王様のナミダ

白雨あめ

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その扉の先は5

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「やー、これで一件落着ですな。」

「うん、そうだねぇー。今ごろ転校生の叔父さんも、理事長代理の椅子から下ろされてることだろうしぃ。」

副会長が出ていった扉の前で、うんうん頷き合う二人になんとも言えない気持ちになりながら、考えるのは彼のこと。
もし、会長が俺じゃなくて彼を本当に好きだったなら、彼のように呆然となっていたのは俺だった。

生徒会室の扉の向こう。

小さな声で会長の名前を呼んだのはきっとーー、



「あ、桜庭くん。会長。俺たち用があるんで、失礼しますね。」

「ん、............ぇ?」

そう言い、生徒会を出ていく悠たちをぼーっと見送る。
あれ、ということは。


今、俺は生徒会で、


「桜庭......。」


会長と二人きり。


「......会長。」


気を抜けば、すぐにでも茹でたこみたいになりそうな頬に手をやり、会長をみる。

それは自惚れでもなんでもなくて。
会長も、俺のように顔か耳を赤くしてこちらを見ていると思っていたのに。


......あれ。


すぐ傍にいる会長は、手を伸ばせば簡単に触れられる距離にいる。それなのに、今彼の纏う雰囲気と、それに似合う表情で手を出すことも戸惑われる。

「会長、どうしたの?」

じっ、と目を合わせてこちらを睨んでくる会長に、恐る恐る問いかける。

ぎゅっ、と強く結ばれた唇は、小さく震えているようにも見える。

「お前、......さっきなに考えてた。」

「ぇ、さっき?」

「......犬飼たちが出ていく前。なんか考えてたろ。」

「あ、あぁ、うん。それは、」


それは、太陽くんのことだ。

太陽くんが会長のことを好きだと言った時、会長が、自分が好きなのはこいつだ、と。
そう言ってくれた時のことだ。

「ん、別に大したことじゃないよ。ちょっと太陽くんのこと考えてただけ。」

「あいつの......?」

「うん。あ、そうだ会長。俺が言うのもおかしいけどさ、太陽くんに会いにいってあげてよ。太陽くんきっとまだ会長のことが、」


好きだよ。




そう、一言。一言いうだけなのに。



「っ、.......。」



視線が、感情が。目の前の男から離れない。


その目に、すべてを。俺のすべてを覗かれているような気がして。


「桜庭。」

「な、なにっ。」


名前を呼ばれているのに、呼ばれていないような。変な感覚に声が上擦る。


「お前、ほんとに俺があいつのとこに行ってもいいのか?」

「え、」

「俺のことを好きなあいつんとこに、俺が行っていいのかって聞いてんだ。」

「ぇ、あ、」


はじめて聞く、こちらを突き放すような声に言葉がでない。



太陽くんに、会長が会いにいく。

それぐらいのこと、全然へいきだ。

会長は、俺のことを好きになってくれて。だけど、太陽くんの傍に会長はいなくて。重なる部分が多いから。

偉そうな同情だと分かってるけど、俺は。



「......いいよ。むしろ」


ーー行ってほしい。



その言葉は、重なった会長の唇に邪魔された。


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