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エピローグ 俺たちの物語
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「エリゼオ様、お疲れさまでした」
ガルディアがそう声をかけてきたのは、三時間にも及ぶ民との対話を終えた後だった。
ガルディアは護衛の時は気配が無くて、変わらず置物みたいだ。
それでも、俺たちの息子と話すときだけは、優しく顔が崩れるのが微笑ましかった。
三年前、あの査問会の日。
俺は震える声で「フィンを支えたい」と叫んだ。
あの日から、俺は少しずつ変わったと思う。
今までは、できないなりに頑張るって思ってた。
今は、自分にできることを頑張ろうってちょっとだけ前向きになった。
今俺は王太子配として、フィンの補佐をしている。
執筆整理や事務作業が主な仕事だけど、こうしてたまにフィンに代わって民の声を聞くこともあるんだ。
最初は緊張してうまく話を聞き出せなかったけど、今は対話を楽しめるようになってきていた。
フィンには緊張して話せないことも、俺になら話せるってこともあるみたい。
俺、モブ顔だからね。
親しみやすいんだと思う。
それらをフィンに報告して、一緒にどうするか考える時間も楽しかった。
二年前から隣国ストラウスとの国交が開かれ、フィンは外交の第一線で活躍している。
ジアスター教の影響力も、徐々に弱まっていった。
それと、あの査問会で意見を言ってくれた文官さんも、一緒に頑張ってくれたみたい。
ただ、俺がフィンと隣国に同行するときは、その文官さんは、お留守番だったけど。
フィンったら、すごいやきもち焼きだよね。
俺はフィン一筋なのにさ。
義父さんの聖水をつかった魔道具開発も、ストラウスの反宗教派と協力して、進められるようになった。
サーラの母の研究は、今では両国で高く評価され、その研究をもとに、少しだけ魔法を使える人も出てきた。
「お義兄様、ご覧になってください!」
サーラが、部屋に飛び込んできた。その手には見覚えのある封筒。
ちなみにサーラは変わらず俺の侍女をしてくれているんだ。
「カリオ様から、お手紙が!」
「また?昨日も来てたよね」
俺がからかうと、サーラは顔を赤らめる。
サーラとカリオは、半年前に結婚した。
「だ、だって……カリオ様が来月帰ってこられるって!」
その表情は、まるで昔、推しの騎士について語っていた時と同じだった。
ああ、そうか。
サーラにとって、カリオは今も「推し」なんだ。
けれど、半年前に結婚し、サーラの手の届く距離にいる。
「サーラ、幸せそうだな」
「はい!お義兄様のおかげです」
違う、とは言わなかった。
サーラの幸せには、俺も少しは関われたかもしれないから。
そして、マティルダ嬢からの手紙も届いた。
それを呼んだ俺は、思わず声に出して笑った。
『殿下とエリゼオ様のドキドキ初夜☆』
こんなタイトルの薄い本が一緒に送られてきていたからだ。
……相変わらずだ。この本の中身を見るのが怖い。
けれど、手紙の最後にこう書かれていた。
『この間面会に行きましたところ、お父様が初めて笑ってくださいました。
「マティルダ、お前は強い子になったな」と。
エリゼオ様、わたくし、推し活を通して本当の強さを知った気がします』
胸が熱くなる。
マティルダ嬢も、叔父さんも——みんな、前を向いて歩いている。
「……よかった」
俺も、嬉しくなる。
「なあ、フィン。
今度、マティルダ嬢に会いに行かない?」
「いいね」
フィンが笑う。
「君と一緒なら、どこへでも」
「うん。俺たちの新婚旅行だよ」
「それは楽しみだ」
フィンはそう言って、俺を抱きしめる。
俺もお返しに、フィンを抱きしめ返した。
窓の外では、バラが光り輝いている。
「エリゼオ」
フィンが、俺の手を取る。
「愛してる」
「……俺も」
唇を重ねた瞬間、窓の外でバラが一斉に輝きを増した気がする。
魔法か、それとも偶然か。
どちらでもいい。
俺たちは、もう何も恐れない。
どんな困難も、二人で乗り越えられる。
前世の妹が教えてくれた。
「推しとの出会いは運命だけど、幸せになるのは自分の力」
俺は、自分の力で——いや、フィンと二人で、この幸せを掴んだんだ。
