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12.文武抗争編
59文武抗争 ⑥
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怪訝そうな顔をするせつなに、雷奈は続ける。
「せつなは私が持っとるセンサーの反応を根拠に、チエアリがここにいないことを主張しとる。それは、せつながこのセンサーが完成したものと思っとるってことったい」
完成していなければ、必ずセンサーがチエアリに反応してくれると、逆に言えば、センサーが反応していないならチエアリはここにいないと、そう断ずることはできないはずだ。
それに、彼女は神社でこうも言った。
――これが量産されたら、先の侵攻みたいに大きな犠牲も出ずに済むかもね。
完成したら、ではなく、量産されたら。それは、すでに完成段階にあると認識している者の言葉だろう。
しかし。
「ばってん、それだと矛盾する。だって、完成しているなら、もうゴールにたどり着いているなら……学院のセンサー開発を妨害する動機が全くない」
同じレーンに立って一位二位を争う時、相手の足を引っ張る必要があるとしたら、それは自分が後れを取っているときに他ならない。すでにゴールが目前にあるならば、やることは相手を蹴落とすことではない。最後の一歩を踏み出して、勝利を確定させるだけだ。
今回の件も同じだ。そして、聡いせつなならそれくらい理解していておかしくはない。
希兵隊のセンサーが完成していると認識しているなら、希兵隊に妨害されたという研究チームの主張を安易に信じるとは思えない。
せつなが本当はどちらの認識でいるのか、それは問題ではない。完成しているとみているのか、焦るほどには未完成とみているのか、それはどちらでもよい。
問題なのは、彼女の主張同士で矛盾が生じているということだ。
「せつな」
呼びかける雷奈は、せつなの瞳の色が宝石の赤から炎のそれに変化していくのに気づくべきだった。
「もしかしてあなたの目的は、別の……」
だが、それは引き金を引いてしまった後だった。
開いた間合いを一瞬で詰めたせつなのなぎなたが、雷奈の頭上に振りかざされる。体の反応に従い、反射的に掲げた木刀に、打擲の衝撃。少しでも頭で考えていたなら、防具なしで面打ちを食らっていただろう。
迷いない太刀筋。せつなは、波音ではなく、間違いなく雷奈を狙っていた。
「黙って!」
切り結んだところから、柄をひゅんと回転させて、一端を雷奈の足元目がけて薙いだ。これもまた反射的に、ほとんどたたらを踏むように避けたところを、打撃が虚空を切り裂いていく。
雷奈のこめかみを、既知の知識が一瞬だけ通過した。
剣道の打突部位は、面、小手、胴、高校生以上は喉。だが、なぎなたにはこれらに加え、もう一つ有効な部位が存在する。
すねだ。
あくまでも剣道の動きで木刀を振るう雷奈は、体も頭も、すねに対する防御策が確立していない。せつなは、それも織り込み済みで、初手ですねを狙ってきたのだろう。
とにかく、せつなの得物を無力化しなければならない。リーチの長いなぎなたの柄の懐に入って、面や胴を打ち据えることはできるだろうが、できればしたくない。
いくら敵意を向けられているとはいえ、友達になった少女だ。傷つけるのに抵抗がないわけがない。
初めての異種試合に、緊張で唇を湿らせると、雷奈は一度とった間合いを自分から詰めた。木刀や竹刀をはるかに上回る長物に通用するかはわからないが、試合では幾度となく相手の武器を奪い去ってきた得意技を仕掛ける。
巻き上げ。刀の物打ちで一度相手の得物を上から押さえた後、手首の切り返しで巻き込み、上へと飛ばす技だ。三枝岬での雷帆との戦いでも、この術で彼女から木刀を引きはがすことに成功した。
