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ライナスとレイガルド1
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「ここがティアの家か。一人だと大きくて広々と使えそうだな」
コルを肩に乗せているライは、目の前にある二階建ての建物を眺めながら言った。
クリーム色の壁には緑色の扉と同系色の窓枠飾りに囲まれた窓が嵌め込まれている。
屋根は雪が積もらないように傾斜が強い三角屋根だ。
ライは私の一人暮らしを心配してエタセルへと一人だけ早く出国したらしい。
常備薬などを持参して。
――なんとなくだけど、ライが過保護にしてくれるのはちょっと嬉しいかも。
「広いよねー。商会からも距離が近いから決めちゃったんだ。元々は五人家族で住んでいたそうだから、一人にしては部屋数が多いし。一階はキッチンとリビングで二階が三部屋」
一部屋は自分の寝室。
残りの二つの部屋は使っておらず、ただの荷物置き場になってしまっていた。
そのため、誰かと住むことになっても部屋数的には問題ない。
「ティア。ハーブを植えたのか?」
「え、うん。そうなの!」
ライが右手を見ているのだが、そこにあるのは畑だ。
家庭菜園コーナーにしようと思っていて、今は苗を頂いたのでハーブを植えている。
料理やお茶にハーブを使うことも出来るから新鮮なものを使用出来るようにって。
落ち着いたら野菜も植えて料理がしたい。
「エタセルはハーブが有名だから、私も植えてみたの」
「……ペパーミントが植えられているように見えるんだが」
「そう! ペパーミントティーにハマっていて、早く育つのを楽しみにしているの。いっぱい飲めるって聞いたんだ」
「ペパーミントの繁殖力は、他の植物を侵食していくよ。どんどん広がっていくんだ」
「え」
私はじっとペパーミントを凝視。
まさか、そんなに強力だったとは……
確かに沢山は飲めると思うが、家庭菜園もしたいのであまり広がられると困ってしまう。
「出来れば鉢植えの方が良いかも」
「そうなのっ!?」
「後で植え替えておくよ。他にも繁殖力が高そうなハーブがあるか見ておく。根を放置しているだけで永遠に繁殖するやつもあるし」
「ありがとう、助かる」
私はお礼と告げると、玄関の扉を開けた。
「長旅で疲れたでしょ? どうぞ中に入って休んで」
「急に来て悪い」
「ううん、全然」
私がライと共に中へと入れば、ライの肩からコルが飛び立ち、足で玄関の扉を閉め器用にカギを回してくれた。
ガチャンという音が響き、室内が静寂に包まれてしまう。
「コル……今日はまだ明るいから……あと、ちょっとマズい……」
コルはいつも通り施錠すると、今度はソファの上にあったブランケットを咥えて翼を羽ばたかせる。
「ティア。どういうこと? 手紙と話が違う」
ライのトーンが低くなってしまった。
――あっ、やばい。
私はライに手紙で早めに帰宅していると書いていた。
決して嘘ではない。
だが、最近の帰宅時間はかなり遅くなってしまっている。
疲労困憊で帰宅したらすぐに寝てしまう生活をするくらいに……
施錠をして毛布をかけてソファにて寝る生活をしていたら、いつの間にかコルが覚えたのだ。
お兄様にも帰宅が遅いことはかなり心配されている。
あまり遅くなる時は必ず誰かに送って貰うか、お兄様に連絡すれば迎えに行くって。
「最近だけ。ほんと最近だけなの。東大陸との取引があって、私が翻訳しているから」
「夜ってこの辺り人の通りはあまりないだろ? ティアは女の子なんだよ」
「お兄様にも言われたわ」
「……だろうね。食事はちゃんと食べている?」
「三食、猫のしっぽで」
「食べているならいいんだ。ティア、猪突猛進タイプだから仕事に打ち込んで食べるのを忘れていると思っていたから」
ライはほっと安堵の息を漏らす。
「私これから仕事だけど、ライは自由に部屋を使っていいよ」
「いや、流石に家主がいない家では……」
「ライのことは信用しているし、お兄様に声をかけるわ。お兄様がライに会いたがっていたから。兄会したいって」
「あぁ、リストか。手紙でも書いてあったな。リストのために胃に優しくリラックス効果のあるハーブをブレンドしてきた」
「ライってお兄様ともお手紙のやりとりをしていたの?」
「しているよ」
「へー」
初耳だったので、私はちょっと驚いてしまった。
手紙のやりとりは私とだけだと思っていたが、どうやらお兄様もライと文通をしていたようだ。
年齢も近いから話しやすいのかもしれない。
久しぶりのライとは積もる話がいっぱいあるけど、そろそろ戻らなければならない時間だ。
私はお茶とお菓子だけは出して行こうと、ライに断りを入れキッチンへと向かおうとする。
