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尊い犠牲。
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「この度の戦の思案、お見事ですね。」
拍手で出迎えた聖教長は、リオルを褒め称える。
「既に勝敗は決まりました、矛を収めては頂けませんか。」
階段下まで降りる立つと右手を胸にあてて軽く頭を下げる。
「無論、それなりの者は差し出します。」
にっこりと微笑む。
「それなりの者とは? 」
リオルは問いただした。
「国王陛下の首です。」
「「「「おお!! 」」」」
壁にへばり付いていた貴族達は声をあげた。国王が首を差し出せばこの戦は終わる。そして自分は助かると。
「既に国王陛下は覚悟を決めておられます。どうぞ、戦の終わりを宣言してくださるようお願い致します。」
聖教長は頭を下げた。後ろの近衛騎士達も一緒に頭を下げる。
「まずは、国王に合わせて貰おう。」
リオルはそう応えた。
「勿論ですとも、こちらに。」
聖教長はもと来た階段を登り始めた。近衛兵達が道を開け、リオルとロレンスが歩き始める。後にグレード将軍と数名の兵が続く。その後をオースト国の近衛騎士が続いた。
「此処に国王陛下がおられます。」
聖教長は一つの豪華な扉の前に立つ。左右には近衛騎士が二人ずつ立っている。聖教長は騎士達を見ると、騎士達は静かに頷いた。
「国王陛下。リオル様をお連れしました。」
トントンと、扉を叩くが返事はない。
「もう、自害なされたか? 」
聖教長は冷たく言った。
もう一度扉を叩くが返事はない、聖教長は薄く微笑み扉を開けた。
「これはどう言う事ですか? 」
呆然と立ち尽くす聖教長に、ロレンスが声をかけた。ゴテゴテとした部屋の中には誰も居ない。
「国王は、何処に居られる。」
ロレンスは聖教長に問いただした。
「そんな……馬鹿な……。確かにこの部屋に閉じ込めて……。」
聖教長は部屋中を見回す。扉の前に立っていた近衛騎士に問いただした。
「国王陛下は何処に行かれた!? 」
「そんな……確かにこの部屋に、居られるはずです。」
近衛騎士は言うが、部屋には誰も居ない。
「これは何の茶番か? 」
リオルが静かに声を出した。
「ち、茶番など……、まさか国王陛下が横行際悪く逃げ出すなど……。私は、知らなかったのです。」
聖教長は言葉に詰まり言い訳をする。
「そ、そうです、王太子がいます。そうですそうです、王太子の首を差し出しましょう。」
塔に閉じ込めているから逃げれるはずわない、王の代わりに王太子を差し出そうと聖教長は取り繕う。
「昨日まで学生だった子供が、国王の代わりとなると思いますか? 」
太い声の男達の中に、澄んだ声が部屋に流れた。
「それよりも相応しい御人がいらっしゃると思いますが。」
掃き溜めに鶴のように、愛らしい少年が部屋の中に入って来た。癖のある黒髪の左右を後ろで髪飾りでとめ、肩まで髪を揺らしながら背筋を伸ばし歩いてくる。
「「セルビィ殿。」」
リオルとロレンスが少年の名前を呼んた。セラビィは愛らしく微笑んだ。
「セルビィ・ランドール……、城内にいたのか……。」
聖教長シアンが唇を噛んだ、探し求めていた者が目の前にいる。彼を人質に取れていたならば、安々とこの国が落とされることはなかったのだ。シアンは衝動的に動きそうな体を唇を噛むことで押さえた。
「リオル様、この度の勝利御祝い申し上げます。」
黒の男性用の礼服のドレスのように長い裾を持ち上げ、淑女のように礼を取った。
「礼を言う。だがセルビィ殿、まだ勝利の声はあげられない。今だ王の首を取れていないのだからな。」
「そうですか、気がせいたようで恥ずかしいです。」
セルビィは顔をあげると、ちらりと聖教長を見る。
「国王陛下は逃げてしまわれたのですか、それとも逃して差し上げたのですか? 聖教長シアン様。」
セルビィは冷たく言い放つ。
「な、馬鹿な、私は……。」
違うと言おうとする言葉をセルビィが遮る。手を合わせ目を閉じて、祈るようにセルビィは話し続ける。
「流石は盟友、自らを犠牲にし友を助けようなどと。僕はいたく感じ入りました、素晴らしいです。」
セルビィは目を開けリオルに微笑みかける。
「そう思いませんか、リオル様。」
「なるほど、この茶番は国王を逃がすための時間稼ぎか。」
リオルは近くにあるテーブルに拳を叩きつけた。鋭く聖教長を睨み付ける。
「あっぱれです。確かに貴族筆頭の三大公爵家のあなたなら、国王の代わりとなりこの戦を止めることができるでしょう。」
「ま、待て、違う……。」
セルビィの言葉に、聖教長シアンは顔を青ざめる。何とかセルビィの話を止めようと考えを巡らす。
「国王が生きている限りこの国は滅ばない、何たる忠臣。素晴らしい愛国心。流石は聖教長になられるだけの方です。」
セルビィは静かに近衛騎士達を見回し、優しい微笑みを見せた。
「そうは思いませんか、騎士様達。」
自分達に振られているのに、ゾッとする。それは先程聖教長シアンが、王を犠牲にすると振った言葉によく似ていた。若干十代の少年の言葉とは思えない、しかし彼等の応えは。
「「「「はい、セルビィ様。」」」」
近衛騎士達は自分を助けるために、その言葉を肯定するしか無かった。
「神はあなたの犠牲を、尊いと思って下さることでしょう。」
