王様のナミダ

白雨あめ

文字の大きさ
18 / 57

王道展開というやつ

しおりを挟む

転校生との予期しなかった出会いの夜。




「悠スペシャルアタックー!!」

「ぐはっ!?」


微睡む意識のなか、突然の痛みに変な声がでる。

......いや、声どころのさわぎじゃない。
なにか別の、ヤバイものも出てきそうだ。ベッドから起き上がりお腹をおさえる。

「あれ? 桜庭くん起きないなー。今のは結構自信あったのに。」

そんな俺の状況をよそに、うずくまっている俺の前で小躍りしている悠を一発殴りたい。このバカにはそろそろ躾が必要だろう。

毎度毎度、悠の気分でこんな起こされ方をしている俺にはその権利があるはずだ。

「ちょっと、悠。」

「あっ、起きたー! やっほー。桜庭くん。」

「やっほー、じゃないよ。そこどいてくれる? で、そこに正座してもらっていいですか?」

「え、なに。桜庭くん、......なんか怖い。目、血走ってるよ。」

誰のせいだよ。


「うえーん。ごめんなさーい。もうしないから許してー。」

本気で謝る気があるのかないのかわからない謝罪を口にする悠に、自然とため息が漏れる。
ピーマン責めがそんなに効いたのか、若干目を潤ませて土下座をする姿は、この学園の生徒会役員にはとても思えない。

「はあぁ。なんか可哀想になってきたから許してあげる。でも今度このダサい技仕掛けてきたら、悠が寝てる間に悠のキングベッド、ピーマンでいっぱいにするから。」

「うん、うんっ。 絶対しない! もうしない! 神に誓って!」

「あー、そう。」

本気で言っているような悠に、一先ず信じてみることにする。もしこれを破られたって、いった通り悠の部屋をピーマンだらけにすればいいだけの話だし。

「それで?」

「え?」

「何しにきたの。......まさか、ただ俺にタックルかましにきただけとか言わないよね。」

「えぇ! 言いませんともっ。言いませんとも!」

俺の持ってるピーマンを鼻をおさえてひったくり、袋へ戻し冷蔵庫へ。
綺麗に手を洗ってからかえってきた悠は、首が取れるんじゃないかというぐらいに首を上下に振って目を光らせた。

あー、これはヤバい予感がする。
だが、時すでに遅し。
あっ、と思った瞬間には、もう悠の腐男子スイッチは押されていたようだ。

「桜庭くんも知ってるよね! お、おととい、この学園に転校生がきたことっ! 僕さ、楽しみのあまり門の前で転校生がくるのを待ってたんだ! そしたらなんとっ。............王道転校生きたーっ!! あれこそまさに王道だよっ。まぁちょっとうるさくて、汚い感は否めないけどそれはさしたる問題じゃない! うちの副会長のつくり笑顔を指摘して、もっと正直に生きろとアドバイス! そんなこと言われたことがなかった副会長は転校生に恋愛感情をもち、そこで感情にまかせてキスを」

「え!?」

「ん? どしたの。」

いや、どしたのじゃない。
ちょっと、待って。

それって、え。

「副会長は転校生のことが好きってこと?」

いきなりの悠の発言にびっくり。

副会長が転校生に恋しているなんて。

それは悠のなかの王道というやつだけの話じゃないのかと思っていたけれど、それは違ったみたいだ。

「え? そりゃあそうだよ。あの副会長が転校生にはまんべんの笑みを浮かべてるんだよ? それもほんとのやつ。こんなの、僕がもし仮にっ。もし仮にだけど男同士のアレコレに萌えないただの野郎だったとしても気づくって。」

「あー、そう。」

えー、そうなの。
俺って鈍いの。初めて知ったんだけど。

あっ、そうか。
だからあの日俺は副会長に睨まれてたんだ。

俺はたぶん副会長に嫉妬されたんだ。

「あー、なるほどね。」

「桜庭くん? どうしたの?」

「あー、うん。こっちのはなし。」

一昨日の謎が解けてすっきりした俺は、首を傾げてこちらを見る悠に話していいよ、と合図。
普段、こんなことを俺から言い出したことがなせいか、悠は心なしか驚いているように見えた。

「あ、えっとね。あー、そうだ。副会長なんだけどね、昨日は日曜日なのも利用してずっと転校生のへやに入り浸ってたらしいんだよ! 土曜日もなかったから昨日あると思ってずっと廊下で待機してたのに、全く出てこないし。流石に今日はあるかと思ってお昼よりちょっと早めに、............あ!?」

「悠?」

突如、部屋にある時計をみて固まった悠に近づき肩に触れる。
顔をこちらへ向かせ、もう一度名前を呼べば次は酷く焦ったような声が悠からとびだした。

「わっ、わっ! ヤバイ、ヤバイ!」

「え、ちょ、悠?」

「桜庭くんっ! 早くこれに着替えて! 顔洗って歯磨いて! 食堂いくよ!」

「食堂? いまから?」

「そう、食堂! いまから行くの! だから早く!」


そう言い、制服を押し付けてくる悠に押される形でTシャツを脱ぎ捨てる。
今年最高の早さで歯みがきと洗顔をすませ、外でそわそわしている悠の後をおった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

処理中です...