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★10年前の日本へ★
【近代化に向けて①】
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私の指示で放送局の技術者が慌ててレコードをかけたが間に合わず、井上大佐の言葉の「クーデター」と言うところまで全国に流れてしまった。
実在する人物名、しかもそれは政府の要職に就く者、更にクーデターを意味する計画。
全国放送でこれだけ言ってしまえば即座に司法機関は動かざるを得ず、翌日を待たずに憲兵隊は橋本大佐宅の家宅捜査に入り怪しいと思われる書類を入手した。
また本人への尋問や彼の交友関係、入手した書類の中に名前のあった人物宅への家宅捜査と尋問によりクーデターの計画は露呈し、芋づる式に関係者の逮捕につながった。
こうして二・二六事件は、その決行日を待たずして、首謀者と黒幕の両方を逮捕することに成功し、事件発生を阻止することができた。
年末にはすぐに裁判が行われ、私が過去に戻って来る前の日本では首謀者は即刻銃殺刑となり有耶無耶のままだった黒幕たちも、今回は暴き出されて相応の刑が科される事となった。
さすがに実行前に事件が解決したことで、誰も殺された人は居なかったので銃殺刑になる物は居なかったが、関わった全ての軍人には予備役と言う生ぬるい刑ではなく、懲戒解雇のうえ禁錮刑が適用された。
また関与した一般人に関しても、同じ様に厳しい刑が言い渡されていた。
裁判を傍聴し終わった私たち3人は江戸城の堀沿いに、千鳥ヶ淵を歩いていた。
「しかしさすがだな、ラジオ放送を使って敵に墓穴を掘らせる作戦だったとは」
「ほんとソレ。私はロビー活動なのかと思っていたわ。ホント凄いわ」
「……ありがとう」
2人が掛けてくれた言葉に、私はなぜか素っ気なく答えてしまったのは考え事をしていたから。
井上大佐は知っていた。
知っていたから、ワザと橋本大佐がボロを出すように仕向けたのだ。
艦隊勤務で知る由もない彼が、なぜ知っていた?
ひょっとするとこの世界は何度も似たような世界を繰り返しながら動いていて、たまに過去にあった事を思い出したりするのかもしれない。
二・二六事件は無事回避できた。
この事件を回避できたことで、アメリカと戦争をするにしても軍部の台頭を抑えることができたので開戦の時期を遅らせることができ、そのぶん準備期間に余裕ができた。
柳生さんから、いよいよ扶桑型戦艦を空母に改修するか?と言われたが、その前にやらなければならないことがある。
私は先のクーデターを阻止したことで、政府の重鎮と呼ばれる人たちから信頼を得ることができた。
政府から、感謝状もいただいた。
ここはこの関係を遺憾なく利用させてもらう。
さっそく官邸に赴いて、岡田・高橋の両氏と面会し、『自動車製造事業法』を実行しないことと、自動車の購入に際して政府からの補助金を出すよう頼んでから横浜市子安のフォードモータース日本工場に赴いて増産体制をとることを依頼した。
先方からは補助金が見込めるのであればと増産に前向きな意見も頂き、その足で横浜から汽車に乗り大阪市大正区にある日本ゼネラル・モータース(GM)株式会社の本社工場へ行き同じことを伝えた。
政府から自動車購入への補助金が5%と決まり、性能と耐久性が高かったフォードとGMの車は飛ぶように売れた。
これに伴い2社の日本での生産能力を上げるため、それまで部品などもアメリカ本国から輸入していたものを国内生産に変えるため、アメリカやイギリスから各種工作機械を大量に輸入するとともに、自動車運搬船を作る計画も提案した。
