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第2章
第四四話 反撃
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すべての銃を集めても、一〇〇挺に達しない。
オスモ一族の館にも、武器弾薬の備蓄がほとんどなかった。オスモの手下が携帯していた武器弾薬だけが、ほぼすべてだ。
その武器弾薬は、ごく一部を除いて、盗賊の手に落ちた。
自作農が備蓄していた弾薬も少ない。
盗賊が装備する砲塔付きの装輪装甲車は、相当に厄介だ。
ライノは車体の形状から、元世界由来の六輪装甲車だと推測していたが、もしそうだとすれば相当に厄介だ。
ライノはアフリカに住むアラブ系だったが、イスラム教徒ではなかった。
両親はキリスト教の一派であるコプト教徒だったが、彼自身は典型的な不信心者だ。
職業は軍人だが、人種と両親の宗教の問題から、母国は生活しやすくはなかった。二億年後への移住が始まると、現状を打破したくて、二億年後ではなく、噂のあった〝途中下車〟を選んだ。
この世界には、友人の家族と彼の妻とともにやって来た。
鍋の中のような奇妙な地形の中に閉じ込められ、結局は物資の多くを放棄して、外界に出た。
だが、その日のうちにヒトに似た奇妙な動物に襲われ、友人家族と妻を失い一人になった。
その後、狩猟を続けながら二年間放浪した。最初の八カ月間は人に会わなかったし、ヒトの生活の痕跡も見なかった。
ある日の夕方、ドラキュロに襲われ、左手首を食いちぎられ、その場は逃げ切ったものの、出血がひどく、森の中で気を失った。
そして、老夫婦に助けられた。
老夫婦は親切で、六年ほど共に生活し、さほど広くはないが麦畑を譲ってくれた。
老夫婦が他界すれば、農場は自動的にオスモの手中に入る予定だった。
だが、老夫婦は農場を森で拾ってきたよそ者に譲ってしまう。
オスモは四度、このよそ者を殺そうとしたが、殺しに行った手下は帰ってこなかった。そして、よそ者は何事もなく姿を現した。
ライノはオスモの手下に襲われても、恐怖を感じることはなかった。
ドラキュロに手首を食いちぎられた、あの一瞬の恐怖に比べたら、オスモの手下の襲撃など、用心さえしていればどうとでもなることだ。
だが、今回の戦いは違う。
街のヒトたちの生命に関わる。自分一人の生命の問題ではない。
盗賊に捕らえられているオスモの息子と手下はどうでもいいが、商店主や雇い人、それと娼婦宿の女の子は助けたい。この街の出身もいるし、他の街や村からさらわれてきた女性もいる。
ヴィレの街において、街長に推挙されたとしてもよそ者のライノには限られた権限しかない。
権限を拡大するには、ライノに才覚があることを示す必要がある。
ライノは久々に弾帯を着けた。ホルスターには、S&WのM1917が納まる。シリンダーに六発の四五口径ACP弾があることを確認する。
彼が保護した子供たちのうち、年長の数人が積極的に動いてくれている。ライノにとって、明確に仲間と判断できるのは、この子たちと四人の自作農だけだ。
街の商人のうち、オスモに取り入っていた有力者たちはこの期に及んでもまだ傍観を決め込んでいる。小店の店主たちは、ごく一部を除いて露骨に反ライノだが、いまは何も言わない。明確な失敗を待っているのだ。
小作人たちは、ライノが次のオスモになることを警戒している。
イーヴォは、メルキオ・オスモとの会見を申し入れた。
内側城壁北門の前に立ち、城壁内に呼びかける。
「街長と話がしたい!
姿を見せてくれないか!」
ライノは、イーヴォの呼びかけを聞いていた。
城門は固く閉じたままで、かんぬきは二本かけられている。
ライノが「門を開けてくれ」と誰とはなしに周囲の街人に伝えると、体格のいい農民が頷いた。
そして、若者数人に無言で促す。
四人がかりで角柱の二本のかんぬきをスライドして外す。
「私が出たら、すぐに閉めてくれ」
体格のいい農民が頷く。
観音開きの大門がわずかに開き、身体から一切の覇気を感じさせない男が出てきた。
イーヴォは、その男に違和感を感じ、よく観察する。
左の手首から先がない。覇気を感じないのに、奇妙な圧を受けている。
しかし、その男は、明らかに息子の父親じゃない。若すぎる。
イーヴォは少し苛立っていた。
「メルキオ・オスモはどうした?」
ライノは自分でも意外なほど、落ち着いていた。
「死んだ」
「死んだ?」
オスモの息子が暴れ、イーヴォの部下が力で押さえつける。
「いまは、私が街長だ」
イーヴォは動揺していた。オスモの息子を餌に開城を要求するつもりだったからだ。
「悪いことは言わない開城しろ。
生命の保証はする」
「生命の保障だけか?」
「我々の兵は統率されている。
略奪や暴力沙汰は起こさない」
「それはないな。
私の経験ではね。
ひとつ、頼みがある」
「何だ?」
「そいつを殺してもいいか?」
後ろ手に縛られているオスモの息子が、目を見開く。
そして、イーヴォは拒否しなかった。
ライノは右手でゆっくりとホルスターからM1917リボルバーを抜き、オスモの息子の額に銃口を向ける。
彼を両側から押さえつけていたイーヴォの部下二人が、押さえる手を離して左右に分かれる。
ライノは一切の躊躇いを見せずに、オスモの次男を撃った。
強力な四五口径の拳銃弾は、目標の脳を吹き飛ばした。
イーヴォが言う。
「俺たちと同類か?
