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黒髪の天子。
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リオルがコアーラ砦で、引き継ぎをしている頃。
オースト国の西のウォンット砦の前の町で待機していた三千の兵が動いた。
ラッパの音と共に、兵の動く足音が響き渡る。悲痛な表情の兵士達は覚悟を決めて前に進んだ。砦へと死神の待つ難攻不落と言われる場所へと。
その軍行は後に控える正規軍へと知らされる。今回の戦でアメリゴ帝国はオースト国を落とす事は考えてなかった。難攻不落の砦にリオルをけしかけ、軍が弱体化したところを一網打尽にするつもりであった。丘一つ向こうの小さな街、正規軍一万なら抹殺出来る数だが此方の被害を小さくするためにもオースト国にリオルの軍を潰して貰おうとしていた。近くの街に待機しているのは逃走する者を逃がさないためだ。
昼夜を通して、合戦の声がこの街まで微かに届く。そして日が明けた朝、正規軍の一万がリオルを抹殺するために動いた。
ユーヨクの街には直ぐに辿り着いた、静まり返る街居るはずの非戦闘員の影すら見えない。
「どう言うことだ? 」
非戦闘員も逆賊として殺せと皇帝に命令されていた。
「きっと、衛生兵として駆り出したのでしょう。」
「ハハハハ!! 涙ぐましいな。」
大将軍と副将軍は笑った。
「よい、先に進むぞ。」
一万の兵は、叫び声と金属音が鳴り響く戦場へと進む。多くの死体が転がってる筈の砦の前の荒野には何一つ無い。ただ広い荒野と叫び声と金属音が響いているだけだ。
声と金属音がする方へ、砦へと近づいていくと生臭い嫌な臭いが流れてくる。足元の大地に何かしら撒いてある。
だがそんな事よりも砦の上で、叫び声をあげ金属同しを叩きつけている者達に目を奪われた。
「ロックス将軍、これはどう言うことだ!! 」
砦の上で寛いでいる通称『お兄さま』と呼ばれる将軍に怒鳴った。その声は砦の上にいる将軍にも何とか届いた。
ロックス将軍は砦の上で声を出しながら金属を叩いている兵士の動きを制した。
辺りは静寂に包まれる。
「これはこれは大将軍閣下、遅いお越しで。」
砦の上から声を掛けた。
「どう言うことだと聞いている!! 」
「見ての通りですが。」
ロックス将軍はにやりと笑った。
「いつ砦を落としたのだ!? 何故、報告がない!! 」
大将軍は馬に乗ったまま、砦に向かって叫ぶ。
「昨日の昼過ぎに譲って貰いました大将軍閣下。」
「何!! ならあの戦闘を行っていた声は!? 」
副将軍は疑問を声に出した。戦闘を匂わせるあの声と音は確かに丘一つ向こうの街にまで聞こえていた。
「ああ、兵士達の訓練をしておりました。」
声をあげ金属音をたて、まるで戦闘をしているような訓練を。
「よくやった!! ウォンット砦を落とすとはな、皇帝陛下はお喜びになるだろう!! 」
大将軍は褒め称えた。
「さあ、門を開け我等を迎え入れて貰おう!! 」
既に戦支度をといている者達を抹殺するために大将軍は門の扉を開けさせようと声を上げる。
リオル皇子共々総ての者を抹殺するよう言い渡された皇帝陛下の命令を実行するために。
「門を開けよ!! 」
大将軍は命令を下す。
「それは出来ません。」
ロックス将軍は笑顔で返す。
「私はリオル様と天子に、此処を死守せよと命を受けて折りますので。」
「ワハハハッ!! ならば我等もリオル様の命を共に行おう。」
大将軍は笑って門を開けさせようとする。門さえ開けさせれば、圧倒的な数で全員を殺すことが出来る。
「あさ、門を開けよ!! 」
「お断りします。門を開けた途端、斬り殺されてはたまりませんから。」
「な、何を言う!? 」
