王様のナミダ

白雨あめ

文字の大きさ
14 / 57

彼の友人2

しおりを挟む


お怒りの愛先輩に戸惑って突っ立つことしかできない。

「......なんなんだよ、お前。」

顔を伏せて肩をわなわなと震わせる愛先輩の声は低く、たぶんすごく怒っているんだろう。どこにその要素があったのかを急いで考えるも、わからない。
単純に会長のお見舞いにきてしまったことにたいして怒っているんだろうか。


「まぁ、まぁ、愛ちゃん。別にいいじゃん。逆によかったじゃん。ね!」

いつの間に復活していたのか、先輩の肩に腕をまわしにやにやと笑う錦。

あいつ本当にすごいな。
俺はときどきあいつが勇者にみえることがある。

「あ? いいわけないだろが。ふざけんな!」

「まぁ、まぁ、愛ちゃん。」

「お前もだよ! いつもいつも気色わりぃ面しやがって!」

「え、ひどっ。そんなこと言われたのはじめてー。」

「ウソつけ!」

俺への怒りが錦に向いたのは幸運とした言いようがない。
俺の存在を忘れて口喧嘩を始める二人の光景はいつものことだ。

そんなに仲が悪いのなら一緒にいなければいいのにと思ってしまうけど、たぶん彼らはそれほどお互いを嫌っていないんだろう。錦の方は逆に愛先輩が好きなんじゃないかと思うこともあるくらいだし。

「カルシウムが足りてないですよー。愛ちん。」

「うっせぇよ! てめぇは脳みそが米つぶ並だろうが!」

「はぁ? 今のはちょっと聞き捨てならないなぁー。」

俺を置いて、徐々にエスカレートしていく二人にどうしたものか迷う。

このまま二人を置いて、自分の部屋へ帰ろうか。風紀の仕事の時間までまだあるけど、今日は会長にリンゴを渡せそうにない。
別に今日じゃなくたって、明日渡しにいけばいいだけだけの話であるし。

お互いを睨んでそれ以外目に入っていないような二人を確認して、音をたてず階段の方を向く。
シャカシャカと音を鳴らされてはたまらないので、袋全体を腕で押さえて1歩を踏み出した。すると、


「お前らなに騒いでんだ。さっきからうっせぇ............、ぞ。」


俺たちのせいで起きてしまったのか、妙なところで言葉を区切った会長が、目を真ん丸くして立っていた。

「......桜庭。」

「あ、うん。」

いつも鋭い眼が真ん丸になって俺をみた。目元もすこし赤い。
酷く驚いているような会長の姿に、どうしてか。
頬が緩くなりそうで仕方ない。思ったより元気そうでよかった。

「......理玖。」

愛せんぱいが会長を呼ぶ。会長は返事をせず、気だるげに閉まったドアに寄りかかった。

「あっ、会長! お元気そうでなにより!」

「ふざけんな、全然元気そうじゃねぇだろ。どこみてんだ錦てめコラ」

「へーい、へーい。すいませんー。」

言い合いをする2人は放っておいて、会長の様子を確認する。

「会長。」

どこか重そうな動作でこちらを向いた会長は、ずっと押さえていた頭から手を放し、これまた気だるげに、その手をポケットへ突っ込んだ。廊下の明かりに反射して光る前髪が発熱のせいか、やや赤みのある頬にかかった。

「なんだ。」

本当に体調が悪いんだろう、いつもより俯き気味で視線を落とす会長に、早くしなければと焦って言葉が飛び出した。

「あの、会長。会長、熱出したって聞いたから、お見舞いにリンゴかってきたんだけど。あの会長リンゴはすき?」

「......え?」

え?

伏せていた顔を思い切り上げ、信じられないとばかりの表情で俺を見てくる会長に、なんだかデジャブ。ほんとについさっきこんなやりとりを愛先輩としなかっただろうか。

今日の俺はいろんな人に驚かれてしまうらしい。

「は、りんご......。」

「うん、りんご。」

「......なんで。」

「えっと、会長......?」

普段からは想像もつかないような慌ってっぷりをみせはじめた会長に、自然と言葉がついてでる。
それをスルーした会長は、俺の顔から視線を外さないまま、一歩後ろへと下がった。なにかに怯えるみたいに。

それを視界に映して、自然と。
反射的に。

俺もまた、会長を追うように、一歩前へと足を踏み出していた。


途端。


「てめぇ!!」

「っぁ......!?」


耳に響く怒声と、後頭部の痛み。
たまらず頭を手でおさえ、犯人だろう彼の方へ反射的に振り向く。


「愛先輩、なに。」

「なにじゃねぇよ! 一体なにしようとしやがってんだ!」

「愛ちゃん、日本語変だよー。」

「うるせぇ! てめぇは黙ってろっ。」

「............。」

目をつり上げ、錦に罵声を飛ばす愛先輩に自然と口が曲がってしまう。

一体なんなんだ。
ていうか、なにしようとって、そんな何も、なにもない。
まだなにもしてないのに。そんなことを思いながら会長をみる。


右手で差し出したリンゴの、入った袋がカサカサ揺れる。
受け取ってくれる相手がいないのだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...