婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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「ジーク!?」


 急いで外へ飛び出すと、見間違いでも幻でもなく、そこにはたしかに彼がいた。


「リア、久しぶり」

「久しぶり……ってどうしてここにいるの?一体どうやって……」


 王国と帝国の距離は遠い。
 私は転移魔法を使えるので、好きな時間に行き来することができるが、私以外の人で転移魔法を使えなる人はいない。
 だから船に乗って海を渡る方法しかないのだが、こんな夜遅くに着く船なんてない。
 それなのにどうしてジークはここにいるのか。


「それは……今は秘密だ」

「秘密って……ジーク、あなたふざけて」

「しー」


 立てた人差し指を口にあてて微笑むジーク。


「っ!」


 そうだ。満月でだいぶ明るいが今は夜。
 このままでは近所迷惑になってしまう。
 こっちは突然の不意打ちでいっぱいいっぱいだというのに、あの余裕な表情……腹が立つ。
 でもここはグッとこらえなくては。
 まだジークの口からきちんと答えを聞けていないのだから。


「……場所を変えましょう」

「分かった」


 私はジークの服の裾を掴み魔法を発動した。


「ここは?」


 そしてたどり着いたのはこの場所。
 さすがにもうこんな時間だからか、人は誰一人としていない。


「ここは城の訓練場よ」


 お祖父様と伯父様から好きに使っていいと言われている。
 ここなら周囲に人はいないし、私の作った魔道具が設置されているので、防音防護もバッチリだ。


「訓練場……ここならちょうどいいな」

「今何か言った?」

「いや、なんでもないさ」


 たしかに何か呟いていたはずなんだけど……まぁいい。
 それよりも今まで何をしていたのか、そしてどうしてここにいるのかを問い詰めるのが先だ。


「そう……それで?ジークはこの半年間一体何をしていたの?それに秘密だって言うけど、どうやって帝国に来たの?私が納得するように説明を……」

「リア」

「え?……っ!これって……」


 突如ジークから投げ渡されたもの。それは一本の剣だった。
 木でできたどこにでもありそうな訓練用の剣。
 そしてこれは、いつも私とジークが手合わせをする時に使っている剣でもある。


「なぁリア。今から手合わせしないか?」


 一体何を言い出すのかと思えば、手合わせ?


「手合わせって……ジーク。何をふざけたことを言って」

「頼む」

「っ……」


 こんなに真剣な顔のジークは初めてだ。
 本当ならふざけたことを言うなと怒っていいはずだし、私にはその権利がある。でも次の言葉が出てこない。
 ただその理由は分かっている。
 なぜなら彼の目が、何かを強く決意した者の目をしていたから。


「……分かったわ」


 これまで様々な経験をしてきて、こういう目をした人を何人も見てきた。
 だから分かる。
 何かを決意した者は、その目標にたどり着くまで決して折れないことを。

 ……それならこの格好じゃ動きづらいね。
 私は魔法を発動し、服を着替える。
 それから髪を一つに結わいて準備完了だ。


「ルールは?」

「どっちもありで」

「……いいのね?あとから文句を言うのはなしよ?」

「ああ」


 剣だけの手合わせなら五分五分といったところだけど、魔法もありの場合は全て私が勝ってきた。
 だから本当にいいのかと確認しても、ジークは大丈夫だという。

 それならば仕方ない。
 でも私は手合わせだからといって、手を抜くつもりはさらさらない。


「行くわよ」


 コインを大きく投げ上げる。これが開始の合図となる。

 そしてコインが地面に触れた瞬間、剣と剣が交わった。
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