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幼馴染の妹ルート
2-10_ハイスペックすぎる彼女とのジレンマ
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■ハイスペックすぎる彼女とのジレンマ
詩織との付き合いは、意外にも中々しっくりこなかった。
すごく気を遣ってくれる彼女。
そして、僕のことを常に偶像視していて、『すごい人』と思われているようだ。
全然そんなことはなく、僕は平凡すぎる高校生だ。
『彼女の理想の僕』は『現実の僕』の常に2歩先を行っているのではないだろうか。
僕は、『彼女の理想の僕』に追いつけるのか!?
そして、彼女自身がまたすごい。
中学3年生にして、芸能事務所に所属している。
動画配信で、登録者数が130万人いる。
中学では、『微笑み姫』と呼ばれていて、毎週誰かが告白し続けている。
モデル活動なんかしていて、ファッションセンスが長けていて、僕のファッションがダサく感じていないだろうか。
動画配信をして、びっくりするような額を稼いでいて、お昼にファストフードにしか連れて行けない僕に物足りなさはないだろうか。
『微笑み姫』の彼氏が僕みたいなので、中等部の男子たちは納得するのだろうか!?
平凡な僕に対して、ハイスペックすぎる彼女がいつか思うのではないだろうかと不安に思う。
『いざ付き合ったら、思ったほどじゃないな……』
そんな幻滅をされたら、僕は詩織の傍にいられるのだろうか。
それ以前に、詩織が僕の元を去って行ってしまうのではないだろうか……
詩織を彼女にしてから、常にこの不安が付いて回っていた。
「ユージさん、今度の週末ですけど……」
「あ、ごめん。今度の週末は……」
あまりお金がないんだ。
カフェに行くお金もないくらいに。
またバイトを始めようかな……
「そうですか……残念です。また誘ってください」
「うん……」
「ユージさん、学校に一緒に登校しませんか!?」
「え?うん……」
「私としては、毎朝手をつないで行くというのが理想なんですけど……」
「うん……」
「あれ?あんまり乗り気じゃありませんでした?」
「いや、そんなことはないんだけど……」
周囲から見たら、僕と詩織は月とすっぽんに見えないだろうか?
彼女の株を、僕が貶めてしまわないだろうか……
「ユージさん、動画配信の登録者数が140万人になりました!」
「え!?もう!?」
「この間、迷子ちゃんのお母さんを探していた時に歌った様子を録画している人がいたみたいで、バズってるみたいです」
頑張りだけじゃなくて、運も味方している……
しかも、140万人って……
ネット情報では月収500万円とも1000万円とも言われているけど、僕が行くのはファストフードだと幼稚に見えているんじゃないだろうか……
詩織は、僕の部屋に遊びに来ている時も姿勢が正しい。
カッコよすぎる。
「……」
そんなかっこよすぎる『微笑み姫』は、僕の部屋では片方の頬を膨らませてご不満なようだ。
「ユージさん!最近遊んでくれません!なんか変なことを考えている気がします!」
「いや、変なことを考えているっていうか……」
僕の両頬を両掌で挟んで、詩織が顔を近づけてきた。
「もしかして、早速、浮気ですか!?私じゃ物足りませんか!?やっぱりお姉ちゃんの方がよかったですか!?」
そんな風に感じていたのか。
むしろ逆だし……
僕は、全部詩織に話すことにした。
「詩織が、あまりにハイスペックすぎて、気後れしちゃって……」
「え?」
「こんなかわいくて、すごい子が僕の彼女でいいのかって、不安になって……」
「ユージさんが!?私に!?」
「だって、モデルだし、動画配信130万人だし、微笑み姫だし……」
「はーーーーっっっ」
空気の抜けたビニール人形のように、詩織が萎んでいった。
「そんな事ってあるんだ……って思いました」
「どういうこと?」
「私は、お姉ちゃんに勝って、ユージさんを射止めるために形振(なりふ)り構わず、いろんな鎧を身につけて武装してきました」
「……」
「私は私。今も昔もずっと変わりません。そんな鎧に惑わされないでください……」
「でも、モデルさんからしたら、僕の服ってダサくないかな?」
