追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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レイへの返事1

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――昨日、ライにちゃんと気持ちを伝えたから、今度はレイガルド様に返事をしないとなぁ。

 私は火にかけられている鍋をかき混ぜながら考えていた。
 鍋の中身は野菜スープで、昨夜戻る前にライが朝食用にと作ってくれたものだ。
 朝食の下ごしらえだけではなく保存食などもパパッと作って行ってくれたので、とても助かっている。
 あまりの手際の良さに、ライがフーザー様から「君くらいじゃない? 家事万能な国王」って言われていた。

「スープが温まりそうだから、後はパンとサラダだよね?」
 私の言葉に対して右肩に乗っているコルが「カァ!」と鳴く。

 サラダのドレッシングもライが作り置きしてくれているので、後は家庭菜園で育てている葉物野菜を収穫するだけなのでとても簡単。
 パンはトーストしてハーブバター塗ろうかなぁと思っていると、トントンとリズミカルに階段を降りてくる音が聞こえてくる。
 どうやらメディが起きてきたようだ。

「ごめんなさい、ティア。朝食……」
「大丈夫。朝食はもう少しで出来るよ-!」
 キッチンに入ってきたメディは目を大きく見開く。

「え、ティアが作ったのっ!?」
 メディと共に暮らして暫く経つけど今までで一番大きな声を聞いた気がする。
 きっとそれくらいに驚愕の出来事だったかもしれない。
 彼女の驚きも理解できる範囲。だって、私は自他認めるレベルで料理が出来ないのだから。

「ライが昨夜作ってくれたのを温めているんだ。サラダはまだ作ってないけれども、ドレッシングもライ自作のやつがあるわ」
「お兄様が作って下さったのね。お忙しいのに、私のお話を聞いて下さっただけではなく朝食まで……」
「うん。あまりの手際の良さにフーザー様も感心していたよ」
「お兄様、お料理上手だものね」
「あのさ、メディ。私、昨日ライに伝えたの。ライを選ぶって。だから、レイとは……」
メディは一瞬固まったかと思えば、安堵と不安が混じった複雑な表情を浮かべながら「そっか」と呟く。

「商会に行く前に、レイにもルナ様にもちゃんと伝えてくるよ。勿論、エタセルのことはこれまで通りちゃんと取り組むわ。ライが待ってくれるか不安だったけど、ライが良いって。ファルマに永住するのは数年後かもしれない」
「お兄様でしたら、ティアのことをきっと待っていてくれるわ」
「ライもそう言ってくれた。とにかく、エタセルのために頑張って国おこしを成功させないとね」
「私もティアの役に立つように頑張るわ。そのためにファルマから来たんだから」
「無理しないでね。体が大事だから」
「うん。ティアも」
「ありがとう」
 私達が微笑み合えば、コルが翼を羽ばたかせながら弾んだ声で鳴いた。










 ――ちょっと気が重い。


 メディとコルと共に朝食を済ませると、私は少し早めに家を出て城へとやって来ていた。
 コルは途中で友達のカラスと合流し、私の傍にはいない。

「緊張してきたわ……」
 レイの執務室やお兄様の執務室などが連なっている廊下を歩きながら、私はぽつりと呟く。
 この廊下は初めて通るわけではなく、数えきれないほど通っている。
 もう体に馴染んでいるはずなのに、初めて通る場所のように緊張してしまっていた。

 重い足取りで先に進んで行けば、執務室と書かれたプレートが掲げられている部屋の前へ。
 重厚な扉をノックすれば、「はい。どうぞ」と聞き慣れた声が届く。

「失礼します」
 私は扉を開けて中へと入れば、レイガルド様が執務机にて仕事をしているのが目に飛び込んでくる。
 彼は私の姿を見ると、穏やかに微笑んで「ティア」と優しく私の名を呼んだ。

「レイ。今、お時間よろしいですか? 話があるのですが……」
「構わないよ」
 私が発した硬質な声音から何か感じたのか、レイの表情が少し曇っている。

「レイに好きだと言って貰って色々考えました。それで、やっと答えが自分の中で出たので……好きだと言って下さってありがとうございます。私、レイのことは王として尊敬しています。でも、一緒に隣を歩いて人生を共にすることは出来ませんでした」
「ライナス様の方を選んだんだね」
「……はい」
 僅かに震えているレイガルド様の声音を聞き、自分で決めた事なのにいざ彼の反応を目にすると胸が痛む。
 答えは変わらない。でも、目の前で自分が傷つけていることを突きつけられている気がしたので動揺してしまっているのだ。

「申し訳ありません」
「謝らないでくれ」
「レイやエタセルのために縁の下の力持ちとしてサポートしていきますので、これからもよろしくお願いします。 まずは神殿裏の開発を成功させるために全力を注ぎますね。では、私は商会の仕事がありますので」
 私は深々と一礼をすると、「ティア」と名を呼ばれる。
 鼓動が高く跳ねる中、顔を上げれば「ありがとう」とレイに言われてしまう。

「エタセルのために、力を貸してくれてありがとう」
「いいえ。私がやりたくてやっているだけですから。それに、私だけの力ではありません。力を貸してくれている人達がいっぱいいます。みんな、レイのために動いているんですよ」
「俺の?」
「はい。初めてエタセルに来た時に、みんながレイのことを言っていました。みんなレイに感謝しているんです。なんの後ろ盾もないのに、エタセルのために王になってくれた。今まではレイ任せだった部分が大きかったけど、今は自分達でやれることを自分達でやろうという思いがあるのかもしれません」
 みんな、レイが犠牲になっていることを知っている。

 ずっと幼い頃からレイのことを見て来たから――

「そうか」
「だから、エタセルため、みんなのために頑張りましょうね!」
 私の言葉に対して、レイが瞳を滲ませると「あぁ」と頷き微笑んだ。





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