45 / 114
12.文武抗争編
59文武抗争 ④
しおりを挟む
***
――これは、どういうことかしら。
一言、そう言ったきり最高司令官が黙り込んでから約十分。特別編成隊の遠征に伴い、まだ煌々と明かりのついた総司令部室では、隊員たちが何も言えないまま、そわそわと互いに顔を見合わせていた。
大机のそばに控えた副最高司令官もじっと黙っている。だが、彼女は浮つくことなく、ビジネスチェアでいまだ微動だにしないトップを一心に見つめ続けている。
美雷の明敏さはよく知っている。きっとこうして一点を見つめて固まっている間、頭の中では目まぐるしい速度で情報が回っていることだろう。状況を分析するべく、現状と過去の事象、論理的予測、起こりえる可能性と起こりえない可能性、それらを高速で照らし合わせている。いや、もしかすると、すでにその先、対処法やそのための作戦立案にまで手を伸ばしているのかもしれない。
邪魔してはいけない。霞冴がそう思った矢先だった。
つけっぱなしのデスクトップパソコンに、ビデオ通話の着信が入った。
その瞬間、美雷はぱちりと目を覚ましたように瞬きをすると、一拍のポーズもおかず応答ボタンをクリックした。一瞬だけ目に映った発信者の名前に、霞冴はぴくりと慄くように身を引いたが、直後にはその名をもつ人物が画面に現れていた。
白髪をひっつめにした、赤い瞳が霊妙な年齢不詳の女性。
「学院長……!」
思わずその役職名を口にしてから、霞冴は自らの分不相応な行動に気づき、慌てて口を押さえて下がった。かつては学院長に応対するのも霞冴の仕事だったのだが、今は違うのだ。
美雷が泰然と応じる。
「こんばんは、学院長。いかがなさいましたか」
『気になる報告を受けています。今、取り込み中ですか』
「ええ、恐れ入りますが。しかし、これは学院長のご用向きと関連する事象かもしれません」
『聞きましょう』
必要最低限のやりとりで本題に入るトップ二人。うち希兵隊のそれが、一歩間違えれば宣戦布告ともとれる言葉を、忌憚なく口にした。
「端的に申し上げますと、現在、不審な現象の観測によりチエアリ出没を疑い、水守の森に希兵隊員を派遣中なのですが、そこで遠征隊員が学院の研究者と遭遇。学院側は希兵隊がとある研究グループの活動を妨害していると、さらに攻撃まで加えられたと主張し、希兵隊の活動を妨げているようです」
『なるほど』
ひやひやする霞冴をよそに、奈成は得心がいったようにうなずいた。
『私が受けた報告と一致しています。一昨晩、希兵隊が我が総造学研究科・手塚研究室のグループに対し、チエアリ検出センサー開発にかかるデータ収集の妨害、攻撃を行ったと。その後、手塚研究室の代理が、再度データ収集へ行くとも聞きました。まさか、もう行っていたとは、そしてそこへ希兵隊も居合わせるとは思いませんでしたが』
「その夜、希兵隊が水守の森へ入ったのは、そこから立ち上る火柱が観測されたためです。森の中へ入った南部地方遠征隊は、そこで何者かに攻撃を受けました。反撃したものの、敵は正体不明のまま終わりましたが、クロ類検出センサーに反応がなかったことから、チエアリの可能性が考えられました。それで、特別編成隊を本日夕方に派遣したのです」
穏やかにそう返す美雷の隣で、霞冴は呼吸をするのも恐れるほどの緊張感に締め上げられた。
美雷の言葉は、淡々と、ただ事実を述べただけのものだった。だが、いくら丁寧な言い回しをしていようと、その趣旨は変わらない。
明確な反論。奈成の主張の否定だ。
奈成が口をつぐむ。一歩として譲らぬ両者の視線が、静かに、音もなくぶつかり合う。霞冴は板挟みとなっている液晶画面にすら同情した。
『では、手塚研究室のセンサー開発への妨害、および攻撃行為はなかったと?』
「私は無論指示しておりませんし、彼らにもそうする動機がありません」