「私、広告のモデルとかしかしてないから、そんなの分かりません。変だと思ったら、ユージさんと一緒に服を買いに行くデートに行きます!」
プイと横を向かれてしまった。
「あと、動画配信ってすごく儲かってるんじゃ……僕みたいな普通の高校生じゃ子供っぽく感じない?」
「私は、お金(かね)のためにやってるんじゃないから、広告出していません!モデルとかのバイト料は、トレーニングに使ってるからほとんど残らないし……」
「天下の『微笑み姫』が凡人と歩いてて、詩織の株が下がらないか心配で……」
「私は自分から『微笑み姫』と名乗ったことはありません!幻滅されるなら、勝手に幻滅してください。私はユージさんといた方が嬉しいです!」
なんか、触れることも躊躇して、近寄ることも烏滸(おこ)がましいと思っていたけど、実際に話してみると、全然違う様に感じているもんだなぁ。
「ごめん、僕がなんか、卑屈になっていたみたい……」
「許しません!私、不安になったし、寂しい思いをしました!」
プイと横を向いて許してくれないらしい。
「これはもう、簡単には安心できませんので、ハグとちゅーを要求します!」
「え?」
横を向いたまま、詩織は顔が真っ赤だ。
頑張って言ったらしい。
僕は、詩織にゆっくり近づいて、ゆっくり抱きしめた。
部屋の床に座っていた僕らは、膝立ちで抱き合っていた。
全然カッコ良くないだろう。
でも、いいんだ。
これが僕らの等身大ってことで。
僕は、いもしない偶像を追いかけるのをやめた。
目の前の詩織を抱きしめた。
「まだ、ちゅーが残ってますよ?」
テレくさかったけれど、詩織の顔を覗き込んだ。
詩織は目を瞑って、少しだけあごを上げて、キスしやすくしてくれていた。
(ちゅっ)本当に唇同士が触れるだけのキス。
詩織は耳まで真っ赤だし、僕も自分のことが分からないくらい真っ赤になっているだろう。
「お兄ちゃんが、変なことを考えてないか、調べる必要があるから、定期的にちゅーは必要だと思います!」
詩織が、まだまだ顔を横に向けて拗ねてみせる。
あと、『お兄ちゃん』に戻ってるし。
動揺が伝わる。
詩織は詩織、僕は詩織を見るようにしようと思った。
「詩織、呼び方は『お兄ちゃん』の方がよくないかな?『ユージさん』は少しぎこちなくない?」
「実際呼んでみたら、ずっと『お兄ちゃん』だったから、その方が呼びやすいかも……」
「僕も、『詩織ちゃん』の方が呼びやすいんだけど……」
「そこは、呼び捨てでお願いします!『詩織ちゃん』は子供っぽいんで!」
『お兄ちゃん』は良いのか……
ツッコみたいところはあるけれど、『ユージさん』、『詩織』は、『お兄ちゃん』、『詩織』に変化した。
「あと、さっきのは、私の初めてのキスなので、もう少し感想などいただけると……」
そんなことを言われるとテレまくってしまう。
「あの、その、えっと……やわらかかった。そして、いい匂いがした」
ぷしゅーと詩織が蒸気を脳天から吹き出す様に真っ赤になって下を向いてしまった。
「お兄ちゃん、ズルいです……」
何故か涙目の詩織。
なんか、色々考えてくれたらしい。
「私も、少しずつだらけたところを出すようにしますので、お兄ちゃん幻滅しないでくださいね?」
やっぱり、普段からちゃんとするように心がけていたのか。
いつも姿勢が良すぎて、リラックスできてないんじゃないかと思ってたんだ。
「うん、じゃあ、手始めにここで寝転んでマンガを読むところからスタートしようか」
「そ、それは、もうちょっと後で……もうちょっと後にします」
ホントに砕けてくれるのだろうか……
「ここんとこ遊んでくれなかったので、一緒に出掛けてください。デートをしましょう!」
なんだかんだで、昼の3時は過ぎている。
今日は休みだと言っても、出かけるには少し遅いような……
まあ、早めに帰ってくればいいのか。
「じゃあ、ちょっと出かけてみるか。貧乏デートだけど」
「貧乏デートで十分です!」
僕らは少し遅いスタートでデートに出かけたのだった。
仲良く手をつないで。
詩織との付き合いは、意外にも中々しっくりこなかった。
すごく気を遣ってくれる彼女。
そして、僕のことを常に偶像視していて、『すごい人』と思われているようだ。
全然そんなことはなく、僕は平凡すぎる高校生だ。
『彼女の理想の僕』は『現実の僕』の常に2歩先を行っているのではないだろうか。
僕は、『彼女の理想の僕』に追いつけるのか!?
