明だが、多くはない。訓練されていない農民や商店主が城壁の中にいるだけだ。簡単に落とせる。
オスモという街長次第だが、いままでの経験では戦慣れした街や村の指導者なんていなかった。
ヒトの集落は小さく、最大でも一〇〇人程度だ。それを超えると、食糧の確保が難しくなるから……。
ドラキュロの襲撃から逃れるためにも、少人数のほうが都合がいい。ドラキュロは、何も破壊しない。見つからずに、通り過ぎてくれれば、明日からはいつも通りに暮らせる。
ライン川以東の人々の暮らしとは、そういうものだ。
セストは、ソーヌ川、ローヌ川、ロワール川周辺に住む人々も大差ないと考えていた。
この一帯の街は規模が大きく、戦車を保有する街まであることは意外だったが、所詮は素人軍隊だ。本物の戦闘を知っている自分たちとは違う。
ヴィレの制圧は、この一帯の支配への第一歩だ。これが上手くいけば、グリム旅団を恐れて抵抗などしない。
するはずがない。
セストはそう信じていた。
北城門には、EE‐9カスカベル六輪装甲車二輌と歩兵五〇で攻撃を開始する。
カスカベルのコッカリル九〇ミリ低圧砲は、ヴィレの城壁を簡単に撃ち抜いた。
あえて城門は狙わなかった。修理が大変だからだ。城壁なら、崩した石を積み直せばいい。
オスモは、いきなり砲撃を仕掛けてくる盗賊がいることは想定していなかった。
そもそも、この一帯のヒトの盗賊とは、昵懇の間柄だ。
連中が奪ってきたものを喜んで買っていたし、盗賊に〝注文〟することだってある。それに、盗賊たちが喜ぶような街にしていた。酒と女は十分に用意してある。
ヴィレの内側城壁は、石を積み上げた中世的な外側城壁とは異なり、厚さ一・五メートルの鉄筋コンクリート製だ。内側城壁の高さは二〇メートルもある。手がかりは一切なく、ドラキュロは絶対に登れない。
外側城壁と内側城壁の間は麦畑だ。一〇〇年ほど前から収量増加を目論んで、城外にも麦畑を広げているが、街人の食料だけならば、外側と内側の城壁の間にある耕作地だけでも十分な収穫がある。
セストが予想していた通り、城内からの反撃は小銃に限られていた。
それも、密度の粗い銃撃で、ウマに乗った盗賊なら追い払えるだろうが、装甲車で攻められては防御のしようがない。
ドラキュロに囲まれたときに籠城するための城壁であって、対人戦闘用ではない。
三〇分ほど北から攻撃していると、南側からも砲声が聞こえた。
ミルコは作戦通りに、北からの攻撃三〇分後に南の城門を砲撃で破壊し、城内に一気に雪崩れ込む。
だが、そこは一面の麦畑で、建物等は一切なく、彼方に別の城壁が見える。
内側城壁北門は開け放たれていたが、自作農数人が指揮して閉めさせた。
オスモの兵力のほとんどは外側城壁北門に張り付いていて、内側城壁の内部には少数しかいないはずだ。
襲撃と同時に内側城壁の東と西、そして南門はすぐに閉じたが、北門はオスモの手下が出入りするので開けられていた。
メルキオ・オスモは城内中心部にいるが、彼の部下は一〇人ほどしか残っていないはずだ。
襲撃が始まってから、外側城壁北門に向かうオスモの手下の人数を何人かが数えていた。
それと、外側城壁北門にいた店主や娼婦宿の女の子のかなりが、内側城壁内に逃げ込んだ。
盗賊の襲撃は希にあったし、ドラキュロに侵入されたこともあるから、街人はこういったことに慣れていた。
麦畑には〝シェルター〟があり、そこに立て籠もれば空腹と渇きに耐えられる間は生きていられる。
南城門を破壊したミルコの隊は、外側城壁に沿って北上。北城門に張り付いていたオスモの手下は孤立し、降伏する。
彼の二人の息子も捕虜となった。
セストは想定外の事態に、内心ではかなり動揺していた。
北城門を突破したら旅人相手の売店と娼婦宿が数軒あるだけで、それ以外は麦畑しかなく、さらに内側に外側よりも堅固な城壁が遠望できた。
グリム旅団本体は、北城門の内側直近に集結し、そこから動いていない。
破壊した南城門には、カスカベル四輌と歩兵一個分隊が陣取っている。
イーヴォが報告する。
「捕虜の中に街長の息子が二人いました。
