S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko

文字の大きさ
3 / 39
第1章

第3話:夕暮れの踊り場

しおりを挟む
図書室での一件から数日後。
俺の世界は静かだが確実に変わり始めていた。

「黒瀬くん、おはよう!」
教室に着き自分の席で PC を立ち上げていると不意に声をかけられた。
振り返ると、そこに天野光が立っていた。太陽みたいな笑顔で。

「お、はよう……」

俺はかろうじて、そう返すのが精一杯だった。
なんで俺なんかに? 周囲の視線が突き刺さる。

やめてくれ、俺のライフはもうゼロだ。

「この前の PC、あれからずっと調子いいよ! 本当にありがとう」

彼女はただ純粋にお礼を言いたかっただけらしい。
その屈託のなさがあまりにも眩しかった。
俺が「別に」とか「ただのコマンドだ」とか、痛々しい態度をとったことなんて彼女は全く気にしていないようだった。

「……そうか」

俺がそう答えると、彼女は満足そうに微笑んで自分の席へと戻っていった。

残された俺の心臓はまたしても異常な速度で脈打っている。
ダメだ。あの笑顔は、俺に対する DoS 攻撃だ。
処理能力の限界を超えてしまう。

だがその一方で、天野光という存在が俺の中で「完璧なプログラム」から、
少しだけ「人間」へと変わった瞬間でもあった。

そんな変化とは裏腹に、彼女を取り巻く悪意は日に日に濃度を増していた。

「なあ、あの裏アカまた更新されてるぜ」
「マジ? こいつマジで毎日投稿してんな」

隣の席の男子たちの声に、俺は眉をひそめながらブラウザを開く。
真っ黒なアイコンのアカウント。投稿は、昨日よりもさらに悪質になっていた。

『今日の小テスト、一人だけ満点だったらしいじゃん。カンニングでもした?』
『昨日つけてたネックレス、彼氏からのプレゼントだったりして』

クラスでもごく一部の人間しか知らないはずの些細な情報。
犯人は明らかに天野光の身近にいる。

そして、その悪意は確実に教室の空気を侵食し始めていた。

俺はゆっくりと顔を上げ、天野の様子を観察する。
すると、彼女の友人の一人が心配そうな顔で天野に駆け寄った。

「光、大丈夫…? あのアカウント…」
「ん? ああ、なんかあるみたいだね」

天野は困ったように笑い、友人の肩を軽く叩いた。

「大丈夫だよ、気にしないで! こういうの、反応したら負けだって言うしね」

その笑顔は完璧だった。
気丈で、優しくて、周りに心配をかけまいとする彼女らしい強さの表れだった。

その完璧さが今は痛々しく見えた。
休み時間、彼女が一人で窓の外を眺めた一瞬。

その横顔からふっと表情が消えた。
それは昨日までの彼女なら決して見せることのなかったほんのわずかなシステムの綻び。

そして放課後。
その致命的なエラーは、ついに俺の前で発生した。

俺はいつも通り、教室に残って PC を触っていた。
クラスメイトたちがほとんど帰った後の静かな時間が好きだったからだ。

天野も友人たちと一緒に「じゃあねー」と明るく教室を出て行った。
その姿を見送り、俺は自分の作業に戻る。
なに見送ってるんだよ、俺は、、

それから三十分ほど経っただろうか。作業が一段落した俺は、飲み物を買いに行こうと席を立った。
向かう途中、踊り場の窓から夕日が差し込んでいるのが見えた。
そのオレンジ色の光の中に、彼女は一人で立っていた。

天野光。
友人たちと別れ、一人になったのだろう。

壁に背を預けスマホの画面をじっと見つめている。
その顔に教室で見せる笑顔はなかった。

代わりに浮かんでいたのは、驚くほど無防備で脆くて、今にも泣き出しそうな表情だった。

華奢な肩がかすかに震えている。
必死に涙をこらえているのか、きゅっと結ばれた唇が白くなっていた。

完璧なシステムが、ついに処理能力の限界を超えた。
俺は、見てはいけないものを見てしまった。

彼女は俺の存在に気づいていない。
俺は息を殺し、その場から静かに踵を返した。

ここで俺みたいなやつが出て行っても事態が好転するわけがない。
むしろ悪化する。それくらいの自己分析はできていた。

自分の席に戻り、PC の前に座る。
さっきの彼女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
あれが天野光の本当の姿。

今まではただの不愉快なバグだった。 だが今は違う。
図書室で、教室で、俺に笑いかけてくれた彼女が確かに傷ついていた。

心臓が、ドクン、と大きく鳴る。
俺は新しいブラウザを開き真っ黒なアイコンのアカウントを表示させた。

そして、おもむろにキーボードに指を置く。
もう傍観者でいるつもりはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

処理中です...