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47.箱庭なんていやだよ
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次の朝、気づくと俺ひとりで寝ていた。
昨夜のことは夢だったんじゃないかって思うほど、フィンのぬくもりはなくて、胸の奥がじんわり痛くなる。
ふと、手のなかにあるハンカチに気づいた。
子どもが縫ったみたいな、つたないバラの刺繍。少し赤く汚れてる。
これ、フィンが言ってた、俺が小さいころに作ったハンカチじゃない?
フィン、ずっとお守りにしてたって言ってた。
もしかして俺に頑張れって言ってくれてるのかな。
ありがとう、フィン。俺、頑張るよ!
そんなことを考えていたら、朝食を持ってきた兵が、「このあと取り調べが始まる」とだけ言い残して出ていった。
俺、緊張で胃がねじれそう。でも、食べないと力が出ないもんな。
仕方なく、噛みしめるように朝食を食べた。
その後、兵に連れられて入った小部屋には、なんと見覚えのある顔。
騎士団の見習いの時に、一緒に訓練をしたことがある髭のおじさんだった。
俺を見るたびに息子を思い出すって言って、いつも甘いおやつをくれた優しい人だった。
息子ってさ! いくつに見えてるんだ?
俺、もうすぐ二十歳なんだけどな。
だから前に、おじさんに抗議してみた。
「すまんすまん、分かってるよ。
けどな、国境沿いに言ってる間に息子はあっという間にでかくなっちまってさ。
今じゃ俺よりでかいんだ。
お前みたいな、かわいげのある顔してた時代が懐かしくて」
そう言って頭を撫でられたら、文句も言えなかったんだよね。
なのに今日の顔は、べらぼうに怖い。
思わず背筋が伸びる。
そりゃそうだよな。
仲間だと思っていたやつが、国家を裏切った罪で捕まったら、そういう顔にもなるよな。
でも、俺は本当にやってないんだ。
これからどんなきつい取り調べがあるのかって覚悟を決めて椅子に座る。
髭のおじさんは、俺をにらみつけたまま、兵に向かって言った。
「これから取り調べだ。外に出てろ」
ひげのおじさんは、じっと俺の目を見つめたまま、兵が出ていくのをひたすら待っているみたいだった。
おじさんの鬼気迫る姿を見たからなんだろうな。
兵は「二時間後に来るから……生きて返せよ?」と言って部屋を出ていった。
扉がバタンと閉まった瞬間。
髭のおじさんが「ふーっ」と息を吐き、机に突っ伏した。
そして、ガバッと顔を上げたときには、満面の笑みだった。
なんだよっ!? なんだよっ!
あせったぁーーーー!!
俺、、もう笑ってもらえないんじゃないかって、泣きそうだったわ!
「よう、坊主。なんでこんなことになってるんだ?
まあ、二時間はゆっくりしてけ」
「……おじさん、俺のこと信じてくれるの?」
「あぁ? お前が人をだますような器用なタイプに見えるか?
それに、お前はみんなのために率先して雑事こなしてたじゃねえか。
あんだけヘロヘロでも頑張ってたろ。
ああいうところに人柄って出るし、周りもちゃんと見てるんだよ」
そう言って、お茶まで出してくれる。
俺は胸が熱くなった。
まさか、こんな状況でも信じてくれる人がいるなんて思いもしなかった。
前世の妹が言ってた「好感度は大事」って、攻略対象者だけじゃなくて、周りの人みんなってことだったのかも。
俺、何にもできないって思ってたけど、頑張っててよかった。
「それとこれ。俺には分からんが、上司からお前に見せろって言われた。
なんだよ? この数字の羅列は。
見てるだけで、頭が痛ぇんだけど」
あ、これ、国の予算帳簿だ。
きっとフィンだ。牢の中じゃ調べられないもんな。
ありがとう、フィン。俺、頑張るからな。
それから五日間。
終日、髭のおじさんの取り調べのおかげで、帳簿調べは順調に進んだ。
けどさ、なかなか不審な金の流れは見つからない。
俺は少し焦るけど、それでも、自分にできることをするしかないんだ。
そう思って、ひたすら帳簿とにらめっこをしていた。
夜になるとフィンが毎晩来てくれた。
お風呂に入れない俺に、クリーン魔法までかけてくれた。
さすがチートだ!
今日の報告を終えると、フィンに抱きしめられながら眠った。
フィンはそんな俺に
「かわいい」
といって、顔中キスをしてくれた。
「ずっとこんな箱庭で二人きりで過ごすのもわるくないな」
なんて声も聞こえたけどさ。
嫌だよ、そんなの。
だって、フィンともっと色んな場所に行きたい。 もっと笑って、もっと触れて、もっといちゃいちゃしたい。
こんな限られた空間で限られた時間なんてやだよ。
ねえ、フィン。
これが終わったらさ、たくさん一緒に過ごそうな。
俺、フィンとやりたいことも、行きたいところも、山ほどあるんだ。
昨夜のことは夢だったんじゃないかって思うほど、フィンのぬくもりはなくて、胸の奥がじんわり痛くなる。
ふと、手のなかにあるハンカチに気づいた。
子どもが縫ったみたいな、つたないバラの刺繍。少し赤く汚れてる。
これ、フィンが言ってた、俺が小さいころに作ったハンカチじゃない?
