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テオリアの冒険者ギルドで、フィリア改めシエルは、無事にホーリーリーフの依頼を完了した。銅貨五枚を受け取り、自分の力で初めて稼いだ報酬に、フィリアは感動で胸がいっぱいになった。この報酬は、彼女が目指す孤児院の支援の第一歩となるのだ。
ギルドの一角にある休憩スペースで、フィリアは依頼の達成報告書を眺めていた。そこに、三人の冒険者が声をかけてきた。
「よう、シエル。治癒士だって聞いたが、本当か?」
話しかけてきたのは、大柄で筋肉質な戦士の男、細身で警戒心が強そうな弓使いの女、そして、小柄で活発な短剣使いの少年だった。彼らは、低級冒険者パーティー**「疾風の爪(しっぷうのつめ)」**を名乗った。
戦士の男、リーダーのバルカスが、フィリアの前に座った。
「俺たちは今、ヒーラーを探している。お前、レベル1だそうだが、魔力は悪くないとギルドマスターが言っていた。試しに、俺たちの依頼に同行してみないか?」
バルカスは腕を組み、フィリアの反応を待った。治癒士は常に人手不足だ。特にバルカスのパーティーは、前衛のバルカスの無謀さが災いして、ヒーラーの離脱が続いていた。
フィリアは目を輝かせた。単独での薬草採取も楽しかったが、やはり冒険はパーティーで協力し合うものだ。
「はい、ぜひ! お願いします!」
フィリアの予想外の即答に、バルカスたちは驚いた。
弓使いの女、リリアが少し冷たい視線を送った。「待ちなさい。お嬢ちゃん、うちは危険よ。あなたみたいな上品そうな人が、すぐに音を上げて逃げ出すのは目に見えているわ」
フィリアは静かに立ち上がった。「私は家出をしてきたので、もう逃げ場所はありません。それに、私はもう公爵夫人フィリアではありません。冒険者シエルとして、皆さんの力になりたいのです。危険を承知で、自分の力を試したい」
その真剣な眼差しに、バルカスの顔つきが変わった。「……公爵夫人だと? まあいい。何があったか知らんが、その度胸は認めよう。次の依頼は、**『廃鉱ダンジョンへの探索と低級魔物の討伐』**だ。Fランクの中でも、少し難易度が上がる。報酬は山分け。どうだ?」
フィリアは深く頷いた。「やらせてください!」
こうして、フィリアは「疾風の爪」の臨時メンバーとして、初のパーティー活動と、そして初めてのダンジョンに挑むことになった。
ルカ公爵が王都を出発したことなど、フィリアは露ほども知らない。彼女の意識は、新たな冒険への期待で満たされていた。
一方、王都を離れたルカは、最速の馬車を乗り継ぎ、護衛の精鋭を最小限に絞ってテオリアへ急いでいた。
ルカは、政務で培った冷徹な判断力と、フィリアへの異常なほどの執着心をもって、追跡を指揮していた。
「フィリアがダンジョンに入ると?」馬車の中で、ルカは送られてきた最新の報告書を、握り潰す勢いで握りしめた。
「あの脆弱なフィリアが、魔物の巣窟へ向かうだと? 私が彼女に、**『自由に生きていい』**などと口走ったばかりに……! 彼女の自由は、私の命を削る自由だというのか!」
ルカの思考回路は完全に停止していた。冷静な宰相ルカ・ライゼ公爵は存在しない。そこにいるのは、愛する妻を危険な冒険者稼業から「回収」しようと焦燥する、ただの溺愛夫だった。
「テオリアまで、あと半日か……。くそ。フィリア、もう少し耐えていろ。私がすぐに、安全な場所へ連れ戻してやる」
ルカは、フィリアが冒険に喜びを感じていることなど、欠片も理解していなかった。彼にとって、フィリアの冒険者生活は「生命の危機」以外の何物でもなかった。
翌日。「疾風の爪」のメンバーとフィリアは、テオリア郊外にある古い採石場の廃鉱ダンジョンへと足を踏み入れた。
内部は薄暗く、じめじめとしており、フィリアの公爵邸での優雅な生活とはかけ離れた環境だ。しかし、フィリアは恐怖よりも、未知への探求心に燃えていた。
「シエル、お前は俺たちの後方で待機だ。魔物と接触したら、すぐに治癒を頼む」バルカスが低い声で指示を出す。
「はい!」