手を組まないか?」
「考えておこう」
「あぁ、考えてくれ」
イーヴォは、背を向けたライノを後ろから撃ちたかったがやめた。
城壁の上から、何挺ものスコープ付きライフルが狙っていたからだ。
左手のないよそ者が、何の躊躇いもなくオスモの次男を射殺した様子は、城壁の上から多数の街人が目撃した。
ヴィレの街人がライノを侮る理由は二つある。
よそ者であること、そして左手がないこと。
だが、そのどちらも彼を侮る合理的な理由とはならない。
長らくオスモ一族に支配され続けたことから、非合理であることさえ気付かぬほど、ヴィレの街人は視野が狭くなっていた。
抑圧されたことから、自分より立場の低い誰かを探して理由なく蔑んでいただけなのだ。
この時点で、ヴィレの街人はライノを侮らず、警戒するようになった。
それは、大きな進展であった。
ヴィレの城壁は、対ドラキュロのためのものだ。ヒトの盗賊や黒魔族に対しての備えではない。
ドラキュロが入ってこなければ、それでいい。
だから……、城壁には銃眼がなかった。対人戦において、迎撃ができないのだ。
しかも、内側城壁の厚さは基部で三メートル。頂部で一・五メートルもある。銃眼を開けるなど、到底不可能だ。
それならば、城壁外に隣接してトーチカを配せばいいのだが、そんな工夫はまったく考えてもいなかった。
銃撃は、城壁上からの狙撃に限られる。城壁は、戦車砲の徹甲弾でも簡単には貫通しないだろうし、成形炸薬弾は無力なはずだ、とライノは考えている。
そして、装甲車が城壁に近付いてきたら、火炎瓶を落とす。
城壁の高さは二〇メートルもある。火炎瓶は三〇メートルくらい投擲できる。
麦の丈はまだ低い。身を隠す場所はない。うまく戦えば勝ち目はある。
防御の弱点である城門だが、観音開きの外門を閉じ、引き戸型の内門も閉じれば、中空装甲と同じ効果がある。
成形炸薬弾の効果を殺せる。問題は徹甲弾だが、貫通させないためにはどうしたらいいかを考える。
「いいや、貫通するだけならば、実質無害か」とライノの独り言。
それを聞いていた何人かが不安そうな目で、ライノを見る。
内側城壁内にすべての街人がいるわけではない。
盗賊に捕らえられたヒト、ドラキュロ対策の避難所に隠れているヒト、それ以外の場所には隠れるところなんてない。
捕虜は多くないはずだ。商店主と娼婦を合わせて一五人、最大でも二〇人。
姿が見えないヒトを確認したが、三六人だった。
人質を盾にされた場合、どう対応すべきかを考える。
城門の開放はありえない。人質が殺されていくところを見せる、これもあり得ない。ライノの立場が揺らぐ。
そして、盗賊たちは人質を必ず使う。これは確実。他所から連れてこられた身寄りのない娼婦は、街人は気にとめない。ヴィレ出身の娼婦でも、家族が殺されたか、死んだか、逃げ出していたら、誰も気にしない。
親兄弟がいたとしても、彼らの発言力は強くないだろう。
問題は商店主だ。商店主の頭に銃が突きつけられたら、騒ぎになる。
だが、その様子は城壁の上からでないと見えない。
ならば、城壁の上を占拠すればいい。城壁には壁に沿って階段があるが、北と南の城門付近の二カ所しかない。
押さえてしまえば誰も上れない。
ライノは味方と頼む自作農四人を呼んだ。
「城壁の上を押さえて欲しいんだ。
誰も上がってこないよう見張ってくれ」
「なぜなんだい?」
四人は怪訝な様子。
「盗賊は、必ず人質を盾にする。
人質の生命と引き替えに、開門を迫るはずだ。
開門してしまえば、すべてが終わる。
そうならないために、城壁に誰も上がれないようにしたい……」
自作農の一人が問う。
「人質を見殺しに……」
「いや、そのつもりはない。
人質が何人いるかで、盗賊の策略が変わると思うけど、人質は簡単には殺さない。
オスモの息子と手下は、人質にならないことは教えた。でも、街のヒトたちを『殺す』と脅されたら、何もしないわけにはいかない……」
「そのときはどうするんだ」
「そこなんだよ。
冷静さを失ったら、街は盗賊のものになる。
交渉を引き延ばしながら、隙を見つけるしかないよ」
「隙?」
「必ず、つけ込む隙はあるはずだ」
「納得はできないけど、城壁の上は押さえるよ」
一人がそう告げると、三人が頷いた。
だが、ライノは、城門は街人によって開けられると確信していた。
街人は、婚姻によって縁戚がつながっていることが多い。縁戚がなくとも、知り合いであったり、友人関係であったり、仕事仲間であることの確率が高い。
捕虜が城門前に引き出され、銃口が頭に突きつけられたら、誰かの家族、誰かの親戚、誰かの友人となることは必定。