使えると思います」
「二人とも連れてこい」
街長の息子二人は、堂々としていた。ヴィレの街において、メルキオ・オスモは神に等しい権力を持つ。
オスモ家代々当主がそれだけの権力を持っていたのではない。メルキオ・オスモが一代で、多くの自作農を破産させ、ヴィレの完全な実権を握ったのだ。
二人の息子は神の子である。
怯えたことなど、生涯一度もないし、これからもあり得ない。
薄汚れた粗末な服を着る〝旅団長〟と呼ばれる男には、一切の恐怖を感じていない。
セストは何かの台座であった石組みに腰掛け、二人の若者を見た。
「どっちが兄だ」
「俺だ!」
「ノイリンという街に行ったことはあるか?」
兄は激しく動揺した。
ヴィレではなく、ノイリンについての質問だったからだ。
「そこに〝種から燃料を作る種族〟はいるのか?」
「ハンダという小男がリーダーだ」
兄は、あえて〝小男〟という言葉を使った。セストも小柄だからだ。間接的に侮辱したつもりだった。
「ハンダ、か。
ノイリンはどんな街だ?」
「何もない。
粗末な家が何軒かあるだけだ」
「何人くらい住んでいる?」
「わからないが、ヴィレよりはずっと少ないと思う」
セストは立ち上がり、ミルコに歩み寄る。
ミルコが身構える。セストは腰の軽い男だが、彼ほど厳格で冷酷な男はいない。
「ノイリンの正確な場所を調べて、おまえが行け。
上手く騙して、ノイリンの主力をおびき出すんだ。
主力を叩いてしまえば、どうにでもなる」
ミルコはその場を立ち去り、ノイリン行きの画策を始める。
セストがイーヴォを呼ぶ。
「弟に要求を伝えさせろ」
「捕虜はどうします?」
「娼婦や商人は生かしておけ。
戦闘員は処刑しろ」
「寝返りを言い出している捕虜がいますが……」
「そいつから処刑だ」
「弾薬ですが、鹵獲量は多くありません」
「そうか……。
食料は?」
「十分すぎるほど手に入れました」
「隊員には、たっぷり食わせてやれ」
捕虜を城壁の前に立たせ、銃殺が始まる。捕虜となったオスモの手下が騒ぎ出すが、暴れればその場で撃ち殺された。
この様子を見ているオスモの息子兄弟は、ようやく恐怖を感じ始める。
イーヴォは、オスモの息子を内側城壁まで連行する。
城門は東西南北にあり、北側城門は車輌の相互通行が容易にできる大門だが、東西と南は荷車一台分の幅しかない小門だ。
イーヴォは何度も呼びかけたが、城門は開かなかった。
やむなく、息子に要求を口頭で伝えさせた。大門ののぞき窓にヒトがいることは、わかっている。
ヴィレの自作農ライノは、左手の手首から先を失っていた。森で倒れているところを、ヴィレの自作農であった老夫婦に助けられた。
老夫婦には息子が一人いた。
だが、畑仕事に行ったある日、戻ってこなかった。老夫婦は、息子がオスモに殺されたと確信していた。
証拠はない。
だが、自作農潰しに躍起となっていたオスモが息子を殺したのだと、考えていた。
息子の身体の在処を探すより、息子の妻と孫の生命を守ることが優先する。
老夫婦は蓄えのすべてをかき集め、息子の妻と孫をカンガブルに送る。カンガブルならば、オスモ一族の影響が及ばないからだ。
それから十数年後、オスモと争わない決断をした老夫婦は、森の中で左手首を食いちぎられた若い男を見つける。
それからさらに一〇年。
老夫婦は他界し、その資産のすべてを血縁のない男が引き継いだ。
彼は資産の譲渡を受ける条件として、老夫婦から「息子の仇を討って欲しい」と伝えられていた。
老夫婦は、助けた男が〝戦士〟であることに気付いていた。
そして、そのチャンスが訪れた。
ライノは、内側城壁北門にいた。
ここを守るオスモの兵は三人しかいない。
オスモは外壁防衛に兵のほとんどを差し向けてしまい、内壁内側は完全に手薄となっていた。
オスモの息子が開門を求めているが、「開けるな」と主張する街人の中で、うかつな行動をすると、オスモの手下であっても殺されかねない。
オスモの兵は三人。集まった街人は数百。外の敵よりも内の敵のほうが恐ろしい。
息子がグリム旅団の要求を伝える。
「親父!
