婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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 初めてのテストとは、入学式のあとすぐに行われた抜き打ちテストのこと。これは『ハナキミ』のイベントである。

 このイベントは、クラス委員長と副委員長を決めるためのもの。委員長になれば王太子とのイベントが、副委員長になれば委員長となる攻略対象とのイベントが発生する。

 とまぁ、こうしてちゃんと内容は覚えている。しかし残念ながらそれを思い出したのは、テストが終わってからのこと。
 長年の目標であった婚約を回避できたことで、自分の頭の中からゲームのイベントのことなど綺麗さっぱり抜け落ちてしまっていたのだ。



「そういうベルもあのテストはほぼ満点だったでしょ?副委員長さん」


 うっかり満点を取ってしまった私がクラス委員長。そして本来だったら委員長になるはずだったであろうアナベルが副委員長に……うん、忘れてたんだもん。
 アナベルも悔しがってる感じではないし、終わってしまったことは今さら仕方ない。そう思って私はすぐに割り切ったのだけれど……


「そんなところで喋られると邪魔なんだが」


 いまだに割りきれていない人が一人。

 ――マティアス・グリーン。

『ハナキミ』の攻略対象者。緑の髪に緑の瞳、眼鏡を掛けたインテリキャラだ。
 上級貴族グリーン家の息子で、父親は王宮魔法士団の団長。
 下級貴族だからとアナベルを見下していたが、副委員長となったアナベルの努力する姿を間近で見るようになったことで、次第に惹かれていくという流れだったはず。
 そのためマティアスを攻略するには副委員長になることが必須になってくるのだが、実際に委員長になったのは私。いくら副委員長がアナベルだったとしても、マティアスルートが始まる可能性は低いだろう。

 それにインテリキャラ設定だからか、アナベルだけではなく、委員長になった私も目の敵にされていたりする。
 私たちは教室の窓際で話しているので、特に他の人の邪魔にはなっていない。しかし委員長も副委員長にもなれなかったのが相当悔しかったのか、こうしてわざわざ嫌味を言ってくるのだ。


 (そんなんじゃモテないわよ?)


「グリーン様おはようございます」


 頭の中でそんなことを思いながらも、笑顔で挨拶をする。


「っ……あ、ああ」


 嫌味を言った相手から笑顔で挨拶をされるとは思っていなかったのか。隠しているつもりなんだろうが、驚いた表情が隠しきれていない。攻略対象とはいえ、まだまだ子ども。
 さてせっかくだから、私からも嫌味をお返ししてあげよう。


「グリーン様がわざわざ話しかけてくださるなんて嬉しいです」

「え?いや、そういうわけでは」

「ふふっ、恥ずかしがらないでくださいな。私たちちょうどこの間のテストの話をしていたところなんです。私は運良く全問正解で、ベルも二問以外は正解だったのですが……」


 委員長にも副委員長にもなれなくて残念でしたね!


「ぜ、全問正解だと……?」

「ええそうなんですよ。私もまさか全問正解できるなんて思っていなかったのでビックリです。てっきりグリーン様が委員長になるとばかり……」

「くっ……」


 効果はバツグンのようだ。


「そういえばグリーン様はテストいかがで」

「わ、私はあなたたちと違って自分の結果を軽々しく口にするつもりはない!失礼する!」


 まだ話の途中だったにも関わらず、遮ってまで無理やり会話を終わらせて席に戻ってしまった。うん、まだまだお子ちゃまだ。
 最初から嫌味なんて言わなければよかったのにね。残念でした。


「ダリア様大丈夫ですか?」


 心配そうに声ををかけてきたアナベル。……間違っても楽しんでいたとは言えない。


「ええ、大丈夫よ」


 ここは微笑んでおこう。


「それならいいのですが……」

「心配させちゃったわね。ごめんなさい」

「い、いえ!ダリア様は悪くありません!悪いのはケンカを売ってきたグリーン様です!」

「……いや、ケンカにすらならなかったけどね?」


 もしも本気で私にケンカを売ってくる人がいれば、その人は無事ではすまないだろう。まぁわざわざそれをアナベルに言うつもりはないが。


「でもさっきのグリーン様は感じ悪かったです。……私、ああいう男性は苦手だな」


 ああ、マティアス残念。これではマティアスルートに入る可能性はほぼ無いだろう。
 まぁ自業自得ということで、私はまったく気にしないけど。

 そのあと小テストが返ってきたが、満点は私とアナベルの二人だけ。そんな私たちをマティアスが悔しそうに睨んでいたが、本当にインテリキャラなのかと疑ってしまった私は悪くないよね?
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