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第3章
第八七話 捜索
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コーカレイからビスケー湾まで、直線で二二五キロある。ロワール川の流れに沿うと、河口まで二六〇キロだ。
白魔族はロワール川南岸以南海岸部を勢力圏としたが、主たる支配地域はガロンヌ川からピレネー山脈までのビスケー湾沿岸一帯だった。
ロワール川南岸からガロンヌ川北岸までは、ヒトと白魔族(オーク)との緩衝地帯としての役割が強かった。
少ないがヒトも住んでいた。
ガロンヌ川以北において、コーカレイのような街は例外で、コーカレイはフルギア皇帝と白魔族との〝接点〟としての役割を担っていた。
数代前のフルギア皇帝は、どこからかヒトをさらってきて、ロワール川南岸に放ち、白魔族にヒト狩りをさせたとも伝えられている。
ヒトと白魔族との接触は比較的多かったようだが、フルギア皇帝家だけが白魔族を神の使徒として神格化していた。
実際、ロワール川以北海岸部に住むヴルマン人は白魔族と何度も戦っている。セロの侵入以前、ヴルマン最大の敵は白魔族だった。
コーカレイが存続できた理由は、フルギア帝国の保護下にあったからだ。
どちらにしても、ロワール川以南からガロンヌ川以北にかけての海岸から内陸二〇〇キロ内外の一帯は、ごく少数のヒト以外、精霊族や鬼神族は住まない直立二足歩行動物の超希薄地帯だ。
セロが西ユーラシアへの進出の足がかりにするには、白魔族が去ったことで敵対勢力が消えたことから、ロガロンヌ川以南からピレネー山脈までの海岸は理想といえる。
精霊族によれば、セロはまったくの未開地に街を建設しない。
セロ以外の文明を築いた生物を駆逐して街を破壊し、その跡地に彼らの街を造る。
イヌのマーキング、イヌAが電信柱に尿をかけると、イヌBがその上に尿をかける、に似た行為らしい。
西ユーラシアでは、真の冬を前に白魔族が北アフリカ方面に移動した。
白魔族が移動した理由は、ドラキュロのライン川渡河だ。白魔族はドラキュロを恐れて、一時的に二〇〇万年前のチュニジア方面に退去した。
その後、ヒト社会ではフルギア帝国の崩壊という大変動が起きる。フルギア帝国の崩壊によって、白魔族は西ユーラシアへの帰還ができなくなった。
結果、空白となったガロンヌ川からピレネー山脈までのビスケー湾沿岸にセロが上陸した。
この時点で、セロは無血で西ユーラシアに橋頭堡を築いた。
だが、領域を拡大しようと、北進・東進を開始するとロワール川流域を生活圏とするヒトと接触する。
セロにとってヒトは、西ユーラシアにおいて最初に接触した直立二足歩行動物であり、駆除すべき害獣であった。
ヒトは、精霊族や鬼神族と比べて、食料生産基盤が弱く、脆弱に見えただろうから、最初に駆除することが合理的とセロは判断したのだと思う。
この判断は、客観的に見て正しい。
コーカレイ周辺、半径一〇〇キロ以内のロワール川南岸にヒトの大きな街や村はない。家屋数戸の小さな集落はあったらしい。
荒野で作戦行動をとるセロは、ヒトの襲撃を避けて頻繁にキャンプを移動している。
そして、セロも焚き火をする。暖をとるためにも、炊事のためにも、野生動物の接近を防ぐためにも、焚き火は必要なのだ
セロの現地部隊は、一八〇体ほどだ。
一八〇体分の食糧確保は容易じゃない。ヒトの街があれば略奪で手に入るが、ヒトの街はない。
白魔族の街はコーカレイだけ。ヒトは少なく、略奪による物資補給は不可能。
セロはビスケー湾岸に橋頭堡を築いたのち、飛行船を使ってロワール川北岸を攻め、ヒトの街を次々と攻略する。
そのクライマックスがノイリンだった。
だが、ノイリンはセロの侵攻を撃退し、加えてロワール川南岸下流のコーカレイという橋頭堡を得る。
ノイリン北地区支配下のコーカレイは、セロとの戦いにおけるヒトの最前線であった。
その最前線では、一八〇体のセロを追って、九人のヒトが広大な草原を捜索している。
二〇〇万年後の世界では、ロワール川河口とガロンヌ川河口の距離は一〇〇キロ。
一〇〇キロの海岸線のどこかに、コーカレイ方面で行動するセロの補給拠点があるはずだ。
セロの補給拠点から内陸へ補給線が延びているはずで、補給線の終点を探し出し、潰せばコーカレイは眼前の戦いに勝てる。
俺は車輌班の協力を得て、夜通し水陸両用トラックの改造を行った。
通常のクルマならばフロントウインドウがあるあたりと、荷台の中央付近に頑丈なロールバーを据え付ける。
そして荷台のロールバーには、MG3機関銃を載せた。
フルギア人農民が使う二輪の荷車の車輪を、ゴムタイヤに変えた特製トレーラーも作った。
早朝、六騎の騎馬が横隊で整列している。見慣れない服装の一団と褐色肌の精霊族の姿もある。
彼らも追撃戦への参加を希望したが、言葉の問題から、相馬が「同行は無理」と説得した。
鞍上には、フルギア人とフルギア系が三人、ヴルマン人が三人。
彼らの主張で、同数とした。
六人全員が一〇連発アリサカライフルを背負っている。三人のヴルマン人は、ヴルマン社会において、ボルトアクション小銃で武装した最初の兵となった。
九人の女の子が九人の隊員に一輪の花を渡す。
六人の隊員は、鞍上から花を受け取り、胸に挿す。
これは、ヴルマンの習慣らしい。神妙なヴルマン人に対して、フルギア人とフルギア系は笑顔を見せている。
水陸両用トラックに乗る俺たち三人にも、花が渡された。
俺に花を渡したのは、一〇歳くらいのフルギア商人の娘だ。
ケンちゃんがララと手をつないでいる。ララは、ヴルマン人に花を渡した。ヴルマン人の屈強な若者は、精霊族であるララに驚いていた。ヒトの社会で生活を共にする精霊族は非常に珍しい。
二挺のMG3が、出入口周辺の草むらに向かって掃射する。
潜んでいるかもしれない狙撃手を牽制するためだ。
水陸両用トラックを先頭に堡塁を出て、南西に向かう。
ヒトの場合だが……。
大隊は、二個から六個の中隊で編制される戦術単位だ。上位に連隊がある。大隊は通常、単一の兵科で編制される。
