悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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千尋の谷候補。

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「そう言えばセルビィ殿。その令嬢の中の一人と、俺は婚 」
「おおっと、腹にアブが!! 」
「くはばっ!! 」
ナルトは咄嗟にリオルの腹に拳を入れた。リオルは腹を押さえて膝をついた。婚約の事はロビンから報告を受けていた、無論セルビィには内緒で。

「何をする、ナルト殿!! 」
ロレンスは蹲るリオルに駆け寄り、ナルトを睨みつけた。ナルトの瞳が静かに動く、それを追ってロレンスも目を動かした。ロビンがロレンスが失言を侵さないように、いざと言うときのために後ろに陣取る。


「こん……こん、なんですか? 」
セルビィの凍り付いた笑顔の瞳の光が消えた。

「こん、なんですか? ロレンス様。」
優しい問いかけだが、ビシビシと冷気が突き刺さる。ロレンスは悟った。殺される。

「こん…… 」
「こん? 」
セルビィの光のない瞳が細められる。可愛らしく首を傾げているが恐ろしい。

「姉様達の一人と、『こん』なんです? 」
「……… 」
ゴクリとロレンスは唾を呑んだ。

「令嬢達の一人、一人方がこん、こんにゃくが好きだと聞きまして!! 」
「こんにゃく? 」
セルビィの瞳に光が戻った。

「一人ではなく姉様達、みな様こんにゃくは好きです。こんにゃくは女性の味方です。姉様がそう言ってました。」
ダイエットにおいて、こんにゃくは女性の味方だとセルビアがセルビィに説いていた。セルビィはその言葉をまるまま信じた。
リオル達は命拾いをした。

「僕、『こん』と聞いて『婚約』かと勘違いしてしまいました。」
セルビィはくすくすと笑う。

「つい、リオル様を千尋の谷に突き落としたくなりました。」
にっこりと、微笑む。

「取り敢えずは、此処から(砦の上から)落とし見ようかと思いました。」
「「いや、死ぬから!! 」」
「死にますね、この高さからだと。」
ナルトとロビンが突っ込むと、ビウェルは肯定する。腹を押さえながらリオルと、介抱するロレンスは顔を青ざめた。

「これぐらい生き残れなくて、どうやって姉様達を守るのです。」
セルビィの目は真面目だった。

「いや、お前落ちて見ろよ。」
「何を言っているのです? 僕は弟ですので結婚はできません。」
「セルビアは兎も角、他の令嬢とは結婚できるだろ。」
ロビンが聞くと、セルビィは真面目に応えた。ナルトが疑問を呈するとセルビィは首を傾げた。

「姉様達は、姉様です。」
セルビィの中では、令嬢達+アリスは姉様に格付けされていた。姉弟同士の結婚はありえない。と言うかセルビィの中に『恋愛』の二文字は無かった。

『あ、こいつお子様だ。』 

その場にいるナルト達総ては思った。お子様だからこそ厄介、なりふり構わず欲しい物を手に入れようとする。そして手に入れたらなかなか手放そうとはしない。床に転がり手足をバタバタさせている状態が今のセルビィであった。なまじ頭が良い為に魔王と化していた。

天使のように微笑むセルビィに、その場の者は何も言えなかった。







大きな湖を背にした真新しい白亜の城があった。いや、其れは人工的に作られた大きなため池である。時折、貯水池の後方に聳え立つ山脈から雪の塊が落ち大きな波を作っている。波と同時に冷たい風が城のテラスに立っている美しい女性の黒い髪を靡かせた。

此処は、過酷な大地ルナと言われた荒野の一角。山脈に守られた人工的に作られたオアシス、ルナと名を付けた国である。時を費やし、肥沃な土を運び込み畑を家畜たちを住む場所を、作り出した今や立派な国であった。

「セルビィは、大丈夫かしら…… 」
セルビアは安全に守られた城の中で、セルビィがいる方角の空を見て呟いた。

「大丈夫よ、セルビア。セルビィ君だもの。」
「なんてったって、セルビィ君だもの。」
「ふふっ、そうね。」
令嬢達は安心させるようにセルビアに話しかけた。

「あの子、無理をしてないか心配だわ。」
(((其処は、無茶でしょう。)))
セルビアの心配に令嬢達は心の中で突っ込んだ。

「大丈夫です、セルビア様。ロビンもついてますし。」
マリアが安心させるようにお茶のおかわりを淹れながら励ます。

「そうそう、我が天使に不可能はない。」
いつの間にか席に着いてお茶を啜るセラムの姿があった。

「お父様!! 」
「「「おじさま。」」」
「旦那様。」
「それにセルビィは、転生者だ。」
未だに転生者論から抜けられないセラムであった。ボリボリと目の前のお菓子を食べる。
 
「何をなさっているのですか? セラム王。」
セラムの父の後ろに現れたボルトに、セルビアは頬を染めた。
此処も一人、千尋の谷候補がいた。

「王やだ!! 王やだ!! 俺に、王は無理だ!! 」
「そんな事は分かってる。でもお前以外にいないんだ。」 
ジタバタしている処を羽交い締めにする。

「国を体制を維持するのに王は必要なんだ、他の国を牽制するのにもな。名も顔も知れ渡っているお前はお飾りだろうと王に相応しい。」
「お飾りなら仕事しなくてもいいだろう!! 」
「それと、これとは話は別だ。」
ボルトは襟首をホールドしてセラムを引きずって戻ろうとする。その父セラムと、セルビアは目があった。

「セルビア~~ 」
父は助けを求めるように娘の名を読んだ。

「ボルト様。」
セルビアの呼び声にボルトは振り向く。

「その。………セルビィは無理をしてないでしょうか。」
頬を染めて聞いた。

「大丈夫だ、傍にナルトがいる。無茶をすれば止めるだろう。」 

(((やっぱり無茶なんだわ。)))

「そうですね。」
(((セルビア、無茶って言ってますよ。)))
セルビアは恥じらうように微笑んた。そして令嬢達は心の中で突っ込んだ。

「セルビア~~ 」
悲しい泣き声と共に連れ戻されるセラム。

「此処にいたのですか。」
「ああルイス、部屋に戻ろう。」
セラムを探しまくっていたルイスが、ボルトに声をかけた。ボルトは返事をしてルイスと仕事を始めるために部屋へとセラムを引きずる。その背に、

「後でお茶を持って行きますから、ルイスさま。」
「あ、ありがとうございます。」
ルイスは真っ赤になりながら応えた、釣られるようにアリスも頬を染めた。

此処に千尋の谷候補が一人。




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