王様のナミダ

白雨あめ

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王道転校生の意味

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「はぁ......。」

「っ。」

「はぁ......。」

「ぁ、」

「はぁ......。」


「っ、さっきからうるさいぞっ。なんなんだ一体! なにか文句があるなら直接言え!」

「......んあ? ......、どうしたの。」

「貴様がな!」


突然、机を叩き怒りだした冬至に驚きを隠せない。
え? 一体どうしたんだろう、俺なにかやったっけ。

「あークソッ! 俺は見回りに行ってくる!」

状況の変化に追い付けない俺にさらに苛立ったのか、ガチャン、と。
冬至の苛立ちの大きさを体現するように閉まった風紀室のドアに、ビクリと後ろの空気が震えたのがわかる。

いや、ほんとどうしたんだろう。冬至のやつ。変なものでも食べたのか。それに。

冬至のやつ、また後輩をビビらせて。

「はぁ......。」

俺は冬至とは小さい頃から一緒だし、学年も一緒。
だけど、他の風紀委員のメンバーはよくあんな怖い先輩についていけると思う。

生徒会とは違って、立候補か推薦で選ばれる風紀委員の長になるには、全校生徒の半分以上の賛成が必要不可欠。それをほぼすべての生徒に認めさせて委員長になったという事実は、冬至の人気を率直に表しているものであるけど。

ほんとに、もう少し丸くなれないのだろうか。冬至の綺麗好きは仕方ないとしても、これはもう少し改善してほしい問題だ。
今年の4月に入ってきた一年生は13人。それが今は、5人をきっているだなんて。

「んあー。」

そろそろ本気で人材確保の方法を考えなければいけない。でないと、俺たちは仕事の虫とかさなければいけばいくなる。

「あっ、......副委員長!」

「ん?」

背中からかけられた声に振りむき、顔をあげる。
椅子に座っているせいか、見上げないと顔がみえない。

「あ、あの。副委員長! こんなことを尋ねるのは失礼かもしれないんですが、な、なにか悩み事でもあるのですか!?」

「え?」

悩みごと。
突如、振られた言葉を頭のなかで繰り返す。

「副委員長、今日はここへ来てからため息ばかりで。それでたぶん、委員長も心配なさっていたんだと思います。」

「ため息......。」

そう言われてみれば、今日はやたらと気分がのらない。いつもなら一時間くらいで片付けられる書類もまだ半分も終わっていないし。
なぜか、手をつける気が起きないのだ。

「はぁ......。」

「ほら、また!」

「わっ!」

顔をぐいぐいと近づけて、前へでてくる彼にたまらず席をたつ。
この子、こんな強気の子だったっけ、と頭の隅で考えながら、驚いたようにこちらを見つめる他3人に目配せをした。

「し、慎吾! 落ち着けって! 先輩こまってんだろ!」

「うるせぇ。俺は先輩が心配なんだよー。」

「あー、わかってる。わかってる。お前、先輩大好きだもんな。」

「え、......それって」

「俺は先輩に憧れて風紀委員会にはいったんだー。」

あー、そうかそうか。
それなら、よかった。
一瞬久しぶりの告白かと。
ドキリとしてしまった俺を許して。変な汗がでてきそうだ。

「はなせよー。」

というか、あの子、なんだかさっきよりぐでんぐでんな感じになってきてないだろうか。友達に取り押さえられているが、なんだかだるそうだ。

「あーっ! 慎吾! お前、ワイン入ってるチョコレート食べたな!」

「なにぃ! 慎吾、お前バカ。それで酔ってんのか。」

ワインの入ったチョコレート。
その単語には思いきり心当たりが。

「あー、ごめん。それ、俺が買ってきたやつだ。」

「え!?」

「慎吾くんがそこまでお酒弱いって知らなくて。」

「いえいえ。知らなくて当然のことですから。知ってるのに食べたこいつがいけないんです。」

「なんだとー。」

そう叫んで、眠たげに身体を友人へと預ける彼に申し訳ない気持ちになる。昨日ちゃんと処分しとくんだった。
あまり美味しいとはいえない味に、もったいないからといって、捨てずに置いていたのがいけなかったのかもしれない。

「すいません、先輩。ちょっとこいつ部屋に寝かせてきてもいいですか。人員不足っていうのはわかっているんですけど。」

申し訳そうに、眉をさげる後輩に否定の言葉はでない。そもそもの原因は俺なのだし、ここでノーといのは鬼ぐらいのものだろう。
 
「みんなも疲れてるだろうし、今日はもう帰っていいよ。冬至もどっかいっちゃったし、いつ帰ってくるかわからないから。」

真面目な後輩たちは、この言葉にも渋い顔を隠さない。

「ほーら、ほーら。帰りなさい。みんな今日はご苦労さま。また明日よろしくね。」

「......はい。」

「お疲れさまです。」

しぶしぶ納得してくれたような彼らがドアを出ていくのを見送って椅子に腰かける。
チョコレートの散らばった机にそのまま近づいて集めたそれをポケットに押し込む。

やっぱり捨てるのはもったいから悠にでもあげよう。彼なら好き嫌いはなさそうだし。

そんなことを考えながら、無人になる部屋の電気を消す。冬至にはあとでメールでもいれておけばいいだろう。
俺もそろそろ昼寝が恋しくなってきた。


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