好きなものは好きなんです！

恋の駆け引き８

　オリヴィアから相談を受け、マックレガン伯爵家へ行った。
　ここで、アレクシオの眉間のしわがより深くなって、リオは完全に涙目になった。
　それでも、アレクシオはリオを抱きしめることはせずに、先を促す。
　「お、オリヴィアとグレンはうまく、いったと思うの。そっ、それでねっ・・・・・・」
　ひくっ。リオの喉が鳴って、それ以上声が出なくなってしまい肩を震わせた。
　泣いてる場合じゃない。そんなに難しい説明でもない。
　だけど、すぐそこにいるのに、アレクシオの体温を感じられないことが辛くて、後悔ばかりが襲ってくる。
　悲しくて寒くて、リオは震えながら、しゃくりあげながら説明した。
　「おりっ、おりびあが、恋の・・・しなんしてって、言ってねっ」
　「・・・・・・至難？」
　アレクシオもリオと同じ思考回路に至ったようで、ちょっとずれていた。
　「駆け引きの・・・っ、仕方を教えてって言われたの」
　あんまりリオが泣くので、ちょっと可愛そうになっているが、アレクシオはリオに触らない。
　リオも、アレクシオがいつになく怒っていることが分かるから、泣きながらも、一生懸命言葉を紡いだ。
　「駆け引きって言っても、私、分からないから、アレクシオ様でやってみようと、思ったの」
　駆け引きをか。
　そして、さっきの発言のどこが駆け引きなのか分からない。
　「他の男の影をにおわせて、嫉妬してもらうのっ」
　におわせた・・・・・・？がっつり他の男がいると聞いた気がする。
　リオの行動はいろいろ思うところもあるが、望まれた行動は理解できた。
　「嫉妬して欲しいのか？」
　アレクシオは普通に聞いたつもりでいたが、怒られている最中のリオは、びくんと体を震わせた。
　震わせて、視線をさまよわせて、泣いて赤くした顔をさらに赤くして、小さく頷いた。

　アレクシオは思う。
　これ以上嫉妬に狂ったら、仕事に行かなくなるが。と。
　あれだけ、リオの好みである体格のいい男をあからさまに避けさせているのに、これ以上嫉妬してほしいと言われれば・・・・・・監禁コースしかない。
　自分以外の人間の目に触れないように、大切に大切に部屋に閉じ込める。
　ってことをして欲しいのか？・・・・・・してもいいけれど。
　まあ、腐っても公爵だし、領地の収入で生活は何とかなる。使用人もいるし、外に出なくても・・・・・・。

　リオが聞けば、「ひぃ！？」と叫びそうなことを真面目な顔の下でアレクシオが考えていると、
　「それでね、甘い言葉を囁いてもらうの・・・・・・」
　さっきの返事なのだろう、恥ずかしそうにリオが言った。
　なるほど、こちらが本来の目的かと、アレクシオは気がついた。
　リオが好きだと言っていた物語に、そんな文章があったような気がするな。

　勤勉なアレクシオは、リオの好みを把握するために、時々リオの愛読書を読んでいた。
　時々、リオがニマニマしながら読んでいる物語のことだろう。
　リオは、アレクシオが眉を寄せて考え込んでいるのを見て、さらに落ち込んでいた。
　わざわざ言って欲しいと言わなくても、アレクシオはリオに言葉を惜しんだりはしない。
　「好きだよ」と、抱きしめながら言ってくれる。それだけで充分だったのに。どれだけ欲張りになるのだろう。