追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

文字の大きさ
67 / 134
連載

VS公爵令嬢2-1

しおりを挟む
 エスカ様はライの言った通りパーティーに参加していたが、私の予想に反して特にあちらからの接触はなかった。
 もしかしたら、大人しくしてくれるのかもしれない。

 私をエスコートしてくれていたライは、本日の主役のため多くの人に囲まれている。
 私は祖父や父達の知り合いの方や商会の取引国と挨拶をしていたら、いつの間にかライと離れてしまっている。


 ――メディとレイガルド様は?


 挨拶をしながらメディのことを目視するため、レイ達がいた場所へと顔を向ければレイしか居ない。
 二人は一緒にいたはずなのに、レイは他国の王達と談笑中だ。

 もしかして、飲み物でも取りに行ったのかな?

 メディがいないことに対して、私は訝しげに思い周辺を見回せば、目を引くラベンダー色の髪をした少女の姿を捉える。
 取り巻きと思われる二人がバルコニーへと通じる窓を開け、メディ達を招き入れた。


 ――大人しくしているわけがないか。


 私は「ちょっと飲み物を」としゃべっていた祖父の知人へ断りとをいれると、彼女達を追うために足を踏み出した。
 窓辺に近づけば、後方から聞こえてくるパーティーの賑やかな音とは反対にトゲトゲしい声音がガラス越しに届く。


「ひきこもりがエタセルの王にエスコートされてお姫様気取りかしら? 随分と偉くなったものね。忌まわしい王妃の娘が」
「本当ですわね、エスカ様。そのドレスも全く似合ってないわ。ドレスと宝石の無駄。きっと家柄が出てしまうのね」
「でも、エタセルなんて田舎な国。メディ様にはふさわしいんじゃないかしら? ずっとあちらで暮らして戻って来なければ良いのに」
 壁に隠れ窓をそっと覗くとメディの背が見え、彼女の前にはエスカ様達が立ち、罵声を浴びせている様子が映し出される。

 どうやらエスカ様だけではなく、取り巻きの二人も彼女と同様な性格らしい。


「わ、私は……」
 メディが勇気を出して声を震わせながら言葉を発しようとしているけど、続きは音となることはなかった。
 無理もない。トラウマの禍根が目の前にいるのだから。


「しかし、王女と似ているなぁ。やっぱ」
 私は呟きながら窓を開ければ、四人が弾かれたようにこちらを見た。


「御機嫌よう。エスカ様と取り巻きのご令嬢達」
 私がメディと彼女達の間に割って入りメディを背に隠してエスカ様達と対峙すれば、彼女は猫のような瞳を鋭く細めた。


「……ティアさん」
「随分と意地汚いですわね。私、こういうのが大嫌いなんです。権力振りかざして相手を痛めつける人が。メディはファルマ王の妹君ですよ? 失礼な言い方を改めるべきですわ」
「ティア……」
 私の腕へメディが触れたので、私は大丈夫と微笑み彼女の手に触れる。


「部外者が口を出して欲しくないわ。貴女も調子に乗っているわよね。別にみんな貴女に注目しているわけじゃなくて、貴女のドレスに注目しているだけよ。成金みたいに高価なドレスを見せびらかしちゃって。エタセルなんて田舎に追放されたくせに」
「そうよ! エスカ様のおっしゃる通りだわ。あんたなんて大した可愛くもないし。その宝石だって本物か怪しいし」
「田舎の娘が買えるか怪しいわ。偽物ね」
 やっぱりドレスに食いついてきたか。

 エスカ様の報告書で華やかと書かれていたから、ドレスや装飾品に関しては絶対注目するだろうと踏んでいた。
 そのため、ライにファルマの最先端のドレスを教えて欲しいとお願いしておいたのだ。


「偽物の宝石かもしれないって、なんて面白い冗談なのかしら」
「はっ?」
「だって、本物の宝石か偽物の宝石かが見抜けないっておっしゃっているんだもの。誰がどう見てもこんなに高品質のものは本物に決まっているのに」
 私が扇子を広げてクスクスと笑えば、「なんですって!」という激怒した声が聞こえてきた。
 取り巻きのご令嬢の二人は、手にしている扇子を今にも叩き折りそうな勢いでキレている。


「たかが伯爵の娘が生意気なのよ。前から気に入らなかったわ。たかがハーブくらいでファルマの女神って新聞で取り上げられていたし。大したことしてないのに周りが持ちあげてしまったせいで勘違いしちゃったのかしら?」
 エスカ様が眉をつり上げながら、私と同様に扇子で口元を覆って喉で笑う。


「由緒ある血筋を持つ私のお父様が、貧弱な田舎の商会と取引してあげているの。感謝して欲しいわ。お父様に言って、取引を今すぐやめてあげても良いのよ? たかがハーブをうちで買ってあげているのだから。貴女だって困るでしょう」
 たかがハーブ。さっきから連呼しているけど、自分の置かれている状況を本当にわかっていない。


「全く困りません。お客様は神様ではないので。うちの取引でファルマ内の大口の顧客は国です。個人でもグロム様ではありません。取引履歴などを拝見いたしましたが、うちと手を切って後悔するのはそちらですよ。たかがハーブと言いましたが、あなたは価値がわかっていない。他国ではハーブで税を納められるくらいに高価なんですよ。それから、公爵家が契約を破棄することも出来るが、うちからも契約を破棄できることをお忘れ無く」
 前回の襲来により、商会の従業員さん達からはグロム様との契約を打ち切りにして欲しいという話も出た。
 侮辱された相手とは対等に仕事はできないと。

 ただ、あの時はグロム様ではなくエスカ様が悪いので契約は続行することで話が纏まった。
 次、何かあった場合はグロム様に通告すると結論づけて。






しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。