断言した美雷に、奈成はふぅっと息を吐いて苦々しく言った。
『誤解を恐れずに言います。希兵隊、そちらもチエアリ検出センサーを開発しているようですね。よって、ここには競争的関係が成立しています。もし学院に、同じ機序を利用したセンサーの開発を先越された場合、希兵隊は当該研究室の許可なしにセンサーを開発・利用することはできなくなります。希兵隊には、センサー開発を妨害する動機があると……当該研究室はそう主張しています』
「そんな!」
緊張を跳ねのけるように、霞冴の反発がはじけた。立場も状況も忘れて、美雷の横から乗り出して声を張る。
「ありえません! だって……!」
『副最高司令官』
叫びかけた喉に、奈成の厳かな声が留め金をかける。
『私は今、最高司令官と話をしています。控えなさい』
「……っ!」
それ以上の干渉を許さぬ一言だった。歯噛みする霞冴の肩に、そっと手が置かれる。
「霞冴ちゃん」
ハッと振り向くと、美雷が口元に薄く笑みを浮かべて、霞冴を見上げていた。そっと霞冴の肩を押し戻しながら、美雷は奈成に向き直る。
「希兵隊に、学院の研究を妨害する動機はありません。いえ、デメリットが上回ると言った方が正しいでしょうか。学院長のご懸念はごもっともです。しかし、両者の開発品が同じ機序を利用したものである蓋然性がわからず、あまつさえ既に開発の最終試験段階まで来ている希兵隊が、周囲の反感を買いかねないリスクを冒してまで、貴学の妨害をするでしょうか」
再び、毅然と主張した美雷。
そこへ、同じだけの質量をもった視線が真っ向から衝突し、ディスプレイを軋ませる。
『その思想は、水守の森にいた遠征隊のものですか?』
奈成は学者だ。その思考と言論は、どこまでも論理的で、徹底的。
『あなたを疑いたくはありません。疑うつもりもありません。ですが、あなたへの信頼はそのままあなたの部下への信頼に適用できるかと言えば、その限りではありません。あなたに動機がなくとも、遠征隊の独断で実行された、その可能性を捨てきれますか?』
言外に、九番隊の美雷への裏切りを示唆された。
そんな言い方、と胸を刺されたような痛みを覚える霞冴だが、奈成はさらに指摘を重ねる。
『もう一つ、気になることがあります。あなたの仮説通り、チエアリが希兵隊を攻撃したのならば、おそらく手塚研究室を襲撃したのもチエアリでしょう。しかし、だとすれば、チエアリはなぜ深追いせず、研究チームも希兵隊も逃がしたのでしょうか。それが不可解です』
美雷はおとがいに手を当てて考え込んでいる。霞冴は祈る心中で彼女を見つめた。
彼女なら、逆転の糸口を見つけてくれる。絶対に、この現状を打破してくれる。
――いつか、同じことを、同じ場所に座す人物に願ったことがある。
それを無意識にふわりと思い出した時、美雷の目がふとしばたたかれた。
黙ったままの美雷に、奈成の声がかかる。
『勘違いなさらないでください』
その声色は、先程までとは少し違う色彩を見せていた。
『私はあなたを信じています。そのような愚行に走る方ではないと知っています。ですから、私があなたに望むのは、降伏ではありません。真相に至る手がかりです』
「……学院長ともあらせられるお方からそのようなご期待をかけられるなど、恐悦至極の至りですわ」
言って、美雷は視線を上げた。発言権の交代を察した奈成がうなずくのを見て、美雷は口を開く。
「そもそも、なぜ学院の方々は、希兵隊にセンサーを壊されたという思考に至ったのでしょうか」
柔和に真剣というおおよそ彼女にしかできないような面持ちを浮かべて、美雷は言った。
「確かに、学院長の御説は筋が通っています。ですが、希兵隊はあの晩、あの場所で、チエアリ検出センサーのデータ収集が行われることを知りませんでした。学院側から何か発信は?」