中隊は、四個小隊前後で編制される。
小隊は、四個分隊前後で編制される。
分隊は、一〇人前後で編成される。
分隊の下位に班を置くことがあるが、陸上自衛隊では班は分隊よりも規模が大きい。
ノイリンにおいて、車輌班や通信班といった名称は、この戦術単位である〝班〟に由来する。
現在では、どの〝班〟も本来の規模を大きく逸脱していて、巨大な組織になっているが……。
小隊は、一〇から五〇人で編制される。
中隊は、通常二〇〇人規模となる。
我々がセロの現地部隊を〝中隊〟と呼んでいる理由は、この兵員規模による。
セロの軍隊の戦術単位はまったく不明で、セロの将校を尋問した限りでは、戦術単位という概念自体が希薄らしい。
セロの軍事的な組織・編制は、ほとんどわかっていない。
コーカレイまでセロ部隊が侵攻してきた第一次コーカレイ防衛戦では、二五〇体ほどの歩兵と騎兵がいた。
現在の部隊はそのときの残存で、一八〇体ほどに減じているが、騎兵と乗馬歩兵、それと輸送兵で編制されている。
この中隊指揮官、中隊長は学習能力が高く、コーカレイの部隊に対しての騎馬突撃は絶対にしない。
キャンプを頻繁に変え、一カ所に留まらない。セロは通常、食料を現地調達するが、この部隊は原則として略奪は行わない。
ロワール川を渡れば、ヒトの街や村があり、反撃を覚悟するならば略奪は可能だ。
セロの中隊長は、痕跡を残す略奪を行わず、コーカレイの追撃をかわし、城内から出てくるヒトに対してはゲリラ戦に徹している。
食料、武器、弾薬の補給を安定的に行っているはずで、その方法がわからない。ロジスティクスを破壊できれば、セロの中隊の活動を封じ込める。
ロジスティクスを破壊できない以上、戦闘部隊を叩くしか選択肢がない。
戦争に勝つための最良の選択は、戦闘部隊と正面から戦うのではなく、補給線を断つか、後方にいる非戦闘員を殺すことだ。
一人の兵士を殺すより、一人の赤子を殺すほうが、何倍も勝利に近付ける。
セロはこの原則をよく理解していて、ヒトの街を襲うと、新たな世代となる幼・若年者と知識と経験が豊かな壮年・老年者から殺す。
俺たち九人がコーカレイを出た事情は、積極的な攻撃というよりは、追い詰められての行動という面もあった。
どうにかして、コーカレイに最も近いセロの拠点だけでも叩きたい。
セロの中隊は昼間、焚き火をしない。
しかし、裸火を一切使わずに、荒野で生きていくことは不可能に近い。
コーカレイ周辺は多少の起伏はあるが、総じて平坦で、岩陰や洞窟などはない。雨露をしのぐには、テントが必要。テントでは完全に風雨を防げない。
雨が降れば濡れ、風が強ければテントは飛ばされる。
セロの自然に対する耐性は不明だが、ヒトと同じと考えれば、過去数カ月間に及ぶヒトとの断続的な戦いのなかで、基幹的な拠点を設けていないとは考えにくい。
俺は、バラカルドでのキャンプを思い出していた。
古代の石の家に、草葺の屋根を載せ、どうにか風雨に耐えた。
現在のセロが半恒久的な拠点を設けていないとするならば、バラカルドよりもはるかに過酷な状況にあるはず。
俺は、それはありえない、と考えていた。どう表現すればいいのか〝秘密基地〟的な、拠点が存在するはずだ。
相馬は、焚き火の煙を観察した方向と日時を記録していた。
煙の方向と日時には、一定の関係があることを相馬は読み取っていたが、それを利用する術を欠いていた。
一時期、山砲による射撃も考えたようだが、着弾観測なしでは命中するはずはない。
間接射撃を行うには、射向と距離が必須。煙で射向はわかるとしても、距離は推測しかない。
それでは命中しない。
相馬はレーザー距離計を使って煙までの距離を算出しようとしたが、煙の密度が薄く失敗している。
航空機を使った上空からの拠点割り出しも空振りだった。
セロは飛行船を使うので、対空偽装に長けている可能性がある。
だから、相馬は山砲を発射しなかった。
ノイリン製七六・二ミリ山砲は、スコーピオンの備砲であるL23A1から生み出された。
砲身長は二八口径、閉鎖機は重量軽減のため断隔螺式を採用している。全重五五〇キロと非常に軽い。開脚砲架で、最大射程は八五〇〇メートルある。砲弾と薬莢はL23A1と共用できる。
砲口初速は秒速五三四メートル。
断隔螺式なので薬嚢も使え、非常時は毛織物の袋に発射薬を詰めて砲弾を発射できる。
榴弾威力は、七五ミリ級の榴弾砲・野砲と同等。サスペンション付きの専用ドリーがあり、牽引砲ながら高い機動性がある。
俺と相馬の作戦は、二段階に分けられる。
第一段階はセロの拠点を探し出すこと。
第二段階は、セロの拠点が山砲の射程内にあれば、間接射撃によって攻撃する。
もし、射程外ならば、我々が携行する迫撃砲で叩く。
由加は、山砲の射程外である場合は、最大射程一万四〇〇〇メートルの七六・二ミリ高射砲による攻撃を主張している。
どちらにしても、最重要課題は、セロの拠点を探し出すことだ。
相馬は、日の入り直前と日の出直後に各二回、計四回、コーカレイの南東からの煙を観測している。煙は、四回とも一瞬で消えている。野火の類ではない。
ここがセロの拠点である可能性が最も高い。
我々の任務は、セロの拠点を発見し、その座標をコーカレイに伝え、可能ならば山砲か高射砲による砲撃を実施することにある。
着弾観測と砲撃後に、戦果の確認もしなければならない。
我々一輌と六騎は、セロの目をくらますために南西に向かい、八キロ進んで、東に方向を変えた。
煙は大気中で拡散するし、風で流されもする。
しかも、たった四回しか観測されていない。通常であれば「あっちの方角だ」程度の情報でしかない。
しかし、相馬はかつては物理学者であり、どこまでも科学者だった。
大気の状態、風向と風速、それらを緻密に検討して、方向の解を導き出していた。
相馬いわく「距離一〇キロでも一〇メートル以内にある」と。
相馬の推定を精度一〇分の一としたとしても、一〇〇メートルとずれてはいない。
コーカレイからの正確な距離と方向がわかれば、セロの〝秘密基地〟をアウトレンジで叩ける。
俺、相馬、由加の三人は、そう考えていた。
