あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
272 / 1,104
第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第3幕 第17話 《名も無き島》 3

しおりを挟む
「ようこそ」
道具屋の商人に案内され最後の店奴隷小屋の前に向かえば、奴隷商人と買い取り屋の商人がまっていた。
「今、現在この島で販売可能の奴隷はこちらです」
大きなテントの幕を被せただけの地面剥き出しの中に案内される、内広く個々に大きめな檻が等間隔でならんでいた。
「静かだな」
「お客様がいらっしゃるので、薬で少々静かにさせています」
杖を突きゆっくりと先頭を歩く、薄暗い檻からはあちらこちらから呻き声が漏れ聞こえる、臭い等は不快になる程は感じなかった。
「どんな奴隷をお求めでしょうか?」
「見させて貰うよ」
「どうぞ」
奴隷商人がにこやかに笑う意外と若いのかもしれないが、能面に口元に孤を描かせた物を張り付けたようにしか見えない。
「グリ?」
グローリーが躊躇いもなく周囲を見渡しながら奥へと進む、懐記とティス、ライガル、ゴーシュが後に続いた。
「………?」
「どうした?」
「グリっち気になるのか?」
「?……」
「ああ、その奴隷ですか?元貴族の方でしてね、喉を潰され喋れないのですよ。廃棄落ちなのですが、見目が良いのでこちらに置いています、そういうのを好むお客様も多いですから」
「いくら?」
「1800万ログです」
「…?この首のなに??」
懐記が奴隷の金額を確認し、檻の中に倒れている灰色のボロ布の様な服を纏う男の首に嵌められた鉄の太い首輪を見て首を傾げる。
「逃走防止の首輪です、奴隷を購入され30日程で自然に首輪が外れる仕組みになっています。購入されてから脱走を計る奴隷が多いのでこの島の奴隷には全て嵌めています」
「そ」
「他に気になる奴隷はございますか?」
「全員購入希望だ」
奴隷商人の背後で大河が答える、ゆっくりと奴隷商人が振り返り微笑む。
「承知しました」
「で、廃棄奴隷も購入希望だ。案内頼む」
「承知しました、こちらの奴隷達締めて13名は2億3000万ログです。では、どなたが行きますか?」
「分かった、このメンバーで行く。皆ここで待っていてくれ」
大河が残る面子に声を掛け、千歳、懐記、トラング、グローリー、ラジカ、ラージュ、チグリスを伴い奴隷商人の後に付いて向かった。

とある貧しい村に産まれた8人兄弟の真ん中に産まれたわたしは、貧しい生活を強いられていたが不満はなかった。
周りが皆同じでそれしか知らないからだ、痩せた身体にボロい服をまとい朝早くから夜まで家族で働き続けても、その日を満足に食べてもいけなかったが、皆が公平に等しく同じだからと受け入れていた。
そしてこのまま、この村でこうして一生を送って行く…筈だった。

その日の事は今でも忘れない、ジラの花が咲く柔らかな昼の終わり2番目の兄弟が結婚し本当に細やかな祝いが行われていたあの日に全て失い得た日。
「みんな…」
小さな国同士の諍いに巻き込まれた貧しい村、私の故郷は一瞬にして死体の山が築き焼け野原となった。
巻き込まれたついでに略奪され、抵抗した者は容赦なく殺された。
私もそのうちの1人だ、村に侵入して来た兵士の面を被った野党に奴隷として馬の上から拐われそうになったのを無我夢中で抵抗したら足を刺され放り出された、その場所が悪く燃えていた元家の板だった。
私の左側は滅茶苦茶になり、後は死ぬだけだった。
みんな死んでいるか連れ去られているか、どちらにせよもう誰にも会えない…。

「ふーんまだ生きてるーしぶといじゃん」
どれくらい時間が経ったのかまだ辛うじて息があった私の元へ誰かか訪れた、若い私と変わらないか少し上位か、足元と陰と声しか分からない。
「なあ?生きたい?死にたい?このままで良い?それとも…復讐したい?」
もう声は出ない、唇を動かしてそのうちの1つを選んだ。
「いいねぇ、それ以外選んだらおもちゃにしようと思った!あはは!」
何が可笑しいのか、楽しそうに笑う声は無邪気に何処までも残酷だった。

「こちらが廃棄奴隷の収容場所です」
「今何人位いるんだろうか?」
「12名程です」
「そうか」
「ゆき…皆…扉が空いたら浄化魔法を…」
「魔王のお客様ですか、どうぞお姿を。この島は人もドラゴンも魔神もドルメキオンも魔王も問わず等しく同じお客様です」
崇幸の左胸の飾りの蝶に変わっていた千眼が声を出す、どうやら先に扉の先を視たらしい、大河と千歳、懐記も頷き千眼が姿を現す。
「では開けますよ」
奴隷商人が扉の前で魔力を込め自動で重厚な扉が開く、グローリーが元合成獣3匹を肩に乗せて懐記の耳元に囁く。
「懐記あの…怪我…痛い…苦しそう…」
「治したいわけ?」
「うん…」
「わかった」
大河が浄化魔法を中に掛けている間にグローリーが治したいと懐記に伝えた人物を懐記が見て、グローリーの願いを受け入れる事にした。