そして、彼女自身がまたすごい。
中学3年生にして、芸能事務所に所属している。
動画配信で、登録者数が130万人いる。
中学では、『微笑み姫』と呼ばれていて、毎週誰かが告白し続けている。
モデル活動なんかしていて、ファッションセンスが長けていて、僕のファッションがダサく感じていないだろうか。
動画配信をして、びっくりするような額を稼いでいて、お昼にファストフードにしか連れて行けない僕に物足りなさはないだろうか。
『微笑み姫』の彼氏が僕みたいなので、中等部の男子たちは納得するのだろうか!?
平凡な僕に対して、ハイスペックすぎる彼女がいつか思うのではないだろうかと不安に思う。
『いざ付き合ったら、思ったほどじゃないな……』
そんな幻滅をされたら、僕は詩織の傍にいられるのだろうか。
それ以前に、詩織が僕の元を去って行ってしまうのではないだろうか……
詩織を彼女にしてから、常にこの不安が付いて回っていた。
「ユージさん、今度の週末ですけど……」
「あ、ごめん。今度の週末は……」
あまりお金がないんだ。
カフェに行くお金もないくらいに。
またバイトを始めようかな……
「そうですか……残念です。また誘ってください」
「うん……」
「ユージさん、学校に一緒に登校しませんか!?」
「え?うん……」
「私としては、毎朝手をつないで行くというのが理想なんですけど……」
「うん……」
「あれ?あんまり乗り気じゃありませんでした?」
「いや、そんなことはないんだけど……」
周囲から見たら、僕と詩織は月とすっぽんに見えないだろうか?
彼女の株を、僕が貶めてしまわないだろうか……
「ユージさん、動画配信の登録者数が140万人になりました!」
「え!?もう!?」
「この間、迷子ちゃんのお母さんを探していた時に歌った様子を録画している人がいたみたいで、バズってるみたいです」
頑張りだけじゃなくて、運も味方している……
しかも、140万人って……
ネット情報では月収500万円とも1000万円とも言われているけど、僕が行くのはファストフードだと幼稚に見えているんじゃないだろうか……
詩織は、僕の部屋に遊びに来ている時も姿勢が正しい。
カッコよすぎる。
「……」
そんなかっこよすぎる『微笑み姫』は、僕の部屋では片方の頬を膨らませてご不満なようだ。
「ユージさん!最近遊んでくれません!なんか変なことを考えている気がします!」
「いや、変なことを考えているっていうか……」
僕の両頬を両掌で挟んで、詩織が顔を近づけてきた。
「もしかして、早速、浮気ですか!?私じゃ物足りませんか!?やっぱりお姉ちゃんの方がよかったですか!?」
そんな風に感じていたのか。
むしろ逆だし……
僕は、全部詩織に話すことにした。
「詩織が、あまりにハイスペックすぎて、気後れしちゃって……」
「え?」
「こんなかわいくて、すごい子が僕の彼女でいいのかって、不安になって……」
「ユージさんが!?私に!?」
「だって、モデルだし、動画配信130万人だし、微笑み姫だし……」
「はーーーーっっっ」
空気の抜けたビニール人形のように、詩織が萎んでいった。
「そんな事ってあるんだ……って思いました」
「どういうこと?」
「私は、お姉ちゃんに勝って、ユージさんを射止めるために形振(なりふ)り構わず、いろんな鎧を身につけて武装してきました」
「……」
「私は私。今も昔もずっと変わりません。そんな鎧に惑わされないでください……」
「でも、モデルさんからしたら、僕の服ってダサくないかな?」
「私、広告のモデルとかしかしてないから、そんなの分かりません。変だと思ったら、ユージさんと一緒に服を買いに行くデートに行きます!」
プイと横を向かれてしまった。
「あと、動画配信ってすごく儲かってるんじゃ……僕みたいな普通の高校生じゃ子供っぽく感じない?」
「私は、お金(かね)のためにやってるんじゃないから、広告出していません!モデルとかのバイト料は、トレーニングに使ってるからほとんど残らないし……」
「天下の『微笑み姫』が凡人と歩いてて、詩織の株が下がらないか心配で……」
「私は自分から『微笑み姫』と名乗ったことはありません!幻滅されるなら、勝手に幻滅してください。私はユージさんといた方が嬉しいです!」
なんか、触れることも躊躇して、近寄ることも烏滸(おこ)がましいと思っていたけど、実際に話してみると、全然違う様に感じているもんだなぁ。
「ごめん、僕がなんか、卑屈になっていたみたい……」
「許しません!私、不安になったし、寂しい思いをしました!」
プイと横を向いて許してくれないらしい。
「これはもう、簡単には安心できませんので、ハグとちゅーを要求します!」
「え?」
横を向いたまま、詩織は顔が真っ赤だ。
頑張って言ったらしい。
僕は、詩織にゆっくり近づいて、ゆっくり抱きしめた。
部屋の床に座っていた僕らは、膝立ちで抱き合っていた。
全然カッコ良くないだろう。
でも、いいんだ。
これが僕らの等身大ってことで。
僕は、いもしない偶像を追いかけるのをやめた。
目の前の詩織を抱きしめた。
「まだ、ちゅーが残ってますよ?」
テレくさかったけれど、詩織の顔を覗き込んだ。
詩織は目を瞑って、少しだけあごを上げて、キスしやすくしてくれていた。
(ちゅっ)本当に唇同士が触れるだけのキス。
詩織は耳まで真っ赤だし、僕も自分のことが分からないくらい真っ赤になっているだろう。
「お兄ちゃんが、変なことを考えてないか、調べる必要があるから、定期的にちゅーは必要だと思います!」
詩織が、まだまだ顔を横に向けて拗ねてみせる。
あと、『お兄ちゃん』に戻ってるし。
動揺が伝わる。
詩織は詩織、僕は詩織を見るようにしようと思った。
「詩織、呼び方は『お兄ちゃん』の方がよくないかな?『ユージさん』は少しぎこちなくない?」
「実際呼んでみたら、ずっと『お兄ちゃん』だったから、その方が呼びやすいかも……」
「僕も、『詩織ちゃん』の方が呼びやすいんだけど……」
「そこは、呼び捨てでお願いします!『詩織ちゃん』は子供っぽいんで!」
『お兄ちゃん』は良いのか……
ツッコみたいところはあるけれど、『ユージさん』、『詩織』は、『お兄ちゃん』、『詩織』に変化した。
「あと、さっきのは、私の初めてのキスなので、もう少し感想などいただけると……」
そんなことを言われるとテレまくってしまう。
「あの、その、えっと……やわらかかった。そして、いい匂いがした」
ぷしゅーと詩織が蒸気を脳天から吹き出す様に真っ赤になって下を向いてしまった。
「お兄ちゃん、ズルいです……」
何故か涙目の詩織。
なんか、色々考えてくれたらしい。
「私も、少しずつだらけたところを出すようにしますので、お兄ちゃん幻滅しないでくださいね?」
やっぱり、普段からちゃんとするように心がけていたのか。
いつも姿勢が良すぎて、リラックスできてないんじゃないかと思ってたんだ。
「うん、じゃあ、手始めにここで寝転んでマンガを読むところからスタートしようか」
「そ、それは、もうちょっと後で……もうちょっと後にします」
ホントに砕けてくれるのだろうか……
「ここんとこ遊んでくれなかったので、一緒に出掛けてください。デートをしましょう!」
なんだかんだで、昼の3時は過ぎている。
今日は休みだと言っても、出かけるには少し遅いような……
まあ、早めに帰ってくればいいのか。
「じゃあ、ちょっと出かけてみるか。貧乏デートだけど」
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僕らは少し遅いスタートでデートに出かけたのだった。
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