『していませんね。当該の区画にはバリケードを張っているかもしれませんが、従来通りなら、研究の詳細な内容までは記載しません。せいぜい「試験実施中につき関係者以外立ち入り禁止」くらいでしょう』
「何の試験中かもわからない以上、センサー開発妨害という目的で中に踏み込むとは思えません。ものによっては自身に危害が加わるかもしれないと考えると、なおさら。……あの夜、センサーを配備していた区画に、希兵隊は立ち入っていないはずです」
動機の有無の証明を要さない美雷の弁。しばらく口をつぐんだ奈成に、霞冴は論破の兆しを見る。
「だったら……希兵隊と学院を攻撃したのは、やっぱりチエアリ……?」
あの夜、希兵隊と学院は出会ってすらいない。互いに攻撃しあったとは考えにくい。
ならば、彼らを攻撃した第三者が、あの森に潜んでいたことになる。
けれど、確かに奈成の言う通り、敵がチエアリほどの凶悪な存在だったならば、希兵隊と学院を見逃した理由が不可解だ。
首をひねる霞冴に、奈成は驚くべき言葉を――正確には、その言葉を、驚くべき強い確信をもって、言った。
『そうではないかもしれませんよ』
「えっ?」
「霞冴ちゃん。あの夜、希兵隊と学院は出会わなかった。にもかかわらず、学院は『希兵隊がやった』と言い張っているのよ」
美雷も、奈成と同じ結論を見ているようだ。自分も彼女らと同じ高さの視線になろうと背伸びして、あっと気づく。
「……学院は、希兵隊が同時期に水守の森にいたことを知らないはず……。だけど、クロ類でも他の誰かでもなく、希兵隊が犯人だと自信をもって主張しているのは、本当は希兵隊が水守の森にいたことを知っていたから……!?」
「ええ」
美雷が確信めいた表情で頷いた。
そして、一つの結論を口にする。
「学院と希兵隊の両方があの場にいることを知ることができた者。そしてそれを両者に伝えることができた者。――この事件、学院と希兵隊の内通者が、一枚噛んでいるわ」
――これは、どういうことかしら。
一言、そう言ったきり最高司令官が黙り込んでから約十分。特別編成隊の遠征に伴い、まだ煌々と明かりのついた総司令部室では、隊員たちが何も言えないまま、そわそわと互いに顔を見合わせていた。
大机のそばに控えた副最高司令官もじっと黙っている。だが、彼女は浮つくことなく、ビジネスチェアでいまだ微動だにしないトップを一心に見つめ続けている。
美雷の明敏さはよく知っている。きっとこうして一点を見つめて固まっている間、頭の中では目まぐるしい速度で情報が回っていることだろう。状況を分析するべく、現状と過去の事象、論理的予測、起こりえる可能性と起こりえない可能性、それらを高速で照らし合わせている。いや、もしかすると、すでにその先、対処法やそのための作戦立案にまで手を伸ばしているのかもしれない。
邪魔してはいけない。霞冴がそう思った矢先だった。
つけっぱなしのデスクトップパソコンに、ビデオ通話の着信が入った。
その瞬間、美雷はぱちりと目を覚ましたように瞬きをすると、一拍のポーズもおかず応答ボタンをクリックした。一瞬だけ目に映った発信者の名前に、霞冴はぴくりと慄くように身を引いたが、直後にはその名をもつ人物が画面に現れていた。
白髪をひっつめにした、赤い瞳が霊妙な年齢不詳の女性。
「学院長……!」
思わずその役職名を口にしてから、霞冴は自らの分不相応な行動に気づき、慌てて口を押さえて下がった。かつては学院長に応対するのも霞冴の仕事だったのだが、今は違うのだ。
美雷が泰然と応じる。
「こんばんは、学院長。いかがなさいましたか」
『気になる報告を受けています。今、取り込み中ですか』
「ええ、恐れ入りますが。しかし、これは学院長のご用向きと関連する事象かもしれません」
『聞きましょう』
必要最低限のやりとりで本題に入るトップ二人。うち希兵隊のそれが、一歩間違えれば宣戦布告ともとれる言葉を、忌憚なく口にした。
