4 / 46
004 側室
しおりを挟む
ノアの記憶喪失から3ヶ月が経ち、ノアはイザベルを側室として正式に迎えることにした。
イザベルは平民で、家族もいないそうだ。
ルシェルの元には連日、貴族令嬢たちが集まっていた。
「皇后陛下、どうかお気を確かに……」
「私どもはいつでも皇后陛下の味方ですわ!」
「平民が側室になど…ありえませんわ!」
「きっと陛下の記憶が戻れば元通りになりますわ」
そうやって令嬢たちは声を揃えてルシェルを励ますのだった。
ルシェルにとってそれはありがたくもあり、恥ずかしくもあった。
「皆さんありがとう、私は大丈夫よ。これまで通り皇后としての勤めを果たすだけだわ」
ルシェルは、気丈に振る舞っていたが、内心とても不安だった。
(これから一体どうなるのだろう……)
初めこそ、「平民を側室に迎えることなどあり得ない!」と反対していた側近や一部の貴族たちも、皇后が世継ぎを産むことは期待できないと感じたのか、次第に受け入れていったようだった。
何より、皇帝であるノアの意思は堅かった。
***
華やかな光に包まれた宮殿では、側室となったイザベルを祝う宴が開かれ、貴族たちは彼女をもてはやしている。
連日ルシェルの元に通っていた令嬢たちも、皇帝のイザベラに対する寵愛を目の当たりにし、様子を窺っているようだった。
貴族とはそういうものだ。より有利な方に付く。
宴の主役であるイザベルは、可憐な笑顔を浮かべ、まるで純真無垢な少女のようだった。
ルシェルはその場にいたが、心ここにあらずだった。
(わかりきっていたことだけれど、いざとなると辛いものね)
黄金の杯を手にしながらも、彼女の視線は虚空を彷徨っている。
彼女が皇后であることは変わらないはずなのに、その立場は日に日に危うくなっているのを感じていた。
「皇后陛下、お楽しみいただいていますか?」
柔らかな声が響く。顔を上げると、そこにはイザベルがいた。
彼女の瞳には純粋な光が宿っているように見えたが、その奥には別の感情が隠されていることをルシェルは見逃さなかった。
「ええ、とても」
ルシェルは微笑んだ。しかし、それは決して本心ではない。
「よかったです。陛下も今夜の宴をとても楽しんでおられるご様子ですし……」
イザベルは少し頬を赤く染めて言った。
その言葉にルシェルの胸の奥が鈍く痛む。ノアが彼女に優しく微笑んでいる光景が脳裏をよぎる。私にそうしていたように、彼女にもあの優しい眼差しで見つめながら愛を囁いているのだろうか。
「……そうね」
ルシェルはそれ以上何も言えず、ただ杯の中の酒をゆっくりと口に運んだ。
ーー宴が終わり、夜の宮殿に静寂が戻る頃、ルシェルはノアと向かい合っていた。
「陛下、私の気持ちはどうでもいいのですか?」
静かながらも張り詰めた声で彼女は問いかけた。
「皇后、これは国のための決断でもある。それにもう決まったことだ。そなたはこの国の皇后だろう?国のことを一番に考えるべきだと思うが」
ノアの声は冷静だった。だが、その言葉は彼女の心をさらに締め付ける。
あの温かく、優しかったノアはもういない。
”ルシェル”と陽だまりのような笑顔で私を呼ぶあの頃の彼はもうどこにもいない。
「あなたも私が子供を産めない役立たずだと思っているのね……。私だって、この国の皇后として勤めを果たそうと努力してきたわ。それに…たとえあなたの記憶がなくても、私たちは紛れもなくこれまで共に歩んできた夫婦なのです。それなのに、たった3ヶ月で素性もわからない側室を迎えるなんて…」
「……」
ノアは言葉を詰まらせた。
その沈黙が、ルシェルにとって何よりも辛かった。
「……もういいです。お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした、陛下。失礼いたします」
そう言うとルシェルはその場を後にした。
ノアが追いかけてくることはなかった。
***
宴の夜からしばらく経った頃、ある報せが宮殿を駆け巡った。
「イザベル様がご懐妊されたそうよ!」
「これで皇室は安泰ね!」
「やはり皇后様は妊娠できないお体だったのね…」
侍女たちが騒いでいる。
喜びの声が響く中、ルシェルはただ静かに目を伏せるしかなかった。
ーー翌週、父であるアストレア公爵から手紙が届いた。結婚して4年が経つが、父から手紙が来たのは初めてのことだった。
封の印章は間違いなくアストレア公爵家のもので、手紙には、冷たく鋭い筆跡が並ぶ。
(懐かしい、お父様の字だわ)
「おまえが皇后である限り、感情に心を支配させるな。皇帝の記憶が戻らぬならば、立場を盾に威を示せ。婚姻とは名誉だ。思慕ではない。おまえはこの国で一番権威のある女性であることを、忘れるな」
一読し、ルシェルはゆっくりと紙を折った。手は震えていなかった。
けれど、心の奥にかすかな痛みが滲んだ。
父は娘を”ヴェルディア帝国の皇后”としてしか見ていないのだ。
***
ーー夜の庭園にひそやかな風が流れる。
この庭園はかつて、ルシェルとノアが幼い日の約束を交わした大切な思い出の場所だ。
今やルシェルだけの思い出となってしまったが…。
月明かりの下、庭園を散策しているとひときわ目を引く銀色の蝶が舞っていた。
ルシェルがそっと手を差し出すと、それはためらうことなく指先にとまり、微細な羽ばたきを繰り返す。まるで彼女の苦しみを知り、慰めようとするかのように。
(不思議な蝶ね。綺麗だわ.......)