これが、俺たちの物語。
終わりではなく、始まり。
永遠に続く、俺たちの恋物語だ。
完
ガルディアがそう声をかけてきたのは、三時間にも及ぶ民との対話を終えた後だった。
ガルディアは護衛の時は気配が無くて、変わらず置物みたいだ。
それでも、俺たちの息子と話すときだけは、優しく顔が崩れるのが微笑ましかった。
三年前、あの査問会の日。
俺は震える声で「フィンを支えたい」と叫んだ。
あの日から、俺は少しずつ変わったと思う。
今までは、できないなりに頑張るって思ってた。
今は、自分にできることを頑張ろうってちょっとだけ前向きになった。
今俺は王太子配として、フィンの補佐をしている。
執筆整理や事務作業が主な仕事だけど、こうしてたまにフィンに代わって民の声を聞くこともあるんだ。
最初は緊張してうまく話を聞き出せなかったけど、今は対話を楽しめるようになってきていた。
フィンには緊張して話せないことも、俺になら話せるってこともあるみたい。
俺、モブ顔だからね。
親しみやすいんだと思う。
それらをフィンに報告して、一緒にどうするか考える時間も楽しかった。
二年前から隣国ストラウスとの国交が開かれ、フィンは外交の第一線で活躍している。
ジアスター教の影響力も、徐々に弱まっていった。
それと、あの査問会で意見を言ってくれた文官さんも、一緒に頑張ってくれたみたい。
ただ、俺がフィンと隣国に同行するときは、その文官さんは、お留守番だったけど。
フィンったら、すごいやきもち焼きだよね。
俺はフィン一筋なのにさ。
義父さんの聖水をつかった魔道具開発も、ストラウスの反宗教派と協力して、進められるようになった。
サーラの母の研究は、今では両国で高く評価され、その研究をもとに、少しだけ魔法を使える人も出てきた。
「お義兄様、ご覧になってください!」
サーラが、部屋に飛び込んできた。その手には見覚えのある封筒。
ちなみにサーラは変わらず俺の侍女をしてくれているんだ。
「カリオ様から、お手紙が!」
「また?昨日も来てたよね」
俺がからかうと、サーラは顔を赤らめる。
サーラとカリオは、半年前に結婚した。
「だ、だって……カリオ様が来月帰ってこられるって!」
その表情は、まるで昔、推しの騎士について語っていた時と同じだった。
ああ、そうか。
サーラにとって、カリオは今も「推し」なんだ。
けれど、半年前に結婚し、サーラの手の届く距離にいる。
「サーラ、幸せそうだな」
「はい!お義兄様のおかげです」
違う、とは言わなかった。
サーラの幸せには、俺も少しは関われたかもしれないから。
そして、マティルダ嬢からの手紙も届いた。
それを呼んだ俺は、思わず声に出して笑った。
『殿下とエリゼオ様のドキドキ初夜☆』
こんなタイトルの薄い本が一緒に送られてきていたからだ。
……相変わらずだ。この本の中身を見るのが怖い。
けれど、手紙の最後にこう書かれていた。
『この間面会に行きましたところ、お父様が初めて笑ってくださいました。
「マティルダ、お前は強い子になったな」と。
エリゼオ様、わたくし、推し活を通して本当の強さを知った気がします』
胸が熱くなる。
マティルダ嬢も、叔父さんも——みんな、前を向いて歩いている。
「……よかった」
俺も、嬉しくなる。
「なあ、フィン。
今度、マティルダ嬢に会いに行かない?」
「いいね」
フィンが笑う。
「君と一緒なら、どこへでも」
「うん。俺たちの新婚旅行だよ」
「それは楽しみだ」
フィンはそう言って、俺を抱きしめる。
俺もお返しに、フィンを抱きしめ返した。
窓の外では、バラが光り輝いている。
「エリゼオ」
フィンが、俺の手を取る。
「愛してる」
「……俺も」
唇を重ねた瞬間、窓の外でバラが一斉に輝きを増した気がする。
魔法か、それとも偶然か。
どちらでもいい。
俺たちは、もう何も恐れない。
どんな困難も、二人で乗り越えられる。
前世の妹が教えてくれた。
「推しとの出会いは運命だけど、幸せになるのは自分の力」
俺は、自分の力で——いや、フィンと二人で、この幸せを掴んだんだ。
これが、俺たちの物語。
終わりではなく、始まり。
永遠に続く、俺たちの恋物語だ。
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