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29.犬と少年 前編(大和side)
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最近の碧依を見てると、胸がざわつく。
ゼミで堂々と意見を言う姿や、大学で仲間と楽しそうに話す姿。
けれど、時折見せる寂しそうな目。
今までとは、まるで違う。
前髪で表情を隠していた大学での碧依。
俺に一生懸命教えてくれたバイト先での碧依。
嬉しそうに頬を染めて笑うけど、ふっと悲しい目になっていた、デートの時の碧依。
そのどれとも重なるけれども、ピッタリとははまらなかった。
あの夏、碧依が俺を騙して店長と付き合ってたって知ったとき、頭が真っ白になって、信じられないって気持ちでいっぱいだった。
でも、今の碧依を見ると、あのときの俺の怒りが、どこか間違ってたんじゃないかって思えてくる。
新しいパステルカラーのニットを着て、ほんの少し大人びて笑う碧依を見ると、海で出会った少年の優しい目と重なる。
あのときの少年は、少し大人ぶって、俺を励ましてくれていた。
俺を救ってくれた少年。
あの少年が、水瀬碧依だったんだ。
中学二年の頃、俺の毎日はイライラで埋まってた。
父親が入院して、母親は病院とパートの掛け持ちでヘトヘトだった。
兄貴は高校生なのに部活をやめてバイトに明け暮れて、家計を支えてた。
親も兄貴を頼りにしてて、俺はただのお荷物。
早く大人になって、みんなの役に立ちたかった。
でも、母さんにも兄貴にも「お前はいいから、子供らしくしてろ」って言われるだけ。
俺にできることなんて何もないって、突きつけられてる気がした。
焦った俺は、髪を金色に染めて、いきがって、少しでも大人ぶりたかった。
背が小さくて舐められやすかったから、なおさらだ。
不良に絡まれることも多かったけど、それは周囲にイライラを隠しきれなかった俺の態度のせいなんだろうな。
家に帰ったら料理を作ってみたり、洗濯をしてみたりしたけど、不器用な俺じゃ失敗ばっか。
ハンバーグは焦がして台無し、唐揚げを作ろうとして油がはねて火事を起こしかけた。
洗濯も、母さんの大事なセーターを縮ませて、ため息をつかせちまった。
ある日、家から遠いコンビニで高校生のバイト募集を見つけた。
兄貴の学生証を使って、年齢を偽って応募した。
少しでも家計の足しになればって。
でも、保護者の確認が必要って言われて、結局母さんにバレた。
「お前は子供なんだから、子供らしく部活でもしてろ。俺も母さんもいるんだぞ」
って兄貴にまで怒られちまった。
でも、兄貴だって部活やめたくてやめたわけじゃないのは分かってた。
それなのに、俺だけ遊んでるわけにはいかないじゃないか。
俺だって、みんなの役に立ちたいんだ。
どうにかしたいって、ずっと思ってた。
ゼミで堂々と意見を言う姿や、大学で仲間と楽しそうに話す姿。
けれど、時折見せる寂しそうな目。
今までとは、まるで違う。
前髪で表情を隠していた大学での碧依。
俺に一生懸命教えてくれたバイト先での碧依。
嬉しそうに頬を染めて笑うけど、ふっと悲しい目になっていた、デートの時の碧依。
そのどれとも重なるけれども、ピッタリとははまらなかった。
あの夏、碧依が俺を騙して店長と付き合ってたって知ったとき、頭が真っ白になって、信じられないって気持ちでいっぱいだった。
でも、今の碧依を見ると、あのときの俺の怒りが、どこか間違ってたんじゃないかって思えてくる。
新しいパステルカラーのニットを着て、ほんの少し大人びて笑う碧依を見ると、海で出会った少年の優しい目と重なる。
あのときの少年は、少し大人ぶって、俺を励ましてくれていた。
俺を救ってくれた少年。
あの少年が、水瀬碧依だったんだ。
中学二年の頃、俺の毎日はイライラで埋まってた。
父親が入院して、母親は病院とパートの掛け持ちでヘトヘトだった。
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親も兄貴を頼りにしてて、俺はただのお荷物。
早く大人になって、みんなの役に立ちたかった。
でも、母さんにも兄貴にも「お前はいいから、子供らしくしてろ」って言われるだけ。
俺にできることなんて何もないって、突きつけられてる気がした。
焦った俺は、髪を金色に染めて、いきがって、少しでも大人ぶりたかった。
背が小さくて舐められやすかったから、なおさらだ。
不良に絡まれることも多かったけど、それは周囲にイライラを隠しきれなかった俺の態度のせいなんだろうな。
家に帰ったら料理を作ってみたり、洗濯をしてみたりしたけど、不器用な俺じゃ失敗ばっか。
ハンバーグは焦がして台無し、唐揚げを作ろうとして油がはねて火事を起こしかけた。
洗濯も、母さんの大事なセーターを縮ませて、ため息をつかせちまった。
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でも、保護者の確認が必要って言われて、結局母さんにバレた。
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って兄貴にまで怒られちまった。
でも、兄貴だって部活やめたくてやめたわけじゃないのは分かってた。
それなのに、俺だけ遊んでるわけにはいかないじゃないか。
俺だって、みんなの役に立ちたいんだ。
どうにかしたいって、ずっと思ってた。
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