街人は、ただの農民であり、ただの商人であり、ただの職人だ。勇敢な戦士でも、狡猾な盗賊でもない。脅されれば、相手の望み通り行動してしまう。
そうなれば「生命を救え」と騒ぎになる。そして、門が開かれ、すべてが終わる。
そうなったときに、どうするかを、ライノは考えていた。
ライノは混乱に陥ったアフリカで、部族間、宗教間、その他ありとあらゆる属性の違いで、殺したり、殺されたり、脅したり、脅されたり、を見てきた。
その結果も知っているし、肉親の情は論理性や理性を壊すことも理解している。
だから、すべきことを粛々と行う決意を固めている。
イーヴォはセストの命令に忠実に従い、銃を握っていた男はすべて殺した。
北門周辺の街人でオスモと無関係か関係の薄い人々は、内側城壁に向かって走り、幸運なものは避難していた。
不運なものは、対ドラキュロ用避難所、鉄製扉のついた半地下式のコンクリート製トーチカに逃げ込んだ。
捕虜のほとんどは、半拘束状態だった娼婦宿の娼婦たちと女将だ。それと、商店主が数人。
セストは捕虜の少なさに焦りを感じていた。通常、城門の内側は賑やかなものだが、この街は違っていた。
セストは隊を六つに分けた。外側城壁北門を占拠するために一個小隊。同南門の守備に二個分隊。
内側城壁南と東西の各門前に一個班ずつ。そして、内側城壁北門前に残りのすべてを集結させる。
捕虜も全員を門まで五〇メートルの位置で、横一列に跪かせている。
男も女も怯えている。女のほとんどは娼婦だが、一人だけ小作人の子がいた。
イーヴォが拡声器を使って捕虜の名前を告げる。その声は城壁を越えて、また鋼鉄製の大門を透過して街人の耳に届く。
イーヴォが街人に乞う。
「街の衆、我々は盗賊じゃない。グリム旅団という軍隊だ。
頼みを聞いてくれれば、誰にも危害は加えない。我々が〝保護〟している街のヒトたちは、いまは縛っているけれど、本当はそんなことはしたくないんだ。
暴れて、誰かが傷つかないように、そう思っているだけなんだ。
保護している街のヒトを帰したい。
門を開けてくれ!」
イーヴォの詐話〈さわ〉を城壁上で聞いていたライノは、グリム旅団と名乗る盗賊が一筋縄ではいかない相手であることを悟った。
城門前に人質を並べて「殺すぞ」と脅して門を開けさせようとするのではなく、人質を帰すために門を開けろと言う。
小作人の女の子の親が「門を開けろ」と騒ぎだし、他の人質の従兄弟や又従兄弟、ただの知り合いといった連中まで開門を要求し始める。
ヴィレの街は浮き世離れしている。オスモ一族が街を完全に掌握した四〇年前以降、街人の多くは他地域との接触を制限されてきた。昔を知っている老人を除けば、グリム旅団の稚拙な言でも欺されてしまう。
悪い意味で純朴なのだ。
ライノは城壁上にいる何人かに言った。
「持たないな。
西門に集結だ。南と東にも伝えるんだ。
家族や一緒に行動したい人たちを集めてくれ」
ライノに同調する自作農や商人、小作人や職人たちが頷く。
城壁上を走って、南と東に伝令が向かう。
ライノの戦いの始まりだった。
城門が開かれ、北からグリム旅団が街内に雪崩れ込んだ。
彼らは扇状に広がりながら、内側城壁内部の住民街を瞬く間に占領していく。
街人に抵抗の術などなかった。
通りには、跪き、両手を頭の上に載せた男女と子供が転々と並ぶ。
地下室や穴蔵に逃れた街人もいるが、そこで孤立するだけだ。
グリム旅団の兵士が若い女性を次々と徴発していく。
引き立てられていく女の子が、「お母さん!」と母親に助けを求めるが、立ち上がろうとする母親を父親が必死で留める。
殺されるだけだからだ。
身内の生命乞いで、我を忘れて開門した街人はグリム旅団によって殺されていた。以後、彼らの行為が街人間の争いの種になるからだ。
セストの占領政策は恐怖によるもの。恐怖によって、抵抗する意欲、自分で考える余裕、自分の生命さえ差し出す従順さを実現する。
セストが街人に問う。
「街長はどこだ?」
「城壁の上にいました」
城壁上には、セストの部下しかいない。
イーヴォが言った。
「あの男、厄介な匂いがします」
「わかっている。
あの男は、間違いなく兵隊だ」
ライノの屋敷は、内側城壁西門近くにあった。城壁が日光を遮り、昼でも暗く、そして冬は寒い。城壁直近は一番貧しい人たちが住む地域なのだが、ライノに財産を譲った老夫婦は先祖代々ここに住んでいた。
内側城壁外の農地に近いこともあるだろうが、守りに適した場所だからだ。