しかし、今、その鮮やかな結果はただの期待に終わった。両手とも順手で握る竹刀や木刀と違い、片方を順手、もう片方を逆手で握るなぎなたは、そう簡単に緩んではくれないのだ。
児戯、とばかりに打ちかかってくるせつな。重い一撃を、雷奈は木刀の峰で受け止める。
「剣の心得があるのね」
「……希兵隊ほどやなかよ」
「私と比べたらどうかしら」
ぐぐ、とプレッシャーだけではない重量感がかかる。
雷奈の後方で、アワがたまらず一歩踏み出した。
「やめろ、せつな! 人間に手を出すなら、ボクたちが許さないぞ!」
だが、その声もどこ吹く風とばかりに、せつなは一瞥すらくれない。ぐっと歯を噛みしめたアワは、両手を突き出して水砲の構えをとる。何もなかった空中に、一瞬にして水が渦を巻いた。
直後、それはまるですり替えられたかのように氷へと化し、アワの指先にも鋭い冷気が噛みついた。うっとうめいて手を押さえるアワに、せつなは指先で弾き飛ばすような一粒程度の視線を投げた。
「あなたたちの監督不行き届きよ」
そして、すぐさま得物をひるがえす。
「っ!」
すねが来る、と直感した雷奈が、闇雲ながら、下からすくい上げるように木刀を回した。カァン、と音を立てて柄の先を止めたのは偶然に近い。
相手の剣先も下がっている――それに気づいた時には、雷奈は反撃に出ていた。狙うは左肩。それでも十分痛いだろうが、致命傷にはなりにくい。
なぎなたというより杖のようなそれを上から叩きつけ、反作用で振りかぶる。大きく踏み込んでの面打ち。腰を入れた、道場ならこんな小柄な体でも地響きを巻き起こす右足の踏み込みとともに、木刀を振り下ろした。
しかし、手ごたえはまさしく空を切ったもの。
剣先を落としたまま、せつなは大きく身を引いていた。
だが、不利に転じたわけではない。むしろ、大きな形勢逆転だ。
回避姿勢をとったせつなに、雷奈は間髪入れずに追撃を加える。再び肩、その手前の小手、反対の小手。
いずれも渾身の打突を放ったつもりだが、せつなはギリギリのところで身を引いてかわしていく。病弱な令嬢であっても、頭脳労働者であっても、武道を嗜む者であり、基本的に運動神経のいい猫という生物だ。
一歩、一歩と後退していたせつなの背中が、木の幹に触れた。そちらへ気をもっていかれた間隙に滑り込むように、雷奈はなぎなたの柄に垂直方向に渾身の打撃を叩きこむ。あわよくばへし折ってやろうという魂胆での全力だったが、相手は細身ながら頑として折れず、恐れるどころか木刀を押さえ込みにかかった。
負けじと雷奈も腰を入れて押し返すと、突然、ぐっと何倍もの力が手首に伝わった。同時に、せつなの体が浮く。切り結んだ一点を支点にして地面を蹴り上げたせつなは、さらに背後の木の幹を蹴り、コンパスが半円を描くように舞って、雷奈の後方で軽やかな着地音を奏でた。
シーソーが傾くがごとき攻守逆転。すぐさま振り向いた雷奈に、上段から振り下ろす一撃が迫る。面打ちに似て、その目標は面から少しずれている。それに気づいた雷奈は、慌てて木刀を頭上で地と水平に掲げ、腰を落とした。
カァンッ、と竹を割るような音が鼓膜をびんびんと震わせるのを聞きながら、打擲点から狙いを逆算した。
おそらく、鎖骨だ。剣道にもなぎなたにも、有効打突部位として認められていない場所。
だが、戦いにおいてそんなルールは意味をなさない。元は殺しの手段だったものが心身の鍛錬として残った人間界の武道とは違う。今も対クロ類の殺しを目的とした、実戦を前提としたフィライン・エデンの武術に、そんな上品なものを期待してはいけない。
動けなくなったら、負け。それだけが全てだ。
