悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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王の脱出。

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少し前の話。

「クソぅ!! ここから出せ!! これは国王命令だぞ!! 」 
閉じられた扉を叩きながら国王は命令する。だが、扉は開く素振りもない。

「クソぅ!! クソぅ!! なぜこうなった、何がいけなかった!! 」
そこら中の物に当たり散らす。

「クソぅ!! あの時、あのガキを逃さなければ……。」
馬鹿にしたように見下すセルビィの微笑みを思い出す。

「クソぅ、あのガキめ!! 」
どんなに後悔しようと、どんなに叫ぼうと目の前の扉は開かない。この部屋は豪華な牢屋となっていた。

「クソぅ!! シアンめ、儂を裏切りやがって!! 儂を売るつもりか!! 」
さっさと自分を見限り、帝国に差し出す元友を思い出す。悲しげな瞳に、口元は微笑んでいた。

「おのれ~!! シアンめ、シアンめ、殺してやる!! 」
どんなに恨みの言葉を吐いても、彼には届かない。既に道は閉ざされ、行く先は死しかない。

「誰か、誰か、儂を助けろ……儂は、この国の王なのだぞ……。」
逃げることも出来ず、縋る者もなく王は途方に暮れる。


「陛下……。」
空耳か、声が聞こえる。

「国王陛下。」
確かに声が聞こえ、その方を見る。
ガラガラと壁が崩れ、メイドが姿を現した。

「国王陛下、お助けに参りました。」
先程給仕をしていたメイドのようだ。

「さあ、早くこちらへ。」
壁に開けた穴へと誘導をする。人ひとりくぐり抜ける位の小さな穴だ。

「お、お前は!! 」
「しっ、お静かに。扉の騎士に見つかってしまいます。」
口元に人差し指をあてて、扉の方を見る。王もとっさに口を押さえた。

「さあ、お早く国王陛下。」
「う、うむ。」
王は言われるまま穴を潜った。メイドは衝立で塞ぎながら、穴を潜った。

「御手を国王陛下。」
這いつくばって穴を潜った王に手を差し出す銀髪の青年、王はその手を取った。メイドはもう一人の青年に手を借りて立ち上がっている。

「貴様は? 」
「私は、フレックス侯爵が息子のビウェルです。」
ビウェルは王に頭を下げた。

「フレックス侯爵様の命により、私が陛下の御側に使えさせて貰っておりました。」
メイドはスカートを持ち、華麗に礼を取る。

「こんなこともあろうかと、侯爵様がビウェル様と私達を陛下の御側に。」
ビウェルももう一人の青年も王に頭を下げる。メイドも言葉を続ける。

「国王陛下が、おわす限りオースト国は永遠です。」
「そうか、そうか、なかなかやらおるな。フレックスめ、事が終わったら公爵ヘ取り立ててやろう。」
そうだろそうだろと、王は頷きながら自分の価値を確認する。

「しかしこのままでは、陛下の御身が危のうございます。どうぞ、お逃げくださいませ。」
「う、うむ。そうだな。」
「城は危のうございます。城下に身を潜めるのが得策だと思われます。」
メイドは震えながら俯いた。

「しかし……、私達だけでは騎士達の目をぬすんで城下にお連れすることが出来ず……。」
「うむ、それならば大丈夫だ。城下へとの抜け道がある。」
震えるメイドの肩を優しく王は掴み、王家の者しか知らない抜け道を示した。

「ではそちらに、ここも危のうございます。」
メイドは王に微笑んた。


王城の中にある神への祭壇の間に城下への抜け道が隠されてあった。城下の外れの小さな教会へと続く隠し路。

「国王陛下、こちらにお着替えください。」
メイドは王に粗末な服を差し出した。

「これに着替えろとな? 」
「はい。その格好では直ぐに陛下とわかってしまいます。陛下の気品を隠すにはこれくらい粗末な物を着ていただかないと……。」
メイドは服を抱きしめた。

「総ては国王陛下のため。この国の為に、屈辱にお耐えください。」
「うむ、仕方あるまい。」
メイドは服をビウェルに渡した。

「ぼ、私は、外の様子を見てきます。お着替えの手伝いをお願いします。」
そそくさと祭壇の間を出ていく。

残された二人が王を見ると、
「よきにはからえ。」
腕を広げて、着替えを待っていた。

((あのやろう!! ))

たぷんとした醜い体に、着替えを終えた頃メイドが慌てたように戻って来た。

((このやろう!! ))

「大変です。騎士達がこちらに……、お急ぎください陛下。」
メイドは王を急かした。王は慌てて隠し路に逃げ込んだ。

「陛下、これを。多少ですがお金でございます。お急ぎを。」
「そちは、来ぬのか? 」
「行きとうございますが、騎士の目を晦ませなくてはなりません。」
メイドは首を振った。

「陛下がおわす限り、この国は永遠なのです。」
メイドは俯いた。

「そちの名は? 」
「セーラー。」
「もし、そちが無事なら儂の側妃にしてやろう。」
「ありがたき幸せ……。」
メイドは震えた。

「さあ、お早く。ここは、私達が決して誰も通させません。」
「そなた達の献身忘れぬぞ。」
王はそう言うと、隠し路に消えていった。メイドは静かにその扉を閉じた。




「おい。未来の側妃様。」
嫌味ったらしく、ナルトが言った。

「何のことでしょう? 」
メイドはにっこりと微笑む。

「なぜ奴を逃がすのです。」
ビウェルが真面目に聞いた。メイドは、セルビィは首を傾げた。

「なぜって、このままでは殺されてしまいます。そんなのは僕は望んでいません。」
「王の首を取らなくては、戦には勝ったことにはなりません。」
ビウェルは責めるように問いただす。

「僕はそんなに優しい人ではありませんよ。」
「知ってる、お前は魔王だ。」
「そんなこと言うのは、ナルト様だけですよ。」
くすくすと、セルビィは目を細めた。

「逃げを負うような人間には、それなりの死が相応しい。王として死なしてあげるほどを僕は優しくありませんから。」
セルビィは、妖しいほどの微笑を二人に向けた。
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