相馬が観測した煙の方向に、周囲よりも三〇メートル高い小さな丘がある。距離はコーカレイから六キロ。この高さなら見通し距離は二〇キロ。
この丘はポイント・パリエルと呼んでいた。人工的な円錐形の丘だ。相馬は「古墳のようだ」といったが、まさにそのそのように見える。
この丘の頂上から着弾観測できれば、理想的なのだが、丘の南に針葉樹の森がある。この森の西側外周部にセロの拠点がある可能性が高い。
森の南辺は、砲の射程距離外にある。
上空からの捜索では森のなかに道はなく、樹木の密度は密林というほどではないが、疎林ではない。
道がなければ移動できない。とすれば、セロの拠点は森の外周部に限られる。
俺は、丘の二キロ手前から徒歩で頂上に向かう。
同行者は三人。通信担当のレネー、フルギア系の毛皮商オト、そしてヴルマン人指揮官のベアーテ。
レネーは東地区から北地区に転居し、現在は通信班に所属する移住第三世代の新参者。
セロとフルギア帝国によるノイリン侵攻では、東地区の内部抗争とセロやフルギアの攻撃のなか、幼い妹を連れて逃げ惑った経験がある。両親は、死体で発見された。
オトは買い付けに向かう旅の途中、妻と幼い二子をセロに殺されている。
俺たち四人は草原を歩いている。オトが先導し、一〇メートル離れて俺、その一〇メートル後方に無線を背負うレネー、最後尾がベアーテだ。
俺は周囲に目を配りながら、単調な歩行のなかで、由加の行動を思い起こしていた。
由加は半年ほど前から、俺たちがこの世界に持ち込んだ武器の再点検・整備を始めた。
俺たちが持ち込んだ武器は、警察、海上保安庁、自衛隊、在日アメリカ軍と何らかの関係がある。
M14、ミニミ機関銃などは在日アメリカ軍から、ナンブM60やS&Wミリタリー&ポリスは警察から、64式小銃と89式小銃などは海上保安庁から、二挺の62式機関銃と自衛隊のミニミ、74式車載機関銃は、自衛隊資料館の展示物だった。
珠月が愛用するスタームルガー・ミニ30だけは、民家で見つけた。
89式小銃と拳銃数挺を除けば、どれも旧式な武器だ。
弾薬のほとんどは在日アメリカ軍のもので、七・六二ミリNATO弾の大半は64式小銃用の一〇パーセント減装弾ではない。
七・六二ミリNATO弾は、五・五六ミリNATO弾と異なり、雷管の感度などが生産国によって微妙に異なっている。
一応、64式小銃の場合はレギュレーターを調整すれば、アメリカ軍の弾ならば使える。
海上保安庁の64式小銃は状態がよく、俺たちにとっては頼りになる武器だ。
由加はこの銃にピカティニーレールを取り付けるなど、魔改造と呼んでもいいような、使い勝手を向上させる工夫を加えている。
89式小銃の耐久性は。64式小銃と比べるとかなり劣る。実際、64式小銃の退役よりも、89式小銃のほうが年次が早い。
64式小銃や62式機関銃の銃身内部には摩耗を防ぐためのクロムメッキが施されているが、89式小銃にはない。一銃を大切に使うのではなく、銃は弾を発射する消耗品と考えているからだ。
その考えは二〇〇万年前は正しかったのだろう。
物資の調達が難しい二〇〇万年後の世界では、損耗は死の接近と考えていい。
由加はチェスラクに頼んで、89式小銃の銃身内部にクロムメッキを施してもらった。
度重なる改造を受けていた62式機関銃は、由加の考えを加えて何度目かの改造を行った。
非分離型メタルリンクへの対応と、トリガー(引き金)の節度感の改善。
銃身をヘビーバレル化して、連続発射性能を大幅に引き上げた。薬室を作り直し、部品の肉厚を大幅に増やして連続発射時の温度上昇を抑え、弾薬の自爆現象、薬室への薬莢の貼り付き、薬室に貼り付いた薬莢を排出する際の断裂を完全に解消する。
62式機関銃の機構的な特徴である薬莢を前後に揺すりながら徐々に引き抜く機能の揺底は、かなり以前に相馬によって取り除かれている。
今回の改造によって、62式機関銃は〝完動〟する武器になった。
由加は62式機関銃をあまり好いてはいなかったが、これらの改造によって信頼できる武器になった。
由加は、ケンちゃんやちーちゃんの世代が大人になっても、これらの武器が使い続けられるようにしたいのだ。
俺には、由加の母親としての気持ちがよくわかる。
この世界では、銃から弾が出ないと死ぬのだ。
ドラキュロに食われたくなければ、銃を大事にし、銃の手入れを怠らず、銃弾は豊富に持たなければならない。
通信手レネーは、PAR89を装備している。二〇発着脱弾倉、折りたたみ銃床、ピストルグリップの七・六二×三九ミリのノイリン製ポンプアクションライフルだ。
フルギア系毛皮商オトの武器は、レバーアクションの四四口径ライフル。オトは拳銃ではなく、ソードオフの水平二連ショットガンを腰に下げている。
ヴルマン人の姫君ベアーテは、ノイリン製一〇連発ボルトアクション小銃を持つ。
俺はいつものM14だ。
オトが左手を挙げて、身をかがめる。
後続の三人がオトと同じ行動をとる。
前方一〇〇メートルをブルーウルフが横切る。ブルーウルフを避けるようにドラキュロが一体西に向かう。
通常は撃ち殺すが、セロに銃声を聞かれたくないので、見逃す。それが、奇妙なほどの罪悪感になる。
見逃したドラキュロがヒトを殺す可能性が残るからだ。セロとの戦いも重要だが、ドラキュロの駆除もヒトの存続には必須のことだ。
丘の勾配は正確に三〇度で、明らかに自然にできたものではない。この勾配を登り、頂上に達する。
ここで一夜、森を観察する。
四人は草原迷彩の大ぶりの防水ポンチョを被る。擬装と防寒の二つの役割をする。
レネーは大型の光学双眼鏡を持っている。俺はデジタル双眼鏡で、森を観察する。
丘の頂上は、円錐のてっぺんを水平にすぱっと切り取ったようになっていて、四人は腹這いになっている。
オトとベアーテが会話している。
オトが「何も見えないな」というと、ベアーテが「そうだな」と答える。
オトが「クロテンが多くいそうな、深い森だ」と続けると、ベアーテが「猟師か?」と尋ねた。
「いいや、毛皮商人だ」
「川の上流でも毛皮を使うのか?」
「もちろん。
シカが多いかな?