「この下です」
扉の奥はすぐ短い階段が設置され半地下の様になっている、そこを降りるとい薄暗い洞窟の様な場所の正面に牢屋がありそこに廃棄奴隷達が置かれていた。
大河と千歳が顔には出さないが内心の惨状に眉を顰める、浄化を掛けていたお陰か空気や臭いに不快はないが廃棄奴隷の惨状は酷い、顔に大きな傷、火傷、手足の欠損等身体の損失から見ても分かる精神に異常を来たしている者達、崇幸が一歩前へ進む。
「俺達が彼らを買わなければ彼らはどうなる」
「その質問をしてくる時点で分かっているのでは?労働にも玩具にもならなければ最期は死ですね」
奴隷商人が淡々と告げる、崇幸は長く息を吐く。
「全員買う、早く出してくれ。動けるようにしたい此処で治療しても良いか?」
「どうぞ」
奴隷商人が格子にに魔力を注ぐ、扉が無かった格子が開くが中の廃棄奴隷達は誰も出ようとしない虚ろな瞳で虚空を見ていた。
「………」
崇幸と千歳と大河、ラージュとチグリスが中に入り手分けして回復札で治療を始める、欠損した手足も徐々に再生し顔の傷も癒されていったが心は戻らない。
「薬を使っているのか…薬草ダンジョンの気付け薬があるけど」
「今使って混乱されても困るな、戻ったら覚醒させるか」
「鑑定を使っても構いませんよ?状態が分かるでしょう」
「なら、君に使っても何も視れないという事かな?」
「試してみてはいかがです?」
「止めておく、彼らが優先だからね」
奴隷商人が千歳たちに声を掛ける、奴隷商人の言葉に千歳達が鑑定を使い状態を確認していく。
「で、この人達は幾ら?」
「差し上げます」
「何、オマケ扱い?」
「贈り物ですよ皆様への」
「そ、誰からって聞いたら答えてくれんの?金払えば良いの?」
「貴方方が知っている方とだけ」
懐記がその言葉で1人の姿が思い浮かぶ、この島来てからずっとチラつく存在にどうすれば姿を現すのか知りたい所だが、グローリーの願いを優先する。
「これ、うちのグリっちから」
「これは」
「薬草ダンジョンの最終階層の万能薬、それでアンタの身体治るでしょ」
「どうしてこれを私に?」
「さあ、グリっちからだし」
「………」
「受け取り拒否は無しで」
千歳から瓶を受け取り先に釘を刺されてしまう、一体この途方もない価値のある物に何を支払えば良いのか奴隷商人には分からなかった…。

『いいですか、今回彼らがこの島に来た時に貴方たがすべきことは彼らに気持ち良く買い物をさせる事です。多少の無茶や願いは出来る範囲で全て応えて下さい、質問等あれば私の存在を仄めかして構いません』
『承知しました、あの首輪を外したいと言われた場合は』
『あの首輪は彼からのプレゼントです、適当に脱走防止とでも言ってしばらく付けておくようにと、そう簡単には外れませんしね。細工を施してありますから』
『承知しました』
『いい子ですね、決して彼の機嫌を損ねないように…』
『はい』
瓶を眺めながら思い出す、目の前にいる廃棄奴隷を懸命に治す彼らに右目を向けた。

私は復讐を選んだ、残った右目で余すことなく復讐が成就されていく様を見届けた。
「どうだ?楽しいか?嬉しいか?気持ち良いか?」
「はい」
私に選択をくれた者にそう応えた、ほんの短い時間の邂逅だが心底恐ろしい化け物を相手にしている、僅かでも気に入らない事を言えば目の前の景色の一部と化すだろう。
村で受けた仕打ちをそっくりそのまま、小さい小競り合いを行う国に返した。
彼は私の復讐に国に住んでいる罪の無い民を省く事は許して貰えなかった、だから国全てを焼き払い誰1人生かす事なく滅ぼした。
すぐに何も知らずに死ねたなら十分幸せだろう、死はしばしの別れと謂われているからこそ死へ逃げられた者達、それを知る私は王族と兵士と戦に関わった全てにそれを許さなかった。
「いいねぇ、お前を選んだ俺は正しい。何処までも正しい」
私は頼んで戦を起こした者、戦で誰かの命を奪った者、戦で有益を味わった者の魂を次へ行けないようにしてくれと頼んだ。
酷く喜んでいたのを覚えている、そしてその通りになった。
「多少の暇つぶしになったな、俺の暇つぶしの礼にあいつが面白いプレゼントを用意したらしい」
「はい」
そして私はこの島にいる…この島に来る者も奴隷も然程変わらない、そして今日彼らが来た。
心底のお人好し偽善者達なのだろう、素性も得体も知れぬ自分にこんな価値のある物を渡してくるとは…。
そういえば生まれて初めて自分だけの贈り物を貰った、この瓶を付き返せばすむ問題なのだろうがなけなしの嘗ての何もかも失う前の自分が心の奥底の果てで微かに微笑んだ…。
この借りは返すべきなのだろうか、いい加減潮時なのだろう…彼らに私は私の幕を降ろして貰う事に決めた…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...