小麦と干肉、その他食料!
若い女一〇人、子供二〇人。
それを渡せば、立ち去るそうだ!
すぐに用意してくれ!」
その伝言をオスモの兵一人が伝えに行く。
オスモの兵は、二人になった。
街人には、隠し持っているわずかな武器以外、戦うための道具はなかった。
だが、自作農は違った。六人しか残っていない自作農は、オスモの奸計によって農地を失っていった自作農たちが保有していた銃器を預かっていた。
ライノの館の地下武器庫にも小銃一〇〇挺が保管されている。
他の自作農も同数程度、保管しているはずだ。
このことを話し合ったことはない。だが、ライノを助けた老夫婦は「そういうものだ」と断言していた。
二人のオスモの手下が、街人を威嚇している。
「てめぇら、近付くんじゃねぇ」
「撃ち殺すぞ!」
ライノが歩み出た。
「街の衆。
もう少し下がりましょう」
群衆からライノを蔑むヤジが飛ぶ。
「よそ者が、生意気だぞ!」
次の瞬間、ライノは左の懐からS&WのM1917リボルバーを取り出して、オスモの手下二人を撃った。
「君と君、この銃を使いなさい」
ライノは若者二人を指名し、オスモの手下のレバーアクション・ライフルを渡す。
拳銃も奪い、それを雑貨屋の少年期を過ぎたばかりの店主に渡す。
「ここを守るんだ」
「わかっているよ。
怖いけどね」
別の自作農が馬車に銃を積んで、やって来た。
「ライノさん、うちの銃とあんたのところの銃を全部持ってきた。
これから、どうすればいいんだ。
連中には、大砲があるんだぞ!」
ライノが答える前に、激しい銃声が聞こえてくる。
街の中心部で、銃撃戦が始まった。
そして、ライノが駆けつけたときには、すべてが終わっていた。
後ろ手に縛られたメルキオ・オスモの三人目の妻の頭には、山刀が眉間まで食い込んでいる。
オスモは油をかけられて、火を付けられたようだ。
オスモの子供たちも死んでいる。
処刑は、オスモの手下に移っていた。
街人は銃を持っていないので、刃物で斬り付けるのだが、ヒトを殺したことがないので、要領を得ず、なかなか死なない。
残虐な処刑だ。
オスモの子供たちも、そうやって殺された。
オスモを巡る暴動の起こりは、オスモが若い女性一〇人と子供二〇人を集めようとしたことに始まる。
兵の大半を外側城壁北門の防衛に振り向けてしまったので、館の兵は四人しかいなかった。その四人の兵で、街人の住居から女性一〇人と子供二〇人をさらおうとしたのだが、子供の若い父親が抵抗して、一人を殺した。
その父親は、別の兵に撃たれたが、撃った兵は多数の街人に滅多打ちにされる。
残った兵二人はオスモの館に戻ろうとするが、一人が弓で射られ、戻れたのは一人だけだった。
オスモと年長の子供、そして彼の妻は銃を握るが、数百人の街人が館内になだれ込み、ほとんど抵抗できずに捕まった。
オスモの三人目の妻が「お前たち、全員殺してやる」と脅す。
その一言が引き金となった。
恐怖に駆られた街人が、オスモ一族を惨殺した。
この時点で、ライノはヴィレの街をまったく掌握していなかった。
彼は、小作人が一人もいない最も小規模な自作農であった。
だが、六人の自作農のうち、若い四人がライノを支持している。
ライノが元世界からやって来たヒトで、元世界ではどこかの国の兵士であったことが、彼を支持する第一の理由になっていた。