肉は食べて、毛皮が残り、俺たちはそれを仕入れる。
北方人から買うんだ。
毛皮は、ヒトの街で売ることもあるし、ヒト以外の街で売ることもある」
「小売りもしていたのか?」
「いいや、卸だけだよ。
大量に仕入れて、各街の毛皮商に売るんだ」
「手広く商売をしているのだな」
「いいや。
使用人はいなかった。
女房と二人で買い付けして、運んで、売る……」
「奥方殿は?」
「セロに殺されたよ。
旅の途中で……。
二人の子供もね。
三人とも怖かったと思う」
「すまない」
「いいんだ。
きちんと思い出さないと、顔さえ忘れてしまう。
あんた、子供は?」
「この顔では嫁には行けぬ」
ベアーテの左頬には二本の線がある。刃物で切られた傷だ。縫合された痕跡もある。
だが、古い傷で、そう目立つものではない。
ベアーテが続ける。
「今年で一八になる。
完全に行き遅れだ」
「だが、ノイリンじゃ、まだまだだ。
ノイリンの女は二〇をとうに過ぎても嫁には行かないらしい」
レネーが双眼鏡を覗きながら、二人の話に割り込む。
「オトの話しは半分正しいが、半分間違っている。
東地区では、男も女も結婚は早い。
二〇前での結婚は珍しくない。
北地区と西地区は、やたらと遅い。
西地区じゃ、結婚という制度があるかないかも不明だ。好いた男と女は、勝手に一緒に住み始めるんだ。
東南地区と西南地区は、まともかな」
ベアーテが真剣な声音で尋ねる。
「嫁に行かぬ女は、どうやって生きていくんだ?」
レネーが答える。
「嫁をもらわぬ男と一緒だよ。
勝手に生きている。
朝起きて、仕事に行って、酒を飲んで、寝る。
これの繰り返しだ。
俺は北地区に住んでいるんだが、以前は東地区に家があった。
北地区では、女の子と男の子は差別も区別もされない。読み書きも教わるし、数の数え方だって教えてもらえる。
医術を学ぶ女の子もいるし、機械の開発に携わる女の子もいる。
恋愛も自由だ。
俺の釣り仲間は、俺と同じ異教徒の新参者だが、彼女はフルギア人だ。
異教徒の女の子と付き合っているブルグント人だっている」
ベアーテがレネーに尋ねる。
「レネーはなぜここにいる?」
「両親が死んで、東地区にあった畑を失った。
生活のために北地区に移った。
幼い妹がいるので、給料がいいコーカレイに来たんだ」
ベアーテが続ける。
「妹もコーカレイに?」
「いいや、ノイリンに残っている。
安全だからね」
太陽は、完全に地平線に没した。
ベアーテが移動する炎を見つける。
「あれは、松明〈たいまつ〉では?」
松明は東から西に移動している。数は、三本、五本と増えていく。
通常、セロは松明を使わない。セロは江戸時代の携帯照明器具である龕灯〈がんとう〉のような探照灯を使う。
光源はガスマントル。麻布に硝酸トリウムを染みこませ、ガスの炎で灰化すると発光する。燃焼させるガスには、メタンが使われている。ヒトも白熱ガス灯として、同じ原理を使っている。
松明が移動しているとすれば、ヒト、精霊族、鬼神族の可能性が高くなる。
もちろん、物資不足に陥っているセロが松明を使うこともあるだろう。
松明は、西から東にも移動する。
さらに、焚き火と思われる大きな炎も見える。
俺がいう。
「セロではないかもしれない。
誤ってヒトを攻撃したらたいへんだ。
明日偵察に行こう。
ここに二人残る。
レネーがここで無線を中継する」
ベアーテが志願する。
「私が偵察に出る」
俺が同意する。
「オトとレネーが残る。
俺とベアーテで偵察に出る」
俺は後悔していた。
森のなかにセロがいれば、不期遭遇戦となる可能性が高い。
つまり、敵味方の二つの部隊が、互いに前進していて、出会い頭的に遭遇して、戦闘になるパターンだ。
森のなかでの遭遇戦では、発射弾数の多い銃器が適している。AK‐47のようなアサルトライフルや短機関銃がベスト。
俺のM14はバトルライフルで、実質は半自動小銃。ベアーテはこの戦いに不向きなボルトアクションだ。
あの玩具のほうがましな作りのステンガンを持ってくるんだった。
相馬が作ったステンガンは、オリジナルとは形状が少し違う。
トリガー(引き金)が弾倉の直後に移動し、ピストルグリップが取り付けられている。弾倉の装着部分の強度が非常に高く、フォアグリップとして使える。
それ以外は、ステンガンと大差はない。メカニズムはステンガンそのもの。シンプルブローバック、オープンボルト。部品点数はわずか五〇個。
ノイリン向きの武器だ。
そのステンガンがない。
M14はフルオートで撃てるが、俺の体格では発射時の保持が難しい。特に曲銃床だと、集弾率が大きく下がる。直銃床のほうがコントロールしやすい。
M14を手放さないならば、直銃床化は避けられない。そのための在日アメリカ軍の住宅内で手に入れたアフターマーケットキットも持っている。
俺は緊張から逃れるために、つまらない後悔をしている。
俺が先頭を歩き、一〇メートル後方をベアーテが続く。
斉木にとられたS&Wの自動拳銃M59は、取り返していた。斉木には、ワルサーPPKのコピーであるベルサ・サンダー380が渡された。
俺は右腰にベレッタM92を下げ、左脇にM59を吊している。
俺は左手を挙げて、身をかがめる。振り向くと、ベアーテも同じ姿勢をとっている。
俺は手招きでベアーテを呼んだ。
ベアーテが中腰で近付く。
ベアーテが問う。
「どうした?」
俺はM59を脇のホルスターから抜く。
「これから森に入る。
ボルトアクションでは、戦いにくい。
この拳銃を使え。
一四発撃てる。
安全装置を外して、両手で構えて進むんだ。
ライフルは背負う」
俺とベアーテは小銃を背負い、拳銃を構えて森に入る。
ベアーテは、俺の行動を真似ている。
海上保安庁から手に入れた88式鉄帽が奇妙なほど、重く感じる。
ベアーテは、ローマ兵のような兜を被っている。金色に輝いていたが、艶消し黒で乱雑に塗装されている。胸甲は着けていない。
俺もボディアーマーを脱いできたが、派出所で手に入れたの防刃チョッキはジャケットの下に着けている。
松明は森の西辺の北側で揺れていた。
森の外縁を回り込んでいくと、獣道よりも少しだけマシな人道を見つける。
その人道を森に向かって一〇〇メートル進むと、焚き火をした痕跡を見つける。
ベアーテがすぐ後方にいる。
そして、話しかける。
「最低でも四人か五人がいたようだ」
「ヒトとは限らないよ」
「セロか?」
「それもどうかな?」
会話は耳元でささやく程度の小声だ。
まさに不期遭遇だった。
拳銃の銃口を下げて、安全装置をかけたところで、森から両手で小さい木箱を持つ男が出てきた。
