対米戦、準備せよ!

湖灯

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★中国大陸★

【大陸の抱える問題②】

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 問題が私が思うようにストレスだとするならば、過去の世界で起こったあらゆる事件は、時間と形を変えるだけで必ず起こるだろう。

 それを回避できるのは武力ではない。

 

 私は石原少将と共に南門から城郭要塞の中に入る。

 南門のすぐ傍にはイギリス軍約250名が駐屯する宿舎があり、その直ぐ隣にある西門にはアメリカ軍1個大隊(約500名超)の宿舎、それを抜けると広い空き地が続く向こうの北門に日本陸軍の司令部と大隊宿舎、東門にはフランス軍約250名とイタリア軍約100名の宿舎が並んでいた。

 広い空き地でフランス兵とイタリア兵がボールを蹴飛ばして遊んでいて、非番の者たちがヤンヤと声を上げて応援していた。

 応援している者の中に日本兵も居た。



「あれは、何をしているのですか?」

「フットボールだ。欧州では流行っているらしいな」

 確かにフットボールは体育の授業でしたことはあるが、それは筋力や持久力を養うためのもので遊びという認識は無かった。

 まして、まるで野球を見るように応援している姿には驚かされた。

「まあ、彼らも俺たちと同じで、母国を離れての勤務だ。こういった事でストレスを発散しなくちゃやって居られない。まあ良いコミュニケーションにもなるから非番の者たちには積極的に参加するように言っているんだ」と、石原少将は言った

 なるほど確かに他国の人たちとコミュニケーションを図る目的でこの城郭要塞を造った訳だが、このような副産物もあったとは予想外だった……!

「石原さん! ありがとうございます‼」

「えっ⁉ か、柏原く・ん……⁉」



 “そうだ、コレだ!”

 私は北京にある日本領事館を目指した。

 万一盧溝橋事件が起きた際に備えて、北京には宮崎龍介に待機してもらっている。

 彼は孫文の盟友である、宮崎滔天の長男で蒋介石にも縁のある男。

 過去の史実では盧溝橋事件発生のあと近衛総理から中国との和平工作の特使として命じられ蒋介石も同意していたが、神戸港から出発する長崎丸に乗船したところ上海に行く旨の電報が軍に傍受されていて待ち構えていた憲兵隊に捕まり渡航は叶わなかった。



 領事館に入るとすぐに宮崎氏を探し、事の詳細を打ち明けた。

 彼は慌てて飛び込んできた私を見て何事が起きたのかと驚いていたが、話を聞くと「なんだ、そんな事ですか」と、呑気に給仕が運んでくれたお茶を飲んだ。



「できますか⁉」

「まあ、特に問題は無いと思います。しかし、驚かさないでください」

「驚かす?」

「だって大本営の特命将校のアナタが血相を変えて領事館に飛び込んできたのですから、僕はてっきり盧溝橋の城郭要塞付近で何かとんでもない事件が起きたのかと心配しましたよ。でもまさかその話が北京と上海で、大学同士のサッカー大会を行いたいとは……」

 宮崎氏は呆れたような口調で言った。



 試合については、幾つかの注文を付けた。

 まず試合内容は、観戦に来れない人にも分かるようにラジオで実況中継をすること。

 そして試合の告知も兼ねて日中友好の文字とお互いの国旗の絵が入ったサッカーボールを北京と上海周辺の小学校に配ることとして、ボールの方は私が用意することを伝えた。



 サッカーの試合には北京会場で北京大学と清華大学、上海会場で復旦大学と南京大学が同じ日に試合を行い、お互いの勝者が後日決勝戦を行う事となった。

 ラジオ中継は上海のFFZ局と、北京のXPK局が担当するほか、現地に居る法人向けに日本からも放送局が参加するほか米英伊仏の駐留軍からも無線を使った放送が行われる事となり、小学校に配る記念ボールにも米英伊仏の国旗が追加された。

 記念ボールは陸海軍が協力して各学校に配り、余分に作ったものは会場で販売することにした。



 7月4日(日曜日)に、試合は行われた。

 北京、上海ともに、会場に入れなかった人たちのために市街地の至る所に日中友好の垂れ幕を広げてラジオを置いた。

 試合は両会場とも白熱した接戦となり、中継を担当したラジオ局のアナウンサーがその模様をエキサイティングに放送した。

 これには試合会場のみならず、街頭ラジオの前に集まった多くの人たちをも魅了した。



「やあ。何を仕出かすのかと思ったら、サッカーの中継とは恐れ入ったね。しかし盛り上がったな」

「ありがとうございます」

 試合が終わった後、城郭要塞に戻ると石原少将が労ってくれた。



 そして運命の7月7日。

「中国軍の馬車が来ます!」

 伝令の言葉に一瞬緊張が走り外を見ると、門の前に並ぶ数台の幌馬車の列が見えた。

「開門を要求していますが、どうします!?」

 もしもアノ幌馬車の中に兵隊が隠れていたら、トロイの木馬同様に城内は大変な事になると思い石原の言葉を待つ。

 だが石原は平然とした顔をして、通してやるように伝令に言った。

 私は慌てて宿舎から飛び出し、門の方に向かった。

 しばらくして門の方から、ワーっといった大きな歓声が上がる。

 走っていた私の位置からは、ちょうど建物が邪魔をして何が起きたのか分からない。

 歓声の後に続くのは、銃声か?

 それとも……。

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