「陛下は、またイザベル様のもとにお泊まりのようです」
ルシェルが蝶に見惚れていると、侍女エミリアが静かに声をかける。
「そう……いいのよ、ありがとう」
ルシェルは静かに微笑んだ。
エミリアは胸を痛めながらも、主君の心を察し、それ以上の言葉を飲み込む。
イザベルの懐妊が知れ渡ってから数日が経ったが、ルシェルの日常はさほど変わらなかった。
噂話をする者たちが居ても、彼女に直接何かを言ってくる人などいなかった。
幼い頃から皇后になるべく育ってきた彼女は、子供がいないこと以外は紛れもなく完璧な皇后だったからだ。
一方、イザベルは懐妊してからも変わらず、ノアに対して純真無垢な少女のように振る舞っていた。
「陛下、今夜も一緒に寝てもいいですか?」
ノアの指が彼女の頬に触れる。
「イザベル、お前は本当に愛らしいな」
「陛下こそ、いつも素敵です。私は陛下の側室になることができて幸せです」
「そうか、それは良かった。これからは私の側室として、好きなことをするといい。誰もお前を馬鹿にしたりしないように」
「ありがとうございます、陛下。陛下と一緒にいられれば、私は充分幸せです」
「そうか。お前は本当に素直だな」
ノアがイザベルを愛おしむように、そっと口付けした。
イザベルは確かにノアを愛していた。
しかし、それと同時に皇后の座を手に入れたいという野心もまた捨てられなかった。
***
ーーある日の昼下がり
「皇后陛下、本当に申し訳ありません」
イザベルがルシェルに対して、出会い頭に突然謝罪をしてきた。
「…何のことかしら?」
「私のせいで…私がいるから陛下は、私のもとにばかりおいでになります……皇后陛下のお気持ちを思うと、私もとても心苦しいのです……」
ルシェルは顔に出さないように、怒りを抑え、必死に平静を装った。
「それはあなたが気にすることではないわ。それに、側室にしたのは陛下であって、あなたのせいではないもの。でも、あなたはあくまで側室だってことを忘れてはいけないわ」
「まあ、そんなこと……。私はただ、皇后陛下はお子が成せない体だと聞いたので…代わりにお役目を果たさなくてはと……」
イザベルは悪びれる様子もなく、逆に少し困ったような顔をする。
「ちょっとあなた……皇后陛下に対してなんて態度なの!!平民の分際で!!」
エミリアが堪えきれずに、イザベルを攻め立てた。
「いいのよ、エミリア」
ルシェルがエミリアを宥めていると、ノアがやってきてイザベルの肩をそっと優しく抱き寄せた。
「何事だ?」
「陛下…私はただ、皇后陛下にご挨拶をしただけなのですが、この侍女が私を”平民のくせに”と罵ったのです」
「なんだと?本当か、皇后」
(やっぱり彼女の肩を持つのね)
「確かに私の侍女が失言したことは認めますが、先に皇后である私に対して、無礼な物言いをしたのは彼女です。何を言ったのかも聞かずに彼女の肩を持つのはおやめください」
「…たとえイザベルが無礼な物言いをしたとしても、皇后は目上のものとして寛大になるべきであろう。それに、その侍女はイザベルよりも偉いのか?その侍女は罰せねばならん。側室に対して無礼な発言をしたのだからな」
ノアはルシェルの話を聞くつもりなどないようだった。
(呆れたわ……)
イザベルは涙を浮かべながらノアに抱きついた。
「おやめください、陛下。私は皇后陛下と仲良くしたいだけなのです。これでは嫌われてしまいます....」
「イザベル…」
(この茶番劇をいつまで見なくてはいけないのかしら)
「では他にお話はないようですので、私たちはこれで失礼いたします」
「待て、まだ話は終わっていない!」
ノアが引き止める声がしたが、ルシェルは構わずエミリアの手を引き、足早にその場を去った。
「皇后陛下、申し訳ありません…つい腹が立ってしまい…」
エミリアが申し訳なさそうにしている。
「いいのよ。ありがとう、私のために。でもこれからはあのような発言は控えてちょうだいね。万が一、あなたが罰を受けることになんてなったら嫌だもの」
「皇后陛下……」
ルシェルはエミリアに苦しそうに微笑んだ。
エミリアもそんなルシェルを見て、苦しくなった。
イザベルは平民で、家族もいないそうだ。
ルシェルの元には連日、貴族令嬢たちが集まっていた。
「皇后陛下、どうかお気を確かに……」
「私どもはいつでも皇后陛下の味方ですわ!」
