王様のナミダ

白雨あめ

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王道展開というやつ3

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冬至だ、と認識した瞬間、なぜか安心した。


「冬至。」

「あぁ、桜庭か。お前がいながらなんなんだこの状況は。」

若干息をきらして問いかけてくる冬至に、なんと答えるべきか迷う。
ついさっき見た、ありままの光景をそのまま伝えた方がいいのだろうか。

だけど、俺も詳しくは把握できていない。あの瞬間の一瞬の出来事しか、俺は見ていないのだから。
うまく説明できずうなだれる俺に冬至はため息をはきだした。

「まぁ、いい。お前の話はあとで聞く。......おい、お前ら。これ以上ここで迷惑行為を働くつもりなら一緒に風紀室へきてもらうぞ。生徒会役員もだ。」

「え、やだ。ありえない。俺帰る。悠も一緒に帰ろぉー。」

「.....あぁ。」

「なぜ私たちが追い出されなければいけないんですか! だいたい会長が!」

「あっ! しのだーっ!!」

副会長の声を遮った主。
それがこちらに駆けてくるのが見える。

あー、もう惜しかったのに。最後の最後で見つかってしまったようである。
全速力でかけてくる転校生の背後には、やはり凄い形相をした副会長がみえた。こわいんだよなー。

「おー、しの久しぶり!」

「うん、久しぶり。」

突進してきた転校生にむけて返事をした俺に、冬至の渋い顔が向けられる。

「こいつと知り合いか?」

「うーん、知り合いではあるね。」 

冬至の質問に曖昧な返事をしたとき、転校生の厚メガネが冬至を捉えた。

「ん? 誰だお前? なんかかっこいいな!」

「あ?」

冬至に向けてのいきなりのタメ語に驚く。この子、勇気あるな。
それにカッコいいって。

「なにを言っているんですか、太陽。こんなのより私の方がいいにきまっています。」

「え、いや、三色も綺麗だぞ! でもカッコいいのとは違うんだ! カッコいいっていうのは理巧みたいな......。」

そう言って、唇を撫でる転校生の頬は赤いような気がしないでもない。長すぎる前髪のせいでほとんど表情がみえないのだ。


「おい、お前ら帰るぞ。めんどくせぇのはごめんだ。」

いつの間にこちらへ来ていたのか、そう溢し、転校生の脇を通りすぎようとした会長に冬至の眉間のしわがよる。

「あぁ、そうだ。そうだ。さっさと帰るんだな。そしてできれば貴様はもうでてくるな。」

「ああ?」

「あ?」


一触即発のむーど。

一体なんのためにここへきたのか忘れているような冬至に近づき肩に触れる。

「冬至、さきに生徒たちを教室に帰さないと。もう授業が始まっちゃうよ」

「......あぁ、分かってる。」


ふーっと息を吐き出し落ち着いたような冬至に一安心。

会長はどうだろうかと後ろを振り返ろうとして、頭をよぎるのはさっきの出来事。なぜこんなに動揺しているのか自分でもわからない。ただ、見たくなかった。
あんな光景。


「桜庭?......おい、どうした。」

「え、あ、......ごめん。」

顔をあげれば冬至の顔が目の前に。
いまだわーわー、とうるさい転校生と生徒会役員と共に食堂をでていく会長。無意識に目でおってしまう。

「おい、お前体調でもわるいのか? ぼーっとして。」

俺を心配しているような冬至に適当な返事を返して、動くようになった身体ですぐ傍の椅子に座った。


「はぁ......。」

「おい!?」

「あー、なんでもないから大丈夫。」

へらり、と笑ってみせ、気にせず自分の仕事をしろと視線を送る。


「お前もさっさとこいよ。」

「うん。」


颯爽と去っていく後ろ姿をみて、身体の力をぬく。
取り合えず、このいろいろとぐちゃぐちゃな頭と心を整理したい。

冬至には悪いけど、今日はもう部屋に戻ろう。
冬至にはまた今度怒られるとして、今はバレないようにそっーと。


そう考えて、立ち上がり、3秒後。
さっきとは違う、こちらに突進してくる人影を発見。あれは………、


「さくら、ふぁ......!?」

「先輩、しーしー! 静かにしてっ。」

まだたくさんいる観衆のなかから出てきた愛先輩の口を急いでふさぐ。
もう今のでばれてしまったかもしれないが、こんな時は逃げるが勝ちだ。

先輩が小柄で本当によかった。

「愛先輩、静かにしててくださいよ。」

「んー!」

文句ありげな表情をつくる先輩の唸り声を肯定と受け止めて、腕にだき食堂をでる。

先輩軽いなーと新発見に驚きながら、少し離れた廊下の陰に先輩をおろした。

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