フィン、ずっとお守りにしてたって言ってた。
もしかして俺に頑張れって言ってくれてるのかな。
ありがとう、フィン。俺、頑張るよ!
そんなことを考えていたら、朝食を持ってきた兵が、「このあと取り調べが始まる」とだけ言い残して出ていった。
俺、緊張で胃がねじれそう。でも、食べないと力が出ないもんな。
仕方なく、噛みしめるように朝食を食べた。
その後、兵に連れられて入った小部屋には、なんと見覚えのある顔。
騎士団の見習いの時に、一緒に訓練をしたことがある髭のおじさんだった。
俺を見るたびに息子を思い出すって言って、いつも甘いおやつをくれた優しい人だった。
息子ってさ! いくつに見えてるんだ?
俺、もうすぐ二十歳なんだけどな。
だから前に、おじさんに抗議してみた。
「すまんすまん、分かってるよ。
けどな、国境沿いに言ってる間に息子はあっという間にでかくなっちまってさ。
今じゃ俺よりでかいんだ。
お前みたいな、かわいげのある顔してた時代が懐かしくて」
そう言って頭を撫でられたら、文句も言えなかったんだよね。
なのに今日の顔は、べらぼうに怖い。
思わず背筋が伸びる。
そりゃそうだよな。
仲間だと思っていたやつが、国家を裏切った罪で捕まったら、そういう顔にもなるよな。
でも、俺は本当にやってないんだ。
これからどんなきつい取り調べがあるのかって覚悟を決めて椅子に座る。
髭のおじさんは、俺をにらみつけたまま、兵に向かって言った。
「これから取り調べだ。外に出てろ」
ひげのおじさんは、じっと俺の目を見つめたまま、兵が出ていくのをひたすら待っているみたいだった。
おじさんの鬼気迫る姿を見たからなんだろうな。
兵は「二時間後に来るから……生きて返せよ?」と言って部屋を出ていった。
扉がバタンと閉まった瞬間。
髭のおじさんが「ふーっ」と息を吐き、机に突っ伏した。
そして、ガバッと顔を上げたときには、満面の笑みだった。
なんだよっ!? なんだよっ!
あせったぁーーーー!!
俺、、もう笑ってもらえないんじゃないかって、泣きそうだったわ!
「よう、坊主。なんでこんなことになってるんだ?
まあ、二時間はゆっくりしてけ」
「……おじさん、俺のこと信じてくれるの?」
「あぁ? お前が人をだますような器用なタイプに見えるか?
それに、お前はみんなのために率先して雑事こなしてたじゃねえか。
あんだけヘロヘロでも頑張ってたろ。
ああいうところに人柄って出るし、周りもちゃんと見てるんだよ」
そう言って、お茶まで出してくれる。
俺は胸が熱くなった。
まさか、こんな状況でも信じてくれる人がいるなんて思いもしなかった。
前世の妹が言ってた「好感度は大事」って、攻略対象者だけじゃなくて、周りの人みんなってことだったのかも。
俺、何にもできないって思ってたけど、頑張っててよかった。
「それとこれ。俺には分からんが、上司からお前に見せろって言われた。
なんだよ? この数字の羅列は。
見てるだけで、頭が痛ぇんだけど」
あ、これ、国の予算帳簿だ。
きっとフィンだ。牢の中じゃ調べられないもんな。
ありがとう、フィン。俺、頑張るからな。
それから五日間。
終日、髭のおじさんの取り調べのおかげで、帳簿調べは順調に進んだ。
けどさ、なかなか不審な金の流れは見つからない。
俺は少し焦るけど、それでも、自分にできることをするしかないんだ。
そう思って、ひたすら帳簿とにらめっこをしていた。
夜になるとフィンが毎晩来てくれた。
お風呂に入れない俺に、クリーン魔法までかけてくれた。
さすがチートだ!
今日の報告を終えると、フィンに抱きしめられながら眠った。
フィンはそんな俺に
「かわいい」
といって、顔中キスをしてくれた。
「ずっとこんな箱庭で二人きりで過ごすのもわるくないな」
なんて声も聞こえたけどさ。
嫌だよ、そんなの。
だって、フィンともっと色んな場所に行きたい。 もっと笑って、もっと触れて、もっといちゃいちゃしたい。
こんな限られた空間で限られた時間なんてやだよ。
ねえ、フィン。
これが終わったらさ、たくさん一緒に過ごそうな。
俺、フィンとやりたいことも、行きたいところも、山ほどあるんだ。
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