「平民が側室になど…ありえませんわ!」
「きっと陛下の記憶が戻れば元通りになりますわ」
そうやって令嬢たちは声を揃えてルシェルを励ますのだった。
ルシェルにとってそれはありがたくもあり、恥ずかしくもあった。
「皆さんありがとう、私は大丈夫よ。これまで通り皇后としての勤めを果たすだけだわ」
ルシェルは、気丈に振る舞っていたが、内心とても不安だった。
(これから一体どうなるのだろう……)
初めこそ、「平民を側室に迎えることなどあり得ない!」と反対していた側近や一部の貴族たちも、皇后が世継ぎを産むことは期待できないと感じたのか、次第に受け入れていったようだった。
何より、皇帝であるノアの意思は堅かった。
***
華やかな光に包まれた宮殿では、側室となったイザベルを祝う宴が開かれ、貴族たちは彼女をもてはやしている。
連日ルシェルの元に通っていた令嬢たちも、皇帝のイザベラに対する寵愛を目の当たりにし、様子を窺っているようだった。
貴族とはそういうものだ。より有利な方に付く。
宴の主役であるイザベルは、可憐な笑顔を浮かべ、まるで純真無垢な少女のようだった。
ルシェルはその場にいたが、心ここにあらずだった。
(わかりきっていたことだけれど、いざとなると辛いものね)
黄金の杯を手にしながらも、彼女の視線は虚空を彷徨っている。
彼女が皇后であることは変わらないはずなのに、その立場は日に日に危うくなっているのを感じていた。
「皇后陛下、お楽しみいただいていますか?」
柔らかな声が響く。顔を上げると、そこにはイザベルがいた。
彼女の瞳には純粋な光が宿っているように見えたが、その奥には別の感情が隠されていることをルシェルは見逃さなかった。
「ええ、とても」
ルシェルは微笑んだ。しかし、それは決して本心ではない。
「よかったです。陛下も今夜の宴をとても楽しんでおられるご様子ですし……」
イザベルは少し頬を赤く染めて言った。
その言葉にルシェルの胸の奥が鈍く痛む。ノアが彼女に優しく微笑んでいる光景が脳裏をよぎる。私にそうしていたように、彼女にもあの優しい眼差しで見つめながら愛を囁いているのだろうか。
「……そうね」
ルシェルはそれ以上何も言えず、ただ杯の中の酒をゆっくりと口に運んだ。
ーー宴が終わり、夜の宮殿に静寂が戻る頃、ルシェルはノアと向かい合っていた。
「陛下、私の気持ちはどうでもいいのですか?」
静かながらも張り詰めた声で彼女は問いかけた。
「皇后、これは国のための決断でもある。それにもう決まったことだ。そなたはこの国の皇后だろう?国のことを一番に考えるべきだと思うが」
ノアの声は冷静だった。だが、その言葉は彼女の心をさらに締め付ける。
あの温かく、優しかったノアはもういない。
”ルシェル”と陽だまりのような笑顔で私を呼ぶあの頃の彼はもうどこにもいない。
「あなたも私が子供を産めない役立たずだと思っているのね……。私だって、この国の皇后として勤めを果たそうと努力してきたわ。それに…たとえあなたの記憶がなくても、私たちは紛れもなくこれまで共に歩んできた夫婦なのです。それなのに、たった3ヶ月で素性もわからない側室を迎えるなんて…」
「……」
ノアは言葉を詰まらせた。
その沈黙が、ルシェルにとって何よりも辛かった。
「……もういいです。お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした、陛下。失礼いたします」
そう言うとルシェルはその場を後にした。
ノアが追いかけてくることはなかった。
***
宴の夜からしばらく経った頃、ある報せが宮殿を駆け巡った。
「イザベル様がご懐妊されたそうよ!」
「これで皇室は安泰ね!」
「やはり皇后様は妊娠できないお体だったのね…」
侍女たちが騒いでいる。
喜びの声が響く中、ルシェルはただ静かに目を伏せるしかなかった。
ーー翌週、父であるアストレア公爵から手紙が届いた。結婚して4年が経つが、父から手紙が来たのは初めてのことだった。
封の印章は間違いなくアストレア公爵家のもので、手紙には、冷たく鋭い筆跡が並ぶ。
(懐かしい、お父様の字だわ)
「おまえが皇后である限り、感情に心を支配させるな。皇帝の記憶が戻らぬならば、立場を盾に威を示せ。婚姻とは名誉だ。思慕ではない。おまえはこの国で一番権威のある女性であることを、忘れるな」
