婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

文字の大きさ
69 / 72

56

しおりを挟む

 二年後。

 私はあのあと帝国へと渡り、帝国屈指の教育機関であるレインスロー高等学院で様々なことを学んだ。


「先生さようなら」

「はい、さようなら。気をつけて帰ってね」


 ただしそれは教師として、であるが。

 本当は生徒として学院に通う予定だったのに、どうしてそうなってしまったのかというと……


『さすがワシの孫!学院の入学試験で満点を取るとは!これは祝わないと……』

『でもお祖父様。満点を取れるような人に教えられることは何もないから、入学はできないって……』


 入学するために試験を受けてみれば、結果は満点。
 どうやら相当難しい試験だったようで、これまで満点を取った人は誰一人としていなかったとか。
 しかしまさか満点を取ったせいで入学できないとは思ってもいなかった。
 まさに青天の霹靂である。

 でもこのまま何もできず帰るわけにはいかない。
 そこで以前帝国で学ぶことをすすめてくれたお祖父様に、相談することにしたのだ。


『これじゃあ帝国に来た意味が……』

『……まずいぞ。このままではダリアとのワクワクウキウキライフが……はっ!そうだ!』

『お祖父様?』

『それなら教師になるのはどうだ?いい経験になるんじゃないか?』


 たしかにそうかもしれない。
 冒険者に魔道具師に商会長、それに学生。
 これまで様々な経験をしてきたけど、教師は完全に未知の領域。
 それならきっとたくさんのことを学べるはず。


『私、教師になります!』


 こうして私は当初の予定を変更し、この二年間を教師として過ごすことになったのだ。



 ◇



「アメリア先生!」


 ちなみにアメリアというのがここでの私の名前だ。
 歩いているところを生徒に呼び止められ、私は立ち止まった。


「どうしたの?」

「先生!噂で聞いたのですが、学園を辞めるって本当ですか?」

「あら、そんな噂が流れているのね。別に隠してた訳ではないけど、辞めるのは本当よ」

「そうなんですか……。先生の授業好きだったのに……」

「ふふっ、そう言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」


 学ぶことも多いし、生徒たちも可愛い。
 だからもう少しここにいたいという気持ちもある。
 でも最初から二年が経てば、王国に戻ると決めていた。


 この二年、思い返してみると本当にあっという間で充実した日々だった。


 そういえば帝国に来て一年が経つ頃、王太子とメルリルの婚約が発表された。
 メルリルは上級貴族イエロー家の令嬢。
 王太子の婚約者としてふさわしいし、病気も治っているので健康面も問題ない。
 年下であるメルリルの学園卒業に合わせて、結婚式をあげるそうだ。
 どうか王太子はよそ見などしないで、メルリルだけを生涯大切にしてほしい。


 メルリルの兄フィンメルは、将来宰相になるべく頑張っているそうだ。
 それに最近医学を学び始めたらしい。理由は私に感化されたからなのだとか。
 なぜ私がこんなことを知っているのかというと、実はメルリルと手紙のやり取りをしているから。
 相変わらず兄妹仲がよく、きっと将来は宰相と王妃として、カラフリア王国を支えていってくれるだろう。


 それからランドルフとマティアス。
 二人は最終学年で臨んだ大会、剣術はランドルフが、魔法はマティアスが優勝を果たした。
 そしてその後に行われた優勝者同士の試合は、今までにないほどの白熱した試合だったそうだ。
 アナベルがすごく興奮して教えてくれたけど、私も見てみたかった。
 ランドルフは以前から魔法を使う訓練をしていたし、マティアスも接近戦闘の訓練を秘密裏にしていたらしい。
 あの仲良し二人ならこれからも互いに切磋琢磨し、目標を実現するに違いない。


 そして私の元兄であるダミアン。
 私が知っているのは学園卒業後、父親の補佐をしながら領地経営を学んでいることくらいだ。
 他のことは知らないし興味すらない。
 あと知っているのは、まだお祖父様の許しを得られていないということだけ。
 果たして彼らは許される日がくるのだろうか。


 もちろんアナベルとの友情は今でも続いている。
 帝国に来る前に、電話をイメージして作った魔道具をプレゼントしている。
 普段はそれを使って頻繁に連絡を取り、長期休暇の時は、アナベルと家族に会いに王国に戻っていた。
 そんなアナベルは学園に通いながら、ローズ商会の運営する診療所で治癒士としての経験を積んでいる。
 いつも明るく真面目で笑顔を絶やさないアナベルは、診療所の看板娘になっているとアンナが言っていた。
 アナベルはきっと、いや間違いなく多くの人の病気と傷、そして心を癒す素敵な治癒士になれると私は確信している。


 ……たかが二年、されど二年。
 私にとってもみんなにとってもこの二年間は、将来や目標に向かって進んでいく、とても大切な時間となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

元婚約者に冷たく捨てられた伯爵令嬢、努力が実って王太子の恋人に。今さら跪かれても遅いですわ!

sika
恋愛
幼い頃から完璧な淑女として育てられたクロエは、心から想っていた婚約者に「君の努力は重い」と一言で婚約破棄を突きつけられる。 絶望の淵に立たされた彼女だったが、ある夜、偶然出会った温かな笑みの青年──実は身分を隠した王太子であるノエルと運命的な出会いを果たす。 新たな居場所で才能を咲かせ、彼の隣で花開くクロエ。だが元婚約者が後悔と嫉妬を滲ませ再び現れたとき──彼女は毅然と微笑む。 「貴方の愛を乞われるほど、私の人生は安くありませんわ」 これは、見放された令嬢が愛と誇りを手にする逆転劇。そして、誰より彼女を溺愛する王太子の物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

処理中です...