追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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メディの元へ2

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「エタセルからティアが来てくれているんだ。少し話をしてもいいか?」
「わ、私ですか……?」
「そうだ。無理なら断ってもいいよ」
 ライの言葉にメディ様は迷っていらっしゃるのか、暫く静寂が続く。
 ほんの数秒だったかもしれないけど、私にとってはすごく長く感じた。


 私はライに決して無理をさせないと約束していたし、私自身も強制はしたくないと思っている。
 だから、彼女に拒絶されたらそこまでだ。


「……このままでもいいですか? 部屋から出るのか怖いです」
 扉越しに届いた声に対してライが私へと顔を向けたので、「このままで構いません。ありがとうございます」と返事をした。


 ――良かった。話を聞いてくれるみたいだわ。


 私はほっと安堵の息を漏らすと、ゆっくり扉へと向かって歩いた。



「初めまして。私、ティアナと申します。実はメディ様にお願いがあって来ました。エタセルのハーブを利用し新製品を開発して国起こしをしたいんです。私では薬草学に詳しくないので、協力していただけませんか? お給料もきちんとお支払いいたします。勿論、居住用の屋敷もこちらで手配を」
「……薬学に詳しい人は他にもいます。私なんかでは役に立ちません……」
「そんなことありませんよ。メディ様は薬学の知識が豊富で、最年少で薬学の最高位の称号を得たなんて素晴らしいです」
「そんなの……そんなの持っていても、あの人達の前では無意味でした。私は何も役に立たないんです!」
 弱々しかった声質がいきなり感情的に叫ぶようになってしまったので、私は固まってしまう。


 もしかして、彼女の感情を逆なでする事を告げてしまってのだろうか? と思ったが、『あの人達』と言ったことが頭に過ぎる。


 ――もしかして、メディ様をいびっていた貴族令嬢達のことかしら?


 私も一時期あったけど、嫌な事や嫌な人を見ると全部嫌になってしまうことがある。
 きっとメディ様は貴族令嬢達のような人ばかり以外が見えなくなってしまっているのかもしれない。


 私も元婚約者達に裏切られて時そんな感じだったから。
 今はメーター吹っ切れて、あいつら潰すに切り替わったけど。


「メディ様。スーちゃんという子を知っていますか?」
「えっ……申し訳ありません……心当たりが……」
「メディ様に治療して貰った女の子です。テミス神殿に観光に行った時に出会いました。彼女は、自分のお小遣いで貴方の回復を願い、女神に捧げるお花を買ってお祈りしていましたよ」
「……わ、私のために」
 中からすすり泣く声が聞こえてきて、私は心臓が一度大きく跳ねがった。


 ――ど、どうしよう。泣かせてしまった。


 私の言葉が彼女を追いつめてしまったのか? など、ぐるぐると頭の中に色々な感情が湧いて出てきてしまう。
 相手のことを考えながら言葉を話すのって難しい。


「みんなが貴族ご令嬢ばかりのような世界ではありません。世の中、そんなに腐ったもんじゃないんです。勿論、腐っている人間もいますけど。そんな奴らは叩き潰せばいいんですよ!」
「……えっ、た、た、叩き潰す……っ!?」
 動揺するメディ様の台詞に、私は頷く。


「エタセルで心機一転新しい生活をしてみませんか? 自然豊かな所ですよ。古代神殿もありますし、薬草に詳しい神官様もいます。もしかしたら、メディ様と気が合うかもしれません。えっと……なんでしたっけ? アルなんとか薬学辞典を暗記したって言っていました」
「『アルツナ薬学辞典』ではないですよね?」
「あっ! そうです。やっぱり薬学に詳し――」
 私の言葉はバンッという何かを強く叩いたような音のせいで、止められてしまう。


「え」
 私は息が止まるかと思った。
 だって急に目の前の扉が開き、紺碧のローブを纏った少女が現れたのだから。


 全身は布に覆われていてわからないけど、顔は窺える。
 大きな瞳は潤んでおり、頬には涙の跡があった。


 ふっくらとした輪郭を持った少女は、ライと同じ似たような青系の瞳と髪色をしているけど、少女の方が薄めだ。



「メ、メディ様ですか……?」
「本当にその方はアルツナ薬学辞典とおっしゃったんですかっ!?」
 がしっと両肩を掴まれ、私は前後に揺すられてしまったので、突然の出来事に頭が混乱してしまっていた。


 メディ様が外に出て来てくれたこともそうだが、アルツナ薬学辞典にどうして感情的になっているのか理由が思いつかず。



「神官様は確かに言いました。たしか、枚数多くて覚えるのが大変だったって」
「まさか、そんな! アルツナ薬学辞典は書字板で現存するのが世界で――」
 メディの言葉は途中で遮られてしまう。
 それは、長年ずっと扉越しに妹を心配し見守ってきた兄・ライに抱きしめられたせいだ。



「久しぶりだな、メディ」
 そう告げたライの声は震えていた。










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