それと、ここには街の外に続くトンネルがある。秘密のトンネルではなく、街人ならば誰でも知っている。いくつもの隔壁で区切られている、緊急時の脱出路だ。緊急時とは、ドラキュロに侵入されてしまった状況のことだ。
ライノの小さな屋敷の周囲は、土嚢とノイリンで買い求めた有刺鉄線で防御されている。その防御戦の内側に、すでに三〇〇人以上が逃げ込んでいる。
荷馬車に備蓄していた収穫物を積んできた農民が多数。
ライノは、この戦い慣れしていない集団では、訓練された軍隊とは戦えないと確信している。
選択肢は一つしかない。
一部が街の外に出て、街の内側と外側から攻める。
ライノは自作農ルキウスを呼んだ。
「ルキウス!」
ルキウスが走ってくる。
「何だ?」
「頼みがある」
「……」
「ここで何日籠城できる」
「もって三日。
こいつがあるからな」
彼は、彼の家人が牽く小さな砲を指さした。
砲身長二〇口径の三七ミリ砲だ。もともと車輪は付けられていなかったが、ルキウスが改造して人力牽引できるようにした軽砲だ。車輪は大直径の木輪で、俯仰角マイナス八度からプラス一七度、旋回角三五度の直射砲だ。
「砲弾は?」
「一〇〇発ある。うち四〇発がカンガブル製の新型、粘着榴弾とか言うヤツだ。ノイリンの連中が使っている……」
「街のヒトたちは俺たちとは違うぞ」
「そんなことはわかっている」
「ここで、三日間は粘れるさ。
で、お前はどうするんだ?」
「街の外に出る。
そして街の外から攻める」
「銃だけでか?」
「火炎瓶がある」
「あれか、さっき見たよ。
瓶に油を詰めただけで、あんな武器ができるんだな。
あんたが住んでいた世界では、誰もが使うのか?」
「いいや、そんなことはないよ。
あれは、最も簡単な対戦車兵器なんだ」
「鍛冶屋の親父さんが、あれを撃ち出すスプリングを使った投擲機を開発中だ」
「間に合うかい?」
「大丈夫だ!
みんな必死なんだ」
「荷車三輌に武器弾薬と食料を積んで、街の外に出る。
赤い狼煙を上げるので、そうしたら攻撃を始める」
「挟み打ちだな」
「そうだ」
ルキウスは自作農の次男坊で、若くして家を出て、カンガブルで傭兵をしていた。
兄が病死したことから、家を継ぐために戻ってきた。
この街では数少ない外界を知っている男で、カンガブルの最新兵器に精通している。
ライノとは気が合い、信頼もしている。
ルキウスは渾名らしい。戦場でフルギアの将軍と一騎打ちとなり、倒し、名を奪ったとか。
ライノに成算があるわけではなかったが、敵はおおよそ二〇〇、こちらは戦える男だけでその二倍以上いる。
戦えば犠牲は大きいだろうが、食料を奪われて餓死するよりはいい。食料は簡単に見つからない場所に大量に隠してはいるが、一冬を凌いでも、次の収穫まではもたない。
ライノとルキウスは、籠城組二〇〇と反攻組三〇〇に隊を分けた。
籠城組には女性、子供、老人がいる。戦える女性も多い。戦力は十分だ。当分の食料もある。
城壁の上にも陣地を作り、完全に押さえている。上から攻撃される心配は低い。この陣地は滅多なことでは落ちない。
ライノはルキウスに伝える。
「盗賊の装甲車は、小銃弾は跳ね返すが、お前の三七ミリ砲弾は貫通する。
それと、装甲車の主砲は大仰角では発射できない。
この陣地を奪おうとするならば、必ず姿を現さなくてはならない。
街の中に仲間を潜ませて、二階や屋上から火炎瓶を投げつけるんだ。
そうすれば、簡単には近付けない」
ルキウスは周囲を見る。ライノの屋敷の前は広場で、半円形に五〇メートルほど建物はない。大きな噴水程度が、遮蔽物だ。
広場の先は、二階家が密集している。道は狭く、車輌が通れる道は少ない。
装甲車輌への待ち伏せ攻撃に適している。
「夕暮れ前に外に出ないと」
ライノの言葉にルキウスが応える。
「危険だが仕方ない。
太陽が沈めば、湿地の通路がわからなくなってしまうからな」
「子供たちを頼んでいいか?」
「任せてくれ。
妹が面倒を見る」
「ありがとう」
ライノは、長さ五〇〇メートルの地下通路を通って、城外西方に向かった。
オスモ一族の館にも、武器弾薬の備蓄がほとんどなかった。オスモの手下が携帯していた武器弾薬だけが、ほぼすべてだ。
その武器弾薬は、ごく一部を除いて、盗賊の手に落ちた。
自作農が備蓄していた弾薬も少ない。
盗賊が装備する砲塔付きの装輪装甲車は、相当に厄介だ。
ライノは車体の形状から、元世界由来の六輪装甲車だと推測していたが、もしそうだとすれば相当に厄介だ。
ライノはアフリカに住むアラブ系だったが、イスラム教徒ではなかった。