ダンジョンの浅い階層を進むと、すぐに魔物と遭遇した。相手は、毒を持つ小型のコボルト数体。
バルカスが前衛でコボルトを迎え撃つが、慣れないパーティーワークと、コボルトの素早い動きに翻弄され、バルカスの腕に毒の爪が掠めた。バルカスは「ちっ」と舌打ちし、傷は深くないが、毒で動きが鈍り始める。
「シエル! 早く治癒を!」リリアが叫ぶ。
フィリアは、毒を帯びたバルカスの傷を見て、一瞬顔が青ざめたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「清らかな光よ、我が手に集え――『ヒール・ミディアム』!」
フィリアは、入門書に載っていた中級治癒魔法を、渾身の魔力を込めて放出した。膨大な魔力を持ちながら、使いこなす技術がないフィリアは、ただ力任せに魔力を流し込んだ。
結果、バルカスの傷口に浴びせられた治癒魔法は、通常の治癒士が放つ数倍の威力を持ち、傷が塞がるだけでなく、ゴボッという音と共に、体内に残っていたはずのコボルトの毒素まで弾き飛ばしてしまった。
「な、なんだこれは……?」バルカスは驚愕した。傷は完全に消え、体中に満ちていたはずの怠さが嘘のように消え去ったのだ。
「す、すみません、魔力が強すぎましたか?」フィリアは焦る。
「強すぎた? ふざけるな! 完璧だ!」バルカスは興奮した。「お前の治癒は、ただの回復じゃない。毒まで抜いたぞ! おい、シエル! お前は本物だ!」
リリアと短剣使いの少年も、フィリアの驚異的な治癒能力に目を見張った。彼らはフィリアの優雅な見た目を侮っていたが、その実力を目の当たりにして、彼女を見る目が完全に変わった。
フィリアは、自分が放った魔法が、毒を抜くという予期せぬ効果を発揮したことに気づき、ゴブリンを撃退した時と同じ**「浄化」の作用**が働いたことを理解した。
「疾風の爪」は一気に勢いづいた。バルカスの前衛は無敵だ。なぜなら、彼がどんな傷を負っても、フィリアの超強力な治癒魔法が即座に毒ごと治してしまうからだ。
ダンジョン探索は順調に進み、彼らは奥地へと進んでいった。フィリアは、冒険者としてパーティーに貢献できていることに、大きな満足感を覚えていた。この充実感こそが、公爵邸では得られなかった「自由」の証だと感じていた。
ギルドの一角にある休憩スペースで、フィリアは依頼の達成報告書を眺めていた。そこに、三人の冒険者が声をかけてきた。
「よう、シエル。治癒士だって聞いたが、本当か?」
話しかけてきたのは、大柄で筋肉質な戦士の男、細身で警戒心が強そうな弓使いの女、そして、小柄で活発な短剣使いの少年だった。彼らは、低級冒険者パーティー**「疾風の爪(しっぷうのつめ)」**を名乗った。
戦士の男、リーダーのバルカスが、フィリアの前に座った。
「俺たちは今、ヒーラーを探している。お前、レベル1だそうだが、魔力は悪くないとギルドマスターが言っていた。試しに、俺たちの依頼に同行してみないか?」
バルカスは腕を組み、フィリアの反応を待った。治癒士は常に人手不足だ。特にバルカスのパーティーは、前衛のバルカスの無謀さが災いして、ヒーラーの離脱が続いていた。
フィリアは目を輝かせた。単独での薬草採取も楽しかったが、やはり冒険はパーティーで協力し合うものだ。
「はい、ぜひ! お願いします!」
フィリアの予想外の即答に、バルカスたちは驚いた。
弓使いの女、リリアが少し冷たい視線を送った。「待ちなさい。お嬢ちゃん、うちは危険よ。あなたみたいな上品そうな人が、すぐに音を上げて逃げ出すのは目に見えているわ」
フィリアは静かに立ち上がった。「私は家出をしてきたので、もう逃げ場所はありません。それに、私はもう公爵夫人フィリアではありません。冒険者シエルとして、皆さんの力になりたいのです。危険を承知で、自分の力を試したい」
その真剣な眼差しに、バルカスの顔つきが変わった。「……公爵夫人だと? まあいい。何があったか知らんが、その度胸は認めよう。次の依頼は、**『廃鉱ダンジョンへの探索と低級魔物の討伐』**だ。Fランクの中でも、少し難易度が上がる。報酬は山分け。どうだ?」
フィリアは深く頷いた。「やらせてください!」
