婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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「元気にしてるかな……」


 テーブルの上に置かれた魔道具を見つめながら、そう独り言ちた。
 これはアナベルにプレゼントした電話の魔道具と同じもの。
 一日の終わりにこれを見つめるのが、ここ半年の私の日課となっていた。


「でももう半年だよ?いくらなんでも長すぎじゃない?」


 実はこの魔道具、プレゼントしたのはアナベルだけではない。
 ディランとマーサ、そしてアンナ。
 私の大切な家族にもプレゼントしている。
 それともう一人、とても大切な人にも……


「ジークのバカ。……早く会いたいよ」



 あの告白から数ヵ月後、私とジークは付き合うようになった。
 毎日隙あらば口説いてくるジークに負けた……いや、いつの間にか一人の男性として好きになっていたのだ。

 ただ付き合い始めてすぐ私が帝国に行ってしまったので、絶賛遠距離恋愛中である。
 それでも毎日連絡を取り、長期休暇の度に会っていたので寂しくはなかった。

 しかし今から約半年前。

『しばらく連絡できなくなるけど、心配しないでくれ』

 そう言って連絡が取れなくなってしまったのだ。
 最初はギルドで長期の依頼でも受けたのかなと思っていた。
 長くても一ヵ月くらいのことだろう、そう思っていたのに気づけばもう半年。
 家族にジークの行方を聞いても、誰も知らないと言う。
 一体ジークはどこで何をしているのか。
 それに無事なのか、元気なのか……
 だから私はいつでも連絡が来てもいいようにと、こうして毎日待っているのだ。


「……そろそろ寝ないと」


 明日は教師生活最終日。
 絶体に寝坊するわけにはいかないと、魔道具を片付け寝ようとしたその時。


 ――ピピッピピッ


 魔道具が音を出して光った。これは連絡が来たときの合図だ。
 私は急いで魔道具を起動させた。


「ジーク!?」


 こんな時間に連絡をしてくるのは、彼しかいない。


『久しぶりだな』

「~~っもう!今まで何をしてたのよ!?まったく連絡も寄越さないで!」

『リ、リア?』

「一体何を考えてるよ!ねぇ、待つ人の気持ちを考えたことある?」

『ちょ、ちょっと落ち着い』

「落ち着いてられるわけないじゃない!どれだけ心配したと思ってるのよ!」

『っ!』


 久しぶりに耳にするジークの声。
 ああ、よかった。彼は無事だった。
 無事が分かった途端、一気に感情が溢れてくる。


「ぐすっ……ジークのバカ」

『リア……』


 泣くなんていつぶりだろう。
 久しぶりすぎて泣き止みかたが分からない。


「……ごめんなさい」


 それからしばらくして、ようやく泣き止むことに成功した私は、ジークに謝罪した。
 いくら心配していたとしてもあれはなかった。
 もっと他に言い方はあるのに、あんな言い方しかできないなんて。
 本当に私は可愛げがなくて嫌になる。
 こんなんじゃジークに嫌われちゃうかもしれない。
 もしそうなったら私はどうすれば……


『いや、悪いのは俺だ。だからリアが謝る必要なんてない』

「でも」

『心配かけてごめん。それと待っていてくれてありがとう』

「ジーク……」

『……なぁリア。今時間大丈夫か?』

「今?ええ、大丈夫だけど……どうしたの?」


 本当はそろそろ寝ようと思っていたけど、わざわざそんなことは言わない。
 今は寝ることよりもジークとの時間が大切だ。


『あのさ、ちょっとだけ窓から外を見てくれないか?』

「外?」

『ああ』


 何を言い出すのかと思えば、ジークは部屋の窓から外を見てほしいと言う。
 外を見たってただ真っ暗なだけなのに、一体何を考えているのか。
 分からない。だけどせっかく久しぶりに声が聞けたのだ。
 ここは素直に彼の言葉に従ってみるのもいいだろう。

 私は部屋の窓の前に立ち、カーテンを開けた。
 すると外は思ったよりも暗くなく、むしろ明るい。
 どうやら今日は満月のようだ。


「わぁ……月がきれい」

『だろう?』

「ええ。でも月がどうしたの?きれいだけど別に見ようと思えばいつでも見れるって……え?嘘……」


 外を眺めながら話していると、一ヵ所だけさらに明るく光っている場所があることに気がついた。
 あれはなんだろう。そう思い目を凝らしてみる。
 月の光を浴びて輝く銀髪に、夜であっても決して見失うことのない力強い紫の瞳……
 なんとそこにいたのは、ずっと会いたいと願っていたジークその人だった。
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