両親はキリスト教の一派であるコプト教徒だったが、彼自身は典型的な不信心者だ。
職業は軍人だが、人種と両親の宗教の問題から、母国は生活しやすくはなかった。二億年後への移住が始まると、現状を打破したくて、二億年後ではなく、噂のあった〝途中下車〟を選んだ。
この世界には、友人の家族と彼の妻とともにやって来た。
鍋の中のような奇妙な地形の中に閉じ込められ、結局は物資の多くを放棄して、外界に出た。
だが、その日のうちにヒトに似た奇妙な動物に襲われ、友人家族と妻を失い一人になった。
その後、狩猟を続けながら二年間放浪した。最初の八カ月間は人に会わなかったし、ヒトの生活の痕跡も見なかった。
ある日の夕方、ドラキュロに襲われ、左手首を食いちぎられ、その場は逃げ切ったものの、出血がひどく、森の中で気を失った。
そして、老夫婦に助けられた。
老夫婦は親切で、六年ほど共に生活し、さほど広くはないが麦畑を譲ってくれた。
老夫婦が他界すれば、農場は自動的にオスモの手中に入る予定だった。
だが、老夫婦は農場を森で拾ってきたよそ者に譲ってしまう。
オスモは四度、このよそ者を殺そうとしたが、殺しに行った手下は帰ってこなかった。そして、よそ者は何事もなく姿を現した。
ライノはオスモの手下に襲われても、恐怖を感じることはなかった。
ドラキュロに手首を食いちぎられた、あの一瞬の恐怖に比べたら、オスモの手下の襲撃など、用心さえしていればどうとでもなることだ。
だが、今回の戦いは違う。
街のヒトたちの生命に関わる。自分一人の生命の問題ではない。
盗賊に捕らえられているオスモの息子と手下はどうでもいいが、商店主や雇い人、それと娼婦宿の女の子は助けたい。この街の出身もいるし、他の街や村からさらわれてきた女性もいる。
ヴィレの街において、街長に推挙されたとしてもよそ者のライノには限られた権限しかない。
権限を拡大するには、ライノに才覚があることを示す必要がある。
ライノは久々に弾帯を着けた。ホルスターには、S&WのM1917が納まる。シリンダーに六発の四五口径ACP弾があることを確認する。
彼が保護した子供たちのうち、年長の数人が積極的に動いてくれている。ライノにとって、明確に仲間と判断できるのは、この子たちと四人の自作農だけだ。
街の商人のうち、オスモに取り入っていた有力者たちはこの期に及んでもまだ傍観を決め込んでいる。小店の店主たちは、ごく一部を除いて露骨に反ライノだが、いまは何も言わない。明確な失敗を待っているのだ。
小作人たちは、ライノが次のオスモになることを警戒している。
イーヴォは、メルキオ・オスモとの会見を申し入れた。
内側城壁北門の前に立ち、城壁内に呼びかける。
「街長と話がしたい!
姿を見せてくれないか!」
ライノは、イーヴォの呼びかけを聞いていた。
城門は固く閉じたままで、かんぬきは二本かけられている。
ライノが「門を開けてくれ」と誰とはなしに周囲の街人に伝えると、体格のいい農民が頷いた。
そして、若者数人に無言で促す。
四人がかりで角柱の二本のかんぬきをスライドして外す。
「私が出たら、すぐに閉めてくれ」
体格のいい農民が頷く。
観音開きの大門がわずかに開き、身体から一切の覇気を感じさせない男が出てきた。
イーヴォは、その男に違和感を感じ、よく観察する。
左の手首から先がない。覇気を感じないのに、奇妙な圧を受けている。
しかし、その男は、明らかに息子の父親じゃない。若すぎる。
イーヴォは少し苛立っていた。
「メルキオ・オスモはどうした?」
ライノは自分でも意外なほど、落ち着いていた。
「死んだ」
「死んだ?」
オスモの息子が暴れ、イーヴォの部下が力で押さえつける。
「いまは、私が街長だ」
イーヴォは動揺していた。オスモの息子を餌に開城を要求するつもりだったからだ。
「悪いことは言わない開城しろ。
生命の保証はする」
「生命の保障だけか?」
「我々の兵は統率されている。
略奪や暴力沙汰は起こさない」
「それはないな。
私の経験ではね。
ひとつ、頼みがある」
「何だ?」
「そいつを殺してもいいか?」
後ろ手に縛られているオスモの息子が、目を見開く。
そして、イーヴォは拒否しなかった。
ライノは右手でゆっくりとホルスターからM1917リボルバーを抜き、オスモの息子の額に銃口を向ける。
彼を両側から押さえつけていたイーヴォの部下二人が、押さえる手を離して左右に分かれる。
ライノは一切の躊躇いを見せずに、オスモの次男を撃った。
強力な四五口径の拳銃弾は、目標の脳を吹き飛ばした。
イーヴォが言う。
「俺たちと同類か?
