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王道転校生の意味2
しおりを挟む委員の子たちが、退散し、一息ついたところでもの凄い勢いで開かれるドア。
あの、そんな乱暴にしたら壊れちゃうよ。
「藤間委員長!」
入ってきたのは、黒を揺らす副会長だった。
彼が風紀室にくるなんて珍しいこともあるなあ。
「あれ、副会長。どうしたの。」
「どうしたの、じゃないですよ!」
つか、つか、つかと。
普段の冷静さをなくして凄い剣幕で近づいてくる副会長に自然と足が後ろを向く。
「藤間委員長はどこなんですか!」
「あー、今冬至は見回りにいってて。」
「見回りってどこに!」
「え、いやそれは。............わからないです。」
それは俺も知りたい。
「あー、もうっ。役にたちませんね。」
「ごめん。」
酷く苛立っているらしい副会長の言葉に反射的に謝罪が口をついてでる。
今にもドアを蹴りあげそうな副会長の足は小刻みにリズムを刻んでいて、恐ろしい。
「えーっと、なにか問題でもあった?」
ここまで感情を表に出している副会長をみるのは初めてで、一体どんな問題がおきたのだろうかと思考を巡らす。震える唇を手のひらでおさえた副会長に、こちらも身構えて言葉をまった。
「えぇ、ありましたとも。ありましたよ。」
「一体なにが、」
「太陽がいなくなったのです!」
「.............え。」
太陽がいなくなった?
「えーっと。それは俺を闇から救いだしてくれたあの太陽がー、太陽がなくなったら地球はどうなるんだー、的なやつなの。」
「なに言ってるんですか、あなた。」
「ごめん、ちょっとふざけた。」
「まぁ、いいです。この際あなたでも構いません。一緒に来てください。」
「一緒に、って。」
戸惑う俺を余所に、ガシリと腕を掴んできた副会長の力は本気も本気だ。
彼がこんなに力が強いとは知らなかった。
「先ほど言った太陽というのは、今日私が門へ向かえに行った転校生のことです。途中ではぐれてしまって。」
「あーっ! 転校生。そういえば今日くるんだっけ。」
副会長の言葉にそういえばと思い出す。名簿を見たのは一度だけですっかり脳内から消去されていた。
「えっと、それではぐれたって?」
いつも冷静で何事にも計画性をもって取り組むこの副会長が、この学園内で誰かとはぐれるなんて少し信じられない。
この時間帯人が多いところなんて限られているし、そこだってその転校生を見失うほどじゃないはずだ。
副会長の、この尋常じゃない焦り具合も気になるし。
「えぇ、そうなんです。私としたことが......失態です。」
自分の言葉に落ち込みながら、ドアを抜け廊下にでる副会長の後をついて歩く。
そろそろ腕を放してくれないかなと思うも、副会長のかつてない落ち込み具合に口を閉じる。
「太陽の、......あの子の自由奔放さを甘くみていまいた。まさかトイレにいくといって、そのまま中の窓から外へでるなんて思いもしなくて。」
「え?」
「私にありのままの自分でいいといってくれたんです。変なつくり笑顔はやめて、本当に笑いたい時だけ笑えばいいんだって。そういってくれたんですっ。」
「え、え?」
つくり笑顔?
あの、一般生徒にだけみせる穏やかすぎて逆に怖いつくり笑顔のこと?
生徒会の人たちは知らないけど、風紀ではもう開きなおっているのかと思ってた。俺たちの前では副会長ぜんぜん笑わないし。
それに、転校生もトイレの窓から外にでるなんて。
今日転校してきたばかりの生徒にはとても思えない。
「あの副会長? これってどこに向かってるの?」
早足で廊下を歩く副会長に今さらな疑問をぶつけ、周りを見回す。
渡り廊下を抜けたここはもう、普段授業に使われる一般練だ。
今の自分の状況に、心底今日が土曜日でよかったと思わざる得ない。
「あぁ、放送室ですよ。校内放送をかけようと思いまして。ですが、それには各組織の長か、副二人の承認がいります。あなたの肩書きには幸い副の文字がありますし、私は副会長です。これで、」
「あーっ!! みしきだー!!」
「太陽......!?」
突然、廊下に響き渡った大声に耳を塞ぎたくなる。
手を離せばいいものを、俺を引きずったままその生徒に近づいていく副会長は溢れんばかりの笑顔を咲かせている。
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