「端的に申し上げますと、現在、不審な現象の観測によりチエアリ出没を疑い、水守の森に希兵隊員を派遣中なのですが、そこで遠征隊員が学院の研究者と遭遇。学院側は希兵隊がとある研究グループの活動を妨害していると、さらに攻撃まで加えられたと主張し、希兵隊の活動を妨げているようです」
『なるほど』
ひやひやする霞冴をよそに、奈成は得心がいったようにうなずいた。
『私が受けた報告と一致しています。一昨晩、希兵隊が我が総造学研究科・手塚研究室のグループに対し、チエアリ検出センサー開発にかかるデータ収集の妨害、攻撃を行ったと。その後、手塚研究室の代理が、再度データ収集へ行くとも聞きました。まさか、もう行っていたとは、そしてそこへ希兵隊も居合わせるとは思いませんでしたが』
「その夜、希兵隊が水守の森へ入ったのは、そこから立ち上る火柱が観測されたためです。森の中へ入った南部地方遠征隊は、そこで何者かに攻撃を受けました。反撃したものの、敵は正体不明のまま終わりましたが、クロ類検出センサーに反応がなかったことから、チエアリの可能性が考えられました。それで、特別編成隊を本日夕方に派遣したのです」
穏やかにそう返す美雷の隣で、霞冴は呼吸をするのも恐れるほどの緊張感に締め上げられた。
美雷の言葉は、淡々と、ただ事実を述べただけのものだった。だが、いくら丁寧な言い回しをしていようと、その趣旨は変わらない。
明確な反論。奈成の主張の否定だ。
奈成が口をつぐむ。一歩として譲らぬ両者の視線が、静かに、音もなくぶつかり合う。霞冴は板挟みとなっている液晶画面にすら同情した。
『では、手塚研究室のセンサー開発への妨害、および攻撃行為はなかったと?』
「私は無論指示しておりませんし、彼らにもそうする動機がありません」
断言した美雷に、奈成はふぅっと息を吐いて苦々しく言った。
『誤解を恐れずに言います。希兵隊、そちらもチエアリ検出センサーを開発しているようですね。よって、ここには競争的関係が成立しています。もし学院に、同じ機序を利用したセンサーの開発を先越された場合、希兵隊は当該研究室の許可なしにセンサーを開発・利用することはできなくなります。希兵隊には、センサー開発を妨害する動機があると……当該研究室はそう主張しています』
「そんな!」
緊張を跳ねのけるように、霞冴の反発がはじけた。立場も状況も忘れて、美雷の横から乗り出して声を張る。
「ありえません! だって……!」
『副最高司令官』
叫びかけた喉に、奈成の厳かな声が留め金をかける。
『私は今、最高司令官と話をしています。控えなさい』
「……っ!」
それ以上の干渉を許さぬ一言だった。歯噛みする霞冴の肩に、そっと手が置かれる。
「霞冴ちゃん」
ハッと振り向くと、美雷が口元に薄く笑みを浮かべて、霞冴を見上げていた。そっと霞冴の肩を押し戻しながら、美雷は奈成に向き直る。
「希兵隊に、学院の研究を妨害する動機はありません。いえ、デメリットが上回ると言った方が正しいでしょうか。学院長のご懸念はごもっともです。しかし、両者の開発品が同じ機序を利用したものである蓋然性がわからず、あまつさえ既に開発の最終試験段階まで来ている希兵隊が、周囲の反感を買いかねないリスクを冒してまで、貴学の妨害をするでしょうか」
再び、毅然と主張した美雷。
そこへ、同じだけの質量をもった視線が真っ向から衝突し、ディスプレイを軋ませる。
『その思想は、水守の森にいた遠征隊のものですか?』
奈成は学者だ。その思考と言論は、どこまでも論理的で、徹底的。
『あなたを疑いたくはありません。疑うつもりもありません。ですが、あなたへの信頼はそのままあなたの部下への信頼に適用できるかと言えば、その限りではありません。あなたに動機がなくとも、遠征隊の独断で実行された、その可能性を捨てきれますか?』