俺は慌てたし、その男も慌てた。
俺は拳銃を構え、安全装置を外し、男に怒鳴る。
「動くな!」
ベアーテも拳銃を構え、叫ぶ。
「手を上げろ!」
森からバトルライフルを構えた男が飛び出す。
互いににらみ合い、怒鳴り合う。
「銃を捨てろ!」
「おまえが捨てろ!」
「手を上げろ!」
「撃つな!」
互いにわかっていることがある。
ヒトだ。
セロじゃない。
俺が「わかった銃を置く」と告げる。
相手はギラついた目をしている。
俺の目もギラついているだろう。
これが、ロワール川下流北岸の街マッカリアの人々との出会いであった。
白魔族はロワール川南岸以南海岸部を勢力圏としたが、主たる支配地域はガロンヌ川からピレネー山脈までのビスケー湾沿岸一帯だった。
ロワール川南岸からガロンヌ川北岸までは、ヒトと白魔族(オーク)との緩衝地帯としての役割が強かった。
少ないがヒトも住んでいた。
ガロンヌ川以北において、コーカレイのような街は例外で、コーカレイはフルギア皇帝と白魔族との〝接点〟としての役割を担っていた。
数代前のフルギア皇帝は、どこからかヒトをさらってきて、ロワール川南岸に放ち、白魔族にヒト狩りをさせたとも伝えられている。
ヒトと白魔族との接触は比較的多かったようだが、フルギア皇帝家だけが白魔族を神の使徒として神格化していた。
実際、ロワール川以北海岸部に住むヴルマン人は白魔族と何度も戦っている。セロの侵入以前、ヴルマン最大の敵は白魔族だった。
コーカレイが存続できた理由は、フルギア帝国の保護下にあったからだ。
どちらにしても、ロワール川以南からガロンヌ川以北にかけての海岸から内陸二〇〇キロ内外の一帯は、ごく少数のヒト以外、精霊族や鬼神族は住まない直立二足歩行動物の超希薄地帯だ。
セロが西ユーラシアへの進出の足がかりにするには、白魔族が去ったことで敵対勢力が消えたことから、ロガロンヌ川以南からピレネー山脈までの海岸は理想といえる。
精霊族によれば、セロはまったくの未開地に街を建設しない。
セロ以外の文明を築いた生物を駆逐して街を破壊し、その跡地に彼らの街を造る。
イヌのマーキング、イヌAが電信柱に尿をかけると、イヌBがその上に尿をかける、に似た行為らしい。
西ユーラシアでは、真の冬を前に白魔族が北アフリカ方面に移動した。
白魔族が移動した理由は、ドラキュロのライン川渡河だ。白魔族はドラキュロを恐れて、一時的に二〇〇万年前のチュニジア方面に退去した。
その後、ヒト社会ではフルギア帝国の崩壊という大変動が起きる。フルギア帝国の崩壊によって、白魔族は西ユーラシアへの帰還ができなくなった。
結果、空白となったガロンヌ川からピレネー山脈までのビスケー湾沿岸にセロが上陸した。
この時点で、セロは無血で西ユーラシアに橋頭堡を築いた。
だが、領域を拡大しようと、北進・東進を開始するとロワール川流域を生活圏とするヒトと接触する。
セロにとってヒトは、西ユーラシアにおいて最初に接触した直立二足歩行動物であり、駆除すべき害獣であった。
ヒトは、精霊族や鬼神族と比べて、食料生産基盤が弱く、脆弱に見えただろうから、最初に駆除することが合理的とセロは判断したのだと思う。
この判断は、客観的に見て正しい。
コーカレイ周辺、半径一〇〇キロ以内のロワール川南岸にヒトの大きな街や村はない。家屋数戸の小さな集落はあったらしい。
荒野で作戦行動をとるセロは、ヒトの襲撃を避けて頻繁にキャンプを移動している。
そして、セロも焚き火をする。暖をとるためにも、炊事のためにも、野生動物の接近を防ぐためにも、焚き火は必要なのだ
セロの現地部隊は、一八〇体ほどだ。
一八〇体分の食糧確保は容易じゃない。ヒトの街があれば略奪で手に入るが、ヒトの街はない。
白魔族の街はコーカレイだけ。ヒトは少なく、略奪による物資補給は不可能。
セロはビスケー湾岸に橋頭堡を築いたのち、飛行船を使ってロワール川北岸を攻め、ヒトの街を次々と攻略する。
そのクライマックスがノイリンだった。
だが、ノイリンはセロの侵攻を撃退し、加えてロワール川南岸下流のコーカレイという橋頭堡を得る。
ノイリン北地区支配下のコーカレイは、セロとの戦いにおけるヒトの最前線であった。
その最前線では、一八〇体のセロを追って、九人のヒトが広大な草原を捜索している。
二〇〇万年後の世界では、ロワール川河口とガロンヌ川河口の距離は一〇〇キロ。
一〇〇キロの海岸線のどこかに、コーカレイ方面で行動するセロの補給拠点があるはずだ。
セロの補給拠点から内陸へ補給線が延びているはずで、補給線の終点を探し出し、潰せばコーカレイは眼前の戦いに勝てる。
俺は車輌班の協力を得て、夜通し水陸両用トラックの改造を行った。
通常のクルマならばフロントウインドウがあるあたりと、荷台の中央付近に頑丈なロールバーを据え付ける。
そして荷台のロールバーには、MG3機関銃を載せた。
フルギア人農民が使う二輪の荷車の車輪を、ゴムタイヤに変えた特製トレーラーも作った。
早朝、六騎の騎馬が横隊で整列している。見慣れない服装の一団と褐色肌の精霊族の姿もある。
彼らも追撃戦への参加を希望したが、言葉の問題から、相馬が「同行は無理」と説得した。
鞍上には、フルギア人とフルギア系が三人、ヴルマン人が三人。
彼らの主張で、同数とした。
六人全員が一〇連発アリサカライフルを背負っている。三人のヴルマン人は、ヴルマン社会において、ボルトアクション小銃で武装した最初の兵となった。
九人の女の子が九人の隊員に一輪の花を渡す。
六人の隊員は、鞍上から花を受け取り、胸に挿す。
これは、ヴルマンの習慣らしい。神妙なヴルマン人に対して、フルギア人とフルギア系は笑顔を見せている。
水陸両用トラックに乗る俺たち三人にも、花が渡された。
俺に花を渡したのは、一〇歳くらいのフルギア商人の娘だ。
ケンちゃんがララと手をつないでいる。ララは、ヴルマン人に花を渡した。ヴルマン人の屈強な若者は、精霊族であるララに驚いていた。ヒトの社会で生活を共にする精霊族は非常に珍しい。
二挺のMG3が、出入口周辺の草むらに向かって掃射する。
潜んでいるかもしれない狙撃手を牽制するためだ。
水陸両用トラックを先頭に堡塁を出て、南西に向かう。
ヒトの場合だが……。
大隊は、二個から六個の中隊で編制される戦術単位だ。上位に連隊がある。大隊は通常、単一の兵科で編制される。
中隊は、四個小隊前後で編制される。
小隊は、四個分隊前後で編制される。
分隊は、一〇人前後で編成される。
分隊の下位に班を置くことがあるが、陸上自衛隊では班は分隊よりも規模が大きい。
ノイリンにおいて、車輌班や通信班といった名称は、この戦術単位である〝班〟に由来する。
現在では、どの〝班〟も本来の規模を大きく逸脱していて、巨大な組織になっているが……。
小隊は、一〇から五〇人で編制される。
中隊は、通常二〇〇人規模となる。
我々がセロの現地部隊を〝中隊〟と呼んでいる理由は、この兵員規模による。
セロの軍隊の戦術単位はまったく不明で、セロの将校を尋問した限りでは、戦術単位という概念自体が希薄らしい。
セロの軍事的な組織・編制は、ほとんどわかっていない。
コーカレイまでセロ部隊が侵攻してきた第一次コーカレイ防衛戦では、二五〇体ほどの歩兵と騎兵がいた。
現在の部隊はそのときの残存で、一八〇体ほどに減じているが、騎兵と乗馬歩兵、それと輸送兵で編制されている。
この中隊指揮官、中隊長は学習能力が高く、コーカレイの部隊に対しての騎馬突撃は絶対にしない。
キャンプを頻繁に変え、一カ所に留まらない。セロは通常、食料を現地調達するが、この部隊は原則として略奪は行わない。
ロワール川を渡れば、ヒトの街や村があり、反撃を覚悟するならば略奪は可能だ。
セロの中隊長は、痕跡を残す略奪を行わず、コーカレイの追撃をかわし、城内から出てくるヒトに対してはゲリラ戦に徹している。
食料、武器、弾薬の補給を安定的に行っているはずで、その方法がわからない。ロジスティクスを破壊できれば、セロの中隊の活動を封じ込める。
ロジスティクスを破壊できない以上、戦闘部隊を叩くしか選択肢がない。
戦争に勝つための最良の選択は、戦闘部隊と正面から戦うのではなく、補給線を断つか、後方にいる非戦闘員を殺すことだ。
一人の兵士を殺すより、一人の赤子を殺すほうが、何倍も勝利に近付ける。
セロはこの原則をよく理解していて、ヒトの街を襲うと、新たな世代となる幼・若年者と知識と経験が豊かな壮年・老年者から殺す。
俺たち九人がコーカレイを出た事情は、積極的な攻撃というよりは、追い詰められての行動という面もあった。
どうにかして、コーカレイに最も近いセロの拠点だけでも叩きたい。
セロの中隊は昼間、焚き火をしない。
しかし、裸火を一切使わずに、荒野で生きていくことは不可能に近い。
コーカレイ周辺は多少の起伏はあるが、総じて平坦で、岩陰や洞窟などはない。雨露をしのぐには、テントが必要。テントでは完全に風雨を防げない。
雨が降れば濡れ、風が強ければテントは飛ばされる。
セロの自然に対する耐性は不明だが、ヒトと同じと考えれば、過去数カ月間に及ぶヒトとの断続的な戦いのなかで、基幹的な拠点を設けていないとは考えにくい。
俺は、バラカルドでのキャンプを思い出していた。
古代の石の家に、草葺の屋根を載せ、どうにか風雨に耐えた。
現在のセロが半恒久的な拠点を設けていないとするならば、バラカルドよりもはるかに過酷な状況にあるはず。
俺は、それはありえない、と考えていた。どう表現すればいいのか〝秘密基地〟的な、拠点が存在するはずだ。
相馬は、焚き火の煙を観察した方向と日時を記録していた。
煙の方向と日時には、一定の関係があることを相馬は読み取っていたが、それを利用する術を欠いていた。
一時期、山砲による射撃も考えたようだが、着弾観測なしでは命中するはずはない。
間接射撃を行うには、射向と距離が必須。煙で射向はわかるとしても、距離は推測しかない。
それでは命中しない。
相馬はレーザー距離計を使って煙までの距離を算出しようとしたが、煙の密度が薄く失敗している。
航空機を使った上空からの拠点割り出しも空振りだった。
セロは飛行船を使うので、対空偽装に長けている可能性がある。
だから、相馬は山砲を発射しなかった。
ノイリン製七六・二ミリ山砲は、スコーピオンの備砲であるL23A1から生み出された。
砲身長は二八口径、閉鎖機は重量軽減のため断隔螺式を採用している。全重五五〇キロと非常に軽い。開脚砲架で、最大射程は八五〇〇メートルある。砲弾と薬莢はL23A1と共用できる。
砲口初速は秒速五三四メートル。
断隔螺式なので薬嚢も使え、非常時は毛織物の袋に発射薬を詰めて砲弾を発射できる。
榴弾威力は、七五ミリ級の榴弾砲・野砲と同等。サスペンション付きの専用ドリーがあり、牽引砲ながら高い機動性がある。
俺と相馬の作戦は、二段階に分けられる。
第一段階はセロの拠点を探し出すこと。
第二段階は、セロの拠点が山砲の射程内にあれば、間接射撃によって攻撃する。
もし、射程外ならば、我々が携行する迫撃砲で叩く。
由加は、山砲の射程外である場合は、最大射程一万四〇〇〇メートルの七六・二ミリ高射砲による攻撃を主張している。
どちらにしても、最重要課題は、セロの拠点を探し出すことだ。
相馬は、日の入り直前と日の出直後に各二回、計四回、コーカレイの南東からの煙を観測している。煙は、四回とも一瞬で消えている。野火の類ではない。
ここがセロの拠点である可能性が最も高い。
我々の任務は、セロの拠点を発見し、その座標をコーカレイに伝え、可能ならば山砲か高射砲による砲撃を実施することにある。
着弾観測と砲撃後に、戦果の確認もしなければならない。
我々一輌と六騎は、セロの目をくらますために南西に向かい、八キロ進んで、東に方向を変えた。
煙は大気中で拡散するし、風で流されもする。
しかも、たった四回しか観測されていない。通常であれば「あっちの方角だ」程度の情報でしかない。
しかし、相馬はかつては物理学者であり、どこまでも科学者だった。
大気の状態、風向と風速、それらを緻密に検討して、方向の解を導き出していた。
相馬いわく「距離一〇キロでも一〇メートル以内にある」と。
相馬の推定を精度一〇分の一としたとしても、一〇〇メートルとずれてはいない。
コーカレイからの正確な距離と方向がわかれば、セロの〝秘密基地〟をアウトレンジで叩ける。
俺、相馬、由加の三人は、そう考えていた。
相馬が観測した煙の方向に、周囲よりも三〇メートル高い小さな丘がある。距離はコーカレイから六キロ。この高さなら見通し距離は二〇キロ。
この丘はポイント・パリエルと呼んでいた。人工的な円錐形の丘だ。相馬は「古墳のようだ」といったが、まさにそのそのように見える。
この丘の頂上から着弾観測できれば、理想的なのだが、丘の南に針葉樹の森がある。この森の西側外周部にセロの拠点がある可能性が高い。
森の南辺は、砲の射程距離外にある。
上空からの捜索では森のなかに道はなく、樹木の密度は密林というほどではないが、疎林ではない。