セルビィは聖教長シアンに、聖母のように優しいく微笑みを向けた。
拍手で出迎えた聖教長は、リオルを褒め称える。
「既に勝敗は決まりました、矛を収めては頂けませんか。」
階段下まで降りる立つと右手を胸にあてて軽く頭を下げる。
「無論、それなりの者は差し出します。」
にっこりと微笑む。
「それなりの者とは? 」
リオルは問いただした。
「国王陛下の首です。」
「「「「おお!! 」」」」
壁にへばり付いていた貴族達は声をあげた。国王が首を差し出せばこの戦は終わる。そして自分は助かると。
「既に国王陛下は覚悟を決めておられます。どうぞ、戦の終わりを宣言してくださるようお願い致します。」
聖教長は頭を下げた。後ろの近衛騎士達も一緒に頭を下げる。
「まずは、国王に合わせて貰おう。」
リオルはそう応えた。
「勿論ですとも、こちらに。」
聖教長はもと来た階段を登り始めた。近衛兵達が道を開け、リオルとロレンスが歩き始める。後にグレード将軍と数名の兵が続く。その後をオースト国の近衛騎士が続いた。
「此処に国王陛下がおられます。」
聖教長は一つの豪華な扉の前に立つ。左右には近衛騎士が二人ずつ立っている。聖教長は騎士達を見ると、騎士達は静かに頷いた。
「国王陛下。リオル様をお連れしました。」
トントンと、扉を叩くが返事はない。
「もう、自害なされたか? 」
聖教長は冷たく言った。
もう一度扉を叩くが返事はない、聖教長は薄く微笑み扉を開けた。
「これはどう言う事ですか? 」
呆然と立ち尽くす聖教長に、ロレンスが声をかけた。ゴテゴテとした部屋の中には誰も居ない。
「国王は、何処に居られる。」
ロレンスは聖教長に問いただした。
「そんな……馬鹿な……。確かにこの部屋に閉じ込めて……。」
聖教長は部屋中を見回す。扉の前に立っていた近衛騎士に問いただした。
「国王陛下は何処に行かれた!? 」
「そんな……確かにこの部屋に、居られるはずです。」
近衛騎士は言うが、部屋には誰も居ない。
「これは何の茶番か? 」
リオルが静かに声を出した。
「ち、茶番など……、まさか国王陛下が横行際悪く逃げ出すなど……。私は、知らなかったのです。」
聖教長は言葉に詰まり言い訳をする。
「そ、そうです、王太子がいます。そうですそうです、王太子の首を差し出しましょう。」
塔に閉じ込めているから逃げれるはずわない、王の代わりに王太子を差し出そうと聖教長は取り繕う。
「昨日まで学生だった子供が、国王の代わりとなると思いますか? 」
太い声の男達の中に、澄んだ声が部屋に流れた。
「それよりも相応しい御人がいらっしゃると思いますが。」
掃き溜めに鶴のように、愛らしい少年が部屋の中に入って来た。癖のある黒髪の左右を後ろで髪飾りでとめ、肩まで髪を揺らしながら背筋を伸ばし歩いてくる。
「「セルビィ殿。」」
リオルとロレンスが少年の名前を呼んた。セラビィは愛らしく微笑んだ。
「セルビィ・ランドール……、城内にいたのか……。」
聖教長シアンが唇を噛んだ、探し求めていた者が目の前にいる。彼を人質に取れていたならば、安々とこの国が落とされることはなかったのだ。シアンは衝動的に動きそうな体を唇を噛むことで押さえた。
「リオル様、この度の勝利御祝い申し上げます。」
黒の男性用の礼服のドレスのように長い裾を持ち上げ、淑女のように礼を取った。
「礼を言う。だがセルビィ殿、まだ勝利の声はあげられない。今だ王の首を取れていないのだからな。」
「そうですか、気がせいたようで恥ずかしいです。」
セルビィは顔をあげると、ちらりと聖教長を見る。
「国王陛下は逃げてしまわれたのですか、それとも逃して差し上げたのですか? 聖教長シアン様。」
セルビィは冷たく言い放つ。
「な、馬鹿な、私は……。」
違うと言おうとする言葉をセルビィが遮る。手を合わせ目を閉じて、祈るようにセルビィは話し続ける。
「流石は盟友、自らを犠牲にし友を助けようなどと。僕はいたく感じ入りました、素晴らしいです。」
セルビィは目を開けリオルに微笑みかける。
「そう思いませんか、リオル様。」
「なるほど、この茶番は国王を逃がすための時間稼ぎか。」
リオルは近くにあるテーブルに拳を叩きつけた。鋭く聖教長を睨み付ける。
「あっぱれです。確かに貴族筆頭の三大公爵家のあなたなら、国王の代わりとなりこの戦を止めることができるでしょう。」
「ま、待て、違う……。」
セルビィの言葉に、聖教長シアンは顔を青ざめる。何とかセルビィの話を止めようと考えを巡らす。
「国王が生きている限りこの国は滅ばない、何たる忠臣。素晴らしい愛国心。流石は聖教長になられるだけの方です。」
セルビィは静かに近衛騎士達を見回し、優しい微笑みを見せた。
「そうは思いませんか、騎士様達。」
自分達に振られているのに、ゾッとする。それは先程聖教長シアンが、王を犠牲にすると振った言葉によく似ていた。若干十代の少年の言葉とは思えない、しかし彼等の応えは。
「「「「はい、セルビィ様。」」」」
近衛騎士達は自分を助けるために、その言葉を肯定するしか無かった。
「神はあなたの犠牲を、尊いと思って下さることでしょう。」
セルビィは聖教長シアンに、聖母のように優しいく微笑みを向けた。
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