42 / 56
★第2次ノモンハン事件★
【第2次ノモンハン事件勃発!①】
しおりを挟む
年が開け昭和13年。
日中平和条約に向け、大本営でも条約の内容をまとめる作業に忙しい日々が続き、この日も私も薫さんも日をまたいで夜遅くまで書類の制作に追われていた。
戦場での数日はあっという間に終わる。
その一瞬を間違えれば、命も終わる。
だが、こういった事務手続きには時間が掛かる。
一行も間違いがないように、多くの人間のチェックが入るし、内容そのものにもあらゆる角度から見直される。
担当部署ごとに振り分けられた書類は、明日4月15日金曜日の午前中までに内閣に提出しなければならない。
そのため私たちだけでなく、陸軍も海軍の担当者も日曜日は勿論のこと昨年12月25日の大正天皇祭から1月5日の新年宴会の祝日を最後に日曜日や2月11日の紀元節も3月21日の春季皇霊祭も休むことなく平和のための書類づくりに励んできた。
そして残された時間は、あと1日もない。
「あーんもう、疲れたぁーっ!」
今まで私の隣で黙々と作業を続けていた薫さんが、とうとうギブアップを宣言した。
時計はもう午前3時を差していた。
「珈琲を淹れようか?」
「要らない! 飲んでしまったら、あと2時間は残業させられるもん‼」
薫さんは相当堪えているらしく会話が子供言葉になっていたので、もう帰ってもいいよと言うと疲れすぎて帰っても一人では寝つけないと断られた。
部屋にはもう私たちだけしか居ないとはいえ、万が一誰かに聞かれれば勘違いされてしまいそうな言葉に一瞬焦って周囲を見渡してしまう。
なのに私を焦らせた張本人は、ただ愚痴を言っただけでそのまま作業を続けていた。
午前7時。
そろそろ出勤の早い人たちが板張りの廊下を賑わし始め、次第にその音の波は大きく膨れ上がり騒々しくなってきたころ、ようやく全ての書類が完成した。
時計を見上げると時間はもう8時を回っていた。
提出後は通常の業務をしながらも、修正箇所があった場合に備えていたが、特に問題がないまま11時近くになり上司から承諾を得て、薫さんと政府事務局に向かい提出を済ませた。
一応今日はこれで退けて明日の土曜日も休んでいいと言われていたので、晴れ渡った1月の黄色い太陽の下を薫さんと一緒に宿舎に帰る。
宿舎に戻り着替えを持って2人で銭湯へ行き、その帰りに2人で蕎麦屋により蕎麦と天ぷらと少しのお酒を呑んでまた宿舎に戻る。
寝巻に着替えて布団に入ると薫さんは早朝に言っていた通り私に甘えてから寝て、私も薫さんの頭を撫でている間に、いつの間にか気を失うように隣で眠った。
何時間寝ていたのか分からないが、玄関の扉を叩く音で目が覚めた。
扉を叩いている男は、電報だと叫んでいた。
窓の外は、もう薄暗いが、これが夕方なのか朝なのかはその時は分からなかった。
玄関に行き電報を受け取り、文章を読む。
そこに書かれていたのは、第2次ノモンハン事件発生の知らせ。
あとから来た薫さんが私に「行くの?」と聞いた。
これから各部署から提出された書類に基づいて日中平和条約の詰めの作業が待っている重要な時。
行きたいのは山々だけど、私は行かないと答えた。
行ったところで作戦の指揮権を持たない私に出来ることはない。
いまは平和条約を優先すべき時。
現地の石原司令や柳生さんを信用して、見守るしかない。
薫さんはホッとしたような表情を浮かべ、再び私に甘えて来た。
日中平和条約に向け、大本営でも条約の内容をまとめる作業に忙しい日々が続き、この日も私も薫さんも日をまたいで夜遅くまで書類の制作に追われていた。
戦場での数日はあっという間に終わる。
その一瞬を間違えれば、命も終わる。
だが、こういった事務手続きには時間が掛かる。
一行も間違いがないように、多くの人間のチェックが入るし、内容そのものにもあらゆる角度から見直される。
担当部署ごとに振り分けられた書類は、明日4月15日金曜日の午前中までに内閣に提出しなければならない。
そのため私たちだけでなく、陸軍も海軍の担当者も日曜日は勿論のこと昨年12月25日の大正天皇祭から1月5日の新年宴会の祝日を最後に日曜日や2月11日の紀元節も3月21日の春季皇霊祭も休むことなく平和のための書類づくりに励んできた。
そして残された時間は、あと1日もない。
「あーんもう、疲れたぁーっ!」
今まで私の隣で黙々と作業を続けていた薫さんが、とうとうギブアップを宣言した。
時計はもう午前3時を差していた。
「珈琲を淹れようか?」
「要らない! 飲んでしまったら、あと2時間は残業させられるもん‼」
薫さんは相当堪えているらしく会話が子供言葉になっていたので、もう帰ってもいいよと言うと疲れすぎて帰っても一人では寝つけないと断られた。
部屋にはもう私たちだけしか居ないとはいえ、万が一誰かに聞かれれば勘違いされてしまいそうな言葉に一瞬焦って周囲を見渡してしまう。
なのに私を焦らせた張本人は、ただ愚痴を言っただけでそのまま作業を続けていた。
午前7時。
そろそろ出勤の早い人たちが板張りの廊下を賑わし始め、次第にその音の波は大きく膨れ上がり騒々しくなってきたころ、ようやく全ての書類が完成した。
時計を見上げると時間はもう8時を回っていた。
提出後は通常の業務をしながらも、修正箇所があった場合に備えていたが、特に問題がないまま11時近くになり上司から承諾を得て、薫さんと政府事務局に向かい提出を済ませた。
一応今日はこれで退けて明日の土曜日も休んでいいと言われていたので、晴れ渡った1月の黄色い太陽の下を薫さんと一緒に宿舎に帰る。
宿舎に戻り着替えを持って2人で銭湯へ行き、その帰りに2人で蕎麦屋により蕎麦と天ぷらと少しのお酒を呑んでまた宿舎に戻る。
寝巻に着替えて布団に入ると薫さんは早朝に言っていた通り私に甘えてから寝て、私も薫さんの頭を撫でている間に、いつの間にか気を失うように隣で眠った。
何時間寝ていたのか分からないが、玄関の扉を叩く音で目が覚めた。
扉を叩いている男は、電報だと叫んでいた。
窓の外は、もう薄暗いが、これが夕方なのか朝なのかはその時は分からなかった。
玄関に行き電報を受け取り、文章を読む。
そこに書かれていたのは、第2次ノモンハン事件発生の知らせ。
あとから来た薫さんが私に「行くの?」と聞いた。
これから各部署から提出された書類に基づいて日中平和条約の詰めの作業が待っている重要な時。
行きたいのは山々だけど、私は行かないと答えた。
行ったところで作戦の指揮権を持たない私に出来ることはない。
いまは平和条約を優先すべき時。
現地の石原司令や柳生さんを信用して、見守るしかない。
薫さんはホッとしたような表情を浮かべ、再び私に甘えて来た。
38
あなたにおすすめの小説
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる