9 / 72
9
しおりを挟む(でもこれも仕方ないよね?)
なぜなら魔法科の生徒は十名で、その内訳が男子八人、女子二人だから。
もちろん女子二人とは、ダリアローズとアナベルである。必然的に親しくなるシチュエーションが整ってしまっていたのだ。
(それにあんなに懐いてくれている子を無視なんて……そんな酷いこと私には出来ない!)
……とまあそんな理由で、なんだかんだ学園では一緒に行動するようになって……いや、アナベルも寮から通っているから、朝から晩までずっと一緒か。
この一週間、一緒に過ごしてみて分かったことがある。それはアナベルが非常に優秀だということ。
ヒロインだから、ハイスペックなのは最初から分かっていた。だけど私が言いたいのは、能力や才能のことではない。彼女は努力の積み重ねができる人なのだ。
毎日の予習復習は欠かさないし、分からないことがあれば積極的に教師に質問したり、図書室で調べものをしていたり……可愛くて性格も良い。そして真面目で努力家なアナベルを、好きにならない人なんていないのでは?
前世ではヒロインに好感を持てなかった私だけど、気づけば今目の前にいるアナベルには非常に好感を持ってしまっている。
このままいけばアナベルは攻略対象の誰かと結ばれて幸せに……いや、それは安直すぎるか?
私の婚約という、『ハナキミ』の大きな前提が崩れてしまっているのだ。これはすでにストーリーが変わっている可能性がある。
……それならアナベルを、ローズ商会にスカウトするのもアリかな?
「……ねぇベル。聞きたいことがあるんだけどいいかしら」
「聞きたいことですか?」
「ええ。ベルは学園を卒業したらどうするのかなって」
「卒業したら……?」
これは突然すぎたかもしれない。アナベルはキョトンとした顔をしている。
「ほら、仕事とか結婚とかよ」
「なるほど、そういうことですね!えっと、できれば治癒士として働けるところに勤めたいって思ってます。安定して働ければ家に仕送りも出来ますし、人の役に立てたらいいなって」
「そうなのね」
「はい。それに家は弟が継ぐので、私は結婚してもしなくても好きにしていいって両親は言ってくれていて……。だから卒業してもしばらく結婚はいいかなって考えてます!」
おお、これはいい感じなのではないか?……でも焦りは禁物。まだ学園に入学したばかりだ。もう少し様子を見てからにしよう。
ただ自分で言うのもなんだが、ローズ商会は超優良企業だ。ローズ商会で働きたいと望む人は多い。給料も休暇もしっかり保証されてる職場なんて、この世界ではローズ商会くらいしか存在しないだろう。
だからアナベルは受け入れてくれる、私はそう確信している。
「素敵な家族ね」
「はい。……あの、ダリア様」
「ん?何かしら?」
「その……ダリア様は卒業後どうなさるのですか?」
私の卒業後か。
「私?私もベルと似たような感じかしら」
「えっ!そ、そうなんですか?ブルー家のご令嬢であるダリア様は卒業したら直ぐにご結婚されるのかと……あっ!私としてはすごく嬉しいですが、その……大丈夫なのかなって」
高位貴族の令嬢は、適齢期に結婚することがほとんど。どうやら余計な心配をさせてしまったようだ。
「あら、私が結婚しないのを嬉しいだなんて……」
「あ……そ、そういうつもりは」
「ふふふ、なんてね。今のは冗談よ」
「そうなのですか?」
「ええ。昔から結婚したいとは思っていなかったし、家は兄が継ぐから私は自由に生きていくつもりよ」
一応まだあの家に籍はあるが、近いうちに除籍してもらう予定だ。
この国は女性が外で働くことをよしとしているし、それに結婚も比較的自由。結婚しなくても後ろ指を指されることはない。女性に将来の選択肢があるのは良いことである。
まぁそうは言っても、それは平民の場合であって貴族令嬢は例外ではあるが。
「それって、ダリア様と同じ場所で働ける可能性もあるってことですか!?」
「そうね。その可能性もあるかもしれないわね」
もちろんその可能性とは、ローズ商会のことですが。
「私頑張ります!」
「そう?でもあまり無理はしないでね。ベルは今でも十分頑張っているんだから」
「えへへ……ダリア様はお優しいですね!ありがとうございます」
はにかんだ表情がとても愛らしい。やはりヒロインってすごい……。私の婚約がなくても、これは攻略対象たちがアナベルに恋してもおかしくない気がしてきた。
よし、ここは念のため……
「ねぇもしも結婚したい相手が出来たら教えてくれる?私がベルに相応しいか見極めてあげるから」
「ダリア様が……!はい!その時はぜひお願いします!でも今は恋より勉強です!」
「ええ、その通りね。今日は昨日の小テストの結果が出るものね」
「うぅ~、今からドキドキしてます」
「ベルなら大丈夫よ」
「そうだといいのですが……」
うん、謙虚なところもまたいい。けれどアナベルはヒロイン。もっと自信を持ってもいいと思う。
「心配いらないわよ」
「ダリア様にそう言ってもらえて、少し自信が持てそうです」
「ふふっ、私もうかうかしていられないわね?」
「そんなことありません!ダリア様は今回も満点ですよ!だって初めてのテストでも満点でしたし!さすが委員長です!」
1,447
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる