68 / 72
55
しおりを挟む「それにしても一年ってあっという間だったわね」
「っ!そう、ですね……」
ん?なんだか反応がイマイチなような……
「あと一週間で終業式だなんて、なんだか実感が湧かないわ」
「……」
あ、あれー?
私なにか変なこと言っちゃった?
「ベ、ベル?」
「……ダリア様と一緒に卒業したかったです」
「あ……」
そうだった。なんで忘れてたんだろう。
普通は一年生が終われば、次は二年生に進級する。
でも私は二年生に進級しない。
「ごめんなさい」
「っ!わ、私の方こそすみません。ダリア様がいなくても頑張るって決めたのに……」
私は終業式を以てこの学園を退学する。
そしてパレット帝国に行くことを決めた。
だからアナベルと一緒に二年生になることも、卒業することもできない。
アナベルはそれを悲しんでくれているのだ。
「ベル……」
私?もちろん私だって悲しいし寂しい。
じゃあそれならなんで学園を辞めるのかって?
それはもうこの学園で学べることがあまりないから。
このままここにいても得られるものは少ない。
それなら思い切ってパレット帝国に行って、見聞を広げたいと思ったのだ。
私はギュッとアナベルを抱きしめた。
「ダ、ダリア様!?」
悲しませることは分かっていた。
それでも私は自分の可能性を広げたい。
そしてもっともっと自由に生きていきたい。
「私もベルと離れるのはすごく寂しい」
「ダリア様……」
「でもね、必ずベルのところに戻ってくるって約束する」
「っ」
「だから待っててくれる?」
離ればなれにはなるけど、心はいつでもそばにいる。
「ぐすっ……はい、待ってます。ずっとずっと待ってます」
アナベルは泣いていた。
「ありがとう。……ほら泣かないで。きれいな目が赤くなっちゃ……ってベル。あなた瞳の色が……」
涙を拭いてあげないと。
そう思い手を伸ばした時、違和感に気づいた。
「え……?」
「瞳の色が青に……あ」
そこまで言ってハッとした。
そうだ。ヒロインの瞳の色……
これにはある設定があったんだった。
「この色って……」
鏡を見て驚くアナベル。
そう、ヒロインの瞳は最後に選んだ攻略対象の色に変わるのだ。
青であれば、ダミアンを選んだということになるが……間違いなくそれはない。
じゃあこれは誰の色?
青の色を持っていて、アナベルと近しい人物。それはきっとこの世界に一人しかいないだろう。
「……もしかして私?」
まさかこんなことがあるなんて。
アナベルは、私を選んだってこと?
「嘘……ダリア様と同じ色だなんて……」
でもアナベルは戸惑っているみたい。
いや、もしかしてショックを受けてるのか?
「ベル、大丈――」
「ゆ、夢みたいです!」
「……へ?」
「ダリア様と同じ色だなんて……きゃー!」
大丈夫かと聞こうと思ったけど、これは大丈夫なのか?
私にはすごく喜んでるように見えるけど……
「ベ、ベル?」
「はっ!す、すみません!嬉しすぎてつい……」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにうつむくアナベル。
……なにこれ。
ありえないくらい可愛いんですけど!
私と一緒で嬉しいの?本当に?
「ふふっ、私も嬉しいわ。まるで姉妹みたいね?」
私が姉でアナベルが妹かな?
「姉妹……!」
果たしてこれは私が攻略したのか、はたまたアナベルに攻略されたのか……
実際のところは分からない。
でもこの青が、私とアナベルを繋いでくれている。
それだけはたしかな事実。
そしてその事実は、私の心を温かくしてくれた。
「寂しくなったらいつでも連絡して。それに困ったことがあればすぐに飛んでいくって約束する。だからベルはここで。私は帝国で。お互いに望む未来に向かって頑張りましょう」
「はい!」
私たちは互いの小指を絡ませ、約束を交わした。
そうしていつしか夜は更けていき、気づいた頃には運命の一日は終わっていたのである。
1,210
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる