王様のナミダ

白雨あめ

文字の大きさ
37 / 57

心の行方

しおりを挟む

右手にあたる金属の感触を確かめながら、窓の向こう。目の高さにある、木々を眺める。

左手で少しこっぽりした気がしないでもないお腹に手をあてて、改めて思う。

「.............。」


.....お腹へった。

ついさっきパスタを食べたばかりなのに、なぜだ。
あんまり記憶はないけど、いっぱいに盛られたパスタが、そのまま冬至の手によって下げられたのは夢ではなかったということか。

ぼーっとしてるんじゃなかった。

ちゃんと食べておけばよかった。

後悔、先に立たずというやつだ。

「桜庭。」

部屋へ着いたのか、急に止まった背中にぶつからないよう足を踏ん張る。
こちらに差し出される手に、ポケットにある鍵を取り出した。

ガチャリと錠の解ける音に、足音。
ドアを奥へ押しやり、その後へ続く。

他の委員たちは見回り中でいないため、俺と冬至の二人きり。

だけど、昨日のこともあって、自分から話しかける気にはなれない。
冬至が悪いわけじゃない。
冬至は風紀委員長として正しい対応をしたのかもしれない。

そう分かってはいても、どうしてあんなことを言ったんだ、とか。
お前のせいだ、とか。

嫌な言葉が飛びだしそうで、迂闊に口を開けない。おかげで昨日からずっと口を塞いでいる。

「あ、桜庭っ!」

「ぇ、」

そんなことをぼーっと考えていると、突然、慌てたように声をあげた冬至に、閉めかけていたドアのぶから手を離す。
少しできた隙間から視線を逸らして、委員長席についた冬至を見やった。

「なに、どうしたの。」

「え、あ、いや......。」

机に散らばる書類を触りながら、視線をあちこち迷わせる冬至は、なんだからしくない。
何か言いたそうに時々こちら見てくる表情は、生徒たちから恐れられている風紀委員長とは思えないほど頼りなくて。

「冬至?」

おもわず足を動かした。

「冬至、どうしたの。」

「桜庭。」

「ぇ......。あ、あぁ、はい。」

突然顔を上げて、何かを決意したようにこちらを見てくる冬至にこちらも視線を合わせる。

なにを言われるんだろう。

そう思って、なぜか緊張する。




「桜庭、......お前。」





冬至はその手に書類をもって、



「ここ。判子が押せてないぞ。」


判子がおせてない............、え?。


は?


「はんこ......?」

「あぁ、ここだ。半分掠れてるだろ。」

そう言って見せられるのは、今日の朝見たような見ていないようなよく分からない1枚の紙。
ただ一つ分かるのは、判子の押し方がまずかったのか、その半分が掠れているということだけ。

「あー、それはごめん。朝の記憶あんまりなくて。」

「あぁ。まぁそれはいい。後で余分に刷ったやつを持ってくる。」

「え? あ、ありがとう。」


一瞬聞き間違いかと思い、反応が遅れる。冬至がこんなことを言うとは予想外だ。

てっきりいつもみたいに、あの凶悪としか言い様がないあの顔で睨まれるかと思ったのに。

なんでだ。なんだか冬至が優しいんだけど。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

幼馴染が「お願い」って言うから

尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。 「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」 里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。 ★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2) ☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。 ☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

処理中です...