すばやく切り払いながら、下がって態勢を整える。その雷奈の動きに視線を張り付かせたまま、せつなも構えなおす。
先手を打ちたい。けれど先に手を読まれたくない。
相手を動かしてから反撃に出るか。だが、それが許されるか。
瞳孔の奥の奥、動きに先行するわずかな意識の揺らぎを覗き見ようと、互いに目を離さない。重心、腕の緊張、視線、呼吸、全てが一瞬後の動きの手がかりだ。
見落としてはいけない。だが、おてつきもご法度。
膨れ上がる緊張が、はちきれそうなほどに空気を飽和させた直後。
――茂る木々の向こうで、ごうと雄叫びを上げながら、火炎の大柱が天を衝いた。
***
炎は、膠着する四人の姿をも赤く照らし出していた。
霊那と撫恋が、弾かれたように火柱を振り向く。その顔が、徐々にこわばる。
対照的にぽかんとした顔のシルクがつぶやいた。
「……何だ、あれ」
「何だあれ、じゃない! 言ったろ、九番隊が目撃した火柱だよ!」
霊那がじれったそうに叫ぶ。大声を出すとつるが揺れ、枝がきしむのは冷や汗ものだ。
「もしあれがチエアリの仕業で、この状態で遭遇したらどうするんだ! 疑心暗鬼がたたって全滅とか、泣くに泣けないぞ!」
「……」
「休戦しましょう。場合によっては共戦になるかもしれません」
「…………」
言葉と言葉の裏を吟味する間があった。
やがて、源子に変化が生じた。風が止み、続いて霊那を吊るし上げていた植物組織が枯れていく。
鎌鼬の牢から出た撫恋と、地に降り立った霊那は、互いに頷きあうと、麗楽を閉じ込めていた極太の根を枯れさせ、シルクを拘束していた五芒星を解いた。
自由の身となった四人は、ゆっくりと一か所に集まるように歩み寄る。
「……変な動きしないでよ」
「そっちこそだろ」
「チエアリ戦となったら、私達が前に出ますので、お二人は後ろから援護願えますか」
「わかりました……!」
休戦協定が結ばれた。
いまだちらちらと相手をうかがいながらも、彼女らは走り出した。
依然として立ち上る、不吉な赤い柱のほうへ。
「せつなは私が持っとるセンサーの反応を根拠に、チエアリがここにいないことを主張しとる。それは、せつながこのセンサーが完成したものと思っとるってことったい」
完成していなければ、必ずセンサーがチエアリに反応してくれると、逆に言えば、センサーが反応していないならチエアリはここにいないと、そう断ずることはできないはずだ。
それに、彼女は神社でこうも言った。
――これが量産されたら、先の侵攻みたいに大きな犠牲も出ずに済むかもね。
完成したら、ではなく、量産されたら。それは、すでに完成段階にあると認識している者の言葉だろう。
しかし。
「ばってん、それだと矛盾する。だって、完成しているなら、もうゴールにたどり着いているなら……学院のセンサー開発を妨害する動機が全くない」
同じレーンに立って一位二位を争う時、相手の足を引っ張る必要があるとしたら、それは自分が後れを取っているときに他ならない。すでにゴールが目前にあるならば、やることは相手を蹴落とすことではない。最後の一歩を踏み出して、勝利を確定させるだけだ。
今回の件も同じだ。そして、聡いせつなならそれくらい理解していておかしくはない。
希兵隊のセンサーが完成していると認識しているなら、希兵隊に妨害されたという研究チームの主張を安易に信じるとは思えない。
せつなが本当はどちらの認識でいるのか、それは問題ではない。完成しているとみているのか、焦るほどには未完成とみているのか、それはどちらでもよい。
問題なのは、彼女の主張同士で矛盾が生じているということだ。
「せつな」
呼びかける雷奈は、せつなの瞳の色が宝石の赤から炎のそれに変化していくのに気づくべきだった。
「もしかしてあなたの目的は、別の……」
だが、それは引き金を引いてしまった後だった。
開いた間合いを一瞬で詰めたせつなのなぎなたが、雷奈の頭上に振りかざされる。体の反応に従い、反射的に掲げた木刀に、打擲の衝撃。少しでも頭で考えていたなら、防具なしで面打ちを食らっていただろう。
迷いない太刀筋。せつなは、波音ではなく、間違いなく雷奈を狙っていた。
「黙って!」
切り結んだところから、柄をひゅんと回転させて、一端を雷奈の足元目がけて薙いだ。これもまた反射的に、ほとんどたたらを踏むように避けたところを、打撃が虚空を切り裂いていく。
雷奈のこめかみを、既知の知識が一瞬だけ通過した。
剣道の打突部位は、面、小手、胴、高校生以上は喉。だが、なぎなたにはこれらに加え、もう一つ有効な部位が存在する。
すねだ。
あくまでも剣道の動きで木刀を振るう雷奈は、体も頭も、すねに対する防御策が確立していない。せつなは、それも織り込み済みで、初手ですねを狙ってきたのだろう。
とにかく、せつなの得物を無力化しなければならない。リーチの長いなぎなたの柄の懐に入って、面や胴を打ち据えることはできるだろうが、できればしたくない。
いくら敵意を向けられているとはいえ、友達になった少女だ。傷つけるのに抵抗がないわけがない。
初めての異種試合に、緊張で唇を湿らせると、雷奈は一度とった間合いを自分から詰めた。木刀や竹刀をはるかに上回る長物に通用するかはわからないが、試合では幾度となく相手の武器を奪い去ってきた得意技を仕掛ける。
巻き上げ。刀の物打ちで一度相手の得物を上から押さえた後、手首の切り返しで巻き込み、上へと飛ばす技だ。三枝岬での雷帆との戦いでも、この術で彼女から木刀を引きはがすことに成功した。
しかし、今、その鮮やかな結果はただの期待に終わった。両手とも順手で握る竹刀や木刀と違い、片方を順手、もう片方を逆手で握るなぎなたは、そう簡単に緩んではくれないのだ。
児戯、とばかりに打ちかかってくるせつな。重い一撃を、雷奈は木刀の峰で受け止める。
「剣の心得があるのね」
「……希兵隊ほどやなかよ」
「私と比べたらどうかしら」
ぐぐ、とプレッシャーだけではない重量感がかかる。
雷奈の後方で、アワがたまらず一歩踏み出した。
「やめろ、せつな! 人間に手を出すなら、ボクたちが許さないぞ!」
だが、その声もどこ吹く風とばかりに、せつなは一瞥すらくれない。ぐっと歯を噛みしめたアワは、両手を突き出して水砲の構えをとる。何もなかった空中に、一瞬にして水が渦を巻いた。
直後、それはまるですり替えられたかのように氷へと化し、アワの指先にも鋭い冷気が噛みついた。うっとうめいて手を押さえるアワに、せつなは指先で弾き飛ばすような一粒程度の視線を投げた。
「あなたたちの監督不行き届きよ」
そして、すぐさま得物をひるがえす。
「っ!」
すねが来る、と直感した雷奈が、闇雲ながら、下からすくい上げるように木刀を回した。カァン、と音を立てて柄の先を止めたのは偶然に近い。
相手の剣先も下がっている――それに気づいた時には、雷奈は反撃に出ていた。狙うは左肩。それでも十分痛いだろうが、致命傷にはなりにくい。
なぎなたというより杖のようなそれを上から叩きつけ、反作用で振りかぶる。大きく踏み込んでの面打ち。腰を入れた、道場ならこんな小柄な体でも地響きを巻き起こす右足の踏み込みとともに、木刀を振り下ろした。
しかし、手ごたえはまさしく空を切ったもの。
剣先を落としたまま、せつなは大きく身を引いていた。
だが、不利に転じたわけではない。むしろ、大きな形勢逆転だ。
回避姿勢をとったせつなに、雷奈は間髪入れずに追撃を加える。再び肩、その手前の小手、反対の小手。