手を組まないか?」
「考えておこう」
「あぁ、考えてくれ」
イーヴォは、背を向けたライノを後ろから撃ちたかったがやめた。
城壁の上から、何挺ものスコープ付きライフルが狙っていたからだ。
左手のないよそ者が、何の躊躇いもなくオスモの次男を射殺した様子は、城壁の上から多数の街人が目撃した。
ヴィレの街人がライノを侮る理由は二つある。
よそ者であること、そして左手がないこと。
だが、そのどちらも彼を侮る合理的な理由とはならない。
長らくオスモ一族に支配され続けたことから、非合理であることさえ気付かぬほど、ヴィレの街人は視野が狭くなっていた。
抑圧されたことから、自分より立場の低い誰かを探して理由なく蔑んでいただけなのだ。
この時点で、ヴィレの街人はライノを侮らず、警戒するようになった。
それは、大きな進展であった。
ヴィレの城壁は、対ドラキュロのためのものだ。ヒトの盗賊や黒魔族に対しての備えではない。
ドラキュロが入ってこなければ、それでいい。
だから……、城壁には銃眼がなかった。対人戦において、迎撃ができないのだ。
しかも、内側城壁の厚さは基部で三メートル。頂部で一・五メートルもある。銃眼を開けるなど、到底不可能だ。
それならば、城壁外に隣接してトーチカを配せばいいのだが、そんな工夫はまったく考えてもいなかった。
銃撃は、城壁上からの狙撃に限られる。城壁は、戦車砲の徹甲弾でも簡単には貫通しないだろうし、成形炸薬弾は無力なはずだ、とライノは考えている。
そして、装甲車が城壁に近付いてきたら、火炎瓶を落とす。
城壁の高さは二〇メートルもある。火炎瓶は三〇メートルくらい投擲できる。
麦の丈はまだ低い。身を隠す場所はない。うまく戦えば勝ち目はある。
防御の弱点である城門だが、観音開きの外門を閉じ、引き戸型の内門も閉じれば、中空装甲と同じ効果がある。
成形炸薬弾の効果を殺せる。問題は徹甲弾だが、貫通させないためにはどうしたらいいかを考える。
「いいや、貫通するだけならば、実質無害か」とライノの独り言。
それを聞いていた何人かが不安そうな目で、ライノを見る。
内側城壁内にすべての街人がいるわけではない。
盗賊に捕らえられたヒト、ドラキュロ対策の避難所に隠れているヒト、それ以外の場所には隠れるところなんてない。
捕虜は多くないはずだ。商店主と娼婦を合わせて一五人、最大でも二〇人。
姿が見えないヒトを確認したが、三六人だった。
人質を盾にされた場合、どう対応すべきかを考える。
城門の開放はありえない。人質が殺されていくところを見せる、これもあり得ない。ライノの立場が揺らぐ。
そして、盗賊たちは人質を必ず使う。これは確実。他所から連れてこられた身寄りのない娼婦は、街人は気にとめない。ヴィレ出身の娼婦でも、家族が殺されたか、死んだか、逃げ出していたら、誰も気にしない。
親兄弟がいたとしても、彼らの発言力は強くないだろう。
問題は商店主だ。商店主の頭に銃が突きつけられたら、騒ぎになる。
だが、その様子は城壁の上からでないと見えない。
ならば、城壁の上を占拠すればいい。城壁には壁に沿って階段があるが、北と南の城門付近の二カ所しかない。
押さえてしまえば誰も上れない。
ライノは味方と頼む自作農四人を呼んだ。
「城壁の上を押さえて欲しいんだ。
誰も上がってこないよう見張ってくれ」
「なぜなんだい?」
四人は怪訝な様子。
「盗賊は、必ず人質を盾にする。
人質の生命と引き替えに、開門を迫るはずだ。
開門してしまえば、すべてが終わる。
そうならないために、城壁に誰も上がれないようにしたい……」
自作農の一人が問う。
「人質を見殺しに……」
「いや、そのつもりはない。
人質が何人いるかで、盗賊の策略が変わると思うけど、人質は簡単には殺さない。
オスモの息子と手下は、人質にならないことは教えた。でも、街のヒトたちを『殺す』と脅されたら、何もしないわけにはいかない……」
「そのときはどうするんだ」
「そこなんだよ。
冷静さを失ったら、街は盗賊のものになる。
交渉を引き延ばしながら、隙を見つけるしかないよ」
「隙?」
「必ず、つけ込む隙はあるはずだ」
「納得はできないけど、城壁の上は押さえるよ」
一人がそう告げると、三人が頷いた。
だが、ライノは、城門は街人によって開けられると確信していた。
街人は、婚姻によって縁戚がつながっていることが多い。縁戚がなくとも、知り合いであったり、友人関係であったり、仕事仲間であることの確率が高い。