こうして、フィリアは「疾風の爪」の臨時メンバーとして、初のパーティー活動と、そして初めてのダンジョンに挑むことになった。
ルカ公爵が王都を出発したことなど、フィリアは露ほども知らない。彼女の意識は、新たな冒険への期待で満たされていた。
一方、王都を離れたルカは、最速の馬車を乗り継ぎ、護衛の精鋭を最小限に絞ってテオリアへ急いでいた。
ルカは、政務で培った冷徹な判断力と、フィリアへの異常なほどの執着心をもって、追跡を指揮していた。
「フィリアがダンジョンに入ると?」馬車の中で、ルカは送られてきた最新の報告書を、握り潰す勢いで握りしめた。
「あの脆弱なフィリアが、魔物の巣窟へ向かうだと? 私が彼女に、**『自由に生きていい』**などと口走ったばかりに……! 彼女の自由は、私の命を削る自由だというのか!」
ルカの思考回路は完全に停止していた。冷静な宰相ルカ・ライゼ公爵は存在しない。そこにいるのは、愛する妻を危険な冒険者稼業から「回収」しようと焦燥する、ただの溺愛夫だった。
「テオリアまで、あと半日か……。くそ。フィリア、もう少し耐えていろ。私がすぐに、安全な場所へ連れ戻してやる」
ルカは、フィリアが冒険に喜びを感じていることなど、欠片も理解していなかった。彼にとって、フィリアの冒険者生活は「生命の危機」以外の何物でもなかった。
翌日。「疾風の爪」のメンバーとフィリアは、テオリア郊外にある古い採石場の廃鉱ダンジョンへと足を踏み入れた。
内部は薄暗く、じめじめとしており、フィリアの公爵邸での優雅な生活とはかけ離れた環境だ。しかし、フィリアは恐怖よりも、未知への探求心に燃えていた。
「シエル、お前は俺たちの後方で待機だ。魔物と接触したら、すぐに治癒を頼む」バルカスが低い声で指示を出す。
「はい!」
ダンジョンの浅い階層を進むと、すぐに魔物と遭遇した。相手は、毒を持つ小型のコボルト数体。
バルカスが前衛でコボルトを迎え撃つが、慣れないパーティーワークと、コボルトの素早い動きに翻弄され、バルカスの腕に毒の爪が掠めた。バルカスは「ちっ」と舌打ちし、傷は深くないが、毒で動きが鈍り始める。
「シエル! 早く治癒を!」リリアが叫ぶ。
フィリアは、毒を帯びたバルカスの傷を見て、一瞬顔が青ざめたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「清らかな光よ、我が手に集え――『ヒール・ミディアム』!」
フィリアは、入門書に載っていた中級治癒魔法を、渾身の魔力を込めて放出した。膨大な魔力を持ちながら、使いこなす技術がないフィリアは、ただ力任せに魔力を流し込んだ。
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「な、なんだこれは……?」バルカスは驚愕した。傷は完全に消え、体中に満ちていたはずの怠さが嘘のように消え去ったのだ。
「す、すみません、魔力が強すぎましたか?」フィリアは焦る。
「強すぎた? ふざけるな! 完璧だ!」バルカスは興奮した。「お前の治癒は、ただの回復じゃない。毒まで抜いたぞ! おい、シエル! お前は本物だ!」
リリアと短剣使いの少年も、フィリアの驚異的な治癒能力に目を見張った。彼らはフィリアの優雅な見た目を侮っていたが、その実力を目の当たりにして、彼女を見る目が完全に変わった。
フィリアは、自分が放った魔法が、毒を抜くという予期せぬ効果を発揮したことに気づき、ゴブリンを撃退した時と同じ**「浄化」の作用**が働いたことを理解した。
「疾風の爪」は一気に勢いづいた。バルカスの前衛は無敵だ。なぜなら、彼がどんな傷を負っても、フィリアの超強力な治癒魔法が即座に毒ごと治してしまうからだ。
ダンジョン探索は順調に進み、彼らは奥地へと進んでいった。フィリアは、冒険者としてパーティーに貢献できていることに、大きな満足感を覚えていた。この充実感こそが、公爵邸では得られなかった「自由」の証だと感じていた。
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