「バレバレですよ、大将軍閣下。」
ロックス将軍は見下げた目を向ける。
「砦を落とすのに、攻城塔1台も用意せずに戦を起こすわけがないでしょう。どう見ても我等を殺す積もりでしょう。」
「それは、用意するのには急な策戦であったからな!! 」
副将軍は取り繕う言葉を開ける。
「それでは何故梯子一つ持ってないのですか? 」
砦を落とす気は皆無であることがうかがえる。
「門を開けよ!! 皇帝陛下の命に背くのは逆賊であるぞ!! 」
「逆賊で殺そうとしているのに、今更ですか? 」
ロックス将軍は笑った。
「うぐっ……。」
門が開かねば難攻不落な砦、大将軍は考えた。
「ロックス将軍よ、門を開ければ皇帝陛下に執りなしてやろう。どうだ、共にリオルを討とうではないか。」
副将軍はロックス将軍に声を掛ける。
「これはこれは。」
「皇帝陛下に逆らえば命はないぞ。我等の下につけ、悪いようにはしない。」
大将軍は笑顔で言った、門さえ開けさせれば此方のものなのだから。
「そうですね。」
ロックス将軍は考える素振りをする。近くの兵に声を掛けている。それを見た大将軍と副将軍は細笑んだ。
「お断りします。皇帝陛下より恐ろしい天子が此方にいますので。」
ロックス将軍は部下から火の付いた棒を受け取った。
「死神を従わせる天子が。天子に逆らうのは死より恐ろしいですから。」
ロックス将軍は微笑んで、火の付いた棒を放り投げた。その棒は大地に転がった。
次の瞬間瞬く間に炎が波紋のように広がっていく。
「た、退却!! 退却だ!! 」
足元に広がる炎に大将軍は叫んだ。一万の兵も炎を目にし慌てふためく。
大逃げ惑う兵達を見ながらロックス将軍は黒髪の天子を思う。
「恐ろしい天子だな。」
兵が邪魔をし大将軍は炎に囲まれる。逃げるときに倒れた者は体中に火傷を負い。大将軍も副将軍も馬に振り落とされ、大火傷を負っていた。命は落とさなかったが多くの兵が足に火傷を負い、殆どの兵が使い物にならなくなった。
オースト国の西のウォンット砦の前の町で待機していた三千の兵が動いた。
ラッパの音と共に、兵の動く足音が響き渡る。悲痛な表情の兵士達は覚悟を決めて前に進んだ。砦へと死神の待つ難攻不落と言われる場所へと。
その軍行は後に控える正規軍へと知らされる。今回の戦でアメリゴ帝国はオースト国を落とす事は考えてなかった。難攻不落の砦にリオルをけしかけ、軍が弱体化したところを一網打尽にするつもりであった。丘一つ向こうの小さな街、正規軍一万なら抹殺出来る数だが此方の被害を小さくするためにもオースト国にリオルの軍を潰して貰おうとしていた。近くの街に待機しているのは逃走する者を逃がさないためだ。
昼夜を通して、合戦の声がこの街まで微かに届く。そして日が明けた朝、正規軍の一万がリオルを抹殺するために動いた。
ユーヨクの街には直ぐに辿り着いた、静まり返る街居るはずの非戦闘員の影すら見えない。
「どう言うことだ? 」
非戦闘員も逆賊として殺せと皇帝に命令されていた。
「きっと、衛生兵として駆り出したのでしょう。」
「ハハハハ!! 涙ぐましいな。」
大将軍と副将軍は笑った。
「よい、先に進むぞ。」
一万の兵は、叫び声と金属音が鳴り響く戦場へと進む。多くの死体が転がってる筈の砦の前の荒野には何一つ無い。ただ広い荒野と叫び声と金属音が響いているだけだ。
声と金属音がする方へ、砦へと近づいていくと生臭い嫌な臭いが流れてくる。足元の大地に何かしら撒いてある。
だがそんな事よりも砦の上で、叫び声をあげ金属同しを叩きつけている者達に目を奪われた。
「ロックス将軍、これはどう言うことだ!! 」
砦の上で寛いでいる通称『お兄さま』と呼ばれる将軍に怒鳴った。その声は砦の上にいる将軍にも何とか届いた。
