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王道展開というやつ
しおりを挟む転校生との予期しなかった出会いの夜。
「悠スペシャルアタックー!!」
「ぐはっ!?」
微睡む意識のなか、突然の痛みに変な声がでる。
......いや、声どころのさわぎじゃない。
なにか別の、ヤバイものも出てきそうだ。ベッドから起き上がりお腹をおさえる。
「あれ? 桜庭くん起きないなー。今のは結構自信あったのに。」
そんな俺の状況をよそに、うずくまっている俺の前で小躍りしている悠を一発殴りたい。このバカにはそろそろ躾が必要だろう。
毎度毎度、悠の気分でこんな起こされ方をしている俺にはその権利があるはずだ。
「ちょっと、悠。」
「あっ、起きたー! やっほー。桜庭くん。」
「やっほー、じゃないよ。そこどいてくれる? で、そこに正座してもらっていいですか?」
「え、なに。桜庭くん、......なんか怖い。目、血走ってるよ。」
誰のせいだよ。
「うえーん。ごめんなさーい。もうしないから許してー。」
本気で謝る気があるのかないのかわからない謝罪を口にする悠に、自然とため息が漏れる。
ピーマン責めがそんなに効いたのか、若干目を潤ませて土下座をする姿は、この学園の生徒会役員にはとても思えない。
「はあぁ。なんか可哀想になってきたから許してあげる。でも今度このダサい技仕掛けてきたら、悠が寝てる間に悠のキングベッド、ピーマンでいっぱいにするから。」
「うん、うんっ。 絶対しない! もうしない! 神に誓って!」
「あー、そう。」
本気で言っているような悠に、一先ず信じてみることにする。もしこれを破られたって、いった通り悠の部屋をピーマンだらけにすればいいだけの話だし。
「それで?」
「え?」
「何しにきたの。......まさか、ただ俺にタックルかましにきただけとか言わないよね。」
「えぇ! 言いませんともっ。言いませんとも!」
俺の持ってるピーマンを鼻をおさえてひったくり、袋へ戻し冷蔵庫へ。
綺麗に手を洗ってからかえってきた悠は、首が取れるんじゃないかというぐらいに首を上下に振って目を光らせた。
あー、これはヤバい予感がする。
だが、時すでに遅し。
あっ、と思った瞬間には、もう悠の腐男子スイッチは押されていたようだ。
「桜庭くんも知ってるよね! お、おととい、この学園に転校生がきたことっ! 僕さ、楽しみのあまり門の前で転校生がくるのを待ってたんだ! そしたらなんとっ。............王道転校生きたーっ!! あれこそまさに王道だよっ。まぁちょっとうるさくて、汚い感は否めないけどそれはさしたる問題じゃない! うちの副会長のつくり笑顔を指摘して、もっと正直に生きろとアドバイス! そんなこと言われたことがなかった副会長は転校生に恋愛感情をもち、そこで感情にまかせてキスを」
「え!?」
「ん? どしたの。」
いや、どしたのじゃない。
ちょっと、待って。
それって、え。
「副会長は転校生のことが好きってこと?」
いきなりの悠の発言にびっくり。
副会長が転校生に恋しているなんて。
それは悠のなかの王道というやつだけの話じゃないのかと思っていたけれど、それは違ったみたいだ。
「え? そりゃあそうだよ。あの副会長が転校生にはまんべんの笑みを浮かべてるんだよ? それもほんとのやつ。こんなの、僕がもし仮にっ。もし仮にだけど男同士のアレコレに萌えないただの野郎だったとしても気づくって。」
「あー、そう。」
えー、そうなの。
俺って鈍いの。初めて知ったんだけど。
あっ、そうか。
だからあの日俺は副会長に睨まれてたんだ。
俺はたぶん副会長に嫉妬されたんだ。
「あー、なるほどね。」
「桜庭くん? どうしたの?」
「あー、うん。こっちのはなし。」
一昨日の謎が解けてすっきりした俺は、首を傾げてこちらを見る悠に話していいよ、と合図。
普段、こんなことを俺から言い出したことがなせいか、悠は心なしか驚いているように見えた。
「あ、えっとね。あー、そうだ。副会長なんだけどね、昨日は日曜日なのも利用してずっと転校生のへやに入り浸ってたらしいんだよ! 土曜日もなかったから昨日あると思ってずっと廊下で待機してたのに、全く出てこないし。流石に今日はあるかと思ってお昼よりちょっと早めに、............あ!?」
「悠?」
突如、部屋にある時計をみて固まった悠に近づき肩に触れる。
顔をこちらへ向かせ、もう一度名前を呼べば次は酷く焦ったような声が悠からとびだした。
「わっ、わっ! ヤバイ、ヤバイ!」
「え、ちょ、悠?」
「桜庭くんっ! 早くこれに着替えて! 顔洗って歯磨いて! 食堂いくよ!」
「食堂? いまから?」
「そう、食堂! いまから行くの! だから早く!」
そう言い、制服を押し付けてくる悠に押される形でTシャツを脱ぎ捨てる。
今年最高の早さで歯みがきと洗顔をすませ、外でそわそわしている悠の後をおった。
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