王様のナミダ

白雨あめ

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王道展開というやつ2

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何を聞いても答えてくれない悠に連れられてやってきたのは、一般楝と時別楝の間にある食堂。
いつもなにかとざわざわしている空間だけど今日の雰囲気は、どこかいつもと違ってみえる。


「ね、悠。あれ、」

その一角に一際異様な空間をみつけ、悠の袖を引っ張る。
あれは一体どうなっているんだろう。

一般の生徒が食事をする時に使う1階席の真ん中あたりに、この食堂にいるであろうほぼ全員が集まっているのだ。
遠目からでは分からないけれど、あれはかなりの人数だろう。

ここまでの人が集まる何かがあそこにある。
めんどくさいけれど、これは風紀委員として仕事をしなければいけないかもしれない。

「ちょっとごめんねー。」

そう、前に立つ生徒に声をかけつつ、この出来事の原因だろう場所へと急ぐ。

「あっ、桜庭様。」

「書記様も......。」

「どうして、一緒に?」

首をかしげながらも、素直にのいてくれる生徒たちにお礼を言って、後ろで無言になった悠を振り返る。
いつもニヤニヤと頬を崩している悠も、生徒会書記になればその表情は無表情そのものだ。


「悠、なんで悠は急に食堂にきたの? あそこと関係ある?」


周りに聞こえないように悠の耳に顔を寄せ、たずねる。
それにまた目を輝かせた悠は、自分の感情を押し殺すような声で小さく呟いた。

「......これは食堂イベントだよ。あの副会長が気に入ったっていう転校生のことを生徒会が見に来るんだ。あー、もうしくじったっ。僕としたことがっ! なんで生徒会書記が副委員長といるんだよ!」

それは俺が悪いの?
反射的に悠を睨んでしまったのは仕方がないと思う。


「それで?」

大変興奮しているらしい悠に話の先を促す。

「え、あ、あぁ。えっと......それで、転校生の反抗的な態度を気に入った会長が、面白いと言って転校生にキスするんだけど......ぁ」

突然悠が一点をみて固まった。その途端に、


「きゃーー!」

耳をつんざく甲高い悲鳴が鳴り響き、たまらず耳を塞ぐ。
いっきに煩くなった周りに目を向けると、みな一様に興奮した様子だ。

いったいなにが。

悠の視線を追って振り返った場所で、



「会長......。」

前のめりになり、転校生の胸倉をつかむ会長とつま先立ちになり、会長を見上げる転校生の姿。そして、


「か、かっ、かいちょうと、てんこうせいがキスをっ! キスをっ!」

「いやぁー!? なんであんな黒もじゃが!」


ムンクの叫びのようになる生徒たち。
俺もいま同じ気持ちだよ!
信じられない気持ちで目の前の光景をみる。

会長と転校生がキスをしていた!
これはただの驚愕なのか、はたまた別のなにかなのか考える余裕はない。

眼前で会長と転校生の唇が離れていく。やけにスローモーションに。

「かいちょう。」

あっ、と。
目の前の光景に思わず言葉が飛び出す。
この距離で聞こえているとは思えない。
だが、しかし。会長はこちらを、俺をみてくれたのだ。


「さく、らば」

俺の小さな声を拾ってくれた会長とばっちり目が合ってしまう。名前を呼ばれた気がしないでもないが、今そんなことを確認していられる心境ではなかった。


ーーー会長が転校生とキスをした。


その事実が頭のなかをぐるぐるとまわる。


「あ、あ、あなたっ! 太陽になんてことをしているんですかっ!」

「......別に。そいつが」

「別にとはなんです、別にとはっ! き、き、キスをするなんて!」

「そ、そうだぞ! 俺はお前にキスしてくれなんて言ってないぞ! ま、まぁ仕方ないから許してやるけどな! 友達だし!!」

「太陽!?」

生徒の目も気にせず、わーわーとうるさいくらいに騒いでいる転校生と生徒会。そのなかに、いつの間にか悠が加わっていることに気づく。
いつの間に移動したんだと思う暇もなく、次に目につくのはハニーブラウンの髪をかきあげ、転校生の頭をわしづかみにする会計。

「ちょっと! あなた何をしているんですか!」

「えー、いいじゃーん。副会長が気に入ったこの子の顔みたいんだってぇ。さぞ可愛いんでしょぉ? ね、悠?」

「......あぁ。」

「はあ!? お前たちなに言ってんだよ!!」

目の前で起こっていることは正確に理解できるのに、なぜか彼らの声が遠い。
少し離れた場所で、俺の知らないなにかを見ている会長も。



「ーーーおい。お前たちは一体食堂で何を騒いでいるんだ。」


対して大きくもなく、怒鳴ったわけでもない。

だけど不思議と通るその声に、食堂にいる誰もが動きをとめて口をつぐんだ。

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