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崩壊の始まり
02_幼馴染と別れた翌朝
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■葛西(かさい)ユージの視点
彼女から今までの関係まで否定された僕は、彼女と顔を合わせること自体が恥ずかしかった。
いつもは、毎朝、彼女を迎えに行くのだが、今日からはやめることにした。
ここでも彼女に依存していたと気づいた。
いつも朝7時30分に彼女の家に行くと、ウルハのお母さんと挨拶を交わすのが日課になっていた。
その後、お父さんが出るのは7時45分、妹の詩織ちゃんが出ていくのが7時50分ごろ。
それぞれ玄関で顔を合わせ、ちょっとした挨拶を交わす。
8時くらいにウルハが出てくる感じだった。
今朝は、教室にはいつもより30~40分早く着いてしまった。
いつもは、ウルハのクラスに行き、送り届けてから自分のクラスに来る。
彼女のクラスは1組、僕は6組なので教室はかなり離れている。
しかも、今朝はウルハを待たなかったので、そもそもスタートが30分早い。
いくら何でも早すぎるので、明日からは家を出る時間から見直そう。
全ての依存が、こうして生活の一つ一つに現れていた。
僕の悪いところだ。
直していかないと。
「おーっす!」
「おはよ」
クラスメイトとのいつもの挨拶。
落合と高田だ。
「あれ?ユージ、いつもより早くない?」
「ああ、今日は直接来た」
「なんだ、そっか。どうした?なんか顔暗いな」
「それが・・・」
SHR前に久々にクラスメイトと話をした。
ウルハにフラれたことを知らせると、クラスメイトにめちゃくちゃ心配された。
話の内容は周囲の人の耳にも入ってしまい、教室がちょっとしたパニックになった。
現在進行形の黒歴史なんだから、恥ずかしいから、そっとしておいてくれよ。
「葛西くん、会長と別れちゃったの!?」
席が近い小田島さんに声をかけられた。
言葉にすると自分が認めてしまうことになりそうでできなかった。
目を見て、うん、うん、うん、と小さく頷く事しかできなかった。
「大丈夫?」
周囲の友達の目から、心配してくれていることが窺える。
ただ、これも自分の勘違いと言うことは・・・
「今日、お昼はみんなでお弁当食べようね」
「お、小田島さんが一緒なら、おーれもっ!」
落合が調子よく乗っかった。
「あ、おれも!」
高田もここぞとばかりに乗っかった。
「僕、ついでかよ」
「「「ははははは」」」
みんなに心配をかけたくないので、何となく合わせて笑ってみたけど、心の中にぽっかり穴が開いている感じ。
基準を失うというのはこんな状態なのだ。
何が正しくて、何が間違いだったのか、一つ一つ確認していく必要があった・・・
■中野ウルハの視点
ユージに絶縁宣言をした翌日、彼は朝迎えに来なかった。
そういえば、そうか。
こちらから絶縁宣言をしたのだから、これが正しい。
ただ、小、中、高校と一緒に登下校していたので、それなりに違和感はあった。
同時に感じたのは、『新しさ』。
まだ誰も踏んでいない雪の草原に足跡をつけて行くような心の躍動を感じた。
今までは、ユージの面倒を見ていることもあって、色々と手を取られていたのだろう。
開放感の前に、まだ違和感が強くて心からは楽しめなかったけど。
「ウルハ、ユージくんまだ来ないけど、大丈夫?病気じゃない?」
「あ、うん」
朝の支度をする母親から聞かれた。
わざわざ親に言うほどではないが、今度ユージとは別れたことを伝えればいいや。
「ウルハ、今朝はユージくん来てないぞ?俺、時間間違えたかと思ったわ」
パパだ。
パパにもいつか伝えないと・・・