すると、玄関の扉からノック音が届いたため、足を止めた。
「誰だろ……?」
コルを肩に乗せているライは、目の前にある二階建ての建物を眺めながら言った。
クリーム色の壁には緑色の扉と同系色の窓枠飾りに囲まれた窓が嵌め込まれている。
屋根は雪が積もらないように傾斜が強い三角屋根だ。
ライは私の一人暮らしを心配してエタセルへと一人だけ早く出国したらしい。
常備薬などを持参して。
――なんとなくだけど、ライが過保護にしてくれるのはちょっと嬉しいかも。
「広いよねー。商会からも距離が近いから決めちゃったんだ。元々は五人家族で住んでいたそうだから、一人にしては部屋数が多いし。一階はキッチンとリビングで二階が三部屋」
一部屋は自分の寝室。
残りの二つの部屋は使っておらず、ただの荷物置き場になってしまっていた。
そのため、誰かと住むことになっても部屋数的には問題ない。
「ティア。ハーブを植えたのか?」
「え、うん。そうなの!」
ライが右手を見ているのだが、そこにあるのは畑だ。
家庭菜園コーナーにしようと思っていて、今は苗を頂いたのでハーブを植えている。
料理やお茶にハーブを使うことも出来るから新鮮なものを使用出来るようにって。
落ち着いたら野菜も植えて料理がしたい。
「エタセルはハーブが有名だから、私も植えてみたの」
「……ペパーミントが植えられているように見えるんだが」
「そう! ペパーミントティーにハマっていて、早く育つのを楽しみにしているの。いっぱい飲めるって聞いたんだ」
「ペパーミントの繁殖力は、他の植物を侵食していくよ。どんどん広がっていくんだ」
「え」
私はじっとペパーミントを凝視。
まさか、そんなに強力だったとは……
確かに沢山は飲めると思うが、家庭菜園もしたいのであまり広がられると困ってしまう。
「出来れば鉢植えの方が良いかも」
「そうなのっ!?」
「後で植え替えておくよ。他にも繁殖力が高そうなハーブがあるか見ておく。根を放置しているだけで永遠に繁殖するやつもあるし」
「ありがとう、助かる」
私はお礼と告げると、玄関の扉を開けた。
「長旅で疲れたでしょ? どうぞ中に入って休んで」
「急に来て悪い」
「ううん、全然」
私がライと共に中へと入れば、ライの肩からコルが飛び立ち、足で玄関の扉を閉め器用にカギを回してくれた。
ガチャンという音が響き、室内が静寂に包まれてしまう。
「コル……今日はまだ明るいから……あと、ちょっとマズい……」
コルはいつも通り施錠すると、今度はソファの上にあったブランケットを咥えて翼を羽ばたかせる。
「ティア。どういうこと? 手紙と話が違う」
ライのトーンが低くなってしまった。
――あっ、やばい。
私はライに手紙で早めに帰宅していると書いていた。
決して嘘ではない。
だが、最近の帰宅時間はかなり遅くなってしまっている。
疲労困憊で帰宅したらすぐに寝てしまう生活をするくらいに……
施錠をして毛布をかけてソファにて寝る生活をしていたら、いつの間にかコルが覚えたのだ。
お兄様にも帰宅が遅いことはかなり心配されている。
あまり遅くなる時は必ず誰かに送って貰うか、お兄様に連絡すれば迎えに行くって。
「最近だけ。ほんと最近だけなの。東大陸との取引があって、私が翻訳しているから」
「夜ってこの辺り人の通りはあまりないだろ? ティアは女の子なんだよ」
「お兄様にも言われたわ」
「……だろうね。食事はちゃんと食べている?」
「三食、猫のしっぽで」
「食べているならいいんだ。ティア、猪突猛進タイプだから仕事に打ち込んで食べるのを忘れていると思っていたから」
ライはほっと安堵の息を漏らす。
「私これから仕事だけど、ライは自由に部屋を使っていいよ」
「いや、流石に家主がいない家では……」
「ライのことは信用しているし、お兄様に声をかけるわ。お兄様がライに会いたがっていたから。兄会したいって」
「あぁ、リストか。手紙でも書いてあったな。リストのために胃に優しくリラックス効果のあるハーブをブレンドしてきた」
「ライってお兄様ともお手紙のやりとりをしていたの?」
「しているよ」
「へー」
初耳だったので、私はちょっと驚いてしまった。
手紙のやりとりは私とだけだと思っていたが、どうやらお兄様もライと文通をしていたようだ。
年齢も近いから話しやすいのかもしれない。
久しぶりのライとは積もる話がいっぱいあるけど、そろそろ戻らなければならない時間だ。
私はお茶とお菓子だけは出して行こうと、ライに断りを入れキッチンへと向かおうとする。
すると、玄関の扉からノック音が届いたため、足を止めた。
「誰だろ……?」
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