道がなければ移動できない。とすれば、セロの拠点は森の外周部に限られる。
俺は、丘の二キロ手前から徒歩で頂上に向かう。
同行者は三人。通信担当のレネー、フルギア系の毛皮商オト、そしてヴルマン人指揮官のベアーテ。
レネーは東地区から北地区に転居し、現在は通信班に所属する移住第三世代の新参者。
セロとフルギア帝国によるノイリン侵攻では、東地区の内部抗争とセロやフルギアの攻撃のなか、幼い妹を連れて逃げ惑った経験がある。両親は、死体で発見された。
オトは買い付けに向かう旅の途中、妻と幼い二子をセロに殺されている。
俺たち四人は草原を歩いている。オトが先導し、一〇メートル離れて俺、その一〇メートル後方に無線を背負うレネー、最後尾がベアーテだ。
俺は周囲に目を配りながら、単調な歩行のなかで、由加の行動を思い起こしていた。
由加は半年ほど前から、俺たちがこの世界に持ち込んだ武器の再点検・整備を始めた。
俺たちが持ち込んだ武器は、警察、海上保安庁、自衛隊、在日アメリカ軍と何らかの関係がある。
M14、ミニミ機関銃などは在日アメリカ軍から、ナンブM60やS&Wミリタリー&ポリスは警察から、64式小銃と89式小銃などは海上保安庁から、二挺の62式機関銃と自衛隊のミニミ、74式車載機関銃は、自衛隊資料館の展示物だった。
珠月が愛用するスタームルガー・ミニ30だけは、民家で見つけた。
89式小銃と拳銃数挺を除けば、どれも旧式な武器だ。
弾薬のほとんどは在日アメリカ軍のもので、七・六二ミリNATO弾の大半は64式小銃用の一〇パーセント減装弾ではない。
七・六二ミリNATO弾は、五・五六ミリNATO弾と異なり、雷管の感度などが生産国によって微妙に異なっている。
一応、64式小銃の場合はレギュレーターを調整すれば、アメリカ軍の弾ならば使える。
海上保安庁の64式小銃は状態がよく、俺たちにとっては頼りになる武器だ。
由加はこの銃にピカティニーレールを取り付けるなど、魔改造と呼んでもいいような、使い勝手を向上させる工夫を加えている。
89式小銃の耐久性は。64式小銃と比べるとかなり劣る。実際、64式小銃の退役よりも、89式小銃のほうが年次が早い。
64式小銃や62式機関銃の銃身内部には摩耗を防ぐためのクロムメッキが施されているが、89式小銃にはない。一銃を大切に使うのではなく、銃は弾を発射する消耗品と考えているからだ。
その考えは二〇〇万年前は正しかったのだろう。
物資の調達が難しい二〇〇万年後の世界では、損耗は死の接近と考えていい。
由加はチェスラクに頼んで、89式小銃の銃身内部にクロムメッキを施してもらった。
度重なる改造を受けていた62式機関銃は、由加の考えを加えて何度目かの改造を行った。
非分離型メタルリンクへの対応と、トリガー(引き金)の節度感の改善。
銃身をヘビーバレル化して、連続発射性能を大幅に引き上げた。薬室を作り直し、部品の肉厚を大幅に増やして連続発射時の温度上昇を抑え、弾薬の自爆現象、薬室への薬莢の貼り付き、薬室に貼り付いた薬莢を排出する際の断裂を完全に解消する。
62式機関銃の機構的な特徴である薬莢を前後に揺すりながら徐々に引き抜く機能の揺底は、かなり以前に相馬によって取り除かれている。
今回の改造によって、62式機関銃は〝完動〟する武器になった。
由加は62式機関銃をあまり好いてはいなかったが、これらの改造によって信頼できる武器になった。
由加は、ケンちゃんやちーちゃんの世代が大人になっても、これらの武器が使い続けられるようにしたいのだ。
俺には、由加の母親としての気持ちがよくわかる。
この世界では、銃から弾が出ないと死ぬのだ。
ドラキュロに食われたくなければ、銃を大事にし、銃の手入れを怠らず、銃弾は豊富に持たなければならない。
通信手レネーは、PAR89を装備している。二〇発着脱弾倉、折りたたみ銃床、ピストルグリップの七・六二×三九ミリのノイリン製ポンプアクションライフルだ。
フルギア系毛皮商オトの武器は、レバーアクションの四四口径ライフル。オトは拳銃ではなく、ソードオフの水平二連ショットガンを腰に下げている。
ヴルマン人の姫君ベアーテは、ノイリン製一〇連発ボルトアクション小銃を持つ。
俺はいつものM14だ。
オトが左手を挙げて、身をかがめる。
後続の三人がオトと同じ行動をとる。
前方一〇〇メートルをブルーウルフが横切る。ブルーウルフを避けるようにドラキュロが一体西に向かう。
通常は撃ち殺すが、セロに銃声を聞かれたくないので、見逃す。それが、奇妙なほどの罪悪感になる。
見逃したドラキュロがヒトを殺す可能性が残るからだ。セロとの戦いも重要だが、ドラキュロの駆除もヒトの存続には必須のことだ。
丘の勾配は正確に三〇度で、明らかに自然にできたものではない。この勾配を登り、頂上に達する。
ここで一夜、森を観察する。
四人は草原迷彩の大ぶりの防水ポンチョを被る。擬装と防寒の二つの役割をする。
レネーは大型の光学双眼鏡を持っている。俺はデジタル双眼鏡で、森を観察する。
丘の頂上は、円錐のてっぺんを水平にすぱっと切り取ったようになっていて、四人は腹這いになっている。
オトとベアーテが会話している。
オトが「何も見えないな」というと、ベアーテが「そうだな」と答える。
オトが「クロテンが多くいそうな、深い森だ」と続けると、ベアーテが「猟師か?」と尋ねた。
「いいや、毛皮商人だ」
「川の上流でも毛皮を使うのか?」
「もちろん。
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肉は食べて、毛皮が残り、俺たちはそれを仕入れる。
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毛皮は、ヒトの街で売ることもあるし、ヒト以外の街で売ることもある」
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「いいや、卸だけだよ。
大量に仕入れて、各街の毛皮商に売るんだ」
「手広く商売をしているのだな」
「いいや。
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「奥方殿は?」
「セロに殺されたよ。
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「いいんだ。
