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8.5話 ロウサの誤算(おまけ)
しおりを挟む「協力する前に一つ、確認したい事がございます」
ロウサは暖炉の上の小箱から、一枚の写真を取り出しテーブルへ置いた。
「この写真はローフォード公爵様と、幼き日のセレーナ嬢では?」
「…………」
「妹のようだと仰ったのは嘘ですか?」
そこに写っているのは確かに、読書をするセレーナと彼女を膝に乗せたアンドリューが口づけを交わす場面だった。
「これはどこで?」
「言えないのですね。協力するに当たり秘密があるなら、こちらも考えざるを得ません」
「どこの誰が撮った?」
アンドリューの圧の強さに、ロウサは、貴方の熱烈な信者が隠し撮りした物だと伝えた。
「その者の家を教えてくれ」
「隠蔽するおつもりですか。それほど二人の秘密は」
「違う! 焼き増しして欲しいのだ。五十枚ほど」
「はっ?」
目の前の王族の血を引いた公爵は、その写真を見つめて顔中の筋肉を緩めている。ロウサは自身が思っていたより、危険な真実に導かれようとしていた。
「これはセレーナが十歳の頃、俺は十六で思春期真っ盛りだった。セレーナは読んでいた本のキスが、両親のものとはどう違うかと聞いてきたんだ。初めはおでこに軽くすると、これはお父様と同じだわと言うものだから、俺はむきになって頬にした。照れ隠しに威張るセレーナが可愛くて可愛くて、本当に知りたいか聞くと、彼女は唇を尖らせて……そうだ、俺にとってセレーナは確かに妹のような存在だ」
「んなわけあるかー!! そんなど変態兄貴エピソード!!」
「何を言っている。これは思春期の甘酸っぱエピソードだ」
ロウサはこのパンドラの箱には、とにかく重石を乗せる必要があると確信した。公爵を完全に見誤っていた。
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