「あれ?お姉ちゃん、お兄ちゃん来てないよ?もしかしてフラれちゃったんじゃないの~?」
「うるさいなぁ」
詩織にも伝えないといけないのか・・・
詩織は私の妹で、中3。
小さい時ならいざしらず、中3にもなって隣の家の男の人を『お兄ちゃん』と呼ぶのには、別の意味が含まれているような気もする。
めんどくさいなぁ。
しっくりこない違和感を抱えつつも、ひとりで登校して、教室に着いた。
「はよー!」
「おはよう」
「はよー」
教室では、いつものように由香里(ゆかり)と庸子(ようこ)に挨拶した。
「あれ?今日、旦那のお見送りは?」
旦那とは、ユージのこと。
由香里はいつもユージのことを『旦那』と呼んで、私を揶揄っている。
「毎日毎日ウザいから来ないようにしてやったわっ」
「えー?なんか仲睦まじくて、『ザ・幸せ』って感じで私の憧れなのにぃ」
由香里は両手でハートマークを作りながら言った。
「え?ユージのこと?」
「あ、ユージくんじゃなくて、ふたりが。ふたりが、ね。」
「由香里、あんた危ない会話してるわねぇ。朝からウルハが嫉妬で大暴れするところよ!」
「い、いいわよ。あんなやつ。こっちからフッてやったから。」
「おやおやぁ?ケンカですかなぁ?夫婦ケンカは・・・ってねー」
「やめてよぉ、本気なんだから!」
「あ~、ハイハイ」
「私は三ツ山先輩と付き合うの!」
一瞬、教室内を心霊でも通り過ぎたかのように静まり返った。
次の瞬間・・・
「「「えーー!?」」」
たちまちクラス中が大騒ぎになった。
そんなに大変な事だろうか・・・
みんなもすぐに受け入れて、またいつもの日常が訪れるものと考えていた。
それよりも、光山先輩とのことをもっと聞いてほしかった。
もっと、ちやほやしてほしいと思っていた。
昨日まで、私がユージに対するグチを言っていても、ニマニマしながらも聞いてくれたふたりが、今日はすごく慌てている。
なぜ、こんなにふたりが慌てているのか、この時の私はまだ理解できないでいた。
彼女から今までの関係まで否定された僕は、彼女と顔を合わせること自体が恥ずかしかった。
いつもは、毎朝、彼女を迎えに行くのだが、今日からはやめることにした。
ここでも彼女に依存していたと気づいた。
いつも朝7時30分に彼女の家に行くと、ウルハのお母さんと挨拶を交わすのが日課になっていた。
その後、お父さんが出るのは7時45分、妹の詩織ちゃんが出ていくのが7時50分ごろ。
それぞれ玄関で顔を合わせ、ちょっとした挨拶を交わす。
8時くらいにウルハが出てくる感じだった。
今朝は、教室にはいつもより30~40分早く着いてしまった。
いつもは、ウルハのクラスに行き、送り届けてから自分のクラスに来る。
彼女のクラスは1組、僕は6組なので教室はかなり離れている。
しかも、今朝はウルハを待たなかったので、そもそもスタートが30分早い。
いくら何でも早すぎるので、明日からは家を出る時間から見直そう。
全ての依存が、こうして生活の一つ一つに現れていた。
僕の悪いところだ。
直していかないと。
「おーっす!」
「おはよ」
クラスメイトとのいつもの挨拶。
落合と高田だ。
「あれ?ユージ、いつもより早くない?」
「ああ、今日は直接来た」
「なんだ、そっか。どうした?なんか顔暗いな」
「それが・・・」
SHR前に久々にクラスメイトと話をした。
ウルハにフラれたことを知らせると、クラスメイトにめちゃくちゃ心配された。
話の内容は周囲の人の耳にも入ってしまい、教室がちょっとしたパニックになった。
現在進行形の黒歴史なんだから、恥ずかしいから、そっとしておいてくれよ。
「葛西くん、会長と別れちゃったの!?」
席が近い小田島さんに声をかけられた。
言葉にすると自分が認めてしまうことになりそうでできなかった。