言外に、九番隊の美雷への裏切りを示唆された。
そんな言い方、と胸を刺されたような痛みを覚える霞冴だが、奈成はさらに指摘を重ねる。
『もう一つ、気になることがあります。あなたの仮説通り、チエアリが希兵隊を攻撃したのならば、おそらく手塚研究室を襲撃したのもチエアリでしょう。しかし、だとすれば、チエアリはなぜ深追いせず、研究チームも希兵隊も逃がしたのでしょうか。それが不可解です』
美雷はおとがいに手を当てて考え込んでいる。霞冴は祈る心中で彼女を見つめた。
彼女なら、逆転の糸口を見つけてくれる。絶対に、この現状を打破してくれる。
――いつか、同じことを、同じ場所に座す人物に願ったことがある。
それを無意識にふわりと思い出した時、美雷の目がふとしばたたかれた。
黙ったままの美雷に、奈成の声がかかる。
『勘違いなさらないでください』
その声色は、先程までとは少し違う色彩を見せていた。
『私はあなたを信じています。そのような愚行に走る方ではないと知っています。ですから、私があなたに望むのは、降伏ではありません。真相に至る手がかりです』
「……学院長ともあらせられるお方からそのようなご期待をかけられるなど、恐悦至極の至りですわ」
言って、美雷は視線を上げた。発言権の交代を察した奈成がうなずくのを見て、美雷は口を開く。
「そもそも、なぜ学院の方々は、希兵隊にセンサーを壊されたという思考に至ったのでしょうか」
柔和に真剣というおおよそ彼女にしかできないような面持ちを浮かべて、美雷は言った。
「確かに、学院長の御説は筋が通っています。ですが、希兵隊はあの晩、あの場所で、チエアリ検出センサーのデータ収集が行われることを知りませんでした。学院側から何か発信は?」
『していませんね。当該の区画にはバリケードを張っているかもしれませんが、従来通りなら、研究の詳細な内容までは記載しません。せいぜい「試験実施中につき関係者以外立ち入り禁止」くらいでしょう』
「何の試験中かもわからない以上、センサー開発妨害という目的で中に踏み込むとは思えません。ものによっては自身に危害が加わるかもしれないと考えると、なおさら。……あの夜、センサーを配備していた区画に、希兵隊は立ち入っていないはずです」
動機の有無の証明を要さない美雷の弁。しばらく口をつぐんだ奈成に、霞冴は論破の兆しを見る。
「だったら……希兵隊と学院を攻撃したのは、やっぱりチエアリ……?」
あの夜、希兵隊と学院は出会ってすらいない。互いに攻撃しあったとは考えにくい。
ならば、彼らを攻撃した第三者が、あの森に潜んでいたことになる。
けれど、確かに奈成の言う通り、敵がチエアリほどの凶悪な存在だったならば、希兵隊と学院を見逃した理由が不可解だ。
首をひねる霞冴に、奈成は驚くべき言葉を――正確には、その言葉を、驚くべき強い確信をもって、言った。
『そうではないかもしれませんよ』
「えっ?」
「霞冴ちゃん。あの夜、希兵隊と学院は出会わなかった。にもかかわらず、学院は『希兵隊がやった』と言い張っているのよ」
美雷も、奈成と同じ結論を見ているようだ。自分も彼女らと同じ高さの視線になろうと背伸びして、あっと気づく。
「……学院は、希兵隊が同時期に水守の森にいたことを知らないはず……。だけど、クロ類でも他の誰かでもなく、希兵隊が犯人だと自信をもって主張しているのは、本当は希兵隊が水守の森にいたことを知っていたから……!?」
「ええ」
美雷が確信めいた表情で頷いた。
そして、一つの結論を口にする。
「学院と希兵隊の両方があの場にいることを知ることができた者。そしてそれを両者に伝えることができた者。――この事件、学院と希兵隊の内通者が、一枚噛んでいるわ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる