【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade

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《本編》

7. 僕と彼のこと④

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「ネックガード…」

  そうだ! ネックガードはっ…!?
  呟くと同時に視線を彷徨わせた僕の前に、ス…と彰宏さんが差し出したものは…。

「……………」

  いつも僕の項を護ってくれるネックガード。
  無言で受け取り破損が無いか確かめる。何処にも破損は見られない。つまり、無理やり外された訳では無いという事だ。
  僕のネックガードは、指紋認証とダイヤル認証の二重ロックのもので、他人が簡単には解除出来ない様になっている。丈夫な素材なので噛み切ったり引き千切る事も出来ない。つまり、破損が見られないという事は、僕自身が外した事に他ならない。最中の記憶は無いけれど、本能が無意識に外させたのだと思う。
  そして、無防備に項を眼前に晒されたαは……。

「多分、合意…ですよね…?」
「…合意…と言えるかどうかは判らない。俺も君も発情に飲まれて正気じゃなかった。
  ただ、俺は君が好きだ。ずっと番になりたいと思っていたし、もちろん結婚もしたい。その気持ちに偽りはない。琳を愛してる気持ちには…。
  でも、全ては大学を卒業してから改めて二人で考えれたら…と。決してこんな形で君を縛るつもりはなかった…」

  項垂れる彰宏さん。
  確かに僕達は正気ではなかった。事故だといえばそうなのかも知れない。
  けれど…!
  僕は自覚してる。今回の発情は僕が彰宏さんの事が好きだと自覚したから起こったんだって。彰宏さんと結ばれる事を心と体が望んだんだって!
  何だかだんだん腹が立ってきた。

「もう合意で良いじゃないですか」
「…え?」
「だって僕は貴方が好きなんだもの。今日改めて自覚したら、僕、発情しました。身体は正直なんです」
「ほ…本当に…?」
「僕、嘘は言いません」
「琳、愛してる。結婚しよう」

  彰宏さんが僕を抱き締めながら言う。

「はい」

  僕は頷きながら、大きな背中に腕を回した。
  暫く抱き締め合った後、体を離して微笑み合う。

「ところで、今、何時ですか?」
「夜の九時を過ぎたところだ。琳の発情からまだ四時間程だな」
「四時間…」

  意外に経っていなかった。突発性の発情はαに抱かれるとすぐに治まるんだ…。今までは独りで堪えてたからか、二日くらいはまともに動けなかった。それでも通常の発情期よりかはかなり短いけれど。

「どのみち、このままというわけにはいかないな。
  琳、俺は君のお父さんに電話してくるから、動けそうなら着替えて。体が辛ければこのまま待っててくれ。手伝うから」

  そう言いながら一度ベッドルームを出て行く彰宏さんを見送ってから、僕はベッドから下りた。案外、平気だった。短時間だからだろうか。
  ベッド脇に置かれた自分のバッグを見つけた僕は、中を漁って、初めて発情期を迎えた頃から常備している発情抑制剤と避妊薬を取り出した。チェストの上に水のペットボトルがあったから、二種類の薬を口に放り込んで水を飲む。再発情しては大変だし、突発性の発情で妊娠するかは判らないけれど、念の為に服用しておくにこした事はない。いまはまだ『その時』ではないから。
  僕がベッド横のソファーの上に置かれていた私服に着替え終えた頃、彰宏さんが戻って来た。彼も元々着ていた服に着替えていた。

「お父さん、怒ってました?」
「いや…。『電話では』怒られなかった。とにかく
帰って来なさい、と言われたよ。帰ろう」
「…はい」

  僕達は帰路に着いた。
  帰りの車の中では、僕達は何も話さなかった。

  

  突然の事だったー。

  僕達が僕の家に着いたのは十一時頃。
  彰宏さんも一緒に車を降りた。説明と謝罪、そして結婚の許しをもらう為に。番になったからには、後日…という訳にはいかない…と。

  インターホンを押して鍵が開けられるのを待ち…。
  出て来たのはお父さんと瑠偉くんだった。瑠偉くんは僕の腕を軽く引いて中に引っ張り入れると、僕の後ろに立っていた彰宏さんの頬を、いきなり殴ったんだ。

「!!!  彰宏さん!」

  驚いた僕は彰宏さんに駆け寄った。少しよろけただけで倒れる事はなかったけれど、頬は赤くなってて、口の端から血が流れていた。手を伸ばして赤くなった頬を撫でた後、振り返って瑠偉くんを睨みつける。

「瑠偉くん、なんでっ…!!」

  どうして彰宏さんを殴るのっ!?

「……………」

  瑠偉くんは無言で中に戻って行った。

「琳、彰宏くん、入りなさい」

  お父さんが言う。

「お父さん!」
 
  どうして何も言わないのっ!?
  彰宏さんが殴られたのに何も言わないお父さんに憤りを感じている僕の肩を、彰宏さんが軽く叩く。

「琳、大丈夫だから。入ろう?」
「………。…うん」

  僕は頷いた。
  僕達は玄関を上がり、お父さんに誘導されて、応接間に足を踏み入れた。

  
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