捕虜が城門前に引き出され、銃口が頭に突きつけられたら、誰かの家族、誰かの親戚、誰かの友人となることは必定。
街人は、ただの農民であり、ただの商人であり、ただの職人だ。勇敢な戦士でも、狡猾な盗賊でもない。脅されれば、相手の望み通り行動してしまう。
そうなれば「生命を救え」と騒ぎになる。そして、門が開かれ、すべてが終わる。
そうなったときに、どうするかを、ライノは考えていた。
ライノは混乱に陥ったアフリカで、部族間、宗教間、その他ありとあらゆる属性の違いで、殺したり、殺されたり、脅したり、脅されたり、を見てきた。
その結果も知っているし、肉親の情は論理性や理性を壊すことも理解している。
だから、すべきことを粛々と行う決意を固めている。
イーヴォはセストの命令に忠実に従い、銃を握っていた男はすべて殺した。
北門周辺の街人でオスモと無関係か関係の薄い人々は、内側城壁に向かって走り、幸運なものは避難していた。
不運なものは、対ドラキュロ用避難所、鉄製扉のついた半地下式のコンクリート製トーチカに逃げ込んだ。
捕虜のほとんどは、半拘束状態だった娼婦宿の娼婦たちと女将だ。それと、商店主が数人。
セストは捕虜の少なさに焦りを感じていた。通常、城門の内側は賑やかなものだが、この街は違っていた。
セストは隊を六つに分けた。外側城壁北門を占拠するために一個小隊。同南門の守備に二個分隊。
内側城壁南と東西の各門前に一個班ずつ。そして、内側城壁北門前に残りのすべてを集結させる。
捕虜も全員を門まで五〇メートルの位置で、横一列に跪かせている。
男も女も怯えている。女のほとんどは娼婦だが、一人だけ小作人の子がいた。
イーヴォが拡声器を使って捕虜の名前を告げる。その声は城壁を越えて、また鋼鉄製の大門を透過して街人の耳に届く。
イーヴォが街人に乞う。
「街の衆、我々は盗賊じゃない。グリム旅団という軍隊だ。
頼みを聞いてくれれば、誰にも危害は加えない。我々が〝保護〟している街のヒトたちは、いまは縛っているけれど、本当はそんなことはしたくないんだ。
暴れて、誰かが傷つかないように、そう思っているだけなんだ。
保護している街のヒトを帰したい。
門を開けてくれ!」
イーヴォの詐話〈さわ〉を城壁上で聞いていたライノは、グリム旅団と名乗る盗賊が一筋縄ではいかない相手であることを悟った。
城門前に人質を並べて「殺すぞ」と脅して門を開けさせようとするのではなく、人質を帰すために門を開けろと言う。
小作人の女の子の親が「門を開けろ」と騒ぎだし、他の人質の従兄弟や又従兄弟、ただの知り合いといった連中まで開門を要求し始める。
ヴィレの街は浮き世離れしている。オスモ一族が街を完全に掌握した四〇年前以降、街人の多くは他地域との接触を制限されてきた。昔を知っている老人を除けば、グリム旅団の稚拙な言でも欺されてしまう。
悪い意味で純朴なのだ。
ライノは城壁上にいる何人かに言った。
「持たないな。
西門に集結だ。南と東にも伝えるんだ。
家族や一緒に行動したい人たちを集めてくれ」
ライノに同調する自作農や商人、小作人や職人たちが頷く。
城壁上を走って、南と東に伝令が向かう。
ライノの戦いの始まりだった。
城門が開かれ、北からグリム旅団が街内に雪崩れ込んだ。
彼らは扇状に広がりながら、内側城壁内部の住民街を瞬く間に占領していく。
街人に抵抗の術などなかった。
通りには、跪き、両手を頭の上に載せた男女と子供が転々と並ぶ。
地下室や穴蔵に逃れた街人もいるが、そこで孤立するだけだ。
グリム旅団の兵士が若い女性を次々と徴発していく。
引き立てられていく女の子が、「お母さん!」と母親に助けを求めるが、立ち上がろうとする母親を父親が必死で留める。
殺されるだけだからだ。
身内の生命乞いで、我を忘れて開門した街人はグリム旅団によって殺されていた。以後、彼らの行為が街人間の争いの種になるからだ。
セストの占領政策は恐怖によるもの。恐怖によって、抵抗する意欲、自分で考える余裕、自分の生命さえ差し出す従順さを実現する。
セストが街人に問う。
「街長はどこだ?」
「城壁の上にいました」
城壁上には、セストの部下しかいない。
イーヴォが言った。
「あの男、厄介な匂いがします」
「わかっている。
あの男は、間違いなく兵隊だ」
