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27.俺は「俺」だよな?
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『サーラがカリオ様を好きになるのは分かるよ。
カリオ様、かっこいいもん。
きっと推しについてサーラと語ったら、楽しいだろうなって思うけど!!
でも、私は主人公とカリオ様の恋を応援してるの!
なんでカリオ様は、主人公とじゃなくてサーラとすぐくっついちゃうのよ!』
妹は、病院のベッドの上でゲームをしながら、よくそんなふうにぼやいてたっけ。
ん?
カリオ? サーラ?
それって、俺の友達と義妹の名前じゃないか!!
それに。
妹はサーラの”好きな人”は誰だって言ってた?
急にいろんな映像が頭の中を駆け巡る。
俺は息が詰まって、目を閉じたまま「ぐぅっ」とうめいた。
「エリゼオッ!!」
すかさずフィンが俺の手をぎゅっと強く握りしめてくれる。
俺はその力強さに、胸の奥がじんと温かくなった。
肩に入っていた力が、自然に抜けていく。
俺の顔もゆるんだのか、フィンがほっと息をつく音が聞こえた。
今は夜中なのだろうか。
しんと静まり返ったなか、時計のカチカチという音だけが鳴り響いていた。
俺はさっきから頭は覚醒しているのに、なぜか目が開けられない。
まるで夢と現実の狭間にいるようだった。
俺は、先ほど思い出した記憶をゆっくり整理し始めた。
妹は病院のベッドの上で、”推しの騎士”が出てくるゲームをよくしていた。
そのゲームの名は、確か__。
『チェネレントの靴から始まる恋』
BL恋愛シミュレーションゲームだ。
主人公が色んな人と出会い、恋をしていく。
その攻略対象者は、
第一王子・フィルベルト。
近衛騎士団長・ガルディア。
騎士団員・カリオ。
そして、主人公の義父・エドアルド。
エドアルドって、俺の義父さんの名前だ。
ほかの人たちの名前も、全部知ってる。
あれ? じゃあ俺って。
まさか、妹がやっていたゲームの主人公なのか!?
異世界転生。しかもゲームの中の主人公として……?
じゃあ、俺とフィンのこの気持ちも、もしかしてただの設定ってこと……?
でも。
俺を見て、認めてくれて、抱きしめてくれたのは、確かにフィンだった。
俺が訓練を頑張った日々も、フィンのことを思って胸が高鳴った瞬間も。
全部、俺が実際に感じたものだ。
これが、ゲームで決められた運命だなんて……思いたくない。
じゃあ、サーラはやっぱり、ゲームとは違ってフィンのことが好き、なのかな?
サーラと一緒に訓練場へ”推し活”をしに行ったあの日。
サーラは”推し”と目が合わせられないほど恥ずかしがっていた。
それなのに、フィンと話をしているのを見かけたときには、そんな様子はなかった。
それって、今思えばすごく違和感がある。
ふと、先日のサーラの言葉を思い出す。
「推しの騎士様は、いつでも皆様に優しくて素敵な方なんですの」
それを聞いたとき、俺は不思議だった。
だって、フィンは俺には優しかったけど、あからさまな好意を向けてくる女性には、わりと塩対応だったから。
まあ、そうしないといつまでたっても訓練が始められないから仕方ないんだけどさ。
だから俺は、サーラにだけは特別優しいのかと思って、無理やり納得していた。
けど、サーラは「みんなに」って言ってた。
そんなの、フィンらしくないんだよ。
これがもし、カリオのことだったとしたら?
確かにカリオは、みんなに優しい。
フィンみたいなキラキラの王子顔じゃないけど、よく見ると整ってる。
え? じゃあ。
サーラの推しって、やっぱりカリオなのか!?
嘘だろ。
じゃあ、俺の……全部、勘違い?
だって、サーラは推しが誰よりもかっこいいって言ってた。
だから、俺はフィンのだと思い込んでた。
けど、そういえば前世の妹も言ってたな。
「フィンより断然カリオの方がかっこいい!」って。
あれ?
じゃあ俺がフィンをかっこいいって思ってたのは、ただ単に俺のタイプだったから……?
いやいやいや、そんなわけない!
客観的に見て、フィンは絶対かっこいいよ!!
でも、そうだ。
サーラは一度も“「フィンが好き」だなんて一度も言ってなかったもんな。
いつも「推しの騎士様」って呼んで、話をしていた——。
んん、そしたら、サーラはゲームと同じく、カリオが好きってこと?
じゃあ、俺やフィンの気持ちってやっぱり作られたものなのか?
そして俺は今、「第一王子攻略ルート」に入ってるってこと……?
そんなの、やだよ。
俺は、俺の気持ちでフィンを好きになったんだ。
じゃなかったら、こんなに毎日悩むわけないじゃないか。
俺は、ちゃんと……生きてる「俺」だよな……?
その時、俺の手を包む温もりが、ぐっと強くなった。
フィンの指先が、俺の手を離さない。
——この温かさは、作られたものなんかじゃない。
俺はそう信じることにしたんだ。
フィンの指の感触が、ゆっくりと意識の底へ沈んでいく。
けれど、その温もりは決して消えなかった。
俺はそのぬくもりを胸に抱きながら、再び眠りの世界へと向かう。
きっと、また目を覚ましたとき――フィンの手の温かさはそこにある。
そう信じながら、深い闇の世界に沈んでいったんだ。
カリオ様、かっこいいもん。
きっと推しについてサーラと語ったら、楽しいだろうなって思うけど!!
でも、私は主人公とカリオ様の恋を応援してるの!
なんでカリオ様は、主人公とじゃなくてサーラとすぐくっついちゃうのよ!』
妹は、病院のベッドの上でゲームをしながら、よくそんなふうにぼやいてたっけ。
ん?
カリオ? サーラ?
それって、俺の友達と義妹の名前じゃないか!!
それに。
妹はサーラの”好きな人”は誰だって言ってた?
急にいろんな映像が頭の中を駆け巡る。
俺は息が詰まって、目を閉じたまま「ぐぅっ」とうめいた。
「エリゼオッ!!」
すかさずフィンが俺の手をぎゅっと強く握りしめてくれる。
俺はその力強さに、胸の奥がじんと温かくなった。
肩に入っていた力が、自然に抜けていく。
俺の顔もゆるんだのか、フィンがほっと息をつく音が聞こえた。
今は夜中なのだろうか。
しんと静まり返ったなか、時計のカチカチという音だけが鳴り響いていた。
俺はさっきから頭は覚醒しているのに、なぜか目が開けられない。
まるで夢と現実の狭間にいるようだった。
俺は、先ほど思い出した記憶をゆっくり整理し始めた。
妹は病院のベッドの上で、”推しの騎士”が出てくるゲームをよくしていた。
そのゲームの名は、確か__。
『チェネレントの靴から始まる恋』
BL恋愛シミュレーションゲームだ。
主人公が色んな人と出会い、恋をしていく。
その攻略対象者は、
第一王子・フィルベルト。
近衛騎士団長・ガルディア。
騎士団員・カリオ。
そして、主人公の義父・エドアルド。
エドアルドって、俺の義父さんの名前だ。
ほかの人たちの名前も、全部知ってる。
あれ? じゃあ俺って。
まさか、妹がやっていたゲームの主人公なのか!?
異世界転生。しかもゲームの中の主人公として……?
じゃあ、俺とフィンのこの気持ちも、もしかしてただの設定ってこと……?
でも。
俺を見て、認めてくれて、抱きしめてくれたのは、確かにフィンだった。
俺が訓練を頑張った日々も、フィンのことを思って胸が高鳴った瞬間も。
全部、俺が実際に感じたものだ。
これが、ゲームで決められた運命だなんて……思いたくない。
じゃあ、サーラはやっぱり、ゲームとは違ってフィンのことが好き、なのかな?
サーラと一緒に訓練場へ”推し活”をしに行ったあの日。
サーラは”推し”と目が合わせられないほど恥ずかしがっていた。
それなのに、フィンと話をしているのを見かけたときには、そんな様子はなかった。
それって、今思えばすごく違和感がある。
ふと、先日のサーラの言葉を思い出す。
「推しの騎士様は、いつでも皆様に優しくて素敵な方なんですの」
それを聞いたとき、俺は不思議だった。
だって、フィンは俺には優しかったけど、あからさまな好意を向けてくる女性には、わりと塩対応だったから。
まあ、そうしないといつまでたっても訓練が始められないから仕方ないんだけどさ。
だから俺は、サーラにだけは特別優しいのかと思って、無理やり納得していた。
けど、サーラは「みんなに」って言ってた。
そんなの、フィンらしくないんだよ。
これがもし、カリオのことだったとしたら?
確かにカリオは、みんなに優しい。
フィンみたいなキラキラの王子顔じゃないけど、よく見ると整ってる。
え? じゃあ。
サーラの推しって、やっぱりカリオなのか!?
嘘だろ。
じゃあ、俺の……全部、勘違い?
だって、サーラは推しが誰よりもかっこいいって言ってた。
だから、俺はフィンのだと思い込んでた。
けど、そういえば前世の妹も言ってたな。
「フィンより断然カリオの方がかっこいい!」って。
あれ?
じゃあ俺がフィンをかっこいいって思ってたのは、ただ単に俺のタイプだったから……?
いやいやいや、そんなわけない!
客観的に見て、フィンは絶対かっこいいよ!!
でも、そうだ。
サーラは一度も“「フィンが好き」だなんて一度も言ってなかったもんな。
いつも「推しの騎士様」って呼んで、話をしていた——。
んん、そしたら、サーラはゲームと同じく、カリオが好きってこと?
じゃあ、俺やフィンの気持ちってやっぱり作られたものなのか?
そして俺は今、「第一王子攻略ルート」に入ってるってこと……?
そんなの、やだよ。
俺は、俺の気持ちでフィンを好きになったんだ。
じゃなかったら、こんなに毎日悩むわけないじゃないか。
俺は、ちゃんと……生きてる「俺」だよな……?
その時、俺の手を包む温もりが、ぐっと強くなった。
フィンの指先が、俺の手を離さない。
——この温かさは、作られたものなんかじゃない。
俺はそう信じることにしたんだ。
フィンの指の感触が、ゆっくりと意識の底へ沈んでいく。
けれど、その温もりは決して消えなかった。
俺はそのぬくもりを胸に抱きながら、再び眠りの世界へと向かう。
きっと、また目を覚ましたとき――フィンの手の温かさはそこにある。
そう信じながら、深い闇の世界に沈んでいったんだ。
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