工作機械の購入は、国力の向上につながるとすぐに了承されたが、自動車運搬船については建造に時間がかかるのと、我が国の工業技術の向上にはつながらないという意見も出てすぐには決まらなかった。
そこで私はある提案をした。
それは現在呉軍港において第二次近代化改装工事を行っている戦艦扶桑と、横須賀に停泊中の山城の改造。
これには海軍から物凄い反発を受けたが、この年の9月には第二次ロンドン海軍軍縮会議を控えていることから、山本五十六海軍中将の発案で卓上での模擬作戦を行い、速力の遅い扶桑・山城の2艦が今後の戦闘について行けるかを連日にわたって調査した。
調査結果は広い太平洋戦域においては、他の駆逐艦・巡洋艦・航空母艦との共同作戦では速力が遅すぎて足を引っ張る形になるため使用不可と判断され、唯一の望みであった戦艦同士の砲撃戦においても、新たに建造されるアメリカ戦艦の主砲が40㎝級になることと(扶桑型の主砲は35,6cm)、速力も27~30ノットになることから戦果は期待しにくいと判断され除籍のうえ、自動車運搬船への改造が許可された。
改造の許可が下りるとすぐに柳生さんに頼んでいた、図面を持って横須賀と呉に向かい、両艦を図面通りに改造してもらうよう手はずを取った。
ふそう級自動車運搬船の特徴は、内部構造にある。
縦6層からなる貨物スペースには約3,000台の車を収容できるだけでなく搭載する車の出入り口には船が通るときに起き上がる橋と似た構造となっていて、航海中は波が船内に入らないような蓋の役割を担い、港に着くと橋を降ろして埠頭と船を繋ぐ道となり、車はいちいちクレーンで上げる必要もなくそのまま船から降ろされた橋を渡って船内にある貨物室のスペースに収まる仕組み。
また貨物室の上部を平らなオープンデッキにする事により、貨物室に入れることが困難な大型の重機なども搭載できる。
更に資材や航空機の輸送も出来るように、オープンデッキには移動可能な7基のクレーンも設置してある。
そして有事の際には6層ある貨物室を2層に変更して、オープンデッキからクレーンを撤去することで、空母への改装が短期間で出来る構造となっている。
まあ空母と言っても、速力が遅すぎるから軽い戦闘機くらいしか飛ばせないが……。
実在する人物名、しかもそれは政府の要職に就く者、更にクーデターを意味する計画。
全国放送でこれだけ言ってしまえば即座に司法機関は動かざるを得ず、翌日を待たずに憲兵隊は橋本大佐宅の家宅捜査に入り怪しいと思われる書類を入手した。
また本人への尋問や彼の交友関係、入手した書類の中に名前のあった人物宅への家宅捜査と尋問によりクーデターの計画は露呈し、芋づる式に関係者の逮捕につながった。
こうして二・二六事件は、その決行日を待たずして、首謀者と黒幕の両方を逮捕することに成功し、事件発生を阻止することができた。
年末にはすぐに裁判が行われ、私が過去に戻って来る前の日本では首謀者は即刻銃殺刑となり有耶無耶のままだった黒幕たちも、今回は暴き出されて相応の刑が科される事となった。
さすがに実行前に事件が解決したことで、誰も殺された人は居なかったので銃殺刑になる物は居なかったが、関わった全ての軍人には予備役と言う生ぬるい刑ではなく、懲戒解雇のうえ禁錮刑が適用された。
また関与した一般人に関しても、同じ様に厳しい刑が言い渡されていた。
裁判を傍聴し終わった私たち3人は江戸城の堀沿いに、千鳥ヶ淵を歩いていた。
「しかしさすがだな、ラジオ放送を使って敵に墓穴を掘らせる作戦だったとは」
「ほんとソレ。私はロビー活動なのかと思っていたわ。ホント凄いわ」
「……ありがとう」
2人が掛けてくれた言葉に、私はなぜか素っ気なく答えてしまったのは考え事をしていたから。
井上大佐は知っていた。
知っていたから、ワザと橋本大佐がボロを出すように仕向けたのだ。
艦隊勤務で知る由もない彼が、なぜ知っていた?