戦い方を知っている、オスモと戦う術を知っている、と信じられていた。
だが、ライノは、ヴィレの隅から隅まで掌握しているオスモ一族を街から排除することはほぼ不可能だと考えていた。
生命の恩人である老夫婦の願いもあり、この街に留まっていただけだ。
彼は内心で、もっと将来性のある街に移りたかった。
それに、よそ者を嫌う閉鎖的な街の雰囲気を好いてはいない。
ライノは、親が死んだり、親に置き去りにされた子供たちを引き取っていた。放っておけば、オスモ一族の食い物にされてしまう。
彼らのために、食事や身の回りの世話をする家政婦を何人か雇っている。
ライノの元から去ってもいい年頃の子供もいる。
ライノは子供たちに戦い方を教えたくなかったが、ヴィレの街の外にはドラキュロがいる。
この世界において、武器が使えないことは死を意味する。
屋敷の地下室を改造して、射撃の訓練ができるようにしている。
ここで、子供たちは銃器の扱いを覚える。
すでに、何人かが巣立ち、他の街に移り住んでいる。彼らからの貴重な情報も得ている。
また、ライノは、成長した子供たちをヴィレに留めたくなかった。
自作農の一人が、新たな街長として、ライノを推挙。
それに、自作農三人が賛意を示す。
自作農一人は「よそ者に街は仕切らせない」と反対。
だが、ライノと関わりのある街人が次々とライノ支持を表明する。鍛冶屋の親父さんやパン屋の女将さんなど。
住民の大半は、様子見だ。
だが、現実は、様子をうかがっている余裕はない。
ライノは戸惑っていたが、保護している子供たちを守りたかった。
街のことはどうでもよかった。
しかし、この状況では、街を守らなければ、子供たちを守れない。
街の商人は、オスモ一族と何らかの関係があった。
メルキオ・オスモが死んだいま、ことさら強い反対をすると、目立ってしまう。オスモがらみで、住民の誰かから恨まれている可能性もある。身を守るためにも、静かにしていることが最善だ。
オスモ一族の小作人は、多くがオスモに恨みを持っていた。だが、それには強弱があり、一部はオスモに恩義を感じている。
だが、オスモ一族が滅んだいま、新たな守護者が必要だった。
できれば、この騒ぎが収まったら、簡単に追い出せる程度の人物がいい。
小作人たちは衆議し、よそ者に任せることにした。事が終わったら、街から追い出せばいい。
人口の過半を占めるオスモ家小作人がライノ支持に傾いたことから、彼が推挙されることになる。
また、自作農の発言力は強かった。
この意外な展開を、ライノは冷静に分析し、自分が追い込まれていることを承知している。ライノは事が終わったら、保護している子供たちと一緒に、他の街に移ろうと考えている。その第一候補がノイリンだ。
一度訪れたが、あの街の活気は魅力だ。
ライノは、街長として最初の指示を出した。
「ありったけの武器を集めるんだ。
それと、ワイン瓶と油。油なら何でもいい。ガソリンもあるだけ集めてくれ」
隻腕の〝よそ者〟の戦いが始まった。
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曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
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