ロックス将軍は砦の上で声を出しながら金属を叩いている兵士の動きを制した。
辺りは静寂に包まれる。
「これはこれは大将軍閣下、遅いお越しで。」
砦の上から声を掛けた。
「どう言うことだと聞いている!! 」
「見ての通りですが。」
ロックス将軍はにやりと笑った。
「いつ砦を落としたのだ!? 何故、報告がない!! 」
大将軍は馬に乗ったまま、砦に向かって叫ぶ。
「昨日の昼過ぎに譲って貰いました大将軍閣下。」
「何!! ならあの戦闘を行っていた声は!? 」
副将軍は疑問を声に出した。戦闘を匂わせるあの声と音は確かに丘一つ向こうの街にまで聞こえていた。
「ああ、兵士達の訓練をしておりました。」
声をあげ金属音をたて、まるで戦闘をしているような訓練を。
「よくやった!! ウォンット砦を落とすとはな、皇帝陛下はお喜びになるだろう!! 」
大将軍は褒め称えた。
「さあ、門を開け我等を迎え入れて貰おう!! 」
既に戦支度をといている者達を抹殺するために大将軍は門の扉を開けさせようと声を上げる。
リオル皇子共々総ての者を抹殺するよう言い渡された皇帝陛下の命令を実行するために。
「門を開けよ!! 」
大将軍は命令を下す。
「それは出来ません。」
ロックス将軍は笑顔で返す。
「私はリオル様と天子に、此処を死守せよと命を受けて折りますので。」
「ワハハハッ!! ならば我等もリオル様の命を共に行おう。」
大将軍は笑って門を開けさせようとする。門さえ開けさせれば、圧倒的な数で全員を殺すことが出来る。
「あさ、門を開けよ!! 」
「お断りします。門を開けた途端、斬り殺されてはたまりませんから。」
「な、何を言う!? 」
「バレバレですよ、大将軍閣下。」
ロックス将軍は見下げた目を向ける。
「砦を落とすのに、攻城塔1台も用意せずに戦を起こすわけがないでしょう。どう見ても我等を殺す積もりでしょう。」
「それは、用意するのには急な策戦であったからな!! 」
副将軍は取り繕う言葉を開ける。
「それでは何故梯子一つ持ってないのですか? 」
砦を落とす気は皆無であることがうかがえる。
「門を開けよ!! 皇帝陛下の命に背くのは逆賊であるぞ!! 」
「逆賊で殺そうとしているのに、今更ですか? 」
ロックス将軍は笑った。
「うぐっ……。」
門が開かねば難攻不落な砦、大将軍は考えた。
「ロックス将軍よ、門を開ければ皇帝陛下に執りなしてやろう。どうだ、共にリオルを討とうではないか。」
副将軍はロックス将軍に声を掛ける。
「これはこれは。」
「皇帝陛下に逆らえば命はないぞ。我等の下につけ、悪いようにはしない。」
大将軍は笑顔で言った、門さえ開けさせれば此方のものなのだから。
「そうですね。」
ロックス将軍は考える素振りをする。近くの兵に声を掛けている。それを見た大将軍と副将軍は細笑んだ。
「お断りします。皇帝陛下より恐ろしい天子が此方にいますので。」
ロックス将軍は部下から火の付いた棒を受け取った。
「死神を従わせる天子が。天子に逆らうのは死より恐ろしいですから。」
ロックス将軍は微笑んで、火の付いた棒を放り投げた。その棒は大地に転がった。
次の瞬間瞬く間に炎が波紋のように広がっていく。
「た、退却!! 退却だ!! 」
足元に広がる炎に大将軍は叫んだ。一万の兵も炎を目にし慌てふためく。
大逃げ惑う兵達を見ながらロックス将軍は黒髪の天子を思う。
「恐ろしい天子だな。」
兵が邪魔をし大将軍は炎に囲まれる。逃げるときに倒れた者は体中に火傷を負い。大将軍も副将軍も馬に振り落とされ、大火傷を負っていた。命は落とさなかったが多くの兵が足に火傷を負い、殆どの兵が使い物にならなくなった。
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