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レイへの返事2(コルタ視点)
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(コルタ視点)
レイの元に書類を届けるために廊下を歩ていると、前方からティアが歩いて来るのが窺えた。
いつも元気いっぱいという彼女だが、今日は表情が芳しくない。
ぼーっとしたまま、俺の隣を過ぎ去ろうとしたので「ティア」と名を呼べば、あいつは弾かれたように顔を上げた。
「あっ、コルタ……」
「珍しいな、ぼーっとして。なんかあったのか?」
「レイに返事をしてきたの。私、エタセルが落ち着いたらファルマに行くわ」
ティアの言葉に、一瞬言葉が詰まる。
どうやらティアはライナス様を選んだようだ。
「レイには?」
「さっき」
「そうか」
ティアの様子がおかしかったのは、そのせいだろう。
きっと、ティアの事だからレイを傷つけたと思っているのかもしれない。
「レイのことなら心配するな。俺がフォローしておくから。今すぐは無理だろうが、時間がきっと解決してくれるだろうし」
「時間……そうだよね……」
「あんまり、気に病むなよ。ティア、これから神殿裏の開発もあって忙しいんだろ?」
神殿裏はティアが主となっているため、ティアがいなければ始まらないのだ。
商会の仕事もしながらになってしまっているため、彼女には多くの負担とプレッシャーが重く圧し掛かっている。
ただでさえティア一人では大変なのに、レイのことまで背負う必要はない。
「ありがとう、コルタ」
「いや。レイのことはこっちに任せろ」
「うん」
ティアの表情が和らぎだしていく。
「私、商会に行かなきゃいけないから、またね」
「あぁ、またな」
ティアは手を振ると、前に向かって進んで行く。
エタセルはたった一人の少女によって、色々と変化を遂げ始めている。
長年根深い問題だったハーブ問題を解決し、商会の設立……今度は、神殿裏の開発。あの細い体でよくやって来たと思う。
「……レイ、落ち込んでいるよな。メディにはチャンス到来か?」
ティアがライナス様を選んでしまったことにより、俺の中に焦りや焦燥感がじわりと広がっていく。
レイだって、時間が経てばティアのことが薄れゆくだろう。
メディなら、ファルマとの強力なパイプになる。
メディの恋を応援していると言っていたのに、心の何処かで俺とメディが……という部分があったのかもしれない。
――今は自分のことよりもレイのことを考えよう。
俺は首を左右に振ると、足を踏み出してレイの元へと向かった。
レイの元に書類を届けるために廊下を歩ていると、前方からティアが歩いて来るのが窺えた。
いつも元気いっぱいという彼女だが、今日は表情が芳しくない。
ぼーっとしたまま、俺の隣を過ぎ去ろうとしたので「ティア」と名を呼べば、あいつは弾かれたように顔を上げた。
「あっ、コルタ……」
「珍しいな、ぼーっとして。なんかあったのか?」
「レイに返事をしてきたの。私、エタセルが落ち着いたらファルマに行くわ」
ティアの言葉に、一瞬言葉が詰まる。
どうやらティアはライナス様を選んだようだ。
「レイには?」
「さっき」
「そうか」
ティアの様子がおかしかったのは、そのせいだろう。
きっと、ティアの事だからレイを傷つけたと思っているのかもしれない。
「レイのことなら心配するな。俺がフォローしておくから。今すぐは無理だろうが、時間がきっと解決してくれるだろうし」
「時間……そうだよね……」
「あんまり、気に病むなよ。ティア、これから神殿裏の開発もあって忙しいんだろ?」
神殿裏はティアが主となっているため、ティアがいなければ始まらないのだ。
商会の仕事もしながらになってしまっているため、彼女には多くの負担とプレッシャーが重く圧し掛かっている。
ただでさえティア一人では大変なのに、レイのことまで背負う必要はない。
「ありがとう、コルタ」
「いや。レイのことはこっちに任せろ」
「うん」
ティアの表情が和らぎだしていく。
「私、商会に行かなきゃいけないから、またね」
「あぁ、またな」
ティアは手を振ると、前に向かって進んで行く。
エタセルはたった一人の少女によって、色々と変化を遂げ始めている。
長年根深い問題だったハーブ問題を解決し、商会の設立……今度は、神殿裏の開発。あの細い体でよくやって来たと思う。
「……レイ、落ち込んでいるよな。メディにはチャンス到来か?」
ティアがライナス様を選んでしまったことにより、俺の中に焦りや焦燥感がじわりと広がっていく。
レイだって、時間が経てばティアのことが薄れゆくだろう。
メディなら、ファルマとの強力なパイプになる。
メディの恋を応援していると言っていたのに、心の何処かで俺とメディが……という部分があったのかもしれない。
――今は自分のことよりもレイのことを考えよう。
俺は首を左右に振ると、足を踏み出してレイの元へと向かった。
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