一読し、ルシェルはゆっくりと紙を折った。手は震えていなかった。
けれど、心の奥にかすかな痛みが滲んだ。
父は娘を”ヴェルディア帝国の皇后”としてしか見ていないのだ。
***
ーー夜の庭園にひそやかな風が流れる。
この庭園はかつて、ルシェルとノアが幼い日の約束を交わした大切な思い出の場所だ。
今やルシェルだけの思い出となってしまったが…。
月明かりの下、庭園を散策しているとひときわ目を引く銀色の蝶が舞っていた。
ルシェルがそっと手を差し出すと、それはためらうことなく指先にとまり、微細な羽ばたきを繰り返す。まるで彼女の苦しみを知り、慰めようとするかのように。
(不思議な蝶ね。綺麗だわ.......)
「陛下は、またイザベル様のもとにお泊まりのようです」
ルシェルが蝶に見惚れていると、侍女エミリアが静かに声をかける。
「そう……いいのよ、ありがとう」
ルシェルは静かに微笑んだ。
エミリアは胸を痛めながらも、主君の心を察し、それ以上の言葉を飲み込む。
イザベルの懐妊が知れ渡ってから数日が経ったが、ルシェルの日常はさほど変わらなかった。
噂話をする者たちが居ても、彼女に直接何かを言ってくる人などいなかった。
幼い頃から皇后になるべく育ってきた彼女は、子供がいないこと以外は紛れもなく完璧な皇后だったからだ。
一方、イザベルは懐妊してからも変わらず、ノアに対して純真無垢な少女のように振る舞っていた。
「陛下、今夜も一緒に寝てもいいですか?」
ノアの指が彼女の頬に触れる。
「イザベル、お前は本当に愛らしいな」
「陛下こそ、いつも素敵です。私は陛下の側室になることができて幸せです」
「そうか、それは良かった。これからは私の側室として、好きなことをするといい。誰もお前を馬鹿にしたりしないように」
「ありがとうございます、陛下。陛下と一緒にいられれば、私は充分幸せです」
「そうか。お前は本当に素直だな」
ノアがイザベルを愛おしむように、そっと口付けした。
イザベルは確かにノアを愛していた。
しかし、それと同時に皇后の座を手に入れたいという野心もまた捨てられなかった。
***
ーーある日の昼下がり
「皇后陛下、本当に申し訳ありません」
イザベルがルシェルに対して、出会い頭に突然謝罪をしてきた。
「…何のことかしら?」
「私のせいで…私がいるから陛下は、私のもとにばかりおいでになります……皇后陛下のお気持ちを思うと、私もとても心苦しいのです……」
ルシェルは顔に出さないように、怒りを抑え、必死に平静を装った。
「それはあなたが気にすることではないわ。それに、側室にしたのは陛下であって、あなたのせいではないもの。でも、あなたはあくまで側室だってことを忘れてはいけないわ」
「まあ、そんなこと……。私はただ、皇后陛下はお子が成せない体だと聞いたので…代わりにお役目を果たさなくてはと……」
イザベルは悪びれる様子もなく、逆に少し困ったような顔をする。
「ちょっとあなた……皇后陛下に対してなんて態度なの!!平民の分際で!!」
エミリアが堪えきれずに、イザベルを攻め立てた。
「いいのよ、エミリア」
ルシェルがエミリアを宥めていると、ノアがやってきてイザベルの肩をそっと優しく抱き寄せた。
「何事だ?」
「陛下…私はただ、皇后陛下にご挨拶をしただけなのですが、この侍女が私を”平民のくせに”と罵ったのです」
「なんだと?本当か、皇后」
(やっぱり彼女の肩を持つのね)
「確かに私の侍女が失言したことは認めますが、先に皇后である私に対して、無礼な物言いをしたのは彼女です。何を言ったのかも聞かずに彼女の肩を持つのはおやめください」
「…たとえイザベルが無礼な物言いをしたとしても、皇后は目上のものとして寛大になるべきであろう。それに、その侍女はイザベルよりも偉いのか?その侍女は罰せねばならん。側室に対して無礼な発言をしたのだからな」
ノアはルシェルの話を聞くつもりなどないようだった。
(呆れたわ……)
イザベルは涙を浮かべながらノアに抱きついた。
「おやめください、陛下。私は皇后陛下と仲良くしたいだけなのです。これでは嫌われてしまいます....」
「イザベル…」
(この茶番劇をいつまで見なくてはいけないのかしら)
「では他にお話はないようですので、私たちはこれで失礼いたします」