ひょっとするとこの世界は何度も似たような世界を繰り返しながら動いていて、たまに過去にあった事を思い出したりするのかもしれない。
二・二六事件は無事回避できた。
この事件を回避できたことで、アメリカと戦争をするにしても軍部の台頭を抑えることができたので開戦の時期を遅らせることができ、そのぶん準備期間に余裕ができた。
柳生さんから、いよいよ扶桑型戦艦を空母に改修するか?と言われたが、その前にやらなければならないことがある。
私は先のクーデターを阻止したことで、政府の重鎮と呼ばれる人たちから信頼を得ることができた。
政府から、感謝状もいただいた。
ここはこの関係を遺憾なく利用させてもらう。
さっそく官邸に赴いて、岡田・高橋の両氏と面会し、『自動車製造事業法』を実行しないことと、自動車の購入に際して政府からの補助金を出すよう頼んでから横浜市子安のフォードモータース日本工場に赴いて増産体制をとることを依頼した。
先方からは補助金が見込めるのであればと増産に前向きな意見も頂き、その足で横浜から汽車に乗り大阪市大正区にある日本ゼネラル・モータース(GM)株式会社の本社工場へ行き同じことを伝えた。
政府から自動車購入への補助金が5%と決まり、性能と耐久性が高かったフォードとGMの車は飛ぶように売れた。
これに伴い2社の日本での生産能力を上げるため、それまで部品などもアメリカ本国から輸入していたものを国内生産に変えるため、アメリカやイギリスから各種工作機械を大量に輸入するとともに、自動車運搬船を作る計画も提案した。
工作機械の購入は、国力の向上につながるとすぐに了承されたが、自動車運搬船については建造に時間がかかるのと、我が国の工業技術の向上にはつながらないという意見も出てすぐには決まらなかった。
そこで私はある提案をした。
それは現在呉軍港において第二次近代化改装工事を行っている戦艦扶桑と、横須賀に停泊中の山城の改造。
これには海軍から物凄い反発を受けたが、この年の9月には第二次ロンドン海軍軍縮会議を控えていることから、山本五十六海軍中将の発案で卓上での模擬作戦を行い、速力の遅い扶桑・山城の2艦が今後の戦闘について行けるかを連日にわたって調査した。
調査結果は広い太平洋戦域においては、他の駆逐艦・巡洋艦・航空母艦との共同作戦では速力が遅すぎて足を引っ張る形になるため使用不可と判断され、唯一の望みであった戦艦同士の砲撃戦においても、新たに建造されるアメリカ戦艦の主砲が40㎝級になることと(扶桑型の主砲は35,6cm)、速力も27~30ノットになることから戦果は期待しにくいと判断され除籍のうえ、自動車運搬船への改造が許可された。
改造の許可が下りるとすぐに柳生さんに頼んでいた、図面を持って横須賀と呉に向かい、両艦を図面通りに改造してもらうよう手はずを取った。
ふそう級自動車運搬船の特徴は、内部構造にある。
縦6層からなる貨物スペースには約3,000台の車を収容できるだけでなく搭載する車の出入り口には船が通るときに起き上がる橋と似た構造となっていて、航海中は波が船内に入らないような蓋の役割を担い、港に着くと橋を降ろして埠頭と船を繋ぐ道となり、車はいちいちクレーンで上げる必要もなくそのまま船から降ろされた橋を渡って船内にある貨物室のスペースに収まる仕組み。
また貨物室の上部を平らなオープンデッキにする事により、貨物室に入れることが困難な大型の重機なども搭載できる。
更に資材や航空機の輸送も出来るように、オープンデッキには移動可能な7基のクレーンも設置してある。
そして有事の際には6層ある貨物室を2層に変更して、オープンデッキからクレーンを撤去することで、空母への改装が短期間で出来る構造となっている。
まあ空母と言っても、速力が遅すぎるから軽い戦闘機くらいしか飛ばせないが……。
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