追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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お世話をやく国王1

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 食堂・猫のしっぽ。
 差し入れをして貰った時に絶対に通おう! と思ったくらいに美味しいお店だ。
 騎士団長であるコルタの生家であり、場所も商会のある王都の北側にあって通いやすい。
 私は今日も猫のしっぽにランチを食べにやって来ていた。


「やっぱり、ここのお料理は絶品ね!」
 私はタオと呼ばれるパンを手に持ちながら、感嘆の声を上げていた。


 タオとは刻んだ野菜とひき肉を混ぜて焼き上げ、こんがりと焼きめのついた三角形のパンに挟んだ料理。
 パン生地に香草が練り込んでいるので、肉汁を吸い込んでも脂っこさを感じずさっぱりと食べられる。
 タオはエタセルでは定番の軽食だ。


 昼時のためか、店内は活気に満ち溢れていた。
 カウンター席もテーブル席も全てお客さんで埋め尽くされ室内に漂う美味しいそうな匂いなど五感を刺激される。


「ほんと、お前って旨そうに喰うよな」
 私が座っているボックス席に相席しているコルタは、食後のお茶を飲みながらこちらを見ている。


「だって、美味しいんだもの。明日も来るわ」
 私が飲み物に手を伸ばしながら口にすれば、「嬉しい!」という可愛らしい少女の声が背に届く。
 振り返るとそこには少女が。
 茶色の胸まである髪を左右三つ編みにしている彼女は、にこにことした人懐っこい笑みを浮かべている。
 クリーム色のワンピースに真っ白なエプロン姿を着ていて、手には銀のトレイを持っていた。


 彼女はコルタの妹・サーサちゃん。ねこのしっぽのウェイトレスだ。


「はい、ランチセットのデザートだよ」
 サーサちゃんが銀のトレイに乗っていたものをテーブルへと置いてくれた。
 持ってきてくれたのは、フルーツのタルト。
 彩り豊かなフルーツが溢れんばかりに盛られていてすごく美味しそう。


「ありがとう。ここはスイーツも美味しいよね」
「実はデザートはうちで作っているんじゃないの。お姉ちゃんのお店のものなんだ」
「お姉さん?」
「うん。一番上にお姉ちゃんがいるの。結婚して義理兄と一緒に城の近くで菓子店を営んでいるんだ。ティアナちゃん、今度一緒に行こうよ! お兄ちゃんのおごりで」
「私、自分で払うよ。一応、お給料貰っているから……それにもうすでにお昼ご飯を奢って貰っているし」
 私のお昼ご飯は、一ヶ月限定でコルタのおごりとなっている。


 どうして彼が私にお昼を奢っているのか? それは、仲介業者との対決でコルタが私の胸倉を掴んだ件が禍根だ。
 私は気にしてなかったのだが、お兄様が胃痛で倒れる寸前だったらしい。


 コルタはお兄様に厳重注意を受けたようで、後日彼が私の元へお詫びに来たのだ。
 勿論、コルタだけではなく私もお兄様から厳重注意。
 ……というか、危ないことはやめて欲しい! 胃が持たないという懇願だったけど。



「お昼ご飯も自分で払うよ?」
「いい。あれは完全に俺が悪かったからお詫びだ。俺が言うのもなんだが、あまり無茶するなよ。ティアナの一人暮らしでリストが心配している」
 コルタの言う通り、私は一人暮らしをしている。
 お父様は民の生活を私達に教えてくれるために、私やお兄様を子供の頃から城下町に連れて行ってくれていた。
 きっと民と同じ目線で物事を見られるようにという配慮があったのだろう。


 ハーブの生産者だけではなく、他の人達のためにも何かしたい! と思った私は、一人暮らしをすることに。
 正確には一人ではなく、コルもいるから一人と一羽暮らしだ。


 コルは私が仕事に出かけるのと同時に外に出て、夕刻になると戻って来る生活をしていた。
 コルは野性のカラスと友達になったらしい。


 私が住んでいる家は、元々空き家だった所のため私とコルではかなり広すぎる2階建て。
 なんと、家庭菜園が出来る畑付きだ。
 今はハーブを植えていて、夏前には野菜を植えたいという願望がある。


「お兄様には順調だから大丈夫って伝えているんだけど」
「どこが順調なんだよ。朝昼晩の三食をここで食っているじゃないか」
 コルタの言葉に、私は言葉が詰まってしまう。


 商会からお給料が出ているため収入はあるけど、経済的には自炊の方が良いのはわかっている。
 元々貴族令嬢としてずっと暮らしてきたため、全てが初めての連続。
 料理もそうだ。
 だが、商会がありがたいことに順調。業務の規模を拡大し、東大陸から仕事の依頼も……
 最近は、もっぱら家には寝るために戻っている生活をしている。







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