追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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メディの元へ1

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「うわー。相変わらず大きいね! ファルマ城」
 馬車を降りて聳え立つ城を眺めながら私は呟く。


 今回でお城に滞在するのは二回目だけれども、規模が大きい城はまだ慣れていないため、新鮮でテンションが高くなる。
 時間がある時にでも探検したいけど、きっと膨大な時間がかかりそう。


 ライとレイガルド様の間に不穏な空気が流れたがパーティーも盛況に終わり、私はメディ様をスカウトするためにファルマへとやって来た。
 帰国するライの馬車に同乗させて貰って。


 フーリデ様とアールも一緒に帰国するのかなぁと思っていたが、彼らはエタセルに残ってしばらく観光をするらしい。
 フーリデ様が商会を見学したいとのことで、ゴアさん達に案内をお願いしている。
 タイミングが合えば、私が案内をしたかった……


 神官様の件も事前に説明しているので、商会に彼が訪れてくれたら出迎えてくれるように頼んでいる。



「まぁ、確かに大きいかもな。毎日暮らしているから慣れちゃったけど。ティア、荷物は部屋に運んで貰って構わないか?」
 ライに尋ねられたので、私は振り返る。
 すると、さっきまで乗っていた馬車があり、ライの傍にいる城仕えの人達が私の荷物やライの荷物を降ろしてくれている所だった。


「あっ、荷物なら自分で――」
「出迎えが遅れてしまったようだな」
 自分で運びますよという言葉が野太い声により途中で遮られてしまう。
 聞き覚えのある声だったため、私は弾かれたように振り返れば、城の入り口と繋がっている階段を降りる男性の姿が見えた。



 ファルマの宰相であるマオスト様だ。



「マオスト様っ!」
 マオスト様は、右手を軽く上げると「よっ、ティアナ嬢」と挨拶をしてくれた。



「いやー、まさかライナスがレイガルド様からティアナ嬢を掻っ攫って来るとは思わなかったぞ。お前の良い知らせを待っている連中は大喜びだな」
「今回はそういうのではない。だが、成果はあった。マオストの言う通り、一日早く向かってよかったよ。エタセル側もティアを欲していた」
「だろ? っつうか、やっぱりそうなのか。ティアナ嬢、モテ期突入だなっ!」
 マオスト様が豪快に笑って私の肩を叩いたが、個人的には全く実感がない。


「ティア、もうずっとここに居なよ。永住権がすぐに通るように書類の手続きをするしさ。心配で仕方がない。ただでさえ、ファルマとエタセルは遠いから」
 もしかして、ライにお兄様の心配性が移ったのだろうか。
 最近、あまり無茶はしてないんだけれども。



「ティアナ嬢が噴水のジンクスで王妃運をゲットしたけど、『どこの国の王妃』かまではジンクスではわからないもんなぁ。国は沢山あるし。ティアナ嬢、しばらくここに居たらどうだ? もう少し経つと『ライナスの誕生日パーティー』があるしさ!」
「ライの誕生日パーティー?」
「そう。まだ各国に招待状は出してないけど、うちで開かれるんだ。ティアとリストにも招待状を送るから、良かったら来て欲しい」
「勿論!」
 誕生日プレゼント選びは、お兄様に付き合って選びに行こう。
 お兄様なら、ライと年が近いから参考になるだろうし。



「長旅で疲れただろ? ゆっくりライナスと茶でも飲んで寛いでくれ。荷物は部屋に運んでおくからさ」
「荷物は自分で運びますよ。ファルマまで乗せて来て貰った上に、城に泊めさせて貰うので」
「そんなの気にしなくていいよ。俺だって、ティアの家に泊めて貰ったし」
「「「泊まったっ!?」」」
 突然響き渡ったのは、マオスト様や周りにいる荷物を運ぼうとしている城仕えの人々の声だ。
 年齢も性別もバラバラなのに、綺麗に重なって奏でられた。


 ……やっぱり、一国の王を民家はマズかった?


 お忍びだから大丈夫かなって思ったし、お兄様も居たからいいかなって安易に判断してしまったのだ。ちょうど、部屋も余っていたし。



 しかも、留守中に家事をして貰った上に、料理能力皆無な私とお兄様のために朝食まで作ってくれた。
 本当にライって家事が上手な女神だった。



「ティアナ嬢って一人暮らしだったよな。ライナス、まさかのお泊りっ!?」
「リストも居たから」
 興奮気味なマオスト様とは対照的に、ライは静かな声で反応するとすぐに「部屋に運んでくれ」とテキパキと使用人に指示を出し始めた。













 ファルマ城の廊下は、大国ともあって豪華な調度品が窺える。
 例えば壁に飾られている絵画一つとっても、額縁に丁寧な職人技を感じる細工が施され、額縁だけでもかなりの価値がありそう。


 見るからに高級そうなものばかりに囲まれながら、私は一生に一度見られるかどうかだろうなと思いながら歩いていた。
 隣を歩いているライは視線を彷徨わせている私とは違い、いつも通り変わらず毛足の長いふかふかの絨毯を踏みしめて目的地へ向かっている。


 今、私達がいる場所が王族の居住領域らしく、身分を証明された人以外は立ち入ることが出来ないらしい。


「メディ様、気に入ってくれると嬉しいなぁ」
 私は手にしているリボンの結ばれた紙袋へと視線を向ける。
 中身はコルタのお姉さんのお菓子屋さんで購入した日持ちがするお菓子とエタセルにしか生息していないお茶にできるハーブ類だ。



「メディ、薬草の研究をするのが好きだからきっと気に入るよ」
 ライは微笑みながらそう言ってくれたので、ちょっとほっとする。


 二人でおしゃべりしながら歩いていると、「ここだよ」とライが足を止めた。
 するとそこには、二羽の小鳥が木の枝に止まっている風景が彫られたダークブラウンの扉が。



 人の気配が全く感じず物音一つしないため、本当に部屋の中に人がいるのだろうか? と感じてしまう。
 ライがノックをし始めたので、一気に緊張感が襲って来た。




「メディ」

「……はい」

 ライの問いかけに、弱々しい返事が。




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