対米戦、準備せよ!

湖灯

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★10年前の日本へ★

【近代化に向けて②】

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 4月から自動車購入時に5%の給付が始まると、自動車の普及は急速に進んだ。

 自動車の普及が進むとフォードもGMもすぐに生産体制が追い付かなくなり、その分の需要が国産のメーカーに流れ出し、国産メーカー各社も増産体制に入った。

 先行して輸入に踏み切った工作機械も順調に売れ、部品の全てをアメリカからの輸入に頼っていたフォードとGMも増産体制を整えるために部品の現地調達に踏み切り、街の至る所に自動車用の部品工場が立つようになる。

 自動車工場の周りはやがて一大工業地帯へと様変わりし、工場が増えるとその分の物流も増え、更に自動車が売れた。

 自動車が増えると、道路も整備され、新しいコンクリートの道路があちこちに造られた。

 工場地帯の周りにはそこで働く人たちのために住宅が建てられるが、拡大する工場群のための敷地も確保しておかなければならないので、平屋ではなくより土地効率のいい鉄筋コンクリート製のビル型団地が造られた。



 改装を終えた『ふそう』と『やましろ』が、アメリカから足りない自動車だけでなく工場や住宅・道路などの関連施設を造るために必要なブルドーザーやクレーンなどの重機の他に生産に必要な工作機械や資材も運び日本の工業は急速に大きくそして近代化に向かった。



 日本への輸出が増えたことでアメリカ経済も潤い、貿易の不均衝を避ける目的で綿織物・生糸を中心に服飾製品や清酒に玩具といった物のアメリカへの輸出が増え『ふそう』と『やましろ』は、行きはそういった輸出品を、帰りは輸入する自動車や工業製品を輸送するようになり輸送効率も上がった。



 なによりも良かったのは戦艦2隻を日本郵船に売却し退役させたことで第二次ロンドン海軍軍縮会議も事なきを得て条約は締結され、米英の対日警戒感を緩和させる意味では大成功といえる結果になった。



「『ふそう』と『やましろ』凄い活躍ね」

「その通り‼ まさか日本郵船に売っ払うとは思ってもいなかったが、あの2艦の末路を知る者にとっては、まさにこの活躍は青天の霹靂だよ。次は『伊勢』と『日向』の空母化か? それとも郵船からアノ2艦を買い戻して、今度こそ空母への改修をするか? いつでも準備は出来ているぞ!」

 薫さんと柳生さんが私を褒めてくれたが、これは私一人の力で成し遂げた事ではない。

 むしろ私一人では、手に追えなくなって空回りをしていた事だろう。



 二・二六事件を阻止するための工作でも、最初に高橋是清と若槻礼次郎と言う2人の総理経験者が賛同してくれたからこそ企画を持って行った放送協会も動いてくれたわけで、放送後の反響も予想以上に大きくなった。

 2回目の放送も、私の無理な出演依頼を受けてくれた井上成美大佐が思っていた以上に活躍してくれたことに加え、何故か陸軍が黒幕と思われ最も挑発に乗りやすい橋本大佐を寄こしてくれたことにより事件が起こる前に速やかに関係者を検挙することができた。



 自動車の件も同じ。

 先の事件を未然に防いだと言う事で内閣から感謝状が渡されるのを良い機会として補助金の話を持ち出したところ、彼らが真摯に検討してくれからこそ成し得た話。

 『扶桑』と『山城』の改造にしても山本五十六中将の力添えがあってこそ実現できたこと。



 ここまでは上手くいった。

 だがこれから先もうまくいくとは限らない。

 なにしろ未来の資料を見て思った事なのだが、どうもアメリカのルーズベルト大統領は日本の台頭を快く思っていないばかりか、戦争によって日本という国を潰してしまいたいと思っているような気がする。

 まるで国民を兵器としか思っていない恐ろしい人物のような気がしてならない。

 もしこの考えが当たっているとしたなら、いつまでも国民生活の向上を主題に掲げて進める改革もいつかは行き詰ってしまうだろう。



 それと問題なのは陸軍の動き……。

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