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王道転校生の意味3
しおりを挟む「あぁ......!! 太陽っ。無事でしたか。本当によかった。誰かに、なにか酷いことをされませんでしたか?」
「ん、なにが? 俺ぜんぜん元気だぜっ! それよか三色こそどうしたんだよ! なんかめっちゃ疲れてるじゃん!」
「えぇ、でも大丈夫です。あなたが見つかって本当によかった。」
そう言い、転校生を抱き締めようと腕をあげた副会長に右腕をふりふりし、すかさずアピール。はなしてくれー。
転校生も俺の存在に気づいたのか、手が離れると同時に分厚い眼鏡の向こうから強い視線を送ってくる。
「............。」
これは、挨拶したほうがいいんだろうか。
ついさっきの、副会長とこの子の会話を聞いていると、別に挨拶しなくていいんじゃないかという気持ちがわいてくる。
俺は騒がしい場所よりは静かな場所が好きだし、冬至まではいかなくとも、やっぱり汚いよりは綺麗なほうがいい。
今どき見ない分厚い瓶眼に、モジャモジャの黒髪はいいとして、大きい声に子供のような好奇心。
たぶん俺はこの子とは仲良くなれないだろう。
一目見てそんなことを思ったのは、この子が初めてだ。
「なぁなぁ! お前名前なんていうんだ? 俺は太陽!! お前は!?」
大抵、こういう感情を持つときは相手も同じだというけどこの子の場合は違うらしい。
むしろ好意をのせて言われた言葉に、勝手に拍子抜けしてしまう。
「あーえっと、俺は桜庭篠。風紀委員会の副委員長をしています。よろしく。」
「風紀!? えぇー! しのは凄いんだな! 三色も副会長だもんな!!」
「え、あ......、えぇ、まぁ。」
珍しく歯切れの悪い副会長に、後ろを振り返る転校生。
そういえばこの子、小柄だな。
そんなことを思いながら、つられ、視線をあげると、なぜか副会長がもの凄い形相でこちらを睨んでいる。
なぜだ。
「副会ちょ」
「太陽、そういえばまだ寮への案内がまだでしたね。今からいきましょう。荷物はもう運び込んでありますから。」
「あっ、そうだったな!」
未知のことに目を輝かせる転校生に、笑顔で手を差し出す副会長。
確実に俺が話すのを見計らっての言葉に、表情がかたくなってしまったのは仕方ないことだと思う。
明らかな悪意のこもった行動に、脳が追い付かないというのもあるけれど。
「あ、じゃあな。しのっ! また遊ぼうな!!」
副会長に手を引かれ、叫ぶ転校生に罪はない。
できるだけ、表情筋を緩めることに努め、こちらを見続ける転校生に手を振った。
すると、何かを察知でもしたのか、驚くべき早さで振り返った副会長の目付きの酷く鋭いこと。
え、なんなの。
心のなかで一人そうごちて、二人から目をそらすように背中をむける。
ポケットから風紀委員長と副委員長しかもっていない鍵をとりだそうとして、指先にあたった微妙な触感についさっきのことを思い出す。
「チョコあったんだっけ。」
俺には少し苦いそれは、副会長にはちょうどよかったかもしれない。
副会長が甘党とは聞いたことがないし、いつも会議のときに飲んでいるのは砂糖とシロップなしのブラックコーヒー。
「ぁ。」
そういえば会長はいつもなにを飲んでいたっけ、と考えて頭をよぎるのは昨日の出来事だ。
無理矢理頭から追い出して、いつも会議中なにも飲んでいなかったことを思い出す。
だからつい最近まで会長が猫舌と気づかなかったのかもしれない。
副会長は知っているんだろうか。いや、知っているだろう。同じ生徒会の役員なのだし。
自分の思考が徐々に徐々に変な方向へ進んでいるのを自覚しながら、鍵のかかってないだろう風紀室までの道のりを急いだ。
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