目を見て、うん、うん、うん、と小さく頷く事しかできなかった。
「大丈夫?」
周囲の友達の目から、心配してくれていることが窺える。
ただ、これも自分の勘違いと言うことは・・・
「今日、お昼はみんなでお弁当食べようね」
「お、小田島さんが一緒なら、おーれもっ!」
落合が調子よく乗っかった。
「あ、おれも!」
高田もここぞとばかりに乗っかった。
「僕、ついでかよ」
「「「ははははは」」」
みんなに心配をかけたくないので、何となく合わせて笑ってみたけど、心の中にぽっかり穴が開いている感じ。
基準を失うというのはこんな状態なのだ。
何が正しくて、何が間違いだったのか、一つ一つ確認していく必要があった・・・
■中野ウルハの視点
ユージに絶縁宣言をした翌日、彼は朝迎えに来なかった。
そういえば、そうか。
こちらから絶縁宣言をしたのだから、これが正しい。
ただ、小、中、高校と一緒に登下校していたので、それなりに違和感はあった。
同時に感じたのは、『新しさ』。
まだ誰も踏んでいない雪の草原に足跡をつけて行くような心の躍動を感じた。
今までは、ユージの面倒を見ていることもあって、色々と手を取られていたのだろう。
開放感の前に、まだ違和感が強くて心からは楽しめなかったけど。
「ウルハ、ユージくんまだ来ないけど、大丈夫?病気じゃない?」
「あ、うん」
朝の支度をする母親から聞かれた。
わざわざ親に言うほどではないが、今度ユージとは別れたことを伝えればいいや。
「ウルハ、今朝はユージくん来てないぞ?俺、時間間違えたかと思ったわ」
パパだ。
パパにもいつか伝えないと・・・
「あれ?お姉ちゃん、お兄ちゃん来てないよ?もしかしてフラれちゃったんじゃないの~?」
「うるさいなぁ」
詩織にも伝えないといけないのか・・・
詩織は私の妹で、中3。
小さい時ならいざしらず、中3にもなって隣の家の男の人を『お兄ちゃん』と呼ぶのには、別の意味が含まれているような気もする。
めんどくさいなぁ。
しっくりこない違和感を抱えつつも、ひとりで登校して、教室に着いた。
「はよー!」
「おはよう」
「はよー」
教室では、いつものように由香里(ゆかり)と庸子(ようこ)に挨拶した。
「あれ?今日、旦那のお見送りは?」
旦那とは、ユージのこと。
由香里はいつもユージのことを『旦那』と呼んで、私を揶揄っている。
「毎日毎日ウザいから来ないようにしてやったわっ」
「えー?なんか仲睦まじくて、『ザ・幸せ』って感じで私の憧れなのにぃ」
由香里は両手でハートマークを作りながら言った。
「え?ユージのこと?」
「あ、ユージくんじゃなくて、ふたりが。ふたりが、ね。」
「由香里、あんた危ない会話してるわねぇ。朝からウルハが嫉妬で大暴れするところよ!」
「い、いいわよ。あんなやつ。こっちからフッてやったから。」
「おやおやぁ?ケンカですかなぁ?夫婦ケンカは・・・ってねー」
「やめてよぉ、本気なんだから!」
「あ~、ハイハイ」
「私は三ツ山先輩と付き合うの!」
一瞬、教室内を心霊でも通り過ぎたかのように静まり返った。
次の瞬間・・・
「「「えーー!?」」」
たちまちクラス中が大騒ぎになった。
そんなに大変な事だろうか・・・
みんなもすぐに受け入れて、またいつもの日常が訪れるものと考えていた。
それよりも、光山先輩とのことをもっと聞いてほしかった。
もっと、ちやほやしてほしいと思っていた。
昨日まで、私がユージに対するグチを言っていても、ニマニマしながらも聞いてくれたふたりが、今日はすごく慌てている。
なぜ、こんなにふたりが慌てているのか、この時の私はまだ理解できないでいた。
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