ライノの屋敷は、内側城壁西門近くにあった。城壁が日光を遮り、昼でも暗く、そして冬は寒い。城壁直近は一番貧しい人たちが住む地域なのだが、ライノに財産を譲った老夫婦は先祖代々ここに住んでいた。
内側城壁外の農地に近いこともあるだろうが、守りに適した場所だからだ。
それと、ここには街の外に続くトンネルがある。秘密のトンネルではなく、街人ならば誰でも知っている。いくつもの隔壁で区切られている、緊急時の脱出路だ。緊急時とは、ドラキュロに侵入されてしまった状況のことだ。
ライノの小さな屋敷の周囲は、土嚢とノイリンで買い求めた有刺鉄線で防御されている。その防御戦の内側に、すでに三〇〇人以上が逃げ込んでいる。
荷馬車に備蓄していた収穫物を積んできた農民が多数。
ライノは、この戦い慣れしていない集団では、訓練された軍隊とは戦えないと確信している。
選択肢は一つしかない。
一部が街の外に出て、街の内側と外側から攻める。
ライノは自作農ルキウスを呼んだ。
「ルキウス!」
ルキウスが走ってくる。
「何だ?」
「頼みがある」
「……」
「ここで何日籠城できる」
「もって三日。
こいつがあるからな」
彼は、彼の家人が牽く小さな砲を指さした。
砲身長二〇口径の三七ミリ砲だ。もともと車輪は付けられていなかったが、ルキウスが改造して人力牽引できるようにした軽砲だ。車輪は大直径の木輪で、俯仰角マイナス八度からプラス一七度、旋回角三五度の直射砲だ。
「砲弾は?」
「一〇〇発ある。うち四〇発がカンガブル製の新型、粘着榴弾とか言うヤツだ。ノイリンの連中が使っている……」
「街のヒトたちは俺たちとは違うぞ」
「そんなことはわかっている」
「ここで、三日間は粘れるさ。
で、お前はどうするんだ?」
「街の外に出る。
そして街の外から攻める」
「銃だけでか?」
「火炎瓶がある」
「あれか、さっき見たよ。
瓶に油を詰めただけで、あんな武器ができるんだな。
あんたが住んでいた世界では、誰もが使うのか?」
「いいや、そんなことはないよ。
あれは、最も簡単な対戦車兵器なんだ」
「鍛冶屋の親父さんが、あれを撃ち出すスプリングを使った投擲機を開発中だ」
「間に合うかい?」
「大丈夫だ!
みんな必死なんだ」
「荷車三輌に武器弾薬と食料を積んで、街の外に出る。
赤い狼煙を上げるので、そうしたら攻撃を始める」
「挟み打ちだな」
「そうだ」
ルキウスは自作農の次男坊で、若くして家を出て、カンガブルで傭兵をしていた。
兄が病死したことから、家を継ぐために戻ってきた。
この街では数少ない外界を知っている男で、カンガブルの最新兵器に精通している。
ライノとは気が合い、信頼もしている。
ルキウスは渾名らしい。戦場でフルギアの将軍と一騎打ちとなり、倒し、名を奪ったとか。
ライノに成算があるわけではなかったが、敵はおおよそ二〇〇、こちらは戦える男だけでその二倍以上いる。
戦えば犠牲は大きいだろうが、食料を奪われて餓死するよりはいい。食料は簡単に見つからない場所に大量に隠してはいるが、一冬を凌いでも、次の収穫まではもたない。
ライノとルキウスは、籠城組二〇〇と反攻組三〇〇に隊を分けた。
籠城組には女性、子供、老人がいる。戦える女性も多い。戦力は十分だ。当分の食料もある。
城壁の上にも陣地を作り、完全に押さえている。上から攻撃される心配は低い。この陣地は滅多なことでは落ちない。
ライノはルキウスに伝える。
「盗賊の装甲車は、小銃弾は跳ね返すが、お前の三七ミリ砲弾は貫通する。
それと、装甲車の主砲は大仰角では発射できない。
この陣地を奪おうとするならば、必ず姿を現さなくてはならない。
街の中に仲間を潜ませて、二階や屋上から火炎瓶を投げつけるんだ。
そうすれば、簡単には近付けない」
ルキウスは周囲を見る。ライノの屋敷の前は広場で、半円形に五〇メートルほど建物はない。大きな噴水程度が、遮蔽物だ。
広場の先は、二階家が密集している。道は狭く、車輌が通れる道は少ない。
装甲車輌への待ち伏せ攻撃に適している。
「夕暮れ前に外に出ないと」
ライノの言葉にルキウスが応える。
「危険だが仕方ない。
太陽が沈めば、湿地の通路がわからなくなってしまうからな」
「子供たちを頼んでいいか?」
「任せてくれ。
妹が面倒を見る」
「ありがとう」
ライノは、長さ五〇〇メートルの地下通路を通って、城外西方に向かった。
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