「待て、まだ話は終わっていない!」
ノアが引き止める声がしたが、ルシェルは構わずエミリアの手を引き、足早にその場を去った。
「皇后陛下、申し訳ありません…つい腹が立ってしまい…」
エミリアが申し訳なさそうにしている。
「いいのよ。ありがとう、私のために。でもこれからはあのような発言は控えてちょうだいね。万が一、あなたが罰を受けることになんてなったら嫌だもの」
「皇后陛下……」
ルシェルはエミリアに苦しそうに微笑んだ。
エミリアもそんなルシェルを見て、苦しくなった。
116
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
旦那様、離婚してくださいませ!
ましろ
恋愛
ローズが結婚して3年目の結婚記念日、旦那様が事故に遭い5年間の記憶を失ってしまったらしい。
まぁ、大変ですわね。でも利き手が無事でよかったわ!こちらにサインを。
離婚届?なぜ?!大慌てする旦那様。
今更何をいっているのかしら。そうね、記憶がないんだったわ。
夫婦関係は冷めきっていた。3歳年上のキリアンは婚約時代から無口で冷たかったが、結婚したら変わるはずと期待した。しかし、初夜に言われたのは「お前を抱くのは無理だ」の一言。理由を聞いても黙って部屋を出ていってしまった。
それでもいつかは打ち解けられると期待し、様々な努力をし続けたがまったく実を結ばなかった。
お義母様には跡継ぎはまだか、石女かと嫌味を言われ、社交会でも旦那様に冷たくされる可哀想な妻と面白可笑しく噂され蔑まれる日々。なぜ私はこんな扱いを受けなくてはいけないの?耐えに耐えて3年。やっと白い結婚が成立して離婚できる!と喜んでいたのに……
なんでもいいから旦那様、離婚してくださいませ!
捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末
コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。
平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。
そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。
厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。
アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。
お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。
完結まで予約投稿済み
世界観は緩めです。
ご都合主義な所があります。
誤字脱字は随時修正していきます。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜
高瀬船
恋愛
「出来損ないの妖精姫と、どうして俺は……」そんな悲痛な声が、部屋の中から聞こえた。
「愚かな過去の自分を呪いたい」そう呟くのは、自分の専属護衛騎士で、最も信頼し、最も愛していた人。
かつては愛おしげに細められていた目は、今は私を蔑むように細められ、かつては甘やかな声で私の名前を呼んでいてくれた声は、今は侮辱を込めて私の事を「妖精姫」と呼ぶ。
でも、かつては信頼し合い、契約を結んだ人だから。
私は、自分の専属護衛騎士を最後まで信じたい。
だけど、四年に一度開催される祭典の日。
その日、私は専属護衛騎士のフォスターに完全に見限られてしまう。
18歳にもなって、成長しない子供のような見た目、衰えていく魔力と魔法の腕。
もう、うんざりだ、と言われてフォスターは私の義妹、エルローディアの専属護衛騎士になりたい、と口にした。
絶望の淵に立たされた私に、幼馴染の彼が救いの手を伸ばしてくれた。
「ウェンディ・ホプリエル嬢。俺と専属護衛騎士の契約を結んで欲しい」
かつては、私を信頼し、私を愛してくれていた前専属護衛騎士。
その彼、フォスターは幼馴染と契約を結び直した私が起こす数々の奇跡に、深く後悔をしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる