S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko

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第1章

第2話:太陽と交わした言葉

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放課後の図書室は、俺にとって最高の作業環境だ。
教室の喧騒から隔離され、静寂と、古い紙の匂いだけがここにはある。
俺はいつものように一番奥の閲覧席に陣取り、ノート PC を開いていた。

今日は企業から請け負っている業務システムの納品日だ。
最終テストを入念に行っていく。

まあ、もちろんこれも親父の名義を借りて勝手にやってるわけだが。
俺みたいな高校生が、本来こんな仕事に関われるはずもない。
社会のルールなんて、時として理不尽なものだ。

「うーん、どうしよう……」

ふと、か細い声が聞こえて、俺は顔を上げた。
声の主は、天野光だった。

放課後に彼女が図書室にいるなんて珍しい。
陽キャってス ◯ バでフラペチーノだけ飲んでる生き物じゃないの??

彼女は貸し出し用のデスクトップ PC の前で完全に固まっていた。
画面は中途半端なレポート作成画面のままフリーズし、マウスをいくら動かしてもカーソルはピクリともしない。
キーボードを叩く音だけが、虚しく響いていた。

「すみません、先生。パソコンが動かなくなっちゃって……」
「あらあら、どうしたのかしらねえ」

呼ばれてやってきた司書の先生も PC を前に首を傾げるばかり。
再起動しようにも、肝心のシャットダウンの操作ができない。

(ああ、それ、たぶん単なるメモリ不足だな)

俺は一目で原因を推測した。この学校の PC は古い。
特定のアプリケーションを同時に複数立ち上げると、よくメモリが飽和してフリーズする。

(コマンドプロンプトから強制終了すれば、すぐに直るだろうな)

俺は一瞬、席を立とうか迷った。 だが相手は天野光だ。
クラスの中心にいる、太陽みたいな完璧ヒロイン。

俺みたいな教室の隅で PC を触っているだけの男がいきなり声をかけたらどうなる?
想像するのは簡単だ。「え、誰…?」みたいな顔をされて周りからも不審な目で見られる。
ラノベやゲームなら、ここで俺みたいなヤツが颯爽とヒロインを助けるお約束の展開だろうが現実は違う。

関わらないのが正解だ。
俺は小さくため息をつき、自分のコードに集中しようと視線を画面に戻した。

「これ、明日までのレポートなのに……」

天野の声は、今にも泣き出しそうだった。 俺はちらりと彼女の様子を盗み見る。
完璧な彼女が見せる弱った姿。その表情が、なぜか俺の脳裏に焼き付いて離れない。

ああ、くそ。
完璧なプログラムが、目の前でエラーを吐き続けている。
それを放置するのは、プログラマーのプライドが許さない。

そんな言い訳で自分を納得させてから俺はゆっくりと席を立った。
そして、二人の元へおそるおそる近づく。

「あの……」
「え?」

俺の声に、天野と先生が同時に振り返った。
天野が、くりくりとした大きな目で俺を見つめている。

近い。太陽が近すぎる。

「たぶん、メモリ不足だから。強制終了すれば直るはず」
「え、黒瀬くん? ……えっと、強制終了ってどうやるの?」

俺は無言で PC の前に立つと、コマンドプロントを立ち上げた。
そして、記憶しているコマンドを数秒で打ち込む。

shutdown /r /t 0 /f

Enter キーを押した瞬間 PC は静かに再起動を始めた。

「「おお……!」」

天野と先生が感嘆の声を上げる。
数分後、PC は何事もなかったかのように正常に起動した。

「すごい! ありがとう、黒瀬くん! 魔法みたい!」

天野はキラキラした太陽みたいな笑顔を至近距離で俺に向けていた。
甘いシャンプーの香りが鼻先をかすめる。 まずい。これはまずい。
俺の脳内メモリはオーバーフロー寸前だ。

「……別に」

俺はそう短く返すのが精一杯だった。早くこの場から離れたい。

「すごいよ! いつもパソコン触ってるなとは思ってたけど、こんなことまでできるんだ! 黒瀬くんって、もしかしてすごい人?」

彼女は屈託なくグイグイと距離を詰めてくる。
やめてくれ。俺みたいな陰キャにそんな高出力の光を当てないでくれ。消滅してしまう。俺ってアンデッドなの?

「……ただのコマンドだ」

俺はそれだけ言い残し、足早に自分の席へと戻った。
心臓が今まで経験したことのない速度で鳴り響いている。

席に着いた瞬間、俺は深くため息をつき、頭を抱えた。
さっきの自分の態度を思い返し、無性に恥ずかしくなる。

『……別に』
もっとマシな返し方があったはずだ。「どういたしまして」とか、せめて「直ってよかった」とか。あれでは、ただの感じが悪いやつだ。

『……ただのコマンドだ』
最悪だ。なんであんな、スカした言い方しかできなかったんだ。クールな自分を演出しようとして空回りしているただの厨二病じゃないか・・・!

脳内でさっきの光景が何度も再生される。
そのたびに自己嫌悪の波が押し寄せてきて顔から火が出そうだった。
今すぐこの場から消えてなくなりたい。
しばらくは羞恥心で何も手につかなかった。

恐る恐るちらりと彼女の方を見ると彼女は友人らしき相手とスマホでメッセージをやり取りしながら、
時折こちらを見ては嬉しそうに楽しそうに微笑んでいた。
その笑顔は、あまりにも眩しすぎた。

まさか、さっきの俺の痛い言動を SNS で拡散している? いや、天野はそんな事するようなやつじゃない。それこそ自意識過剰か。
どちらにせよ、俺の静かで平穏な世界に、初めてエラーが生じた。

原因不明。正体不明。
ただ、どうしようもなく厄介なバグだということだけは、確かだった。
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