いずれも渾身の打突を放ったつもりだが、せつなはギリギリのところで身を引いてかわしていく。病弱な令嬢であっても、頭脳労働者であっても、武道を嗜む者であり、基本的に運動神経のいい猫という生物だ。
一歩、一歩と後退していたせつなの背中が、木の幹に触れた。そちらへ気をもっていかれた間隙に滑り込むように、雷奈はなぎなたの柄に垂直方向に渾身の打撃を叩きこむ。あわよくばへし折ってやろうという魂胆での全力だったが、相手は細身ながら頑として折れず、恐れるどころか木刀を押さえ込みにかかった。
負けじと雷奈も腰を入れて押し返すと、突然、ぐっと何倍もの力が手首に伝わった。同時に、せつなの体が浮く。切り結んだ一点を支点にして地面を蹴り上げたせつなは、さらに背後の木の幹を蹴り、コンパスが半円を描くように舞って、雷奈の後方で軽やかな着地音を奏でた。
シーソーが傾くがごとき攻守逆転。すぐさま振り向いた雷奈に、上段から振り下ろす一撃が迫る。面打ちに似て、その目標は面から少しずれている。それに気づいた雷奈は、慌てて木刀を頭上で地と水平に掲げ、腰を落とした。
カァンッ、と竹を割るような音が鼓膜をびんびんと震わせるのを聞きながら、打擲点から狙いを逆算した。
おそらく、鎖骨だ。剣道にもなぎなたにも、有効打突部位として認められていない場所。
だが、戦いにおいてそんなルールは意味をなさない。元は殺しの手段だったものが心身の鍛錬として残った人間界の武道とは違う。今も対クロ類の殺しを目的とした、実戦を前提としたフィライン・エデンの武術に、そんな上品なものを期待してはいけない。
動けなくなったら、負け。それだけが全てだ。
すばやく切り払いながら、下がって態勢を整える。その雷奈の動きに視線を張り付かせたまま、せつなも構えなおす。
先手を打ちたい。けれど先に手を読まれたくない。
相手を動かしてから反撃に出るか。だが、それが許されるか。
瞳孔の奥の奥、動きに先行するわずかな意識の揺らぎを覗き見ようと、互いに目を離さない。重心、腕の緊張、視線、呼吸、全てが一瞬後の動きの手がかりだ。
見落としてはいけない。だが、おてつきもご法度。
膨れ上がる緊張が、はちきれそうなほどに空気を飽和させた直後。
――茂る木々の向こうで、ごうと雄叫びを上げながら、火炎の大柱が天を衝いた。
***
炎は、膠着する四人の姿をも赤く照らし出していた。
霊那と撫恋が、弾かれたように火柱を振り向く。その顔が、徐々にこわばる。
対照的にぽかんとした顔のシルクがつぶやいた。
「……何だ、あれ」
「何だあれ、じゃない! 言ったろ、九番隊が目撃した火柱だよ!」
霊那がじれったそうに叫ぶ。大声を出すとつるが揺れ、枝がきしむのは冷や汗ものだ。
「もしあれがチエアリの仕業で、この状態で遭遇したらどうするんだ! 疑心暗鬼がたたって全滅とか、泣くに泣けないぞ!」
「……」
「休戦しましょう。場合によっては共戦になるかもしれません」
「…………」
言葉と言葉の裏を吟味する間があった。
やがて、源子に変化が生じた。風が止み、続いて霊那を吊るし上げていた植物組織が枯れていく。
鎌鼬の牢から出た撫恋と、地に降り立った霊那は、互いに頷きあうと、麗楽を閉じ込めていた極太の根を枯れさせ、シルクを拘束していた五芒星を解いた。
自由の身となった四人は、ゆっくりと一か所に集まるように歩み寄る。
「……変な動きしないでよ」
「そっちこそだろ」
「チエアリ戦となったら、私達が前に出ますので、お二人は後ろから援護願えますか」
「わかりました……!」
休戦協定が結ばれた。
いまだちらちらと相手をうかがいながらも、彼女らは走り出した。
依然として立ち上る、不吉な赤い柱のほうへ。
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