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「だが、ノイリンじゃ、まだまだだ。
ノイリンの女は二〇をとうに過ぎても嫁には行かないらしい」
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「オトの話しは半分正しいが、半分間違っている。
東地区では、男も女も結婚は早い。
二〇前での結婚は珍しくない。
北地区と西地区は、やたらと遅い。
西地区じゃ、結婚という制度があるかないかも不明だ。好いた男と女は、勝手に一緒に住み始めるんだ。
東南地区と西南地区は、まともかな」
ベアーテが真剣な声音で尋ねる。
「嫁に行かぬ女は、どうやって生きていくんだ?」
レネーが答える。
「嫁をもらわぬ男と一緒だよ。
勝手に生きている。
朝起きて、仕事に行って、酒を飲んで、寝る。
これの繰り返しだ。
俺は北地区に住んでいるんだが、以前は東地区に家があった。
北地区では、女の子と男の子は差別も区別もされない。読み書きも教わるし、数の数え方だって教えてもらえる。
医術を学ぶ女の子もいるし、機械の開発に携わる女の子もいる。
恋愛も自由だ。
俺の釣り仲間は、俺と同じ異教徒の新参者だが、彼女はフルギア人だ。
異教徒の女の子と付き合っているブルグント人だっている」
ベアーテがレネーに尋ねる。
「レネーはなぜここにいる?」
「両親が死んで、東地区にあった畑を失った。
生活のために北地区に移った。
幼い妹がいるので、給料がいいコーカレイに来たんだ」
ベアーテが続ける。
「妹もコーカレイに?」
「いいや、ノイリンに残っている。
安全だからね」
太陽は、完全に地平線に没した。
ベアーテが移動する炎を見つける。
「あれは、松明〈たいまつ〉では?」
松明は東から西に移動している。数は、三本、五本と増えていく。
通常、セロは松明を使わない。セロは江戸時代の携帯照明器具である龕灯〈がんとう〉のような探照灯を使う。
光源はガスマントル。麻布に硝酸トリウムを染みこませ、ガスの炎で灰化すると発光する。燃焼させるガスには、メタンが使われている。ヒトも白熱ガス灯として、同じ原理を使っている。
松明が移動しているとすれば、ヒト、精霊族、鬼神族の可能性が高くなる。
もちろん、物資不足に陥っているセロが松明を使うこともあるだろう。
松明は、西から東にも移動する。
さらに、焚き火と思われる大きな炎も見える。
俺がいう。
「セロではないかもしれない。
誤ってヒトを攻撃したらたいへんだ。
明日偵察に行こう。
ここに二人残る。
レネーがここで無線を中継する」
ベアーテが志願する。
「私が偵察に出る」
俺が同意する。
「オトとレネーが残る。
俺とベアーテで偵察に出る」
俺は後悔していた。
森のなかにセロがいれば、不期遭遇戦となる可能性が高い。
つまり、敵味方の二つの部隊が、互いに前進していて、出会い頭的に遭遇して、戦闘になるパターンだ。
森のなかでの遭遇戦では、発射弾数の多い銃器が適している。AK‐47のようなアサルトライフルや短機関銃がベスト。
俺のM14はバトルライフルで、実質は半自動小銃。ベアーテはこの戦いに不向きなボルトアクションだ。
あの玩具のほうがましな作りのステンガンを持ってくるんだった。
相馬が作ったステンガンは、オリジナルとは形状が少し違う。
トリガー(引き金)が弾倉の直後に移動し、ピストルグリップが取り付けられている。弾倉の装着部分の強度が非常に高く、フォアグリップとして使える。
それ以外は、ステンガンと大差はない。メカニズムはステンガンそのもの。シンプルブローバック、オープンボルト。部品点数はわずか五〇個。
ノイリン向きの武器だ。
そのステンガンがない。
M14はフルオートで撃てるが、俺の体格では発射時の保持が難しい。特に曲銃床だと、集弾率が大きく下がる。直銃床のほうがコントロールしやすい。
M14を手放さないならば、直銃床化は避けられない。そのための在日アメリカ軍の住宅内で手に入れたアフターマーケットキットも持っている。
俺は緊張から逃れるために、つまらない後悔をしている。
俺が先頭を歩き、一〇メートル後方をベアーテが続く。
斉木にとられたS&Wの自動拳銃M59は、取り返していた。斉木には、ワルサーPPKのコピーであるベルサ・サンダー380が渡された。
俺は右腰にベレッタM92を下げ、左脇にM59を吊している。
俺は左手を挙げて、身をかがめる。振り向くと、ベアーテも同じ姿勢をとっている。
俺は手招きでベアーテを呼んだ。
ベアーテが中腰で近付く。
ベアーテが問う。
「どうした?」
俺はM59を脇のホルスターから抜く。
「これから森に入る。
ボルトアクションでは、戦いにくい。
この拳銃を使え。
一四発撃てる。
安全装置を外して、両手で構えて進むんだ。
ライフルは背負う」
俺とベアーテは小銃を背負い、拳銃を構えて森に入る。
ベアーテは、俺の行動を真似ている。
海上保安庁から手に入れた88式鉄帽が奇妙なほど、重く感じる。
ベアーテは、ローマ兵のような兜を被っている。金色に輝いていたが、艶消し黒で乱雑に塗装されている。胸甲は着けていない。
俺もボディアーマーを脱いできたが、派出所で手に入れたの防刃チョッキはジャケットの下に着けている。
松明は森の西辺の北側で揺れていた。
森の外縁を回り込んでいくと、獣道よりも少しだけマシな人道を見つける。
その人道を森に向かって一〇〇メートル進むと、焚き火をした痕跡を見つける。
ベアーテがすぐ後方にいる。
そして、話しかける。
「最低でも四人か五人がいたようだ」
「ヒトとは限らないよ」
「セロか?」
「それもどうかな?」
会話は耳元でささやく程度の小声だ。
まさに不期遭遇だった。
拳銃の銃口を下げて、安全装置をかけたところで、森から両手で小さい木箱を持つ男が出てきた。
俺は慌てたし、その男も慌てた。
俺は拳銃を構え、安全装置を外し、男に怒鳴る。
「動くな!」
ベアーテも拳銃を構え、叫ぶ。
「手を上げろ!」
森からバトルライフルを構えた男が飛び出す。
互いににらみ合い、怒鳴り合う。
「銃を捨てろ!」
「おまえが捨てろ!」
「手を上げろ!」
「撃つな!」
互いにわかっていることがある。
ヒトだ。
セロじゃない。
俺が「わかった銃を置く」と告げる。
相手はギラついた目をしている。
俺の目もギラついているだろう。
これが、ロワール川下流北岸の街マッカリアの人々との出会いであった。
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